「おにぎり」  
「おむすび」  
「おーにーぎーりー」  
「おーむーすーびー」  
「初めてあった時からそうだよな、お前」  
「あなたこそね」  
「なんでそんなにおにぎりを主張する?」  
「そっちこそなんでそんなにおむすびを主張するの?」  
「鬼が握ったからおにぎり、なんて安直なダジャレを言わせないためだ!」  
「安直って何よ! ホントにそうなんだから仕方が無いでしょ!」  
「角を出すなっ! 怖いっ!」  
「何よっ、先端恐怖症!」  
「しかたねえだろトラウマなんだからっ!」  
「……」  
「……なんだよ」  
「……あなた、わたしの事、愛してないのね」  
「……なんでだよっ!?」  
「わたしのすべてを愛してくれると言ったあの日の言葉は嘘だったのねよよよ」  
「露骨な嘘泣きだな……」  
「よよよ」  
「……嘘じゃないよ。あれは、本当の、本心だ」  
「ちょっと……な、何マジな顔して……」  
「だから、ホントは……お前のその角も含めて、俺は、愛したいと思ってる」  
「な、え、あー……ちょっと、ホントに、そんな……真剣な、顔で言われると……」  
「……けどなぁ、マジ怖いねん。とんがってるやん、角。今はまだ無理。  
いやもうホント無理。ギブアップ! レフェリーストップ! TKO! ズラじゃないぞ!」  
「台無しだー!」  
「というわけで、いつか克服するのでその時までよろしく」  
「じとー」  
「ああっ、鬼嫁がジト目で俺を見ているっ!?」  
「……ホントに?」  
「……ホントさ」  
「……克服、しなくてもいいよ」  
「へ? なんで?」  
「だって……克服しなかったら、ずっと一緒にいられるって事でしょ?」  
「克服してもずっと一緒にいるつもりだが」  
「……ま、まあ、そうなのかもしれないけど! ……わたしは困るもん」  
「困るって?」  
「だって、克服されちゃ……」  
「な、なんだ……? 嫌な予感が……」  
「あなたを弄んで楽しめないじゃなーい♪」  
「ああっ、鬼嫁はどSでしたよぉぉぉぉぉお!? こええええぇ! つのこええぇぇええ!」  
「ほほほほほ、女鬼様とお呼びっ!」  
「ゆ、許してぇぇぇぇええええ! 角しまってぇえええぇ!?」  
「じゃあ、許してあげるからご飯にしましょ♪ 鬼の握ったおにぎりよ」  
「……ちくしょう、絶対に克服してやる……そしてそのダジャレのセンスを矯正してやる……」  
「そういえば、聞き忘れてたけど、おむすびって呼び方にこだわるのは、なんで?」  
「そりゃお前……俺とお前の縁を結んでくれたのがコイツ――おむすびだからだよ。  
 って……真っ赤になって照れんなよ、こっちまで恥ずかしくなる」  
「い、今更何言ってんのよ……もう」  
「おむすびころりんすってんてん」  
「……や、やめてょぅ、もぅ……」  
「あの時俺がお前が落としたおむすび拾ってなきゃ、今こうしてる事も無いわけだし」  
「……もう、いい加減にしてよぉ……」  
「あはは、やっぱりお前……可愛い。凄く」  
「……もぉぉぉ!!」  
「ああ、角は禁止禁止禁止やめてぇぇぇえええぇええ!!!??」  
 
 こうして二人は夫婦として、末永く幸せに暮らしたとか暮らさなかったとか色々聞きますよ?  
 

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