「ほら…ダチの付き合いで買ったんだ。  
 仕方無いからやるよ…」  
俺は言い訳めいていると自分でも感じながら呟くと、  
友人たちに『無理やり』買わさせられたジルへのクリスマスプレゼントを、リビングでドラマの再放送を見ているジルに差し出した。  
「……」  
最初はジルはわけが判らないと言った風でそれを見てキョトンとしていたが、  
「ああ」  
と呟き、  
「な〜るほど、  
 ようやく銀ちゃんも素直になって恋人へのクリスマスプレゼントを贈ってくれたわけだ?」  
と、すぐに今日がクリスマスと言うことに気づき、ぽんと手を叩く。  
「俺のダチ、ほら?前に勉強教えにきた成と正樹!  
 あいつら二人ともが恋人出来て浮かれてて、プレゼント買うのに俺をつき合わすから仕方なくだな……」  
 
恋人だ、などと嬉しそうに言われ照れて混乱した俺の口から反射的に、今の今まで自分に言い聞かせていた言い訳が溢れてくる。  
その俺の言い訳を一通り聞いてジルは、嬉しそうに輝かしていた瞳をふせ、  
俺に手渡されたプレゼントを俺に押し戻すように無理やりに握らせ返すと、  
「そ……  
 こんなに一緒に居て、私は銀ちゃんの事……  
 ずっと好きなのに…銀ちゃんは私を好きになってくれないんだ……」  
と小さく呟くと、  
サイドボードの上に飾ってあった、例のランプを取ると、  
「じゃあ、居ても仕方ないよね?」  
ちょっと待て?  
それって?  
頭の切り替えが状況に追い付かない俺を置いて、ジルは  
「バイバイ…」  
一度振り向いて、リビングから出て  
「ちょ…」  
バタンと、ちょっと待てと俺が言う間もなく、玄関が開閉する音が聞こえる。  
 
「……いや、冗談だろ?」  
いつもの悪ふざけに決まっている。  
どうせ、玄関を中から開け締めして俺の様子を廊下で伺っ  
ているに決まっている。  
俺は回らない頭、重い手足にもどかしさを感じながら、  
「そういうタチ悪い冗談は良そうぜ」  
俺はリビングから顔の覗かせ、廊下を覗き見る。  
 
俺の覗いた廊下はそろそろ、日が沈む時間の為に薄暗くなり静まり返っている。  
「……マジかよ」  
誰も居ない廊下の静けさに、全身の力を吸い取られるように膝から力が抜け笑いながら崩れようとしていく。  
「…っ」  
俺は廊下の壁を掴むと、その足がそのまま崩れるのを防ぎ、堪える。  
廊下のどこにもジルが居ない……  
俺がくだくだと言ってたから、愛想をつかした?  
でも……  
頭ん中読めるんだから知ってるだろ?  
俺の気持ちは?  
なのに……  
「なんでだよっ!!」  
今かしか崩れるのを堪えたばかりだったはずなのに、それが嘘のように喪失感が反射的に足を動かし廊下を蹴り、  
玄関まで走り、そのまま扉を開け、そこを走り抜け……  
 
ガンッ!  
 
と、俺は何かに躓きマンションの外廊下を壁にしこたま頭を打ちつけた。  
たんこぶの出来た額の痛みを堪え、躓いた原因を確かめると  
「遅い…」  
玄関の下に延ばされた褐色のすらりとした足……  
「遅い…遅い…おっそーい」  
ジルだ……しかも、何やらぼやいている……  
どうやら、最初の俺の予想…隠れて様子を見ているは当たってたらしい、  
だた、廊下か玄関の外かの違いだけで……  
安心し額の痛みも忘れへたり込む、  
その間にも、俺に浴びせられるジルのぼやきは序々に言葉が強くなり、  
「私が出てから、銀ちゃんが追いかけて出て来るまで1分16秒もたってるっ!  
 普通は部屋出ちゃう前に止めるでしょっ?普通はっ?」  
文句に変わり、  
そして、  
「これはちょと罰ゲームが必要ね」  
……言いがかりになってきた……  
 
「ここで私を満足させなさいっ!!」  
「はぁ?」  
……言いがかりを始めた時から予想はついてたが、またとんでも無いことをジルが言い出した……  
「だ・か・ら……  
 ここでしてって」  
「……アホか…  
 そんなことして、誰かに見られ……」  
さすがに人に見られたら…いや、声や音を聞かれただけでマズイ……それ以前に、よく考えると慣れてしまって違和感を忘れてたが、ジルは部屋着、  
つまり、いつも通りの水着同然の踊り子のような服……  
この服を見られただけでマズイじゃないか?  
そう思って、却下しさっさと部屋に戻るように言おうとした俺の口を言葉が最後まで行かない内に、ジルが口付けして塞ぐ。  
 
「せっかく、こんなイイ事で許してあげるって言ってるのに断ると…本当に出てっちゃうぞ?」  
俺の唇から唇を離したジルは、微笑みさっさと俺の服を脱がしにかかる。  
もうどうでも良いや……  
経験上、こうなったら何を言っても無駄だ。  
ほとんど自棄に諦めた俺は、人が通らない事だけを祈ると俺のセータを丁度頭から抜いて脱がし終わったジルを抱き締めながら、彼女の腰にかかった布の前垂れを止めた紐を解いた。  
 
ぱさり  
と、軽い音をたて俺の手から通路にジルの腰布が落ち、  
褐色の彼女の肌と白い下着が露になり、そのコントラストが俺の興奮を煽る。  
俺はジルを片手で抱き寄せ、  
空いた片手で、細い腰から丸みのある女性の躯を撫でまわしながらなぞっていく。  
「……ん」  
彼女の口から幽かな声が漏れ、  
その声に俺の股間がうずく。  
 
その疼きのもどかしさから来る苛立ちが、手が達した彼女の大きな胸を多少、乱暴に揉みしだかせる。  
彼女の柔らかい乳房に指が食い込み、手のひらには彼女のブラのすべすべした感触が伝わってくる。  
その心地良い感触が俺に伝わり、  
序々に彼女の躯に熱がこもり、愛撫をせがむように次第と俺の手の中で揺れはじめる。  
俺はその要求に答え、  
彼女を支えるもう一方の手も、彼女を落としてしまわない程度の範囲で動かし、  
彼女のショーツの中に後ろから手を差し入れると、太股の内で閉じて合わさる秘肉を指で開き、その中に指を入れると蠢かす、  
「あん……ぁん……」  
俺の両の手の動きの度、  
ジルの体から汗と甘い体臭が吹き出し、  
その口から呻き声が漏れ出す。  
声を聞かれたらマズイという状況でのその声が、更に俺に妙な興奮を促す。  
 
夢中になって俺が指を彼女のショーツの中で動かすと、  
くちゅり…  
くちゅり…  
と、濡れ始めてきた彼女の音が指先から聞こえてくる。  
気のせいか、その音もいつもよりも大きいような気がする……  
異様な興奮とプレッシャーに動悸と呼吸が自然と大きくなり頭が沸騰し、モノははちきれんばかりに痛いほど大きくズボンを押し上げているが、  
さすがに最後の一線を越える踏ん切りがつかない。  
そんな俺にじれたのかジルは抱き締めた俺の手を解くと  
「床…冷たいから、今日は後ろから……ね」  
くるりと俺に背を向けると、  
ずるりとショーツを下げ壁に手をつき俺を誘う。  
傾きかけた陽に照らされた張りのある褐色の尻、  
そして、二つに丘に埋もれた蜜で濡れた秘裂の視覚的な刺激が、俺に最後の後押しをした。  
 
俺は、鼻息を一つ大きくつくと、  
ズボンから先走りに濡れいきり立った自分のモノを取り出し、ジルに後ろから覆い被さるように体を重ねると、  
両手で彼女の胸を掴み、そのたっぷりした重量を手のひらに感じながら彼女を支えて、  
「あ、あっい……あぁ!」  
ゆっくりと、彼女の中に押し入っていった。  
 
後ろから抱きすくめ挿入した俺はゆっくりと腰を動かしながら、ジルのうなじに吸い付き、  
「あ…ん」  
舌で嘗めながら唇を耳にずらして、甘噛みした。  
「はぁんっ」  
耳への刺激にジルの蜜の量が増え洪水となり、俺のズボンを湿らせ、俺の腰の動きを滑らかにする。  
「あ…あっ……いい…」  
滑らかに加速していく俺の動きに、ジルは腰がくねり崩れ落ちそうになる躯を、鼻にかかった甘い声を漏らしながら壁に捕まり支える。  
俺はその間にも吸い付くような彼女の内壁の抵抗に抗い、突き上げる。  
 
その激しさにジルが顔をのけ反らせ、声を上げ  
「あー、あぁ」  
ようとした時、夢中で忘れかけていたが状況を思い出し、  
マズイと思うと同時に、俺は彼女の口に抑え声を遮る。  
「……っ」  
彼女の声を遮った代償に歯が手のひらに食い込み微かに痛み、歯を食いしばって息を吐き出した。  
「銀ちゃん、大丈夫?」  
その俺を気遣ってジルが声を掛けてくれるが、  
俺は心配してくれた事に対して感じるよりもジルが今、必死で俺がしているのに、俺の心配を出来る…その余裕がある。  
その事に何となく…いや、はっきりとしたショックを受け、  
ムキになってガムシャラに彼女を激しく突き上げた。  
「ちょ…あぅ……んぐぅ…」  
口を押さえられながら激しくされ、ジルの少し苦しげな声が聞こえるが、俺は構う精神的な余裕も無くそのまま達した。  
 
 
ー・ー・ー・エピローグ・ー・ー・ー  
「済まん」  
事が終わり部屋に戻り、冷静になった俺は今ジルに土下座している。  
「銀ちゃんは、ああいう風に無茶苦茶なやり方されて女の子が気持ち良いって思っているんだ〜」  
すでにジルの嫌味は30分ほど続いてる。  
「思ってません…御免なさい」  
その間俺はひたすら謝っている。  
今回は俺が悪いと思う……  
やり始めた原因は兎も角……  
「あっ!今、原因は私に有るとか考えたっ」  
「……済みません…ちょっと考えました」  
心が読めるんだから、俺が反省してるの判るんだしいい加減に許してくれても……  
そう俺が思った時、  
「確かに、これ以上言っても無駄みたいだし、時間がもったいないね」  
土下座してた俺の前にどかっと座り込んでいたジルが立ち上がると俺を見下ろし、  
「で、今日のデートプランは?」  
「へ?」  
いきなりの言葉に彼女を見上げた俺の目に、  
「恋人とクリスマスでプレゼントしか用意して無いわけじゃないんでしょ?」  
かなり期待しているという事が一目で解るほど、瞳を輝かせているジルが映る。  
 
……が、  
「考えてませんでした、ご免なさい」  
本気でプレゼントを渡すことで一杯一杯で忘れてた。  
「そう…じゃあ仕方ないわね」  
再度、頭を下げ土下座する俺にジルは優しい声で、  
「じゃあ、代わりに今夜はほんっっっっとに私が満足するまで銀ちゃんには頑張ってもらうからね」  
とんでもなく恐ろしい提案をし、  
「ちょ…」  
ちょっと待てと言いかけた俺の襟をつかみ上げ、喉を服で締め無理やり言葉を制止すると、  
そのまま占領した自分のベッドルームまで俺を引きずって連れていった。  
 
結局、俺は翌日の正午にジルが空腹を訴えるまで解放される事はなかった……  
 
 

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