「…ちょっと良い?」  
夏も終わりかけた日、  
リビングで、とくに見たいというわけでない番組を何となく見ながら、くつろいでいた俺にジルが話しかけてきた。  
「良いぜ」  
そして、その声に答え、振り返った俺はジルの深刻な面持ちに思わず固まった。  
 
「ねえ、銀ちゃん…頼みがあるの」  
余程のことなのだろうか?  
彼女が言いにくそうに言葉の間に詰まる。  
「頼み?」  
俺は言い難くそうにしている彼女が、言葉を続けやすいようにと短く相づちをうち、  
彼女の次の言葉を待つ……  
 
が、  
「やっぱり良いっ!忘れてっ」  
彼女は突然、思い切ったように大きな声で話の終わりを宣言すると、きびすを返しリビングから逃げるように出ていこうとする。  
「ちょっと待てよっ!!」  
ほとんど、反射的に俺は制止の言葉を叫びながらジルの腕を掴んだ。  
 
「……」  
俺に腕を捕まれたジルは、しばらく顔を伏せ黙って居たが、  
「……言っても銀ちゃんに迷惑…だし…」  
顔を伏せたまま、ゆっくりと呟くほど小さく言うと、俺の手を握られてない方の手で外そうとする。  
「迷惑って今更、何言ってんだよ!!」  
今まで見たことのないジルの弱さに不安になった俺は、つい語調を強くしてしまい。  
同時に外されかけていた手にも力が入ってしまう。  
 
「……っ」  
ジルの痛みに反応する声と同時に、俺の手にそえられていたジルの指がびくっと震えた。  
だが、それでも俺は握った手を緩めなかった。  
……いや、不安で力を抜けなかった。  
「……力になってくれる?」  
俺のそんな心を理解したのか、ジルがようやく話を続けるそぶりを見せる。  
俺はその機を逃すまいと、必死にその言葉に答える。  
「ああ!俺に出来ることなら、なんでもやるっ!!」  
「銀ちゃん…有り難う」  
その言葉に振り向いたジルは、そのまま俺に抱きつき、  
しばらく、そのまま抱き合った後、ゆっくりと口を開く。  
「…じゃあ」  
 
「よっしゃっ!!聖地巡礼決定っ!!」  
今までの態度は何だったのか?  
ジルいきなり、叫びとともに俺を放り出し万歳する。  
「ちょっと待てっ!!  
 今までの態度は!?  
 そもそも、聖地巡礼ってなんだっ!?」  
いきなり間近でオーバーリアクションされ混乱した俺は、  
頭に浮かんだ疑問を次々とジルにぶつける。  
「じゃあ、順番に答えるね、1つめの質問の答えは演技。  
 2つめのは甲子園で野球観戦、はい、解決」  
 
……解決って…騙しじゃねえか?  
大体、普通野球見にわざわざ新幹線使わなきゃ行けない、  
大阪(注:銀次が無知なだけで甲子園は大阪では有りません)まで行くか?  
そう思い、俺は文句を言うために息を吸い込んだ。  
しかし、ジルはしっかり俺の先回りをする。  
「男に二言は無いよね?ぎ〜んちゃ〜ん〜」  
……卑怯な…ほとんど脅迫だ……  
反論出来ない俺を置いてジルは話を続ける。  
「どうせ、夏休みでゴロゴロしてるだけなんだし、たまには休日を有意義に使おうよ。  
 その代わり、今夜はとっておき出してあげるから」  
 
「じゃ〜んっ!お待たせ、銀ちゃ〜ん」  
とっておきを出すと言って、  
俺が制止する間もなくさっさとリビングを出ていったジルがそんな明るい声を上げながら戻ってきた。  
「……なんだ…それ」  
戻ってきた彼女の格好に思わず声が出る。  
 
「いいでしょ?」  
……それ良いのか?  
全体に黄色と黒の虎柄?……微妙に違う気もするが……  
いやそれだけなら、普通の下着だ。  
だが、決定的に違うのは胸のカップにタ○ガース野球帽を被ったキャラのお面みたいな物がついている。  
「……どこで買ったんだ?」  
「良いでしょっ、ネットで聞いて買っちゃんだ。  
 サイズ直すのにちょっと魔法使っちゃったけど」  
…そりゃあ、普通のサイズじゃないからなあ……  
つい俺の視線がジルの胸に行ってしまう。  
もっとも、例のキャラクターのお蔭でいつもより目立たないが……それでもやはり、並じゃないことは一目で判る。  
 
「ふふふ…ぎ〜んちゃんっ!!」  
俺の視線に気づいたのか、  
ジルは俺の頭を急に胸に抱き挟み込む。  
「っ!!」  
…キャラのお面の縁が頬を勢いよく掠め、小さいが鋭い痛いが走り俺は思わずつまった声を出す。  
「あっ、御免……  
 でも、安心してこれ外れるからっ」  
一度、俺の頭を放したジルは両の胸のそれを外し、  
「良かったね、おっぱい好きの銀ちゃん!」  
と、ちろっと可愛らしい舌を出す。  
 
「べっ別に胸好きってわけじゃ…」  
そう言いつつも、俺の手は俺の言葉を裏切り勝手にジルの胸に伸びる。  
ジルの胸に触れた手に力を入れると、布の手応えの下から俺の手の圧力に抵抗する柔らかいがしっかりとした弾力が返ってくる。  
「あんっ」  
いつもと違う感触、布一枚とはいえ隔てられたもどかしさについ俺は執拗に彼女の胸を揉んだ。  
「……ちょっと、布が乳首に擦れて痛いよ」  
 
集中し始めた頃、ジルは突然にそう言いながら俺の手を握って止める。  
「ああ…そうだな」  
俺は名残惜しい気持ちを抑え、手を止めるとブラを外そうと手を胸から退かし、彼女の背中に回した。  
 
が、  
「いたたたっ」  
彼女の背の回した腕が思いっきりつねられる。  
「外したら意味ないじゃない」  
そう言うと、ジルは俺の手からすり抜け、  
俺に背を向けると、  
「今日はこの服にままだから、こっちからね」  
と言って、4つ這いになる。  
 
俺は目の前に突き出された、ジルの後ろ姿に見入ってしまう。  
背の光沢すら感じられる褐色の肌は、彼女のゆるいウェーブのかかった銀髪と、黄色を基調とした下着と見事に映え、  
たっぷりとしたボリュームを包む足の付け根まで覆うボーイズタイプショーツから、すらりとした褐色の腿が美しい曲線を描き伸びている。  
「……後ろから…」  
俺はその光景に思わず、呟き息をのむ。  
 
「今日は後ろからね」  
その呟きに答え、ジルは頷いてくれる。  
俺は、その答えに応じて目の前のジルの腰に左手を添えると、  
ショーツの上からでも解る、きゅっと締まった彼女の尻の割れ目からを覗く彼女の女性の部分をなぞり愛撫を始める。  
「……くぅ…つ…」  
愛撫に反応し洩れ出たジルの甘い喘ぎに合わせ、  
序々に指をショーツの布ごと彼女の大切な部分に強く摺りつけて指を布ごと埋め込むように愛撫を繰り返す。  
 
段々と強くなる愛撫に反応し、指先に感じる小さな豆のような突起が堅くなっているのを確認した俺は、  
それを布と挟み込むように刺激する。  
「ああっ…ん…銀ちゃんっ待ってっ!  
 布が擦れてっ……あああっ」  
ジルの声が一際大きくなり、俺の指に圧力を感じるほど強く、  
恐らくショーツという障害がなければ飛沫として吹き出していたのではないかという位に強く彼女の潤いが吐き出され、  
ショーツを大きく湿らせた。  
 
「はあ…はあ……」  
滴るほどに濡れた布を通して、彼女が達した証拠のように彼女の荒い呼吸が伝わってくる。  
僕はその暖かい感触に指を包まれたまま、しばらく彼女が落ち着くのを待ち、  
「もう、大丈夫か?」  
多少、彼女の呼吸が落ち着いた所で、  
もう入れても良いかと意味も含めて聞く。  
正直、俺の方も暴発しなかったのが不思議な位に痛いほどにいきりたち、それをずっと維持していている。  
 
ジルは声も出さずに、頷いて答えると、  
「でも、先にいかされるのってちょっと悔しいんだな…」  
と、微笑みながら言う。  
俺は、その微笑みを見、胸の奥が熱くなるのを感じる。  
……なんと言うか……  
これは、もしかして……  
 
俺…ジルが好きなんだな…  
一人で心の中で納得していると、  
「なにを今更……」  
俺の自問自答に即座にジルが答える。  
…そう言えば、心読まれるんだった。  
「それより……ね」  
ジルはそう言うと、下半身を突き出してくる。  
…すでに完全に達した余韻から立ち直っているようだ……  
 
俺は彼女に促され、  
彼女のショーツと垂れ下がる尻尾のアクセサリーをずらし、俺自身を彼女の中に突き入れる。  
と、  
「くっ」  
限界以上に無理やり脇に退けられ、嵩になったショーツが突き入って行く俺自身に擦れて痛む、  
「ふっく……ああ、あん……」  
が、  
一度、先に達している為に敏感になっているジルの甘い声が耳に入った俺は、  
そもそも限界も近いことも有り、この位の痛みでは止まれない。  
 
俺は歯を喰い縛り、  
迫りくる終わりの感覚と痛みの双方に耐えながら、腰を動かす。  
「はぁん……銀ちゃん…凄い…」  
もっとも、痛みはすぐに甘い声を聞きながら、絡みつくような、彼女の中を動く内に染み出た彼女の潤いに、俺自身が濡れまみれる事で布との摩擦も減すぐに楽になった。  
 
とはいえ、楽になったのは痛みのみ、  
それが楽になる頃には俺は迫りくる絶頂感は避けられず、  
「悪い…ジル、俺……もう」  
「あ…ぅん…良いよ……きてっ銀ちゃん!」  
宣言した俺に、併せてジルは自分も二回目の絶頂を求め腰を動かし答えてくれる。  
 
「くっ…ぅ出る……ジルっ」  
彼女の動きも有り、ほとんど即達した俺に対して  
「銀ちゃんっ!…ああっ…」  
彼女の動きはそのほと走りの間も緩まず、俺から絞りとるように動き続け、  
その度に来る彼女の中のうねりとの摩擦に俺自身は痛みを感じるほどに、連続し小さな絶頂を続けた。  
 
そして、俺のほと走りも限界になった頃、  
「あああっ!」  
背を退け反らせ、彼女も二度目の絶頂を迎えた。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー  
 
「ああああっ!!」  
ことが終わりまどろむ俺の耳に突然、絶叫が響く。  
「なっなんだっ!!」  
跳ね起きた俺の横で、自分のショーツを握り締めジルが俺を睨んでいる。  
「……足出す穴が片方伸びてるじゃないっ!!」  
………それはそうだろ?  
「あっ!そういう事を考えるっ!!」  
また人の心読んだな…ジルが即座に文句を言ってくる。  
「いや…だって脱がすなって……」  
「……言った?」  
 
そして、しばらくジルは記憶を辿り、  
「…ま…仕方ないわね、  
 魔法でちょちょいと直すから良いわ」  
……果たして俺に完全に非があった場合、そんなに簡単に終わらせるのか?  
ふと疑問が頭をよぎったが俺は忘れる事にしまどろみに再び落ちていった。  
「……こっちにも謝らなきゃいけないことあったし……」  
最後に聞こえたこのジルの言葉の意味も解らずに……  
 
後日、ジルがよりによってバックネット裏のチケットを購入している事が発覚……  
文句を言えるほど、強くなかった銀次君の9月の小遣いは、  
旅費と合わせてそのツケを回収する為に、悲惨な状況になることになる。  
 

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