「父上、母上、手前はもう、くじけそうです」
父母の仏前で手を合わせながら、黒装束に身を包んだ青年、伊東紫苑
(いとう・しおん)はうなだれていた。彼は、その身なりから察して頂けるよ
うに、忍術を良くとする男。今年、二十五歳を迎える紫苑は、平凡な会社
員という表向きの顔と、政府直轄の諜報員という裏の顔を持ち合わせた
忍者である。近年における政変の折には、必ずといっていいほど彼が暗躍
し、史実にこそ残りはしないが、快刀乱麻の働きを見せてきた。
「五百を越える任務をこなし、国家安泰に尽力してきた手前ではありまする
が、妹たちの教育には抜かりがあったようで・・・」
仏前に花を供えながら、紫苑は独り言を続けている。内容から察するに、今
は亡き父母へ近況報告をしているようだ。しかし、どうやら血を分けた妹たち
の素行に問題があるらしく、言い訳がましい愚痴をこぼしてばかり。
「薫(かおり)、栞(しおり)の両名、もはやはっちゃけすぎて・・・手前の言う
事なんぞ、聞きゃしません。もう、わがまま盛りで・・・」
実は、紫苑には十歳離れた双子の妹がいる。それぞれ、薫、栞と名づけられ
た姉妹は美しく育ち、今年、高校入学と相成った。近所では美人双子と呼ば
れ、花が香るような艶やかさを身にまとう姉妹と評判も上々。もっとも、それが
世上の言うとおりならば、紫苑は愚痴などこぼさない。
「きゃつら、たての物をよこにするのも億劫がり、家事がまるでなりません。
炊事、洗濯まるでダメ・・・その上、な、なんと・・・下着まで手前が洗わねばなり
ません。もし、おふた方が・・・手前が妹たちのパンツやブラジャーを手洗いし、
型崩れに気を使いながら、陰干しなんぞをしている所を見たら・・・さぞや、お嘆
きになる事でしょう・・・」
仏間に突っ伏し、よよと泣く紫苑。幾つもの修羅場を経験し、死地に赴いた
彼ではあったが、こと妹たちに関しては持ち前の武勇もどこへやら。ただ
己の不備を悔い、時々こうやって仏前にある父母の前で嘆き、悲しむ事が
常であった。その時、仏間の襖向こうで、どたどたと足を踏み鳴らす音が・・・
「兄貴、兄貴!どこ?メシ、メシにしてよ!」
「お兄ちゃん、あたしの服はどこ?」
仏間に隣した居間で、件の双子姉妹が兄を呼びつけにし、それぞれが御用
の旨を言い放つ。これが、紫苑を悩ませる妹たち──すなわち、薫と栞の
両名であった。
「あ、はーい。お兄ちゃんは、ここにいるよ。今、そっち行くから・・・」
仏前に一礼した後、紫苑は妹たちの元へ向かう。この時、畳のはじを踏まない
ように進む姿に躾の良さを感じたが、それは、どうでもよろしい。
「兄貴、メシまだあ?」
居間へ入った紫苑に向かって、こう言ったのは双子の姉、薫。まだ、起きて
間もないのか、Tシャツにパンティ一枚という、あられもない姿。
「お兄ちゃん、あたしの服がな〜い。昨日脱いだやつ、ちゃんと洗濯してくれた
あ?ん、もう〜・・・」
舌足らずな口ぶりで、兄、紫苑を睨みつけるのは双子の妹、栞。こちらは、薫
よりも無作法で、パンティ一枚に肩からタオルを引っ掛けただけの姿である。
それはどうひいき目に見ても、花も恥らう乙女というよりは、飯場のおっさん達
が持つ雰囲気に近い。
「はいはい、ただ今・・・」
紫苑は乞われるままに手早く朝食を膳し、姉妹の衣服を揃える。情け
無くはあったが、この兄は姉妹に対して、下手に出る事しか出来なか
った。早くに父母を失い、両親の愛情を得る事が出来なくなった薫と栞
を不憫に思い、紫苑は大いに甘やかして育ててしまったのである。裏
家業における多大な報酬のおかげで裕福なせいもあったが、欲しい物
は全て買い与え、一度たりとも妹達を叱った事がない兄、紫苑。
「兄貴、だしが薄いよ、このみそ汁」
「ごめんよ、今度から気をつけるから・・・」
「お兄ちゃん!ブラウスが臭うんだけど〜・・・生乾きみた〜い」
「ごめん!あとで、ファOリーズしとくから・・・」
朝食にけちをつける薫と、揃えてもらった服に不満顔を見せる栞に、ぺこ
ぺこと紫苑は謝った。これが、時として激動の歴史の影で暗躍する男の
本性であれば、あまりにも情けないと言えよう。だが、当の本人は案外に
こやかな顔をしており、小間使いのような扱いにも不満そうではなかった。
何故なら──
(俺の可愛い妹達──お兄ちゃんは、お前達のためだったら、何でもする)
という、考えがあるからだ。彼は、この双子姉妹を成人させ、立派に嫁がせ
るまでは、どんなわがままも許してやろうと思っている。それが、父母の仏前
で誓った事だった。
(父上、母上、手前は必ずやり遂げますよ、ニンニン!)
妹達が膳に箸をつけた後、紫苑もようやく椀を手にする。。そして、妹達の顔
色を窺いながら、自らの手遊びで拵えた朝食を、気忙しくかきこむのであった。
正午が近づいた頃、紫苑は薫が家にいないことに気づいた。今日は
休日で、兄を始め姉妹も在宅の予定だったはず。それなのに、双子
の姉、薫の姿が見当たらない。そこで、紫苑は双子の妹、栞に尋ねて
みると・・・
「友達とカラオケに行ったよ」
という素っ気無い返事が返ってきた。栞いわく、薫は妙に着飾って、鼻歌
混じりで出かけていったの事。それを聞いた紫苑の眉目に、皺が寄った。
「怪しい・・・」
別段、高校生の妹が友人とカラオケに興じる事はいい。しかし、それは
同性の友人であれば・・・という前提があっての話。栞の話によると、薫は
兄貴には内緒だよ──そう念を押していったという。
「探るか」
不安が胸を過ぎった紫苑は、薫の携帯電話に忍ばせてある発信機(違法)
をつてに、居所を探り始める。そして、政府から支給されたGPS機能付きノ
ートパソコンで、所在を確かめると・・・
「番地からいって、三丁目のカラオケボックスだな・・・ようし」
モニタ上に映し出された地図に、妹の所在を示すマークが光っているのを
確かめた後、紫苑はさっそくその場所へ向かった。ただ、向かうだけではなく
懐中に様々な暗器を忍ばせ、目には血気を走らせながら──
(お兄ちゃんは信じてるよ、薫・・・でも、もし・・・男と一緒だったら・・・許さん!)
女友達とカラオケに興じていれば良し。そうでなければ男は忍殺だ!と、紫苑
は心に決め、目的地へと向かう。そんな彼の心情を表してか、薄曇だった空が
煙りかけ、雨の到来を告げていた。もっとも、これが悲しみの雨ではなく、血の
雨が降る前触れで無ければ良いのだが・・・
カラオケボックスには、態度の悪い茶髪の若い店員が店番をしていた。
ただでさえ気が立っている紫苑は、店員を当身で昏倒させ、手早く清掃
具箱へと放り込み、返す刀で薫の居所を探す。
(薫はいずこに?)
店内は薄暗く、遊興に疎い紫苑には馴染みが浅いレイアウト。そのため、
薫の探索には慎重が期された。たとえ忍術に長けていても、妹を思う素の
兄である今は、所在無い面持ちである。
「居た!」
部屋をいくつか覗くと、わざと照明を落としたような一室に、薫はいた。今、
紫苑が捜し求めていた妹は、兄の心も知らずに、のんきに壇上で流行歌
なんぞを熱唱中。ちょうど、サビ部分に差し掛かっているのか、こぶしを効
かせて身振りも大げさだった。
(薫・・・可愛いぞ!)
探索の意味合いも忘れ、愛しい妹の姿に見惚れる兄、紫苑。だが、さすがに
忍者らしく、薫の周りに漂う不穏な空気を見逃さなかった。
(誰かいる・・・それも、数人)
薄暗い店内で、裏の顔を持つ紫苑の目だけがギラギラと光っている。彼は気
付いてしまった。妹の周りを囲む人影の中に、異性の存在がある事を──
「くそう・・・やはり、男友達もいるのか・・・」
懐中に忍ばせた暗器に手を遣り、取りあえず忍殺決定の意向を示す紫苑。
だが、部屋の中には妹がおり、おそらくは同性の友人もいる事だろう。殺るの
は、男だけで良い──紫苑は殺気立ちながらも、一時静観の構えを見せた。
「いいぞ、薫!」
「最高!アユみたい!」
薫が歌い終わると、室内が一斉に色めきたった。それと同時に、当節
流行のアユだかフナだかに似ているだの何だのと、嬌声が飛ぶ。
「サンキュー!ありがとう!」
褒めちぎられた薫は、マイクを片手にお愛想中。だが、部屋の外では
紫苑が鬼のような形相をしており、完全に殺気立っていた。何故かとい
うと、夜目の効く忍者は部屋の中の人物構成を、すべて読み取ってし
まったからである。
(右側のソファに、二人・・・左側の長いすに三人・・・それも・・すべて男!)
てっきり男女混合で遊んでいると思った紫苑に、憤怒の炎が燃え盛る。妹
は──薫は、五人もの男友達とカラオケに興じているのだ──そう考えた
だけで、紫苑の胸は掻き乱された。
(ただの遊び仲間って訳じゃ無さそうだ・・・おそらく、五人のうちの誰かと
恋仲にあるのでは・・・)
ぎりりと歯噛みして、紫苑は部屋の中に今すぐ飛び込んでいきたいという
衝動を、ようやくおさえている。出来ればこの場で男友達と、その中にいる
であろう恋仲の男を滅してやりたい──無論、彼の忍術を以ってすれば
それは容易いが、愛する妹の目の前では凄惨な忍殺を避けるべきだ。
(妹が・・・薫がトイレにでも立ったら・・・やつら、皆殺しにしてやる)
紫苑が優しい兄から、暗殺者へと変貌している。いよいよ懐中に忍ばせた
暗器の出番だと身を硬くしたとき、男の一人が壇上の薫に近づいて行く。
そして──
「グッときたぜ、薫」
そう言いながら、紫苑が愛する妹のスカートを、ぺろりと捲り上げた
のである。
(なんて事を!あ、あの野郎!)
驚愕する紫苑をよそに、男は薫のスカートを腰の辺りまでずり上げ、
にやにやと笑っていた。無論、太ももがあらわとなり、下半身を包む
純白パンティだって丸見えになる。しかし、薫はくすりと笑って、
「やめてよ」
そう言っただけであった。
(や、やつが・・・薫と恋仲にある・・・男なのか?)
部屋の外では、紫苑が妹の受けた悪戯に目を丸くしている。今だって
ずり上がったスカートの中身は丸出しだ。しかも、今度は薫のパンティ
が、男からの悪戯を受ける羽目となる。
「食い込んでるぜ」
「やだ、健ちゃんが引っ張ってるんじゃないの・・」
健ちゃんと呼ばれた男が薫の後ろに回って、あからさまになったパンティ
の両サイドを持ち、ぐいと引き上げた。当然、股布が引きつれて、陰部の
形がくっきりと浮かび上がる。だが、ここでも薫は笑っているだけで、嫌
がる素振りは見せてはいなかった。
(薫!)
紫苑の声にならない叫び──妹が──薫が、数人の男の前で下着と
陰部の形を露わにし、笑っている。今まで、要人暗殺や重要施設を急襲
した事さえある紫苑だったが、今、この瞬間が、生涯でもっとも衝撃を受
けた時であった。
「お前ばっかり楽しむなよ。おい、薫、こっち来いって」
別の男がそう言って、下着を丸出しにしたままの薫の手を取った。そして、
力任せに体を抱き寄せると、有無を言わずに唇を奪ったのである。
(な、なんだ?どういう事だ?)
妹と恋仲にあると踏んだ、健ちゃんという男。やつは、別に薫とつきあって
いる訳ではないのか──混乱する紫苑。だが、事実妹は先ほど悪戯を許
した男の手を離れ、別の誰かと口づけを交わしている。
「へへへ・・・パンツ、丸見えだ」
長椅子に座った男と唇を貪り合う薫の太ももへ、これまた別の男が手を
伸ばした。その時、薫は一瞬、ぴくりと肩を揺すったが、唇は離さずにいる。
「ンッ・・・ンン・・・」
甘くくぐもった声が薫の口元から漏れた。見れば、彼女の恥部がパンティ越
しに、男の指の悪戯を許している。指は割れ目をなぞり、あさましい動きととも
に薫の陰部をざわざわと上下させられた。
「アーンッ・・・ダメェ・・・」
指の悪戯に耐えかねたのか、薫は口づけを交わしていた男の膝に馬乗りと
なり、淫らがましく尻を振った。すると、それを合図に残った男達が色めきたち、
一斉に薫の体へとむしゃぶりついていったのである・・・
「キャーッ!アハハ、みんな、そんなにがっつかないで・・・」
五人の男達に襲い掛かられているというのに、薫はどこか余裕げだった。
乳房に誰かの手が伸びてくると、自らの両腕を頭上で組み、させてやりた
いようにする。また、別の誰かが肉感的な桃尻を掴めば、いやんと流し目
を呉れてやって、お好きにどうぞと濡れた眼差しで、男達を煽った。
(なんて事だ・・・ああ、なんて事・・)
室内の様子を窺い見ていた紫苑は、頭を抱え蹲る。妹は、恋仲にある男と
遊びに来ていた訳ではない。彼ら全員と遊ぶためにここへ来たのだ、と。
「アーンッ・・・アアッ・・・アーッ・・・」
照明を落とした室内は、薫を中心とした男女の肉塊が蠢くさまを映している。
紫苑はその中で、妹の衣服が一枚一枚剥かれていく光景を目の当たりに
した。家事が不出来な妹の代わりに洗ってやったあの衣服たちが、獣と化し
た男達の手によって次々と奪われていく──それは、妹思いでなくとも、兄
の目からは到底、直視出来ない淫景であった。
「乳首勃ってやがる。反応早いな」
男が薫の背後に回り、伸ばした手で乳房を弄び、何の遠慮も無しに乳首を
つまんでいる。可憐な苺蕾は醜い男の指先で引っ張られ、様々に形を変え
てはぷっくりと尖っていった。
「いやん・・・ふふ、乳首が感じるの・・・知ってるくせに・・・アーン・・・」
もはや全裸に近い姿の薫が、悪戯な指の動きに身悶えている。赤らんだ乳首
は嬲りものといっていいくらいに弄り回され、悲鳴を上げているようだった。そ
れほど、男の指使いは荒っぽかったが、薫にはまったく音を上げる気配が無い。
どころか、引きちぎられんばかりの荒技がむしろ心地よい・・・とでも言いたげ
に、悩ましく身を揺すっては、更なる愛撫を望んでいったのである。
暗い部屋の中では、剥き出しの欲望が一人の少女へ向けられていた。
薫は、脱げかけたブラジャーとパンティの上下という姿になった所で、男
の一人から、
「ただ犯るっていうのも芸がないな。薫、ちょっと踊れよ」
という、提案を突きつけられてしまう。すると、薫はにこっと笑って──
「いいわよ。ストリップって事でしょ?ついでに歌でも歌おうか?」
そう言うや否や、ふたたび壇上に立ちスポットライトを浴びたのである。
♪ラブとか何とか〜 AH〜 それっぽいもの出しとけっつうの〜・・・♪
と、マイク片手に歌う半裸の薫を囲み、男達がにやついていた。壇上には
座って歌えるようにとの配慮からか、都合良く椅子が置いてあり、薫はそこ
へまたがっては、ストリッパーまがいに足を交差させてみる。その動きがあ
まりにも艶かしいので、男達は拍手喝采を惜しまなかった。
「脱げ、薫!」
「脱がなきゃ、ウソだぜ!」
男達に乞われると、薫は歌いつつブラジャーのストラップを肩から落とす。
いい加減、弄ばれた後なので乳房を包むカップは、いとも間単に乙女の柔肌
を滑り落ちていった。
「あは〜ん・・・」
曲の間奏中を利用して、薫は鼻を鳴らしつつブラジャーを放り投げる。そして、
今度は乞われるまでも無く、自らの意思でパンティに指をかけていった。
「うふふ・・・行くわよッ!」
薫は膝までパンティを落とすと器用に足を抜いて、そのままぽんと
蹴り投げた。くるくると丸まった純白下着は男達の頭上を飛び、兄が
忍ぶドアの方まですーっと飛んでいく。
「ほら、みんな、近くに来て。かぶりつきよ」
壇上に設けられた椅子の上に乗り、薫は腰を前後にグラインドさせた。
更にほどよく脂がのった下腹部を突き出し、恥毛も惜しげなくあからさ
まとしながら、集まってきた男達の前で自ら指を当て、陰部をぱかっと
割っていったのである・・・
「オマンコ肉が丸見えじゃねえか、薫!」
「もっと広げろよ、穴が見えねえぞ」
目と鼻の先に薫の恥部を見据え、男達がざわめいた。すると、
「アハハ!これでいい?」
ぐっと腰を落とし、少しがにまたになった薫は女穴を指で穿り、男達の
前へご開帳と決め込む。わずかに色がくすんだ女唇が左右に分かれ
ると、サーモンピンクの女肉がいよいよお出ましとなり、そこを彩る肉襞
の向こうでは、女穴が淫らなぬめりを見せていた。
(薫・・・)
妹の淫らな行為を目の当たりにして、脱力する紫苑。予想だにしなかっ
た薫の行動にすっかりと打ちひしがれ、立ち上がる気力も無かった。
いかがわしいストリップの後は、世にもおぞましい輪姦劇が待っていた。
薫は長椅子に四つん這いにさせられると、すぐさま前後を男達に挟まれ
ていき、淫らな肉音を室内へと響かせる羽目になる。
「おしゃぶりも上手だな、薫」
「手コキもプロ級だぜ。風俗でアルバイトできるんじゃねえの?」
「うふふ・・そんなほめ方って・・・無いわ」
犬のように這った薫は、男の命令に従順だった。男根を顔に突きつけら
れ、口唇愛撫をねだられればすぐに応じ、うっすらと紅に染まった唇で
男を愉しませてやる。また、男根を握れと乞われればそれを許諾し、小さ
な手のひらでそっと包んでやったのである。その上で、男達と淫靡な会話
を楽しみ、自らも貪欲に快楽を貪った。
「アアーッ・・・アンッ・・アンッ・・」
室内で薫の断続的な叫びが上がっていた。男五人は、それぞれ気の合っ
た動きで体を入れ替え、薫を中心として散々に精を放っていく。それも、ただ
犯すにとどまらず、男達は色々と創意を凝らしては、一人の女を徹底的に
辱めた。
「薫、ケツ出せ。いいものやるから」
「う・・うう・・なに?」
長椅子を背にした男へ反対向きに跨った薫の尻へ、他の男が何かを手に
して迫る。その何かを見た瞬間、薫の顔が強張った。
「い、いや・・・そんなの・・要らないわ・・」
薫が目にしたもの──それは、コンドームを被せられたカラオケマイクで
あった。しかし、男はむずがる薫に構わず、マイクを尻穴へとあてがっていき、
「ケツの力抜けよ・・・」
と、小さなすぼまりめがけて、ゆっくり、そうっとマイクを押し込んでいく。
「やだ・・ああ!やめて・・・」
「動くなって!おい、薫を縛れ」
尻蕾が抗いを見せたので、苛立った男が薫を戒めろと言うと、
「それは面白いな。おい、ブラジャー取ってくれ」
男達は薫を後ろ手に取り、落ちていたブラジャーのストラップを用いて縛り上げ
た後、長椅子の上へ寝そべらせた。もう、こうなれば薫に逃げ場は無い。
「ああ・・・いや・・だ・・そんなの入らない・・・や・・め・・」
少女の尻穴に異物が入るかどうか──男達は固唾を呑んで、マイクを当てられ
た薫の後穴へ注目した。
「ほれ見ろ、入ってくじゃねえか・・・へへへ、薫・・」
ぐ・・・ぐぐ・・と男根に似た異形は、男の暴力によって次第に尻穴へ埋まっていく。
大きさはそれほどでもないが、何せマイクは合金製で弾力など無い。だから、尻
穴がそれを招き入れるのは、一見、不可能かと思われた。しかし・・・
「いや・・あああ・・・ああうッ!」
歯をカチカチと鳴らし、今際の時を迎えたような薫が必死の形相になっている。
マイクは丸みを持った部分が大部分姿を消し、後は直径の一番太い部分が肛蕾
を抜けるだけとなっていた。ここを通れば、もうマイクは貫通を果たした事になる。
「入った!」
マイクを持った男が叫ぶ。すると、
「ア───ッ・・・」
まさに断末魔の悲鳴を上げて、薫が戦慄いた。彼女は、男根以外の
異形に尻穴への侵入を許し、そのおぞましさに屈したのである。
「ぬ、抜いてーッ・・・ああ、こんなの・・・いやッ!」
桃尻をぶるぶると震わせ、かぶりを振る薫。肛姦がよほどこたえたら
しく、目には涙も浮かんでいる。
「おい、動かしてみろよ」
「ああ。最初はゆっくりと・・・」
「ああ!だ、駄目!許して!」
男達は嫌がる薫に構わず、意地悪く尻穴をいたぶり始めた。マイクは
ずぶずぶと肛内へ埋められ、散々に少女を泣かせてしまう。
「ヒーッ!いやあーッ・・・」
「おい、他にも色々入れてみようぜ。薫、ひいひい言って喜ぶぞ」
男達は薫の尻穴が異物に馴染んでくると、マイク以外にもジュースの
ビンやら己たちの指やらで、肛姦の魅惑に酔った。初めは拒んでいた
薫も尻穴がほぐれてくると、そこに何やら妖しい疼きを得て、たまらない
気持ちになってしまう。
「ほおうッ・・・おお・・ッ・・」
相変わらず長椅子の上に這ってはいたが、薫の目は蕩けていた。彼女
の尻穴はいつしか男達の興味をそそり、それぞれの男根を受け止めて
いる。
「アナルセックスって、案外いいもんだったな」
恥臭漂う部屋の中で、男が薫に話しかけた。荒淫の宴はすでに終了
したらしく、薫は身づくろいを始めている。
「・・・あたしは、いやよ・・お尻が壊れるかと思ったわ」
様々な異物と、五人の男を尻穴へ迎え入れた薫は憔悴しながら言っ
た。彼女はまだ、尻穴に陵辱の跡を生々しく感じている。
「へへへ、そう言うなって。これからも、よろしくやろうぜ。なあ、薫」
衣服を身にまとった薫のヒップへ、男達が名残惜しげに手を伸ばして
いる。肛姦の魅力にとり憑かれた証だった。
「あたし、帰るね。それじゃ」
身支度を済ませた薫は、五人それぞれと口づけを交わし、部屋を出る。
そして薄暗い店内を抜け、足早にカラオケボックスを出て行った。
「薫のケツ、良かったな」
「ああ、今度からはアナルセックスも愉しむ事にしよう。ははは」
薫が消えた室内で、男達が痴宴の余韻にまどろんでいる。しかし、その
時、彼らは誰一人室内に備えられた換気口から、アーモンドのような臭
いが流れてくる事に、気づいてはいなかった。
「青酸ガスだ。ゆっくり眠りな」
薫が出て行った後、紫苑は忌まわしい行為を目撃した部屋に目張りを
し、通風孔から暗器のひとつ、青酸ガスを流し込んだ。これは即効性の
殺人薬である。言うまでも無く、彼の妹を辱めた五人は、すぐに物言わぬ
骸と化す事となった。
「ただいま」
「お帰りなさい。もうすぐ、お夕飯だよ」
薫が帰宅すると、兄、紫苑は割烹着を着込み、何食わぬ顔で夕餉の
支度をしていた。無論、表情はいつもの優しい兄のつもりで。
「兄貴、変だよ、その格好・・・昔の映画に出てくるお母さんって感じ」
「いいじゃないか。お兄ちゃんは、お前の兄であり、父であり、また、母
でもあるんだから。少なくとも、お兄ちゃんはそう思ってる」
「変なの。あたし、お風呂入るから、夕飯はその後でいい」
「ああ、分かった」
兄に荒淫の名残りを悟られぬよう、薫はすぐに浴室へ向かった。今も
尻穴には、男達が放った粘液がたぷついているので、それを洗い流し
たいのである。すると、紫苑は薫を横目で盗み見て、
(お前を辱めたやつらは今頃・・・あの世で悔やんでいるからね)
と、心の中で囁いた。五人を殺めた時とはまるで違う、穏やかな表情で。
(薫はもう、無垢では無いが・・・それでも、俺は立派に嫁へ出してやらね
ばならない。その為であれば、たとえ幾万の屍をこしらえても構わん。妹
に言い寄るやつは皆、忍殺する)
夕餉のおかずを拵えるように屍を積まれては敵わないが、これも妹思い
の兄なればこその話。それに、彼にはもう一人の妹もいる。
(そうだ。栞のやつ・・・は、横着ではあるが、まだ、男に興味は無さそうだ。
それだけでも良しとしよう)
双子の妹、栞は人付き合いが悪く出不精で、その事が紫苑を安堵させて
いる。活発な薫と違い、栞の方はまだ、お子様気分が抜けていないような
気がするからだ。
時を同じくして、こちらは双子の妹、栞の自室。今、彼女は携帯電話
を片手に、誰かと談笑中であった。
「ふふ・・おじさま、お仕事が忙しいの?ねえ、栞に会いたくない?」
『会いたいよ、栞ちゃん』
「いやん、栞って呼び捨てにして・・・平日しか会えないっていうのも
不便よね。ああ・・・栞、体が火照ってきちゃった」
そう言って、栞はパンティの中へ指を入れ、ぐずぐずと妖しい動きを
見せていた。伏し目がちな表情に、何やら淫蕩な裏を匂わせている。
「おととい、おじさまに縛られた時の縄の痕・・・もう、消えちゃったわ」
『ずいぶん、頑張ったんだけどなあ』
「うふッ・・・なにせ、若いからね・・ああん・・」
栞は手首や腰の辺りを指で愛撫しながら、淫靡な会話を紡いでいた。
すると、通話相手のおじさまとやらが、彼女の動きを悟ったようで、
『栞。お前は私の奴隷だ。勝手な真似はするな』
と、ぴしゃり言い放つ。その途端、栞は目を細め、
「ありがとうございます・・・栞は、あなた様の奴隷でございます・・・
ああ、もっといじめてください・・・おじさま」
そう答え、ますます相好を崩していった。
『おととい、浣腸してやった事をもう、忘れたのか』
「いいえ、とんでもありません!ああ、おじさま、栞は・・・その事をおっ
しゃられると、恥ずかしくて死にそうです・・」
『だったら、勝手に自慰などするんじゃない』
「ああ、分かりました・・・おっしゃる通りにいたします・・・だから・・」
携帯電話を片手に、栞はしくしくと泣き出した。おじさまとやらの叱咤が
答えるらしく、しきりに許してくださいなどと、哀れみを乞うている。
『お仕置きが欲しいか』
「ああ、欲しいです・・・おじさま」
『じゃあ、今週の水曜日。いつものホテルで待っているから、必ず来い。
いいか、今度は私の大切なお客様をもてなすんだ。失態は許されないぞ』
「ああ・・・お客様・・・また、栞は貢ぎ物になるのですね・・」
『そうだ。それが、私に対する愛だと思え。お客様を満足させたら、その後
わたしが直々にお前を責めてやる』
「本当ですね?嬉しい・・・そのお言葉があれば、栞は何だって出来ます・・」
それだけ言うと、電話は一方的に切られた。何やら怪しい取り決めが交わさ
れたようで、栞は不安な面持ちを見せている。
「この前は、外国のお客様だったな・・・あの時は大変だった・・縛られて、犯さ
れて・・・」
ぽつりと呟きながら、栞が机の引き出しを開けると、そこには幾重にも鍵がか
けられた小箱が鎮座していた。その戒めを解き、箱を開けると──
「うふふ・・・あたし、こんなになってたんだあ・・・えへへ、凄い状況だったんだな」
そう言って目を細める少女の前に、見るも忌まわしい趣旨の写真が表れた。
写真はどれも年端も行かない少女が緊縛され、毛むくじゃらの異人種たちから
嬲られているという、忌まわしいものである。そして、写真の中にいる少女は、
まぎれもなく栞であった。
撮影は誰かの手によって行われたようで、きちんとした構図を保って
いる。しかも、フレームの中心には常に栞が入り、また、見るに耐えない
辱めを受けていた。責める者たちはいずれも屈強な男ばかりで、東洋人
もいれば、白人、黒人もいる。それらに共通しているのは、誰もが目を
血走らせ、緊縛された栞を欲望の贄としている事だった。
「頑張らなくっちゃ・・・ね」
写真を一瞥した後、栞は再び小箱に秘密を隠し、戒めを施した。万が一に
も、これを他人の目に触れさせてはいけないと思ったからだ。と、その時、
「栞〜・・・ご飯だよお〜・・・」
という、間延びした兄の声を栞は聞く。すると、彼女はふにゃっと表情を崩し、
「は〜い・・・今行くよお・・・」
と、兄、紫苑の知る妹、栞へと変貌した。今しがたまで見せていた、淫蕩な
表情をどこかへしまい込み、ただの女子高生となったのである。
「うん、栞はいつまでもあんなんでいて欲しいな・・・」
割烹着姿の紫苑は、妹の性格が変わらない事を願い、微笑んだ。勿論、
この兄は妹の淫蕩な顔を知らない。
「腹減った・・・兄貴、メシ!」
「おう、グットタイミング!いい感じだ、薫」
入浴を終えた薫も、夕餉の席へやってきた。そして、栞と紫苑もそれぞれが
席について、膳に箸を伸ばす。ここで、紫苑はオチをつけるべく──
「うむ。これぞ、伊東家の食卓!ニン!」
とやらかして、妹達から非難の視線を浴びたのであった・・・・・
おわり