「まったくもう、使えないんだから。
敬介君、このバイト始めてもうそろそろ一ヶ月でしょう?
まだこんな事もメモ帳見ながらでしか出来ないの?」
手厳しい指導と、的確な批判。
確かにその少年、石上敬介の物覚えは悪かった。
友人の紹介で始めた、大型量販店の倉庫内整理のアルバイト。
体力勝負だと聞いていたのに、人員の都合からか、
彼は入荷チェックや在庫数の管理業務など、主に書類仕事ばかりやらされていた。
本来そうしたルーティンワークは、石上の得意とするところではない。
ましてや、どの商品もチェック方法や管理方式が一律ならまだ覚えやすいものを、
よく似ている別々の商品で、ハンドスキャナーの操作が微妙に違ってきたりすると
とてもではないが、メモでも見ながらでなければ取り扱えなかった。
スムーズに書類を仕上げられない彼に対して、
先輩である木下恵美は、常に辛口な注意、叱咤を繰り返していた。
背は低いくせに、銀縁の眼鏡の奥から睨み付けるその瞳は
まるで遥か上から見下ろしてくる、先輩か上司そのもののようだった。
事実、彼女はここでは先輩にあたる。
恵美の方が石上より、二ヶ月早くこのバイトを始めていたのだから。
「俺こんなん覚えきれないっスよ、木下さん。
マネージャーに頼んで、運搬の方に回してもらえないですかね。
もーちょい適材適所っつー概念を……」
「泣き言言わないのっ。
この程度の事も覚えられなきゃ、試験も赤点よ。進級出来なくても良いの?
そうなったらあなた、私と同じ学年になるのよ?」
そうなのだ。
この手厳しい木下恵美先輩は、石上敬介にとって実は年下なのだ。
二人とも同じ高校、同じ部活に在籍する、先輩後輩の関係だった。
石上は二年生、恵美は一年生だ。
しかしアルバイトにおいては、そんな事は関係無い。
先にそのバイトを始めた方が、後から入ってきた者に仕事を教える。
そこに年齢など関係無い。教えられる者が教えるだけだ。
そのため二人は、学校とバイト先とで、先輩後輩の立場が逆転していた。
翌日、二人の通う高校、その美術室の前で、放課後二人は鉢合わせた。
「……おはようございます、石上先輩」
「あー、おはよう。昨日はよくもコキ使ってくれたな、恵美」
「そ、それは……先輩が、要領悪いから……」
「あぁん?」
昨日と違って、銀縁の丸っこい眼鏡の奥の瞳は、報復に怯える子犬のように潤んでいた。
鍵を開けて、二人並んで美術室に入室する。
職員室で顧問から受け取ってきた、部活用の出席簿に記入し、机上に放り投げる。
美術準備室から30cm四方の木の塊を二個持ってくると、
次に持参した鞄の中から、石上は彫刻刀のセットを取り出した。
木の塊は、美術部員が今度の県の展覧会に出品する予定の作品だった。
片方の作品、石上の製作しているミニチュアの胸像は、
連日の作業のお陰で既に完成間近だった。
一方恵美の方はと言うと、まだあまり作業が進んでいない。
「遅ぇぞ、恵美。チマチマ削るように彫ってないで、
時には抉るように大胆に掘り込む事も、作業効率アップの秘訣だぞ」
「し、仕方ないじゃないですかぁっ。
私、先輩と違って体力も腕力も無いから、彫るだけでも一苦労なのに……」
「泣き言言わねぇのっ。
この程度のサイズも彫れなきゃ、部内選考落ちだぞ。出品出来なくても良いのか?
そうなったらお前、お前……えーと、兎に角アレだぞ、アレ」
わざと嫌味ったらしく、昨日の恵美の台詞をなぞってみせるが、
最後の言葉が思いつかず、石上は結論を濁した。
そこへ、卓球部員の男子が顔を出しに来た。
卓球部の部室は、廊下を挟んで美術室の真向かいにあった。
この男子は石上のクラスメートで、バイトを紹介したのも彼だった。
何も知らなかった石上は二つ返事でバイトを引き受け、
そこで後輩である筈の恵美と遭遇、立場の逆転を味わう事となったのだ。
「よう敬介、木下『先輩』とは仲良くやってるか?」
友人のその言葉に、石上は少し悔しそうな顔を向けた。
ちらりと横を見ると、恵美が口元を手で隠して、クスクスと笑っているのがわかる。
それを咎めようとする石上を邪魔するかのように、友人は言葉を続ける。
「それにしても、お前が美術部員ってのは、相変わらず目に慣れねぇなぁ。
お前なら陸上部でもバスケ部でも、女にモテる部活動がいくらでも出来たろ?」
「……ったく、その質問、去年からずっとだな。
たまたま俺が美術に興味があったら、いけないのかよ」
石上は、彫刻や造形といった、立体的な芸術に関心があった。
男子ならば誰しも一度はプラモデルを作るものだが、彼にとってはその延長だった。
また、運動ならば何でもそつなくこなす代わりに、
これと言って最も好き、最も得意と言えるスポーツも無かったので、
彼は高校進学と同時に、迷わず美術部に入部したのだった。
華奢な割りに引き締まった、彼の細身な筋肉と体力は、彫刻に向いてもいた。
しかし卓球部員は、あまり納得のいかない様子だった。
彼にとって……と言うより、大多数の男子にとって、
あえて文科系部に所属する男子の気持ちなど、とてもではないが理解不能だった。
「とりあえず二人きりだからって、部室で変な事すんじゃねぇぞ? じゃなっ」
それだけ言うと、卓球部員はさっさと自分の部室に戻っていった。
「何なんだ、アイツは……ったく、何が変な事すんな、だよ」
石上は彫刻刀を机に置くと、恵美の方を振り向いた。
「するに決まってんじゃん、なぁ?」
恵美は顔を赤らめ、と同時に、少し肩を強張らせた。
途端に目が泳ぎ始め、困ったように俯きながら、上目遣いで石上を見上げる。
「……今日も、するんですか?」
「ったりめぇじゃん。恒例だろ? ちゃんとゴムつけっから」
石上は恵美を美術準備室に連れて行くと、中から鍵をかけた。
準備室の中は、石膏像や木材や、部員達の描いた油絵が保管されていた。
と言っても、部員達は実際は滅多に部活に顔を出さない。
この高校の美術部は出席日数の管理が甘く、先程石上が部室の机の上に置いた
出席簿の、自分の名前の欄に丸をつければ、それで出席扱いになるのだ。
出席簿を取ってくるのは、言われなくても部活に出るような真面目な生徒の役割で、
つまりは毎日、出席簿を持ってくるのは石上か恵美の、どちらかの仕事になっていた。
他の部員達は数分遅れで、それぞれまばらに入室して、勝手に出席簿をつけていくだけだ。
準備室に作品が保管されているのも、その殆どは卒業生の置いていった物だった。
先程石上の友人が『二人きり』と言ったのは、こういう事なのだ。
ちらほらと出欠だけつけに来る部員を除けば、
下校時刻まで部室に居続けるのは、彼ら二人しかいないのだ。
本当は、彫刻よりも絵画の方が好きな恵美も、
あまり今部活に真面目に出席したいとは思っていなかった。
展覧会が終わって、活動内容が油彩画にでも移行してから、真面目に来るつもりだった。
しかし、先輩である石上がバイト先に現れ、その教育担当を任された事がきっかけで
彼と親密になり、いつしか彼と一緒にいるためだけに、部活に来るようになっていた。
準備室に置かれた作業台の上に、恵美は腰をおろした。
ここはもはや彼女の席、彼女の定位置と言っても過言ではなかった。
擦りガラスの窓から差し込む西日が、銀縁の眼鏡を輝かせる。
恵美は顔を背けたが、それは眩しさからか、それとも恥じらいからか、どっちつかずだった。
セーラー服のスカーフを解かれ、小さなボタンを一つ一つ外され、
石上のなすがままになる。
解かれたスカーフは首にひっかけられたままだし、
セーラー服も勿論、完全に脱がされてはいない。
しかし胸が露出する程度にははだけられ、しかもブラジャーだけは完全に取り払われる。
それは、石上の趣味であると同時に、作戦でもあった。
着衣のままで行為に及ぶ事自体を彼が好むし、また恵美にとっても、
学校で完全な全裸にされるよりは、半裸の方が抵抗が少なかったのだ。
無駄な悪足掻きとも言えるが、半裸なら一応、仮に誰かに見咎められても
咄嗟に後ろをむいて、なるべくコンパクトな挙動でボタンを閉めれば
さも何もしていなかったかのような素振りで誤魔化せるかも、という余地が残っていた。
その、無いに等しい余地を敢えて残してやる事が、石上の計算だった。
全裸よりもガードが堅いように見えるが、実はその逆。
逃げ道を残してやる事で、全裸よりも遥かにガードが甘くなっているのだ。
この状態なればこそ、どんな要求でも受け入れてもらえる。
下校時刻までノーパンで過ごせと要求した事もあったが、それを受け入れてもらえたのも
スカートがあるから、傍目にはバレないで済むという隙があったからだ。
「さて、と。今日は恵美ちゃんには、何してもらおっかなぁと」
「へ、変態……」
石上は新品の絵筆を取り出すと、乾いた毛先を恵美の乳首に当てた。
そのまま乳を輪をなぞる。
決して力をこめず、あくまで毛の先っぽ、わずか1mmでくすぐるように撫でる。
「ぃ、は……」
恵美は肩を打ち震わせ、快感に耐えた。
細かい毛先が、母乳の出る穴の、中まで進入してきそうだ。
彼女の控えめな乳首は、少しずつプックリと硬くなっていった。
石上は次に、木材を磨くための研磨機の横にある、
掃除用の使い古した歯ブラシを取り出した。
いつごろからあるのかわからないが、これは元々、誰かが自分の歯を磨いていたものだ。
それが古くなり、使わなくなったから、細かい塵をとるために
こうして部活動で使いまわされているのだ。
雑菌だらけで汚いだろうが、下着の上からならば問題は無い。
石上は恵美のパンティの上から、その歯ブラシでスジをなぞった。
「い、いひがみ先輩ぃ……」
布地の上からゴシゴシと陰部をこすられ、
徐々に恵美のクリトリスが肥大化してくる。
湿り気が徐々に縦に広がり、次第にそれは『湿っている』というよりも
もはや『濡れている』と言って差し支えない程になる。
石上は彼女にスカートを履かせたままで、パンティだけ脱がせた。
何をするつもりかと訝しげに見守っている恵美に、石上は絵筆を見せつけた。
「何本入ると思う?」
「なっ……そんなっ、神聖な絵の道具をそんな事に……」
「今更だろ。キャンパスで角オナニーもした女が、何言ってんだよ」
「それは、先輩が命令するから……あ」
有無を言わせず、石上は恵美の膣の中に、先程まで恵美の乳首を責め立てていた
絵筆を、まずは一本挿入してみた。
普段石上のモノを咥えこんでいるだけあって、さすがに筆の一本は問題無く収まるようだ。
それでも少しキツさは感じたので、二本目でもう彼女は痛がるかもしれない。
絵筆は肉棒より硬質で、柔らかい外皮も無いので、単純に痛いような気もする。
とりあえず、細い面相筆なら大丈夫だろうと、二本目を挿入しみた。
その時、準備室のドアをノックする音が聞こえた。
静寂の中にあっては、その音が妙に大きく響き渡る。
「誰かいるの? 活動するなら、準備室にこもってないで
ちゃんと部室の机の上でしなさい」
それは、顧問の女教師の声だった。
「……やっべ、ウチの馬鹿顧問、今日は早めに来たな」
「いつもは職員会議だとか何とか理由つけて、閉めまで来ないのに……
どうするんですか、先輩?」
恵美は手元に落ちていたブラジャーを掴み、急いで服を着ようとした。
顧問が来た以上は、これ以上情事は出来ない。
今すぐ制服を着て、カモフラージュに紙ヤスリでも持って出れば
作業の準備をしていたんです、と言い訳が立つ。
だが、石上はこんな事で恵美との楽しみを中断する気は無かった。
恵美の手からブラジャーを取り上げると、セーラー服のボタンだけ止めてやった。
パンティも履かせないどころか、そこには絵筆が挿入されたままだ。
「ちょっ、先輩……」
「良いから。このままで応対しようぜ。下手うたなきゃバレないって」
ニヤニヤ笑うその表情は、恵美を苛めて楽しんでいるのが明らかだった。
そして顧問ならば、準備室のスペアキーを持っている。
もたもたしていると、恵美は半裸の状態を見咎められてしまう。
「もうっ……恨みますよ、先輩!」
小さな声で毒づくと、恵美は急いでスカーフを締めなおし、
立ち上がってスカートを重力に任せて下ろした。
絵筆を抜きたかったが、いくら濡れているとは言え、
そんなにすんなりと抜ける程、恵美の器はガバガバではない。
落ち着いてゆっくりと抜いている暇等、無かった。
とりあえず直立さえしていれば、スカートで絵筆は隠れる。
がちゃり、ドアが開く。
「石上君に、木下さんね。
あなた達は真面目に出席してくれてるみたいだけど、作業はどうしたの?
道具なら部室の方に、もう出してあるみたいだったけど」
恵美は、スカートの下から絵筆の先が覗いていないか、
内心不安になりながら、平静を装って答えた。
気を抜くと、絵筆がズルズルと抜けそうになる。
「紙ヤスリを取りに来てただけですよ、先生」
「そ、なら良いわ」
恵美は、顧問が振り向いて部室に戻りかけた時、ほっと胸を撫で下ろした。
ノーブラの胸に、夏服の薄く柔らかい生地が擦れる。
歯ブラシと絵筆が作業台の上に置かれている事に、顧問が気付かなかったのは幸いだ。
だが、石上は事態をもっと面白くしようと思った。
ここで、すぐさま恵美が絵筆を抜いて、
パンティとブラジャーを身に着ければ、危機は完全に回避される。
にも関わらず、それでは面白くないと、独断で台詞を追加する。
「そうなんです、先生。で、ここでたまたま卒業していった先輩達の
素晴らしい絵の数々を見つけたので、木下と二人で見てたんですよ。
自分達の画風の参考にしたいと思いまして」
嘘だ。
石上は、立体芸術には興味があるが、平面には関心が無い。
元々絵画好きな恵美とは逆に、彼は絵画に何の関心も持っていなかった。
だが、彼の事をよく知らない顧問は、すっかりその言葉に騙される。
「わかったわ。二人とも、好きなだけそこで絵を見ていると良いわ。
参考に出来るところはどんどん盗んでいきなさい。
芸術は模倣の繰り返しによって生まれると言われているのですからね」
「はいっ、ありがとうございます、先生」
慌て、うろたえる恵美を尻目に、石上は準備室のドアを再び閉めた。
ただし今度は、さすがに顧問が部室の方にいるので、鍵はかけられない。
それに、相手がスペアキー持ちでは、鍵の意味も無い。
「ちょっと、せ、先輩……」
「心配すんなって。あいつは基本的に俺らに無関心だから、
こっちに入って来たりはしないよ。
それに、お前が声出さなきゃバレないだろ?」
まさしく、拷問に近いプレイの始まりだった。
どんなに感じようとも、恵美は喘ぎ声一つ漏らせない。
その後結局三十分程かけて、絵筆で膣を掻き回されたり、
歯ブラシで乳首を磨かれたり、挿入に本番までさせられてしまった。
挿入と言っても、激しく腰をぶつけ合うような代物では、音でバレてしまう。
後背位で、石上主導で、ゆっくりと前後に動いたり、
回転を加えたりといった程度のものだったので、テクはあったが
有効打たりえる一発が無く、恵美は中々イケずに、長く苦悶と快感に耐えた。
「よく声出さずに頑張ったな、恵美。
お陰で、顧問には多分バレてないよ」
「ひぇ、ひぇんぱいひぃ……(←「せ、先輩ぃ……」)
多分っれ……そんな……(←多分って……そんな……)」
まるで弱火でカレーをコトコト煮るかのように、
時間をかけて少しずつ崩されていった恵美は、チャームポイントの銀縁眼鏡に
涙を幾粒もポタポタとこぼして、愛しい先輩を恨めしげに眺めた。
そんな彼女の、瞳の辺りに石上は絵筆を持っていき、涙を掬い取る。
彼女の愛液と涙が入り混じって、絵の具を混ぜるのに丁度良い塩梅の水気だった。
「これで絵ぇ描いたら、瑞々しい良い絵が出来上がりそうだな?」
「……やっぱり、変態」
しかしそんな彼らも、バイトとなれば立場が逆転した。
平日の放課後、部室で散々苛められた仕返しをするかのように、
恵美は石上をコキ使う。
「ほらっ、敬介君! 入庫処理が終わったら、次はリテール入力でしょ?
その次は伝票のファイリングに、出庫入力に……
兎に角まだまだ仕事はいっぱい残ってるんだから、早く片付けようよっ」
恵美はバイトでは、セーラー服ではなく専用のエプロンをつけていた。
その下はバイト先から支給されている、使いまわしのワイシャツだった。
一方の石上は、運搬員でもないのに、運搬員と同じボロい作業着だ。
違うのは、運搬員と違って、事務仕事の多い彼は
手を保護するための手袋を装用していない、という点だけだった。
「人使い荒ぇよ、恵美。こんなん今日中に捌ききれるワケねぇじゃん」
「こら、ここでは『木下先輩』でしょ? タメ口も駄目ですからねっ。
私も手伝ってあげるから、早く済ませちゃいましょう」
毎日毎日、このパターンの繰り返しだ。
石上は、バイトで苛められる恨みを部活で返し、
恵美は、部活での苛めをバイトで払拭する。
自分が相手を苛めれば苛める程、次に自分に跳ね返ってくる苛めも悪化すると
お互いに頭では分かっているのに、中々手を緩める事が出来ない。
ここで石上をコキ使う事による、後の彼からの報復を考えると
恵美は少しばかり怖くなるやら、期待が高まるやら、複雑な気持ちにさせられた。
「ふぃーっ……奇跡だ、奇跡が起こった……」
死んでも片付かないと思っていた事務処理の山を、
恵美の助力のお陰もあって、何とか早めに片付ける事が出来た。
もっとも恵美にとっては、この程度の量は一人で十分捌けるし、
こんな事で頭を痛める石上の気持ちがわからないのだが。
その事を指摘すると、石上はいつも
「木下先輩が彫刻下手な事の方が、俺には理解出来ないっスよ」と茶化すのだった。
フラフラになりそうな顔で壁にもたれかかる石上に、
恵美は追い討ちの言葉をかけた。
「ヘタってる暇は無いわよ、敬介君。
まだまだやる事残ってるでしょ?」
「へ、やる事……って?
確かに5分後にまた搬入業者が来るけど、仕分けは俺らの仕事じゃないし
こっちに運ばれてくるまでには、まだ15分程時間が……」
しかし恵美は、有無を言わせず彼をラックの物陰にまで引っ張って行った。
どんな仕事をさせられるのかと困惑する石上の表情を無視して、
彼の作業着のチャックを、手早く下ろす。
「はぁあっ!? ちょ、木下先輩!」
「うろたえないの、馬鹿。ここなら人も滅多に来ないでしょ?
あと5分しか無いんだから、無駄な動きも言葉も省きましょ」
クールな銀縁眼鏡の奥の瞳は、さも経験の浅い年下を挑発するお姉さんのようだった。
どっちが年下だか、わかりゃしねぇ……。
聞こえるか聞こえないかのギリギリのボリュームで呟くと、
石上は彼女のフェラを黙って受け入れた。
裏筋を舐めあげ、カリと皮の境目を舌の先で穿り、
奥まで咥えこんだかと思うと、バキュームを交えつつ顔をスライドさせる。
ちゅぽんっ、と音を立てて、恵美の唇が石上の先端から離れる。
「先輩、何でいきなりこんな事するんスか……?」
「もうっ。敬介君ったら、本当鈍いんだから……
私が今まであなたに仕事を急かしてたのは、
こういう時間を少しでも作りたかったからでしょ」
尿道を舌の先で攻めながら、先走り汁を丹念に味わう。
その細かなアクションの一つ一つに、石上は身悶えしそうになる。
まさしく、優位に立つ女性と翻弄される後輩の男、といった風だ。
互いが互いに、先輩でもあり、後輩でもある。
この特異な関係を、石上も恵美も、いつまでも続けたいと思った。
無論、卒業してしまえば……或いはどちらかがバイトを辞めれば、それは叶わない。
それでも、このアンバランスな関係は、諦めきれない桃源郷だった。
石上は恵美のテクニックに降参し、彼女の口の中に全てをぶち撒けてしまった。
「ごほっ、けほっ……」
「だ、大丈夫っスか、先輩?」
口元を手で拭いながら、恵美は立ち上がって答えた。
「仕方ない、でしょ……服にかけられたら困るし」
やはり恵美は、背伸びしても石上には届かない。
せいぜいその胸板に凭れ掛かれる程度の身長だ。
しかし、それで良い。
誰も通りかからないのを良い事に、恵美は石上の胸に凭れ掛かった。
二人とも、最高の幸せを感じていた。
最後のその言葉は、どちらが口にしたのだろうか。
それはひょっとすると、二人とも……だったかもしれない。
「先輩……ずっとずっと、いつまでも一緒に、保守して下さいね」