ゼミのコンパから帰ってきて、部屋でくつろごうとすると、ドアがノックされた。  
「直之さま。初音でございます」  
ぼくが返事をすると、初音はドアを開けた。  
なんだろう。  
コンパは金曜だけ、門限は12時。  
初音の決めたルールは守っているけど。  
 
初音は、ぼくの担当メイドだ。  
この家のメイドの中では中堅になる24歳。  
かわいい顔のわりに、かなり厳しい。  
そうでなくては、次男とはいえ当主の息子の担当メイドは務まらない。  
つまり、担当メイドとは教育係を兼ねているのだ。  
 
「なんだよ、文句を言われるようなことはしてないよ」  
ぼくは、初音がなにか言う前にけん制した。  
「そうではございません」  
 
部屋に入ってきた初音は、朝と変わらず長い髪をきっちりと結い、パリっとしたメイド服で姿勢を崩さない。  
「本日は金曜日でございますし、朝のうちにご交流の場所とご参加の皆様のお名前をご報告いただいております。それにちゃんと12時までにご帰宅なさいました」  
「…じゃあ、なんだよ。今日は書かなきゃいけないレポートもないし」  
 
ソファにだらしなく座ると、初音はぼくの脱ぎ散らかした上着や放り出したカバンをクローゼットに片付ける。  
上着をハンガーにかける前に、そっと顔を押し付けて匂いを確認している。  
タバコを吸う参加者はいたが、ぼくは吸っていない。  
喫煙はしない、というのが初音の決めた規則だ。  
 
「わたくし、お暇を頂戴することになりました」  
 
ぼくはの後ろに立った初音がいきなりそう言ったので、飛び上がった。  
「なんだって?」  
表情ひとつ変えず、初音は立ち上がったぼくを見上げる。  
「結婚が決まりましたので」  
ぼくは口をパクパク動かした。  
 
初音が、結婚…。  
 
ぼくの16歳の誕生日から、初音はぼくの担当メイドになった。  
小さな子供のように生活の世話が必要なわけではなく、かといって大人でもない年頃のぼくのお説教係りのようなものだった。  
メイド学校を優秀な成績で卒業して、お屋敷勤めで経験を積み、その中から選ばれただけあって初音は完璧だった。  
初音は、ぼくが在宅しているかぎり、ぼくのそばから離れなかった。  
初音は、ぼくのメイドだったのだ。  
ぼくは、初音にどれだけ世話を焼いてもらい、叱られ、甘やかされ、教えられてきたか。  
 
「その、誰だい、相手は」  
「三条市武さまでございます」  
「いちたけ?!」  
大きな声が出た。  
 
確か、うちの会社の系列の社長の三男坊。  
パーティなんかでは必ず顔を合わせていた。  
まだ30前で、長身でなかなか男前。  
いずれ系列会社のひとつを任されるだろうと言われているくらいには優秀。  
ぼくだって、それくらいの人間関係は把握している。  
だけど、まさか人の家のメイドに手をつけるなんて。  
なんて奴だ。  
 
「お話は、去年からいただいておりました。旦那様も良縁だとお許しくださいましたが、お待ちいただきました」  
「…なんでだよ」  
「直之さまが、二十歳になられるまでは、わたくしが担当メイドでございますから」  
 
目頭が、ジンと熱くなった。  
 
うちの場合、当主の息子には結婚までに4人の担当メイドがつく。  
最初は乳母と子守りのメイド。  
小学校に入る頃から、16の誕生日までのメイド。  
そして、16から二十歳までのメイド。  
一番大事だと言われているのがこの16からのメイドなのだ。  
 
大人になりかかる年頃の男の子を、素行を乱して道を踏み外さぬよう、社会性を身につけられるよう、そして学業を軽んじぬよう、そして…。  
 
ぼくの行動は、この4年間、初音に握られてきたのだ。  
 
警察にお世話になるようなやんちゃをせず、そこそこ学業も修めながらのびのびと遊び、かつ周囲の良い評価をもらえるような人間になれたのは、初音のおかげだ。  
 
ぼくは、目の前にいる初音のまっすぐな視線を受け止めた。  
真っ黒い瞳と、長いまつ毛。  
白い肌、すっと通った鼻筋。右の頬に小さなほくろが二つ。  
そして、唇。  
 
「…初音は、ぼくより三条の市武さんのほうが好きなのかい」  
初音はにっこり笑った。  
「存じません。直之さまはわたくしのご主人でございます。ほかの殿方と比べることなどできませんから」  
「だけど、うちをやめて三条に行くんだろ」  
「どのみち、わたくしはもう直之さまの担当メイドではいられませんもの」  
 
そうだ。メイドは、主人が二十歳になると交代する。  
経験を積んだ中堅メイドではなく、学校を卒業したてのメイドに。  
二十歳になれば、メイドに隅々まで世話されるだけでなく、メイドを教育することも出来るように。  
一人前になって仕事が忙しくなる頃までに、完璧に生活をサポートできるメイドを自分で育てるのだ。  
担当メイドの作った規則に縛られるのも、二十歳の誕生日までだった。  
 
「…いいよ、ぼくは。ずっと初音で」  
「直之さまは、わたくしがお嫌いではないのですか」  
ぼくはびっくりした。  
「ぼくが?」  
「わたくしは…、直之さまにいやなことばかり申しますから」  
すっとうつむく。  
きれいに櫛目の通った頭頂部。  
ぼくが初音を見下ろすようになったのはいつからだろう。  
16の時には、まだ初音はぼくより背が高かったかもしれない。  
 
「それは、初音は口うるさかったかもしれないけど、みんなぼくのためじゃないか。それくらいわかってたよ」  
 
それに。  
 
ぼくは、初音の背中に手を回して抱きしめた。  
初音はぼくにいろんなことを教えてくれた。  
計画的に勉強すること、規則を守ること、相手の立場に応じて世間話をすること、失礼のないように女の人をエスコートすること、簡単な家事や炊事までも。  
 
それに。  
 
「嫌いなわけないじゃないか。…初音は、ぼくの初めての人なのに」  
初音は顔を上げた。  
唇を重ねると、なじんだ感触。  
「…いけません。おやすみになるお時間です」  
長いキスの後で、初音はかすれた声で言う。  
「二十歳になったら、主人の命令は、絶対だ。規則よりも」  
ぼくはまだ、二十歳になっていない。誕生日までには、まだ数日あった。  
二十歳におなりになるまでは、規則は規則でございます、という反論はなかった。  
初音は小さく頷いた。  
 
「脱いで。ぼくに見せて」  
命令すると、初音はエプロンに手をかけ、メイド服を床に落とした。  
ガーターベルトを外すためには下着をとらねばならない。  
少しためらってから、初音はぼくの目の前で裸になる。  
裸体にきっちりとアップにした髪形が、不似合いだった。  
手をいれてピンを外すと、長い髪が波打って肩に落ちる。  
やわらかくて形のいい胸は、大きすぎず手の中にすっぽりおさまる。  
白くて滑らかな肌。  
細い手足、くびれたウエスト、むっちりとしたお尻。  
見えるところも見えないところも、全部ぼくは知っている。  
初音の全部は、ぼくのものなのに。  
 
「……市武さんとは、もう?」  
三条市武の、日に焼けた精悍な顔立ちを思い出す。  
聞く人の心を捉える、豊富な話題とユーモア、優秀な仕事ぶり。そしてさりげなく周囲に気を配る、誠実で優しい人柄はぼくも知っている。  
市武さんがその話術で初音を口説き、鍛え上げた胸の中に抱きしめるのだ。  
この唇を吸い、胸に触れ、そして。  
 
「どうだった?市武さんは」  
立ったまま胸を揉まれて、初音は頬を赤らめた。  
ぼくは服を着たままだから、まるで大きな人形にいたずらしているかのようだった。  
規則にはうるさい初音も、規則外のことではぼくの命令に従順だ。  
ぼくだけのものだったこの体が、いつのまに市武さんに奪われていたのだろう。  
 
「脱がせて」  
初音が答えないので、ぼくは別のことを頼んだ。  
今度は、初音は「かしこまりました」と答えた。  
ぼくのシャツのボタンを外し、肩からすべり落とし、洗濯もの用のカゴへ入れる。  
ジーンズを脱がせてクローゼットに吊るして風を通す。  
トランクスの中で、ぼくはもう半勃ちになっている。  
初音がそのトランクスに手をかけ、ぼくはジーンズを脱いだときと同じように交互に足を上げた。  
手順は、いつもと変わらなかった。  
 
初音は部屋に付いている小さなバスルームへ行ってバスタブにお湯を入れ、それが溜まるまでの間にぼくの体を洗う。  
シャワーで泡を流すと、今度はぼくが初音を洗った。  
ただし、初音がぼくを洗ったスポンジは使わない。  
泡だけを取って、手で洗う。  
首筋も、腕も、胸も、お腹も、背中も、お尻も、脚も。  
初音の全部を、ぼくの手が撫で回す。  
最初、初音は恐れ多うございますと抵抗したが、ぼくがこうすることを命令した。  
初音は黙ってぼくのしたいようにさせてくれる。  
 
どこか、いつもと違うことはないだろうか。  
うっかり、初音がぼくとしていたことではなく、市武さんとしていることをしてしまわないかどうか、注意して観察する。  
丹念に洗い上げると、初音が甘いため息をついた。  
今日は特に太ももの内側や背骨の辺りといった、初音の好きなところをじっくり触れた。  
お湯がバスタブからあふれそうになっている。  
 
初音の泡を流して、うっすらとピンク色に染まった体を前から抱き上げるようにして、一緒にバスタブに入る。  
両足を抱えるようにして、ぼくの腰に絡めさせる。  
向かい合った初音のピンク色の乳首を指先で触れた。  
開かせた脚の付け根で、ゆらゆらと陰毛がそよいでいた。  
隠してはいけない、と言ってあるから初音は恥ずかしそうに視線をそらしはしても、手で身体を覆ったりはしない。  
 
「いつ、暇を取るの」  
「・・・来週でございます」  
「来週のいつ」  
「…月曜日でございます」  
ぼくの二十歳の誕生日は、火曜だった。  
初音は、本当にぼくの担当ではなくなってしまう。  
そればかりでなく、この家からもいなくなってしまうんだ。  
ぼくはクスンと鼻をすすった。  
 
胸に触れられたまま、初音はぼくの頬を両手で包んだ。  
「…いけません。男の子は、人前で泣くものではございませんでしょう」  
優しく言われて、目が潤んでしまった。  
「初音はメイドじゃないか。初音の前で泣くのはいいだろ」  
「はい」  
初音はぼくの目元にキスして涙を舐め取ってくれた。  
「初音の前でだけでしたら。初音がこうしてさしあげますから」  
 
ああ、あと数日で二十歳になろうという男が、こんなにみっともなく泣くなんて。  
「でも、今日だけになさってくださいましね。これから直之さまが、どなたかに非難されるようなお振る舞いをなされたら、それは全部、初音のご教育が至らなかったのだと後ろ指を差されてしまいます」  
また、涙が浮かびそうになった。  
初音が自分のことを名前で呼ぶのは、ぼくの前だけ、しかも甘い気分になっている時だけだ。  
「…わかったよ。誰かに、初音を悪く言わせるようなことはしない。絶対」  
初音が、ぼくの唇にキスした。  
「ありがとうございます」  
「じゃあ、初音とこんなことできるのも、あと二晩だね」  
「…はい」  
「その後は、市武さんと」  
「……」  
「後学のために聞くけど、ぼくと市武さんとどっちがいい?」  
「……」  
「そりゃ、経験値は向こうのほうがずっと高いだろうけどさ」  
「……」  
「初音は、ぼくで満足してくれてたのかな」  
「……」  
「初音」  
腰を抱いて顔を初音の胸に押し付け、乳首を唇で挟むと、初音はお湯の中でぴくっと震えた。  
脚を動かして、初音の股間に押し当てる。  
 
「…直之さま」  
「なに」  
「初音は、市武さまとはなにもございません」  
「なんだって?」  
 
ぼくはまじまじと初音を見る。  
ひいき目に見なくても、初音はかなりの美人の部類だ。  
優秀なメイドとされるだけあって働き者だし気配りも優れている。  
うちで催すパーティや同年代の子女が集まる交流会でも、たくさんいる屋敷のメイドの中で、初音はその容姿でも働きでも目立っていたはずだ。  
大物を招いての食事会などで、給仕をする初音の尻を撫でるジジィは数え切れない。  
この初音を見初めて、結婚の話をまとめながら、なにもないとはどういうことだ?  
市武さんは、もしかしてなにか問題があるのか?  
 
「おかしいよ。初音になにもしないなんて、男じゃない」  
小刻みに脚を動かし続けると、初音が耐えられないというように崩れた。  
「直之さま…」  
バスタブの中で初音の華奢な体を抱き寄せると、初音はぼくの耳たぶを甘噛みした。  
「初音は、お二人の殿方と同時に…そんな女ではございませんもの」  
 
息を吹きかけるように、ささやいてくる。  
「悔しゅうございます…」  
脚の上で、初音のお尻がもぞもぞと動く。  
「初音がひとつずつ直之さまにお教え申し上げたことを、今度は直之さまが、担当メイドにお教えになるかと思うと」  
 
初音。  
呼ぶと、初音は潤んだ目でぼくを見つめた。  
「初音は、二十歳の直之さまの担当メイドになりとうございました。学校を卒業してすぐ、直之さまにお仕えしたかった…」  
メイド学校は、一年で終わる一般コースと、主人の担当メイドになれる二年の特別コースがある。  
初音が特別コースを卒業してうちに来た17歳の年に、ぼくが二十歳になっていたら。  
ぼくが、初音を躾けることができたら。  
 
きっと、初音はなにからなにまでぼく好みのメイドになっただろう。  
もちろん、今も初音はぼく好みだけど。小言を言うとき意外は。  
ああ、でもそうしたらずっとずっと手元においておくのに。  
 
三条の三男坊なんかに、渡さなかったのに。  
 
ぼくは初音の唇に自分の唇を重ねた。  
もう、ガマンできない。  
立ち上がると、初音は先に立ってバスタブを出て、タオルを持って戻ってきた。  
ぼくの体を拭こうとするのを抱きしめると、身をよじった。  
「いけません。ちゃんと拭かなくては、お風邪を召します」  
「小言か?」  
初音はくすっと笑った。  
細い人差し指を、ぼくの唇に当てる。  
「まだ、19でいらっしゃいますでしょう?初音の規則に従ってくださいませね」  
 
初音に体を拭いてもらってから、今度はぼくが初音を拭いた。  
そのまま抱き上げてベッドに運ぶ。  
仰向けに下ろして、いきなり覆いかぶさると、初音の手がぼくの肩を押した。  
「直之さま。初音を悪く言わせないで下さるのではありませんの?」  
どういうことだ?  
ぼくは手を止めて初音の顔を見た。  
 
色白な頬が湯上りで上気していて、とてもきれいだ。  
仕事用の控えめな化粧も落としてしまっているのに、長いまつ毛がくるんと上を向いている。  
「女性に、そんな乱暴なお振る舞いをなさってはいけません。将来、直之さまがお嫁様になさるようなお嬢様には」  
「優しく抱け、っていうんだろ?」  
初音の言葉を遮って、唇をふさいだ。  
初めてのときに、初音が教えてくれたとおりにしてやろうか。  
 
指先で触れるか触れないか距離で肌をなぞる愛撫。  
舌先で乳首をつつき、手を下げて脚の間にもぐりこませる。  
すぐには触らず、指先に柔らかな陰毛を絡める。  
両方の乳房を手のひらと舌先でなぶられ、感じるところの近くを触れまわされると、初音のお尻が動いた。  
もどかしいのだろう。  
 
初めて初音を抱いた時は、ぼくも夢中だった。  
女の子の身体というものの全てが新鮮だったし、やっと初音を抱けるということもあった。  
初音は一生懸命ぼくをセーブさせ、そうではないとか、ここに触れてくれとか指示をした。  
それはいつもの、お客様へのご挨拶は歯切れよくなさいませとか、お食事の時間に遅れてはいけませんとか言うような言い方ではなく、耳元で吐息まじりにささやくようなお願いだった。  
そして、ぼくを導くように、そこに押し当てた。  
不慣れなせいかなかなかうまくいかず、あせるぼくの背中を初音はずっと撫でてくれた。  
夢中で終えたときは、抱きしめてくれた。  
初音も少し、泣いていた。  
 
お上手でした。  
そう言って初音がベッドを降り、手早くシーツを剥ぎ取ろうとした。  
交換するのだろう、とぼんやり見ていると、そのシーツに初音の証が染み付いているのを見つけた。  
ぼくがシーツを奪い取ろうとすると、初音はメイドらしからぬ抵抗を見せたが、すぐに手を離した。  
あんなに一生懸命ぼくを導いてくれた初音が、本当は初めてだったなんて。  
 
悪友たちの見せてくれる雑誌や世間話によれば、初めてのとき女の子はとても痛いと聞く。  
初体験の彼女がひどく痛がって、最初はできなかったとか、泣かれてしまったとか、体験談を話す連中もいた。  
初音は、痛いなどと一言も言わなかった。  
ただ、ぼくがうまくことを運べるよう、男としての階段を上れるよう、一生懸命、一生懸命。  
メイド学校ではそんなことも教えるんだろうか。  
 
ぼくは片手でシーツを持ったまま、初音を抱きしめた。  
ガールフレンド以上の恋人がいないぼくに、初音は自分の身体を捧げてくれたのだ。  
 
毎日毎日初音を見ていて、欲情したことがないといえば嘘になる。  
うちのメイドの制服は実用が重視されているから、身につけているのは膝丈のエプロンドレスに髪を押さえるホワイトブレスというカチューシャくらいだ。  
それでも同じデザインの制服は、着るメイドによってずいぶん印象が違う。  
最近も学校を出たばかりのメイドが何人か入ってきたけど、とても子供くさく見える。  
ベテランの30歳を越えたようなメイドだと落ち着いて見えるし、ときどき色っぽくさえある。  
 
そして、初音のメイド服は、ぼくに見えないはずの胸元や太ももまでも想像させた。  
朝から晩までそういうことで頭をいっぱいにしているといってもいい年頃の男に、そんなメイドに世話を焼かれるのはある意味つらい。  
とうとうぼくは、初音はぼくの担当メイドなんだし、いろいろと教育するのが仕事なんだからと自分に言い訳してベッドに連れ込んだ。  
小言の多いメイドを少しだけ困らせてやれ、という気持ちがなかったとはいえない。  
 
そして、初音がどんなにぼくを思い、ぼくに尽くしてくれているかを思い知らされたのだ。  
 
ぼくの愛撫で感じてしまったらしい初音が、腰を揺らし始めた。  
お互い初めてだったあの夜から、ぼくは何度となく初音を抱いてきた。  
そして、お互いがお互いを思って、試行錯誤を繰り返し、もう離れられないというほど相性のいい身体になった。  
…ぼくは、そう思っていたのに。  
 
初音の中に、指を入れた。  
「あ……」  
初音は、あまり指で中を激しくされることを好まない。  
内壁をなぞるようにそっと動かす。  
そのうち、内側のやわらかいところが熱を持ってくる。  
初音の切なげな息遣いが聞こえてきた。  
「直之さま…」  
初音の手が、ぼくのペニスを握った。  
「お口にくださいませ」  
身体を起こしてぼくを仰向けにする。  
ぼくの指が初音の中から抜けた時、初音が小さく声を上げた。  
 
初音が、ペニスの先端に舌を這わせた。  
そのまま舐めまわし、手で竿をしごきだす。  
たまらず、ぼくはうめいた。  
「殿方が、女の子のような声を出されるのはいかがなのでございましょう」  
ちゅぽん、と音を立てて口を離してから、初音が呟いた。  
それは声を出してはいけない、というのではなく、一般的に上流家庭の子息としてふさわしい振る舞いなのかという疑問のようだった。  
「出ちゃうんだよ、初音がうまいから」  
「…ほうひう、ものらのれひょうか」  
再びくわえ込み、音を立てて吸い上げる。  
「そこ、いい。もっとしてくれ」  
言われたとおりに、初音はぼくのペニスをしごき、舐め、吸う。  
「く、うう、いいよ、初音」  
ぼく好みのこのテクニックを、こんどは市武さんに使うんだろうか。  
ペニスがぴくぴくと痙攣し、ぼくは初音の頭をつかんで引き離した。  
 
「上に乗って」  
初音は素直にぼくにまたがると、自分から腰を落として中に収めた。  
中はもうヌルヌルで、いくらかの抵抗と圧迫のあとで、全部が入った。  
この膣の中は、ぼくのサイズなんだ。  
ぼく専用なんだ。  
それなのに。  
初音が腰を前後に動かす。  
クリトリスを押し付けるようにしているらしく、はっはっという呼吸になった。  
指を入れて触ってやると、後ろに倒れそうになったので慌てて片手をつかんだ。  
「初音はここが敏感だよね。自分の好きなように動いてみていいよ」  
初音はぼくに片手を取られ、クリトリスをいじられながら腰を振り出した。  
奥に深く入れて、押し付けるようにするのが初音は好きだ。  
でも、自分で動いてイカせるのは悔しい。  
「あ、あん、ああっ」  
初音が声を上げ始めたところで、ぼくは下から腰を突き上げるようにして動いた。  
「きゃあっ、ああん、すごっ、あっ、ああっ、あああっ」  
ぼくが突き上げる動きと、初音がバランスを崩しかけて揺れるのとが合わさって、とてもいい。  
 
「だめだよ、そんな色っぽい声」  
「…あ、あんっ、でもっ」  
「声を出してもいいけど、ここだけだ。ぼくにだけ聞かせて」  
「んっ、はっ、あっ…」  
「市武さんに抱かれて、そんな声は出さないって約束しなさい。いいかい」  
「え…、あ、ああ……」  
「こんなふうに、いい声を出したり、こんなにいやらしく濡らしたり」  
「ああ、ああっ、あああ!ああんっ!」  
初音の中がぎゅっと締まって、ぼくの精液をしぼりとった。  
「く、イク・・・、出す!」  
「ああっ、初音も、初音もっ」  
ぼくたちは同時に絶頂を向かえ、ぐったりと抱き合った。  
「・・・いいかい、市武さんに抱かれてイかないと約束してくれ」  
初音が、困ったようにぼくの胸にすがりついた。  
「嘘でもいい。だって、初音が市武さんのところに行ったあとのことなんか、ぼくにはわからないから。だから、嘘でもいいから、ぼくに抱かれないと感じないと言って。ぼくだけが初音を気持ちよくさせられると、思わせてくれないか」  
 
初音は小さく、はいと答えた。  
 
それからもう一度、今度は正常位でぼくは初音を抱いた。  
気持ちよくなった顔や、揺れる胸や、上気する肌をじっくり見ながら。  
もうすぐ、初音はぼくのものではなくなるんだ。  
ぼくは、月曜までに消えてなくならないように強く、初音の肌に赤い跡を刻んだ。  
 
市武さんに、見せるために。  
 
ああ、ごめん、初音。  
きみがあれほど、上に立つ人間として器の大きな男になるようにと教育してくれたのに。  
ぼくは、小さい男だ。  
 
 
 
 
「直之さまの、二十歳のお誕生日パーティーのお世話が出来ないことが、心残りでございました」  
 
月曜日の朝、そう言って初音はこの屋敷を出て行った。  
 
使用人仲間に花束をもらって、後輩メイドに泣かれて、コックの特製お祝いケーキを抱きかかえて。  
ぼくは裏口から出て行く初音を見送ることは出来なかったけど、窓から見下ろしていた。  
初音は、門を出て実家からの迎えの車に乗る前に、屋敷を振り返った。  
窓の中のぼくが見えるはずはないのに、まちがいなく初音はぼくのいる部屋の窓を見た。  
 
さよなら、初音。  
次にどこかで会うとしたら、その時君は、三条市武の夫人なんだね。  
市武さんに、かわいがってもらうんだよ。  
ぼくの、初音。  
 
 
 
 
誰かが、部屋のドアをノックした。  
許可すると、そこに若いメイドが一人立っていた。  
今年採用された新人メイドの一人だろうか。見たことがない顔だ。  
メイドは、ぎこちなくぴょこんと頭を下げた。  
すらりとした細身の肢体に不似合いなしぐさだった。  
まだ長さの足りない髪をアップにしているせいだろうか、たくさんのピンを使っているのが子供っぽい。  
 
「小雪でございます。このたび、直之さまの担当メイドを拝命いたしました」  
忘れていた。  
最後に初音が選んでいった、ぼくの4代目の担当メイド。  
ぼくが、自分の手で育てなければいけない、学校を出たばかりの新人メイド。  
 
17歳の小雪は、ぼくを見てにっこり笑った。  
 
 
――――了――――  
 

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