「雅彦ったら、もう帰ってきてるのかしら」
奈美は帰宅してすぐ、弟の部屋が賑やかな事に気がついた。玄関には見慣れない靴が
何足もあって、それが来客中だという事を示している。
「珍しいわね。あの子がこんなに友達を連れてくるなんて」
制服のスカートをすっと翻しながら、奈美は自室へと向かう。規律が厳しい女子高に通う
彼女の装いは、一昔前の女子高生然としており、清楚な色香に溢れていた。まだ穢れを
知らぬ乙女──奈美には、そんな表現が良く似合う。そして、その容貌に相応しく、慈愛に
満ちた母性と自己犠牲の精神が、彼女には備わっていた。
(ん?どうしたんだろう)
階段を上り、弟の自室の前まで来た時だった。何か争うような物音と怒声が、奈美の耳に
届いたのは──
「どうしてくれるんだよ、雅彦」
「ご、ごめんよ」
誰かが弟を責めている──それに気づき、自室へ戻ろうとしていた奈美の足が止まった。
雅彦は怯えているようだった。声の調子でそれと分かる。
「俺のお気に入りパンツだったのになあ」
「本当にゴメン・・・弁償するよ」
「弁償できないんだよ!これは、世界でたったひとつの手作りパンツ、その名もスペシャラ
イズBVDなんだぞ!」
弟を詰っているのは、おそらく来客中の友人だろう。頭の良い奈美は先ほど交わされた会話
の中から、いきさつこそ分からないが、弟が何らかの手違いで友人の物品を破損したのだと
理解した。それもどういった訳か、壊された物はパンツらしい。
(放っておくわけにもいかないわね)
中学生になった弟の交友関係に割って入ろうとは思わないが、姉として知らん顔も出来ない
ので、奈美は自室へは戻らずに弟の部屋のドアをノックした。何を壊したかは知らないが、
話せばきっと分かってくれる。この時まで、奈美はまだ楽観的だった。
「お邪魔するわよ、雅彦」
ドアを開けると、雅彦を中心にガラの悪そうな少年たちが三人ほど居た。
「ねえさん」
雅彦が助けを乞うような視線を奈美へ向けた。友人にこっぴどくとっちめられたのか、目
には涙を浮かべている。
「あんた、雅彦のお姉さん?」
「そうよ。ちょっと、通りすがりに争うような声を聞いたもんだから、覗いてみたの」
三人の中でもっともガラの悪そうな少年が、破れたパンツを握り締めながら奈美を見据え
た。争いの元と思しきパンツは股裂き状態で破れており、男の急所を隠すためには何の役
にも立ちそうにない。しかし、どういった訳でこうなったのであろうか。
「何があったの?」
「いや・・・雅彦が俺のパンツを破ってさあ・・・」
奈美が問いかけると、少年は破れたパンツを左右に引き伸ばして見せた。パンツの上方に
は小さく、佐藤と書いてある。おそらく、彼の名前であろう。
「どうやって破ったの?雅彦」
「・・・佐藤くんに・・・パンツを頭から穿けって言われて」
「だからって、破れとは言ってないぜ」
話を整理すると、この佐藤という少年が雅彦に頭からパンツを穿けと命令したらしい。気弱な
彼はそれを実行し、パンツを破いてしまった。当たり前である。パンツは足から穿くもので、頭
から被るものではない(一部、そういった愛好家も存在するが)。これだけを見ると、弟は無理
難題を押し付けられ、いじめられている──と、奈美の目には映った。
「俺は無理って言ったんですよ。でも、佐藤のヤツが・・・」
奈美の登場で気が引けたのか、雅彦の隣に居る少年が佐藤を非難するような発言をした。
もっとも、にやけ面をしているので、内心ではどう思っているかは分からない。ちなみに学生服
の名札を見ると、山田と書かれている。
「そのパンツって、高価なものなの?」
奈美が佐藤に向かって問う。そこへもう一人の、名札には加藤とある少年が言葉を繋いだ。
「なんでも特別なモンらしいッスよ。職人が一糸、一糸紡いだBVDだって聞いてます。時価、
五万円はくだらないそうです」
「そ、そんなに?」
その値が高いことを聞き、破れパンツをもう一度見る奈美。そう言われれば、どこか高貴な
雰囲気を持ったパンツかも──この時彼女は、そう思ったという。
「どうしよう、ねえさん」
「どうしよう・・・かしら」
たちまち困窮する姉弟。二人とも学生の身であり、とても五万円という大金は捻出でき
そうにない。そして、いい加減困り果てていると──
「何なら、お姉さんのパンツと交換ってのはどうだ?」
不意に山田が、パンツを破られた佐藤に向かって、そう言ったのである。
「お姉さんのパンツって・・・オマエ」
佐藤が奈美をあらためて見据えてから、生唾を飲んだ。山田の言うところ──すなわち、
奈美に目前で下着を脱がせるという目論見が、理解できたからだ。名門女子高の制服に
包まれている奈美の肢体は、きっと自分たちにはまばゆいに違いない。三人の悪ガキ
たちはそう思っている。
「五万円もする物を壊されたんだぜ。パンツどころか素っ裸を見せてもらっても、まだおつり
がくるんじゃないのか?」
「そ、そうだな・・・」
山田が佐藤を煽った。加藤とて考えは同じのようで、無言ではあるがぐっと体を乗り出して
事態を見守っている。もう、彼ら三人の頭の中には、白い素肌をさらす奈美の姿が浮かん
でいるに違いなかった。
「そ、そんな・・・」
じり・・・と後ずさる奈美。三人のワルは、弟の不始末の落とし前をつけろと言っている。だが、
もしここでこの素肌をさらしたら、どうなってしまうのか──考えるだに恐ろしい事である。
「だったら、弁償しろよ、このBVD」
「そうだ!BVD!]
「B・V・D!B・V・D!」
佐藤、山田、それに加藤までもが追随し奈美を槍玉に上げた。その時、哀れにも雅彦は
自らが招いた姉の窮状を、ただただ黙って見ているしかなかったのである・・・
「・・・あ、あたしのパンツで勘弁してくれるのね?」
胸の前で手を合わせ、哀れみを乞うような仕草を見せる奈美。嫌だが仕方が無い──
五万円というお金は無いし、これが原因で雅彦が──弟が彼らにいじめられては可哀想
だという気持ちもあった。
「ぬ、脱ぐわ・・・」
セーラー服のリボンに手をかける奈美。すると山田が、
「せっかくだから壇上でやってもらおうか。ちょうど、雅彦のベッドがあるし」
と、窓際のベッドを指差した。奈美を見上げるような形を取りたいのか、ストリッパーと
観客の関係を、作り上げようというのだ。
「そ、そんな・・・」
「嫌だったら、B・V・D!だぞ」
「わ、分かったわ」
悔しさに唇をかみ締め、ベッドに向かう奈美。年下の少年たちから受ける屈辱で、今にも
泣き出しそうだったが、それでも気丈に壇上へと立つ。
「おい、オマエら拍手しろ。それ、B・V・D!B・VD!]
「B・V・D!B・VD!」
ワルツのリズムが打たれると、いよいよ奈美が着ている物を脱ぎ始めた。まずは、名門女
子高の銘が打たれた、セーラー服の胸元を彩るリボンが落とされ、ストリップショウの第
一幕を飾る。
「おい、オマエの姉さん、何て名前?」
すっかりと調子に乗った佐藤が雅彦に問う。泣き出しそうなのは弟も同じだったが、窮状に
あるのは彼とて同じ。だから、答えずにはいられなかった。
「・・・奈美」
「そうか、いい名前だな。おい、奈美、もっと楽しそうに脱げよ!」
「B・V・D!B・V・D!を、忘れるなよ、奈美!」
ワルたちのリクエストを拒むことは出来ない奈美は、言われるがままに泣き笑いのような
表情を作った。目に涙をいっぱいたゆませながら──
(どうしてこんな目に遭わなければいけないの)
弟の友人──否、弟を貶めた悪党どもを前にして素肌をさらす羽目となった奈美の胸中
には、忸怩たるものがあったに違いない。しかし、これも弟のためを思えばこそと言い聞か
せて、奈美はにこやかに衣服を剥いだ。
「おお、ブラジャーがお目見えしたぜ。案外、おっぱい大きいな」
セーラー服を脱いだ時、今まで寡黙だった加藤がずい、と前に進み出て、ほどよく育った
奈美の乳房に見入った。そのサイズは下品なほど大きくはないが、それなりに実っている。
「おっぱい揺らせよ、奈美!B・V・D!B・V・D!」
「腰をグラインドさせろって!ホラ、B・V・D!B・V・D!」
そんな野次が飛ぶと、奈美は両手を頭の後ろで組んで、胸を揺らしながら腰を振った。
もちろん動きはぎこちないのだが、どこかで見たストリッパーの動きを頭の中でイメージ
しているらしく、その懸命さが伝わってくる。
(は、恥ずかしくて死にそう!)
奈美が立っている位置からは、彼女の下半身を覗き込むように三人の少年の姿が見て
とれる。無論、全員が全員、奈美の半裸となった上半身と、スカートの中身を見ているの
だ。名門女子高に通う弟思いの姉は、生まれて初めて味わう恥辱で、頬を真っ赤に染め
ている。
「そろそろスカートにいけよ。笑顔を忘れるなよ、奈美。B・V・D!」
加藤が利いた風な口を利き始めた。実質的な被害を蒙ったのは、パンツを破られた佐藤で
あるにも関わらず、彼はすっかりこのストリップショウの主催者面になっている。
「ぬ・・・脱ぎます」
スカートのファスナーに指がかかると、さすがに奈美も体が震えた。これを下に落とせば、
自分は完全に下着姿となってしまう。今さら、それも脱がない訳にはいかないだろうが、果
たして少年たちはそこで許してくれるのだろうか──ベッドの上で素肌をすべてさらしてし
まったら、私は──これまで以上の恐怖が、奈美を覆っている。
(それでも)
もう、脱がない訳にはいかない──身を包む恐怖を打ち払うかのようにして、奈美はスカー
トを静かにベッドの上へ落としてしまった。
「おお、パンティだ!オマエの姉さん、ずいぶんシンプルなパンティ穿いてるんだな」
加藤が雅彦の肩を抱き寄せ、感慨深げに言う。奈美のパンティは純白で、ヒップがすべて
包まれる機能性重視の物であった。股ぐりの上に小さなピンクのリボンがひとつ、他には
何の装飾も無い、清楚な名門女子高生に相応しいパンティである。
「オマンコの所にスジがある。やっぱり女って、やらしいな」
佐藤が鼻っ面を奈美の股間へと擦り付けんばかりに近づいて、その生々しい女の秘部の
造形に見入っている。パンティの生地に遊びが無いので、奈美の恥丘はナイロン地の薄
布に食いつかれ、形がはっきりと浮き上がっていた。
「あ、あんまり近づかないで・・・」
佐藤の鼻息を秘部で感じ、思わず腰を引く奈美。その声は弱々しく、全身は今にも崩れ落
ちんばかりに震えている。気を抜けば、失神してしまいそうだった。
「足、広げろよ。B・V・D・・・」
「ああ・・・」
奈美は佐藤に乞われ、しずしずと両足を肩幅の位置まで広げる。手は相変わらず頭の後ろ
で組まれ、傍目に見ても成す術が無いといった有り様だった。
「ちょっと触らせてもらうぞ。脱いだだけじゃあ、とても五万円には及ばないからな」
「ああッ!いやあ・・・」
佐藤の指が返した刀の様に、下着越しに奈美の割れ目をなぞる。すると、わずかに若草の
茂るかさついた感触が得られた。
「大人だな、奈美・・・もう、マン毛が生えてるんだな」
指を二度、三度と割れ目へ食いつかせ、悦に入る佐藤。少し力を入れれば、彼も知らない
女の園へ、指がめり込んでいきそうだった。
「やめて・・・触るのは許して」
奈美は涙ながらに哀願する。実は、彼女はまだ男を知らぬ無垢な体であった。そのため、異
性の指をそこに招いたこともなく、陰裂をなぞられる感触がおぞましくて仕方ない。今までこら
えてきた涙が溢れても、致し方ないと言える。それに対し、佐藤はどこまでも無慈悲だった。
「黙ってろ、B・V・D!B・V・D!」
もはや夢遊病者のように、奈美の陰部を指でこすり続ける少年は、股間を激しく隆起させ、血
気にはやっていた。今にも奈美に襲い掛かり、思うが侭にその肢体を蹂躙しかねない勢いで
ある。すると、たまりかねたのか、後ろに居た加藤と山田が、
「おい。そろそろ、全部脱いでもらおうぜ」
「そうだよ。お前だけ楽しむな」
そう言って、佐藤を奈美から引き離したのであった。
「いよいよ本番か」
佐藤が下卑た笑いを奈美に向ける。いや、それは山田も加藤も同じであった。メインイベ
ントが目前に迫り、三人のワルは一様に股間を熱くさせ、その時を待っている。
「・・・ぐすっ」
頬に涙の跡を幾筋も残し、奈美は無言でブラジャーのホックに手をかけていた。だが、や
はり乳房をさらす踏ん切りがつかないらしく、ホックを外した後はカップを手で押さえたまま、
遣る瀬がないような顔をしている。するとすぐさま、
「B・V・D!B・V・D!」
という言葉が飛んだ。奈美は、それを言われれば脱がざるを得ない。そうして、哀れにも
彼女はブラジャーのカップを、乳房から取ったのである。
「おお、生チチだ」
「先っちょがピンクだぜ、いやらしいなあ!」
「ブラ取るときにちょっと揺れたよな。たまんねえぜ」
三人のワルは、口々に奈美のバストへ賞賛の言葉を捧げた。たとえ彼らが女を知らぬ童貞
少年であることを差し引いても、奈美の二つの隆起はほのかな色香に包まれ、賛美を受け
ても不思議はない物であった。だが、褒められれば褒められるほど、それが羞恥となって奈
美に跳ね返ってくるのだ。
「・・・あ、あの・・・そんなに見ないで」
気をつけの姿勢を取ったまま、奈美は訴えかけた。本当は胸を隠したいが、そうなればまた
B・V・D!攻撃にさらされる事となる。奈美自身も、この言葉がもう催眠術にいざなうキーワ
ードの如くなりつつあるので、三人の意向に沿わない事が出来なくなっていた。
「次はパンティだ。いいか奈美、パンティ脱いだら、すぐに俺に渡すんだ。そんで、オマンコ
をかっぴろげるんだぞ。嫌がったら、B・V・D!だからな」
「・・・はい」
興奮気味の佐藤に促され、頷く奈美。もう、逆らう気力も無い。
「・・・いきます」
目を伏せ、羞恥の表情のままパンティに手をかける奈美。まごつけば余計に恥を感じること
になると思ったのか、最後の一枚は勢い良く脱いでしまった。
足首からパンティを抜くと、佐藤は早速とばかりに、
「パンティを渡せ」
と、まだ体温が残っている下着を奪い去った。そこへ、加藤と山田が、
「奈美、オマンコかっぴろげろよ」
「自分で出来なかったら、俺たちがやってもいいんだぜ」
と、すっかり生まれたままの姿となった、奈美をたきつけたのである。
「は・・・はい」
少しだけぐずついた後、奈美は静かにベッドへ腰を下ろした。そして、両足を左右に開き、
若草のかげりも艶めく女陰も、すべて彼らの前へと投げ出す形となる。
「ああ・・・」
恥ずかしい──それは言葉にならなかった。しかし、奈美はゆっくりと下半身に指を這わ
せ、手探りで女の園に見当をつける。
「オマンコ、開けよ・・・B・V・D!」
「・・・はい」
自ら指を逆V字にかたどり、女唇をぎゅっと左右に掻き分ける奈美。生の女肉が開き、その
艶かしさが三人の目を釘付けにする。
「す・・・すげえ」
「俺、実はオマンコ初めて見るんだ・・・」
「バカ、俺もだよ」
奈美の指先には力が込められ、ぬらつく花弁を押し開いていた。もう、これ以上彼女には
さらす場所は無い。女のすべてを、ご開帳していた。
「ああ、そんなに・・真剣に・・・見ないで・・・ぇ・・・」
女穴がジンと疼いている──奈美は女陰をさらしながら、そう考えていた。こんな事は生
まれて初めて味わう複雑な気分だった。
『B・V・D!B・V・D!』
隣り合う姉の部屋から聞こえるこの言葉を、雅彦は自室で一人聞いている。
『奈美、足を開け!B・V・D!B・V・D!』
『もっと、ケツ触れってばよ。B・V・D!』
『俺、フェラチオしてもらいたいな、B・V・D!』
先ほど、姉は佐藤たち三人に連れられて行った。その直後から、壁の向こうではB・V・D!
が連呼され続けている。雅彦はこれが何を意味しているのかが分かっていた。しかし、体
が動かない。
「姉さん・・・」
何度そうやって呟いただろう。助けに来ない気弱な弟を、彼女は呪っているのだろうかと、
膝を抱えて蹲りながら、雅彦は考える。そして、また──
『B・V・D!B・V・D!』
奈美の部屋からは、その言葉が聞こえてくるのであった。
おしまい