「なんで一度やって、あまつさえ答え合わせまでした問題が解けやあせんのかねっ!?」  
放課後の図書室、成の情け容赦ない怒号が響く。  
「そんな事、言われても…なあ?」  
大体、成の説明はあっちこっち飛ばしていきなり答えが出るから解り難いんだという気持ちを込めて、  
せっせと横で俺にために練習問題を作成してくれている正樹に同意と助けを求める。  
…が、正樹は正確に現実を突き付けてくる。  
「そうやって逃げるのも良いけど、  
 銀次君は来週の追試クリアしないと補習授業が待ち受けているんだよ……もう今日、入れたって3日なんだよ」  
 
……そうなのだ。  
先の期末試験で惨敗した俺は事もあろうに物理と数学、おまけに現国で赤点を取ってしまい……  
 
追試っ!!  
 
なのだ。  
これに合格しないと、実質高校最後の夏休みとなる2年の夏に俺は、  
 
恐怖っ!!補習ツアー30日間の旅プレゼントキャンペーンに当選してしまうのだっ!!  
 
「思えば…高校受験の時、お前に勉強教えてくれって言われて初めて勉強で苦労したんだよなあ……  
 それから、試験の度に毎回毎回、よく頑張ったよ…オレ」  
成がしみじみと呟き、  
「もう、諦めろ。  
 留年でもして一年やれば、きっとなんとかなるぜ」  
とんでもねえ、一言で締める。  
更に正樹まで……  
「銀次君、学年違っても友達だからね」  
…彼ラハ本当二俺ノ親友ナノデショウカ?  
 
「さて…冗談はそれ位にして、  
 いい加減、図書室閉まる時間だけどどうしよう?」  
本当に冗談だったのか?  
けっこう感情こもってた気がするが…?  
「仕方ねえな…  
 明日は土曜だし今日は深夜まで銀次んチで特訓だな。  
 正樹が張ったヤマだけでも一通り説明しねえと…」  
おお!  
やっぱり見捨てないでくれるのか!  
君達の友情を疑って済まないっ!!  
 
……いや…待てよ。  
「俺の家?」  
聞き逃しそうになったが途中、ヤヴァイ単語が混じっている事に俺は気づく。  
 
…そういえば俺、我が家にジルが居ること二人に言ってねえ……  
 
「ちょっと同居人に話してくるから待っててくれ」  
「あれ?正樹君って同居している人なんて居たの?」  
あまり突っ込まれたくない俺はその正樹の質問にあいまい  
に  
「ああ、最近ちょっとした縁でね」  
答え、  
 
二人を玄関前に待たせると、玄関を開け不自然だと感じな  
がらもそれを素早く締め鍵をかける。  
ジルとの交渉次第では最悪、このまま二人には悪いが帰っ  
てもらう事になるからな……  
となると、正樹の予想問題は自力で解いて勉強するしかな  
い。  
 
……無理だ。  
追試より教科数が多かったとはいえ、  
ヤマを張った予想問題は期末前にもらったし、それが出来  
るなら追試になんてなるわけがない。  
 
背に腹は変えられん。  
最悪の事態だけは避けれるなら妥協すべき所は妥協する覚  
悟で俺は、リビングでごろごろして菓子を頬張り、バラエ  
ティー番組を見ているジルに状況を手早く説明し服を着る  
ように説得すると、  
予想外にもジルはあっさり、  
「良いよ」  
と二つ返事で返してくる。  
 
俺はジルの着替えが終わるのを待って、  
玄関を開けると二人を招き入れる。  
「遅かったな」  
人の気も知らずに成が文句を言いやがる。  
「こっちにも色々あるんだよ」  
ジルのことは魔神という所を抜かして説明すると、  
絶対に面倒なことになるしボロも出そうなので色々だけで、これまでの苦労を言い表す。  
 
「へ〜良いじゃん。  
 銀ちゃんの友達ってからてっきり角刈りとかアイパーとかが来るのを期待してたのに。  
 これはお姉さん一本取られたなあ」  
大人しくしててくれるわけもないジルは、さっそく俺の後ろから顔を出して二人をのぞき込む。  
しかも、わざとらしいし……  
 
あんたは俺の心が覗けるんだから二人の容姿は知ってんだろ。  
ジル曰く、人間の心は外的刺激(音とか視覚など)や浮かんでは消える雑多な思考などノイズの塊だから集中してくれないと、  
希望通りの情報はなかなか読めないらしいが……  
いくらなんでも、こいつらの容姿くらい知っているだろう。  
 
「ど…同居って女の人だったんだ……」  
ジルを見た正樹が意外そうに呟く。  
そりゃそうだろうよ……  
と俺が思い、どう言い訳するかと思っている矢先に、  
その正樹の言葉にすかさずジルが  
「アタシは銀ちゃんの恋人様のジル・バース、宜しく」  
と答える。  
 
ん?  
何か変だ?  
ジル…名字なんて持ってたのか?  
初めて聞いたぞ……  
……というか、それってあの人から取ったのか……?  
ってことは、こいつが読○○人軍のファンだったらクロマティとでも名乗ったんだろうか?  
 
「って違う!!  
 そこじゃねえっ!!」  
俺はその場の他の誰にも分からない自分のボケにツッコミを入れ、  
「恋人ってなんだ!!  
 恋人ってっ!!」  
しかも様付……  
「照れんな、照れんな」  
抗議する俺の背中をジルは笑ってバシバシ叩きながら勝手に既成事実しようとしてやがる。  
 
結局、俺は二人の誤解を解けないまま(…というか、多分二人とも事実よりネタを楽しんでいる)仕方なく勉強を始める。  
 
せめてもの救いは、勉強中はジルが大人しかった事だ。  
さすがに俺の心を読めるだけあって、俺の切迫した状況を解ってくれているんだろう。  
 
……と思った俺が甘かった……  
 
「朝日が眩しいぜ……」  
徹夜で俺を絞った成がマンションから出るとふらふらと帰って行き、それに続き、正樹が  
「良い、追試なんて前のテストのおさらいなんだから、  
 今晩やった所を覚えるだけで楽勝なんだから頑張ってよ…」  
と最後まで俺の心配をしながら帰って行く。  
 
二人をマンションの外で見送った俺は、  
「寝る前にもう一通り目を通して……」  
俺はさっぱり働かない頭を振ると背伸びをして部屋に戻った。  
 
瞬間、固まった……  
 
「…なにやってんだ……」  
ジルは手に正樹の作った問題集のノートをひらひらとさせている。  
「ここからはアタシが勉強見てあげるんだよ」  
……お前に勉強を教えられるとは到底、思えない。  
というか……  
 
「なんで全裸だ!!」  
そう俺が固まった理由はこれだ……  
なぜかジルは今まで着ていた服は愚か、いつもの水着モドキすら着けていない。  
「知りたい?」  
「知りたくない、それよりノート返せ」  
「ふ〜ん…そういう事言って良いのかな?」  
ジルはそう言うとノートを投げてよこす。  
「良いも悪いも……  
 って…なんじゃこりゃあああああああっ!!」  
正樹の書いた練習問題は?  
成の解いた模範回答は?  
二人に聞いて俺が書いた質問の説明は?  
俺は白紙のノートを隅々まで見る……  
 
…全部消えている……  
「中身、どうした?」  
「ふふふ……」  
ジルは指でちょいちょいと俺を呼ぶ、  
俺は仕方なくジルに近寄る。  
「ちょっと胸揉んでみ」  
ジルは手の届く距離まで来た俺に胸を突き出す。  
「…それどころじゃねえんだっ!!」  
「良いから良いから」  
ジルは笑いながら、無理やり俺の手を胸に持っていく。  
 
「仕方ねえなあ…」  
俺は手にあまるサイズのジルの胸を揉む、  
指の間からはみ出た胸がとむにゅむにゅと心地良く、俺はつい強弱をつけその弾力を楽しんでしまう……  
「あんっ…上手になったじゃない」  
ジルはそんな俺の揉み方に素直に感じてくれる。  
 
……って  
「おい」  
「ん…なに?」  
「字が浮き出て来たぞ」  
ジルの褐色の肌に白い文字が浮かび出てきている。  
しかも、見覚えのある……  
「そ…アタシが感じると、そこのノートから写した文字が体に浮き出るの。  
 さあ!勉強したかったら頑張って、アタシを満足させなさい!」  
 
…お…お前はなんて事を……  
ノートに戻してくれって頼んでも無駄なんだろうな……  
それどころか、頼めば間違いなく余計に面白がる。  
「ほかに手はないのか…」  
俺は覚悟を決めると、服を脱ぎ捨てるとジルをその場に押し倒した。  
 
まずは俺は指と舌をフルに使って、ジルの全身を愛撫する。  
ジルの張りのある肌が俺の指や舌を押し返す感触に、不眠で疲れているはずなのに俺の下半身が反応する……  
 
って…それどころじゃない。  
俺はざっと読み取った内容を頭の中で記憶と照らし合わせる。  
どうやら、今は物理しか浮き出ない。  
「残りは?」  
もの凄く嫌な予感を感じた俺はジルに質問する。  
「残りって?」  
手を休めた俺に不満そうにジルは聞き返す。  
「ノート全部に足りないだろ?」  
「ああ、さすがに全部一度には無理だから、キリの良いとこで一回毎に変えたぞ」  
キリの良い所とは多分、1教科毎だろう…  
それが1回ってことは……  
…最低…2回……  
 
無駄に元気になった下半身を我慢しつつ、  
俺は再び、ジルの体に指を這わせる。  
「ん…んっ」  
ジルの甘い声に意識の集中がいきそうになりつつも俺は、  
問1は確か…左太股の辺りに……  
頭に入っているのか入っていないのか、とにかく問題を読み進めていく。  
 
「…って次の教科は?」  
一通り、物理を読んだ俺はジルに訪ねるが、  
返って来た言葉は冷たく予想通り……  
「アタシが愛撫ごときで達するわけないだろ?」  
……だそうです……  
「俺、徹夜開けなんですが…?」  
「でも、こっちは元気だぞ」  
そう言うとジルはしっかり俺自身を握り締める。  
「!!」  
まずい…今日は無駄撃ちは出来ない俺はそう感じ、  
ジルの手を押さえると慎重に動かないよう指を一本一本外して行く。  
 
「ちぇ…」  
そうして、自由になった俺自身を見ながらジルは面白くなさそうに呟く。  
危なかった…ジルのこの反応からするとあのまま、無駄撃ちさせる気だったな……  
 
俺は指でなぞり、先ほどから長々とした愛撫でジルが充分に潤っている事を確認すると、  
彼女の足の間に体を入れ、俺はその潤いを俺自身になすりつけ、  
「あぅんっ…」  
そのまま、彼女の中に入っていく。  
 
「うぅ…」  
俺は軽いうめき声をあげ、彼女に包まれた事で襲ってくる終わりそうになる感覚を必死で堪え、  
その感覚が治まるのを待って俺は彼女の奥までゆっくりと入れて、ゆっくりした速度のまま前後運動に入る。  
 
「……あ…ぅん…あんっ」  
愛撫の分でかなりジルも登り詰めかけてたらしい、  
ゆっくりとした、俺の動きに彼女はすぐに声を押し殺すことも出来なくなったらしく甘い声を上げる。  
 
…が、それは俺も同じだった。  
元々、早いってのもあるが暗記に集中してたつもりが(そもそも無理な気もするが)愛撫している間にすっかり俺も興奮しきっていたらしい。  
限界が近い…そう感じた、瞬間  
「ああっ…あぅん…あーっ」  
ジルが達したらしく、筋肉を緊張させ背をのけぞらせる。  
それに伴い、彼女の大切な部分も収縮し俺自身をこの上なく締め付けてくる。  
「くっ…」  
俺はその刺激に抗えないまま、彼女の中で達してしまう。  
 
「…あん」  
疲れきった俺が、達した事で腕で体を支える力もなくし崩れ落ちると、  
それを胸で抱き止めてくれたジルが、甘い吐息混じりの声を漏らす。  
俺をそのまま余韻にひた…  
 
れないっ!!  
やばかった……今、余韻にひたったら絶対寝てた。  
…寝たら、おそらく今日一日は完ぺきに潰れてたぞ……  
俺は気力を振り絞ると、愛撫をまた始めた。  
 
「ちょっとぉ…銀ちゃん、休ませてよ」  
そんな俺にジルは抗議するが、  
「駄目だ」  
昨晩ゆっくり寝たジルと違い、俺は寝不足だ。  
ハイになって意識の続いている内になんとか、昨晩のおさらいとして記憶の定着をしなければならない。  
 
結局、俺はジルの抗議を無視し、そのまま立て続けにもう1回と半分をやり遂げそのまま眠りに落ちた。  
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー  
 
「……なぜだ」  
俺は返ってきた追試の答案を見て呟いた。  
「銀次君、追試の結果どうだった?」  
そんな俺に声をかけたのは正樹だ。  
あれだけ苦労したんだ、当然、正樹と成の二人も結果が気になるんだろう。  
 
俺はそんな二人に無言で三枚の答案を見せてやる。  
「……」  
「……」  
二人とも言葉がない……当然だと俺も思う。  
成のこういう表情は初めて見た気がする……  
…やがて  
「嘘つきゃあせ!!」  
「……銀次君、カンニングは良くないと思うよ」  
…いや、二人のその反応は正しい……  
普段なら、俺を信じてないのかっ!!  
と怒鳴っても良い所だが、この  
 
100点×3枚  
 
を見せられては俺だって、何か無意識にやらかしたんじゃないかと自分を疑う……  
 
…もしかして、ジルのお蔭なのか?  
いや…有り得ないな……  
俺はふと頭に浮かんだ考えを即座に否定する。  
…が  
「一応、今日はエ○スビールでも買って帰ってやるか……」  
俺はそう思いながら、答案を丁寧にたたむと鞄に大切にしまい込んだ。  
 
こうして銀次は無事夏休みをゲットした。  
……しかし彼は知らない、  
40日後、課題の山に囲まれ再び正樹(成は端から宿題類はやった例がないので戦力外)に泣きつく自分が居ることを……  
 
 

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