「りょっうっごっきゅ〜ん。
サンタさんからは何貰ったのかなあ?」
「いやいや、あげたの翔くんだし」
新幹線に顔がついたぬいぐるみを愛しの我が息子の前で左右に振っていたら、ちょっと年上の嫁にツッコミをくらった。
「ユキっ!そーゆーこと言わないっ!」
「だいじょぶだよ。わかんないって」
「最近、ちゃんと色々言葉覚え始めてるんだから、幼いうちにそういうこと吹き込まないの!
なー。良吾ー」
良吾はオレが知ってる中じゃ世界一かわいい笑顔でぬいぐるみをぽふぽふ叩いて、
「ぱーぱ、てぃんかんてん」
とか言っちゃってる。
毎日見てるけど、かわいくてたまらん!
なんなんだ。ホントに。
このかわいい生き物はっ!
「翔くんがこんな親バカになるとは思ってなかったわ」
これまた毎日嫁のユキから聞いてる台詞だけど、そう言うユキだってなかなかの親バカだ。
「良吾は翔くんサンタがくれた新幹線も好きだけど、ママの方が好きだよねー?」
ほーら始まった。
だが負けねえ!
「ママも好きだけどパパのことだって好きだよなー?なー?良吾ー」
「パパサンタはクリスマスにしか物くれないけど……
ママサンタは毎日良吾のの大好きなおっぱいあげられるもんねー」
ユキはそう言うと、良吾をひょいと膝に乗せ、良吾の顔を自分のおっぱいに押し付けた。
「うあっ!ずっる!
オレにはおっぱいないのにっ!」
「ふっふっふー。ママの特権です」
「ぱいぱーい」
くっ!良吾のやつ……。
それは元々オレの……。
「あれ?翔くんもおっぱい欲しい?」
ユキがにんまりと笑って、良吾が撫でてるのとは反対側のおっぱいを持ち上げて見せた。
あ、やべっ……ムラっときた……。
「翔くん、目がえっち」
「りょっ、良吾の前でそーゆーこと言うな、って」
「翔くん、意外と真面目だよね。しかも過保護で親バカ」
楽しそうに笑って良吾の頭を撫でながらのユキの台詞にちょっとムッとしたら、それが顔に出たらしい。
ユキは右手で良吾の頭を抱えると、自分の胸に押し付けてから、オレのTシャツの袖をつまんで引っ張った。
からかわれて面白くない半面、なんだかムラムラしてるという複雑な気分のまま、ユキに顔を近づけると、こそっと耳打ちされた。
「良吾には早く寝てもらお。
ね。翔くんにプレゼントあるから」
ほっぺたにちゅぅっとキスをされて機嫌が直る。
「う、うん……」
そんな自分が相変わらずガキみたいで拗ねたくなるけど、それ以上にユキからのお誘いが嬉しくて、キスを返すと、ユキが嬉しそうに笑ってくれた。
今度こそ本気で機嫌が直る。
「オレもユキにプレゼント用意してる」
安物だけどさ。
気持ちの中でごめん、と謝ってもう一回キスをしようとしたところで、良吾にぺしりと顎を叩かれた。
「いてっ!」
「まーま」
ママはボクのだ、とでも言いたげだ。
「ママは渡さん!」
「もー。翔くん、良吾相手に何言ってるのー」
ユキが笑う。
「だって、こいつが叩くから。
そういうことすると隠しちゃうぞ!」
オレが背中にぬいぐるみを隠すと、良吾は、
「やー、パパ、やーあー」
と両手をパタパタさせた。
ぐはっ!かわええ!
その仕草に負けて、ぬいぐるみを良吾に返す前にユキにぺしりとおでこを叩かれた。
「子供みたいなことしない」
わざと口を尖らせて見せると、ユキは良吾の頭にキスをして、
「良吾もパパを叩かない。
私は良吾と翔くん、二人のもなんだから、取り合いっこしないの。
ね?」
と言って、良吾の前でオレのほっぺたにキスをくれた。
(了)