式神馴らし 6話 一ノ葉の再調教  
  後編 自分で自分を?  
 
 
 初馬の膝の上に乗ったまま、紙人形を見つめる一ノ葉。  
「今度は……何を、する気だ……!」  
「式神分身・改」  
 紙人形を持ったまま、初馬は両手で印を結んだ。  
 ポンと軽い音を立てて、紙人形が霊力を纏い実体を作り上げる。身長三十センチほどの  
一ノ葉の姿を模した人形を。狐色の紙、狐耳と尻尾を生やしている。服装は白いシャツとス  
カートだった。  
 
「何だ……?」  
 
 変化した自分そっくりの人形を見つめ、一ノ葉が訝る。すぐにはその意味が理解できな  
かったらしい。分かったのに思考がそれを受け入れないのかもしれない。  
 初馬はその答えを示すように、人形の頬を撫でた。  
 
「ッ」  
 
 一ノ葉が自分の頬を押さえる。  
 
「貴様、何を考えてるんだ……!」  
 
 ほぼ同時に、その人形が意味するものを理解したようだった。さきほどの分身と同様、こ  
の人形は一ノ葉の分身であり、触れられた感覚を本体へと還元する。  
 初馬はそっと人形の胸を撫でた。  
 
「あっ!」  
 
 一ノ葉が声を漏らす。  
 
 一ノ葉を膝に乗せたまま、初馬は左手で人形を緩く握り、その身体に指先をなぞらせて  
いた。大きめのフィギュアサイズだが、肌は柔らかくうっすらと暖かさもある。  
 
「うっ、くっっ……」  
 
 両手で自分の胸を覆う一ノ葉。  
 
 構わず、初馬は人形の胸を人差し指でつついていた。身体のサイズに合わせて胸の膨  
らみも小さなものだが、触った感触は一ノ葉と同じように柔らかく弾力のあるもの。指先の  
動きに合わせて、ふにふにと形を変えるのが分かる。  
 
「んんっ、ぅぅ……」  
 
 胸を抱えたまま、小刻みに過多を震わせていた。人形を触ると、一ノ葉が感じる。それは  
奇妙な淫猥さを醸し出していた。  
 
「ううっ……。変態的なこと、ぅっ、考える才能だけは――んんっ、達者だな……!」  
 
 荒い呼吸をしながら、一ノ葉が気丈に言い返してくる。  
 
 初馬は人形を触っていた右手を離し、一ノ葉の頭に乗せた。艶やかな黒髪の感触が手  
に伝わってくる。元が狐なので人間の髪とは少し質が違った。  
 
「褒めるなよ」  
「褒めてないッ!」  
 
 即座に言い返してくる一ノ葉。  
 その頭を右手で撫でながら、初馬は囁くように告げる。  
 
「式操りの術はまだ解いていないことは、理解してるよな?」  
「!」  
 
 一ノ葉が息を呑み、身体を硬直させる。忘れていた、というよりも意識する余裕が無かっ  
たと表現するのが正しいか。だが、今の言葉で自分の状態を理解したようである。  
 
 だが、理解したからといって何かが変わるわけでもない。  
 操る相手が一ノ葉だけなので、初馬はその感覚全てを掌握できる。  
 
「待て……!」  
 
 一ノ葉の両手が動き、初馬の左手に握っていた人形を掴み上げた。無論、自分の意志  
ではなく、初馬が一ノ葉の身体を動かしそうさせているのである。  
 
 左手で人形を持ったまま、一ノ葉の右手が人形の身体をイヤらしく撫で始めた。  
 
「あっ……。んんっ……。この下衆がァ!」  
 
 涙声になりつつ、罵ってくる。  
 
 初馬は左手で一ノ葉のお腹を抱え、右手を頭に乗せたまま、乾いた唇を嘗めた。式操り  
の術を用い、一ノ葉の動きは完全に掌握している。  
 
 一ノ葉は自分の手で、自分の分身人形を弄っていた。  
 
「うぅぅ……、やめろ……」  
 
 身体を震わせながら、抵抗の言葉を吐く。  
 
 しかし、人形から伝わってくる快感に、身体は正直に反応していた。自分で自分自身の  
分身人形を弄り、快感を得る。分身の術をある程度使えるものなら可能な遊びだが、まと  
もな神経を持っているなら実行はしないだろう。  
 
 一ノ葉はそのまともでない快感を味わっていた。  
 
「んっ、はぁッ……」   
 
 あまりに非常識な状況に、一ノ葉はただその快感を甘受するしかない。顎を持ち上げ、  
熱い息を吐き出している。頬は真っ赤に染まり、瞳からは理性の光が欠け落ちていた。思  
考の半分はどこかへ消えているだろう。  
 
 初馬は一ノ葉の頭を撫でつつ、声を掛ける。耳元に囁くように。  
 
「先に言っておくけど、今回は『お願いします、ご主人様』って言っても止める気はないから。  
俺が気の済むまで続ける」  
「誰が言う、か……!」  
 
 怒りで意識を引き戻し、言い返してくる。  
 その左が動き、人形をひっくり返した。手の平の上で、仰向けの体勢からうつ伏せの体  
勢へと。一ノ葉の意志ではなく、初馬がそうさせたのだが。  
 
「?」  
 
 疑問符を浮かべる一ノ葉。  
 その疑問は次の瞬間に解決していた。  
 一ノ葉の左手が口元に移動する。  
 
「待て待て、貴様……! うぅッ!」  
 
 一ノ葉の口が、分身人形の尻尾を咥えた。ぞくりと全身が泡立つ。尻尾を丸ごと他人に  
咥えられることなど、普通は無いだろう。分身を介したものとはいえ、それは常識の外の出  
来事。一ノ葉はその非常識を、身を以て体感していた。  
 
 式操りの術によって一ノ葉の口が動き、人形の尻尾を下や歯で優しく転がし始める。  
 
「っ……! ぐぅ……ッ」  
 
 意志とは関係なく手足の筋肉が強張り、喉からくぐもった声が漏れていた。  
 
 人形の尻尾を口で攻めれば、それは一ノ葉に直接還元される。他人に操られているとは  
いえ、自分の尻尾を自分自身の口で愛撫するという状況。その無茶苦茶さに、一ノ葉はあ  
り得ないほどの混乱と興奮を覚えているようだった。  
 
 一ノ葉の手が動き、人形の身体を跳ね始める。  
 
「ンン――!」  
 
 喉が大きく動いた。  
 
 白く細い指が、人形の胸や狐耳を撫で、スカートの中に差し入れられた指がショーツの上  
から秘部を撫でる。口による尻尾攻めは続いていた。そして、人形が得る感覚は、術式を  
介して一ノ葉へと全て還元される。  
 
「うッ、んん……? ぐぅッ……!」  
 
 一ノ葉は何度も身体を痙攣させていた。さきほどの白分身と黒分身による攻めによって  
絶頂寸前まで行った身体。そこへ、理解の外の快感を味合わされ、何度も小さく達してい  
るようだった。  
 
「感じてるのか?」  
 
 頭を撫でつつ、初馬はそう尋ねる。  
 しかし、一ノ葉は小さく首を左右に振るだけだった。  
 
「なら、もう少しやってみよう」  
「な!」  
 
 初馬の言葉とともに、一ノ葉が口から自分の人形を離す。その尻尾は唾液に濡れて、イ  
ヤらしく湿っていた。身体をまさぐっていた指の動きも一時止まる。  
 一ノ葉が人形を仰向けにひっくり返し、その両足を開いた。  
 
「まさか……!」  
 
 スカートの奥には、白いショーツが見える。一ノ葉の身体構造をそのまま複写する分身の  
術なので、細部まで本人と変わらない。ショーツがしっとりと湿っていた。一ノ葉本人の秘部  
も濡れているのだろう。  
 
「待て――それは、やめ……。もう止めてください、ご主人様ッ!」  
「イヤだ」  
 
 懇願を一蹴し、初馬は式操りの術で一ノ葉を動かした。術の構造上、一ノ葉の意志では  
初馬の操作に逆らうことはできない。無理矢理逆らうことは出来るはずだが、一ノ葉が本  
気で式操りの術に拒否を示したことはない。単に術の制御ができないのか、はたまた他の  
理由なのかは分からない。  
 
 両足を開いた人形の秘部、一ノ葉が自分の口へと含む。  
 
「ッ、ッッ……!」  
 
 それだけで、細い身体が大きく痙攣した。  
 
 一ノ葉の舌を動かし、人形の秘部を愛撫する。文字通り嘗めるような攻め。唾液を絡ま  
せた舌をショーツの上に這わせ、その隙間から舌先を直接秘部へと触れさせる。  
 その感覚は全て一ノ葉に還元されていた。  
 
「うッ――、ぐぐッ……ん、おおぁっ――」  
 
 くぐもった呻きを漏らしながら、一ノ葉が太股を擦り合わせる。激しく絶頂を迎える身体と  
は対照的に、人形を攻める口の動きは止まらない。意志とは関係なく、初馬が動かしてい  
るからだった。  
 
 さらに、人形の尻尾や狐耳、胸やお腹などに一ノ葉の手を走らせる。  
 
「んんっ……。はっ、ひっ――!」  
 
 横隔膜を痙攣させながら、一ノ葉は引きつった声を発していた。顔を真っ赤に染め、きつ  
く閉じた両目から涙を流している。手足の筋肉を何度も伸縮させながら、押し寄せる快感を  
受け止めている。  
 
 自分の手と口で人形を愛撫し、その感覚を味わうという、普通なら考えもしないようなな  
自慰行為。それに対する戸惑いと背徳感が逆に興奮を高め、普段では考えられないような  
強い性感を作り出していく。  
 
「む」  
 
 初馬は口を引き締める。一ノ葉の中で何かが切れるのが分かった。  
 式操りの術と分身との感覚共有を素早く解除した、その瞬間。  
 
「ンッ……、はっ、ふあぁ、あああああ――ッ!」  
 
 人形から口を離し、一ノ葉が大きく仰け反った。跳ねるほどに身体を動かしながら、顔を  
真上に向けて舌を突き出している。頬を真っ赤に染め、口元からだらしなく涎を垂らし、両  
目から涙を溢れさせながら。一番強い絶頂感を味わっていた。  
 
 ぽとりと人形が床に落ち、人型の紙に戻る  
 
 一ノ葉は後ろに倒れるように初馬の身体に寄りかかった。思考や感覚が限界を超えてし  
まい、身体の制御ができていない。初馬がいなかったら、仰向けに倒れていただろう。  
 
 その身体を抱きしめ、初馬は優しく頭を撫でる。  
 
「あっ……はは、ふあぁ……ァ――」  
 
 糸が切れたように脱力したまま、一ノ葉はしばらく力無く痙攣を続けていた。  
 
 
  エピローグ  
 
 
「さすがに痛いんだけど……」  
 
 右手にくっきりと付いた歯形に治癒の術をかけつつ、初馬は一ノ葉を見下ろした。出血は  
止まったが、傷が消えるのには数日かかるだろう。  
 
 暖房の効いた部屋は暖かい。外はすっかり暗くなり、天井の蛍光灯が部屋を白く照らし  
ていた。テレビは点いていない。  
 
 狐の姿に戻った一ノ葉は、寝床であるバスケット潜り込み、初馬を睨んでいる。  
 
「噛まれただけで済んだのはありがたいと思え……。貴様がワシの主でなかったら、八つ  
裂きの微塵切りにしてたところだ」  
「俺も少しやり過ぎたと反省してるよ」  
 
 初馬は傷口に薬用湿布を貼り、包帯を巻き付けた。湿布は抗生物質を含んだもので、傷  
の化膿防止になる。野良犬や野良猫などとは違い、一ノ葉は雑菌を持っていないが、それ  
でも噛まれた傷を放置するのは危ない。  
 
「反省するなら最初からやるな」  
 
 大きくため息をついている一ノ葉。その声には強い諦めが見えた。とりあえず実行、とい  
う初馬の性格は理解しているらしい。  
 初馬はベッドに置いてあった本を手に取り、  
 
「でも、もういくつか試してみたい術あるけどね」  
「や、め、ろ……!」  
 
 恐怖に顔を引きつらせながら、一ノ葉が声を上げた。  
 
 式神術を試す場合、その実験台となるのはまず使役する式神である。初馬が術を試す  
場合は、ほぼ確実に一ノ葉が実験台として選ばれるのだ。その実験台としてどう使われる  
のかは、身を以て知っているだろう。  
 
「まあ、残った術はそれほど必要性あるものじゃないから。気が向かない限り試すことはな  
いと思うけど……。それでも、試してみたいのが、俺の本音だ」  
 
 初馬は本を開きながら、そう告げた。  
 
 白砂家には式神術が多数存在している。普通のものから他の式神使いが使わないよう  
なものまで。しかし、実戦で使えるものは多くなく、あくまでも技術的なものだ。  
 
 一ノ葉はジト眼で見上げてくる。  
 
「ワシは貴様の好奇心を危険と見ている……」  
「単刀直入に言おう」  
 
 初馬は本を閉じて、快活に微笑んで見せた。  
 
「今後お前が無意味に反抗的だったりしたら、術の実験台になってもらう」  
「マッドサイエンティストの目付きだぞ、貴様……」  
 
 一ノ葉の返事は短かった。  
 

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