ガッタン。  
 ゴットン。  
 
―――終点。終点です。  
 
遥か東北の山奥から  
長い旅路をへて、ついに辿り着いた大都会。  
 
「マヤ。ほら起きて。マヤ」  
私は膝で眠る妹のほっぺを優しくはたいた。  
「……………ん?お姉ちゃん………もう、晩御飯?」  
「もうっ。何寝ぼけてるのよ。それより、ほら。ついたわよ」  
お約束のボケを軽く流し妹を窓の外へ向ける。  
目覚めたばかりのマヤの目に華やかな光が飛び込んできた。  
「………わぁ…」  
小さな窓から見る優しい光の輝きは、  
私達の疲れた心を癒してくれるようだった。  
 
電車に揺らされて数十時間。  
初めて目にする大都会の光景だった。  
 
 
―――ここで時間は本日の朝までさかのぼる。  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
「こらぁーーー!綾!!麻耶!!」  
今日も我が家にママの怒りの咆哮が響き渡った。  
ママの怒鳴り声の音量はすさまじく、数少ない町内名物の一つだった。  
こうゆうことで有名になるのは、  
我が家の程度が知れてしまうからどうにかしてほしいところだ  
 
兎にも角にも…  
畳の部屋に呼び出された私こと坂之上アヤと、妹のマヤ。  
鬼の雰囲気を漂わせるママの前には、  
5点やら10点やらのテストの山がびっしりと並べられていた。  
 
「あーーー!また勝手に私達の部屋をあさったなぁ!!」  
「ママのバカッ!プライバシーの侵害だっ!」  
「勝手じゃありません!親として当然のことです!  
 それよりなんですか!この無様な点数は!!  
 とくにこれっ!0点なんてアホにも程がありますわ」  
(はぁ…またか………)  
「あんたねぇ!勉強もできなくて立派な人間になれるとおもってるの。  
 こんな点数しか取れないようじゃ行ける大学もないじゃないっ!  
 社会にでて会社で仕事するには学歴が必要なのよ。  
 このままじゃあなた達の人生、負け組の中の負け組。  
 せいぜいよくて年収200万コース、もしくはホームレスコースへまっしぐらよっ!!  
 まったく何度言えばわかるのあなたたちはっ!!」  
 
親の説教の前に私とマヤは二人してムッとした表情を浮かべた。  
 
勉強。学歴。点数。勝ち組。負け組。  
私達姉妹はそういったものに、ほどほど嫌気がさしていた。  
 
私達は日ごろから思っていた。  
こんなことをするのに何の意味があるのだろう…。  
人間の価値というものはこんな0〜100までの点数だけで決まってしまうのだろうか  
 
そもそも頭のいいとか、悪いとかいう定義とは何なのだろう?  
ただ教科書に書いてある物事だけ暗記して、  
教科書に書いてある通りに計算できるだけの人間。  
それが本当に頭のいい人間なのだろうか?  
そんなことができるのが本当に偉いことなのだろうか…  
 
違うと思った。  
 
だけど、そんなことを言ってわかるようなママではない。  
勉強すれば立派になれる。  
勉強すれば幸せになれる。  
幼いころから毎日のように言い聞かされ続けた言葉。  
いつの日か私達はその考えに反感するようになっていた。  
 
こんなテストの点数よりも  
もっともっと大切な何かがあるんじゃないかと………。  
 
続けられていくママの説教は、それ自体が呪いのようだった。  
もう暗記するほどに聞かされた言葉。  
テープレコードでも聞いてるように嫌気がさしてくる。  
これ以上聞いていては精神が殺られてしまうとおもった。  
 
「いいことっ!これからは学校に帰ったら1日4時間勉強しなさい!  
 そうすれば1年で1460時間も勉強したことになるのよ。  
 どうせあなたたち遊んでばかりでやることないんでしょ!」  
「いやだ」  
「ッ!」  
予想もしない言葉にママの言葉が一瞬つまる。  
「…アヤ…あなた今なんていいました?」  
ギロリと……鬼の視線が私を射抜いてきた。  
その気迫に飲み込まれないように必死に視線を返す。  
もう、あなたの言うことは聞けないと。  
「………勉強なんて私達には必要のないものだもん。  
 そんなのできなくても私達生きていけるんだから」  
マヤも涙混じりに抵抗した。  
「マ…マヤッ!」  
その言葉で、決戦の火蓋は完全に切られた。  
 
「そうそう。勉強なんてものは、所詮、他に何もできない人が  
 せめて勉強だけはできなくちゃって思いながらやるものだもの。  
 だから、勉強ができる人間なんてつまらない人間の証だわ。パパやママみたいにね」  
「そうだよ!お姉ちゃんの言うとおりだ。もう私達はママになんか騙されないんだからなぁ!」  
「アヤっ!マヤッ!」  
バチンとほっぺたを虐待される私達。  
今度は、力ずくで私達の言動を押さえつけようというのか。  
それでも必死に視線をママにおくる。こんなことで心が折れる私達じゃないと…。  
「…あなたたちは………」  
ワナワナと…ママの機嫌が悪くなっていく様子が目に見えてわかる。  
怖い。だけど、私達だってもうひけない。  
私達姉妹が反抗したのは今日が始めてのことだった。  
「私達には夢があるもん」  
「そうだよ一流の女優になるっていう夢が」  
「なのにママは…いつも私達を応援してくれたことはなかった」  
「な、なにが、女優よっ!あなたたち、もう何歳だと思ってるんですっ!!  
 いつまでもそんな子供の夢みたいなこといってるんじゃありません!このバカ娘がっ!!」  
「うるさぁい!親のくせに子供の夢を否定するなぁ!!」  
「なっ………」  
一瞬。ほんの一瞬だけど…鬼に差し掛かった暗い影。  
それがいったい何を意味していたのは私達にはわからなかった。  
 
突然鬼が吼えた。  
「もう、あなた達のようなアホな娘は知りません!出て行きなさいっ!」  
「で…でていけ………?」  
世界が遠くなった。  
子供に対して、出て行けという親に対して。  
もうこれ以上、この人と一緒に暮らすことは出来ないと思った。  
「フンっ!こんな家こっちから願い下げだわ。行こうマヤ!!」  
「う………うん。お姉ちゃん」  
 
―――決別。  
 
完全なる決別。  
こうして家から飛び出した私達は  
小さいころからコツコツ貯めていたお金を片手に  
大都会に出発したのでした。  
 
 
見たこともない高層ビル。  
鮮かに拡散する光。  
溢れかえる人の波。  
活気に溢れるその街は、  
私達に何か生きる力を与えてくれるようだった。  
 
「うわっ!!あれすごいわよマヤ」  
「ワォー!!今の見た!超イケメン!」  
「うわっ!芸能人が歩いてる!ムヒョー!」  
はしゃぐ私の後ろには不安そうな色を隠せないマヤ。  
「どうしたのマヤ?元気ないみたいだけど?」  
「………ねぇ…お姉ちゃん。私達…本当にこれでよかったのかなぁ…  
 パパとママ…心配してるかも…」  
「…マヤ?」  
マヤはもともと後ろ向きで泣き虫な性格で、  
どちらかといえば自分で物事を決められない子だ。  
飛び出してきたことに後悔しているのか。今にも泣きそうなマヤ。  
こうゆうとき妹の不安を取り除いてあげるのは、  
いつもお姉ちゃんである私の役目だった。  
「マヤ…人が人に説教するってのはね、  
 自分より身分を低いものを然りつけることで優越感にひたりたいか、  
 ストレスを発散させてるか、もしくは本気で相手が憎いときだけなのよ。  
 そんな親を両親にもった私達は不幸だったの。だから、これでよかったのよ」  
「うん」  
「それに私達には叶えなきゃならない夢があるんだから、こんなところで泣いてはいられないわ」  
「うん。そうだよねお姉ちゃん…ぐすっ」  
「ほらっ。だからもう泣かないの。まったくマヤは泣き虫なんだから」  
 
突然だけど、思い出したくないものを思い出してしまった。  
 
「たくっ。あのバカ親…ブツブツ。  
 立派な人間になれないとか、負け組みとか、ホームレスコースまっしぐらとか  
 どうしてそんな未来のことなんてわかるのよ!!  
 あの高慢な態度。あ〜〜〜思い出したら腹がたってきたわ!!」  
「まったくだ。人間の未来なんて誰にもわかるはずないのにね」  
「…?」  
突然横から入ってきた声は道端の一角で小さな店を開く占い師のものだった。  
人の未来を占うことを商売にしているはずの占い士が、  
人の未来なんて誰にもわからないことだと言う。  
その矛盾が妙におかしく、何故か親近感がわいた。  
近づいてみてわかったが、占い士は若く私達と同じほどの年齢に見えた。  
「ふーん。こうゆう占いを商売にする人って  
 老い先短い老人か、宗教活動に失敗した怪しい教祖とか  
 どっちにしても頭のネジが一本はずれた人のすることかと思ってた」  
「ひどいなぁ」  
「ねぇ。あなたこれで食べてるの?何か商売のヒケツみたいなものあるの?」  
「その辺は業務機密なのでお答えできません」  
「ケチンボ」  
「それでどうするんだい?占うの?占わないの?」  
「えっ…?う〜ん。どうしようマヤ?」  
「わたしはどっちでもいいヨぉ」  
妹の目がランランと輝いている。占いたいのか…。  
「それじゃあ。私達の夢がいつかなうのか占ってもらおうカナ」  
「いいよ………それじゃあ10000円」  
「えっ?今なんて?」  
「10000円です」  
「………ふっ…ふっ……」  
 
「ふ ざ け る な ぁ ー ー ー っ !」  
バンッと力いっぱいにテーブルを叩く。  
「行きましょうマヤ」  
「うん」  
プンプンと頬を膨らませてその場から立ち去ろうとする私達に占い師が後ろから呼びかけてくる。  
「まぁまぁ。君達が女優になるための先行投資だと思えばいいんじゃないかな?」  
「!!」  
即座に振り返る。  
「…な…なんで…どうして…私達の夢が女優だってわかったの?」  
「こう見えても僕は占い士なんだからそれぐらいわかって当たり前だよ」  
「………」  
「お姉…………ちゃん?」  
「や、やっぱり占うわっ」  
 
占いなんて不確定的なものは  
もともと信用するタイプではなかったが  
幼い姉妹が何にも頼らず大都会で生きていくのは  
聊か先行き不安だったのかもしれない。  
 
 
テーブルに作られた小さな魔方陣に  
古ぼけたタロットカードが一枚一枚並べられていく。  
「おおっ、何だか本物っぽいゾ」  
「しー。集中力が乱れるから」  
占い師に注意され、私はあわてて口を閉ざす。  
儀式めいたものが続けられていく。  
カードを置き換えたり、並べ替えたり、シャッフルしたりと………。  
そして最終的に、私達の前に向けられたのは、  
あるはずのない22番目のカード…裏に何の絵柄もないカードだった。  
「なにこれ白紙?」  
「白紙。つまり未知数を表すカードだよ。  
 君達の運命は余りに大きすぎて、  
 とても僕のような三流占い士が読み取れるものじゃないってことだね。あはは」  
キョトンとする私達。  
それが二秒か三秒か。  
我に返った。  
「インチキだ!お金かえせっ!!!  
腕は占い士の胸倉をつかんでいた。  
「ごほっごほっ………しょうがないなぁ…」  
そう言って苦し紛れに占い士が私達の目の前に示したカードは『塔』  
それは旅先による事故を暗示するカード。  
「ふむふむっ。  
 これ以上進めば取り返しのつかないことになる。  
 ひどい目に会う前にすぐにお家に戻ったほうがいい。  
 ……………と運命神様が申しております」  
「 ふ ざ け る な ぁ ー ー ー ! 」  
バキッボカッ  
「ギャー!お、オマワリさん助けてェ」  
「こらっ!そこ何やってる」  
「や、やばっ。ポリがきた。逃げるわよマヤッ!」  
「むぎゅう」  
妹の首根っこを掴んで全力でその場を後にした。  
 
「ハァハァ………」  
なんとかポリをまいた私達。  
危なかった。  
もう少しで女優として有名になるまえに、  
犯罪者Aとして有名になるところだった…。  
「つっかれたぁ…」  
「大丈夫?お姉ちゃん??」  
「ああっ…もう喉がカラカラだよぉ……マヤ…悪いけどジュース買ってきて」  
「うん」  
なんとか呼吸を整える努力をする。  
「ハァハァ…………それにしても…もう、夜なのに人がいっぱいいるんだなぁ…。  
 ……私達の町じゃあもう誰もあるいてない時間だナぁ……」  
「………お姉ちゃん…」  
「ん?」  
横にはエグエグと涙まみれの妹の姿があった。  
「ど、どうしたの!誰かに変なことされたの!!」  
即座に頭に血を上らせる私。  
「財布落とした…」  
「!!!」  
 
どうやら先ほどポリから逃亡している最中。  
ドタバタしているうちに落としてしまったようだ。  
こうして私達は早くも全財産を失ってしまった。  
 
当てもなく大都会を徘徊する。  
その内、足がもたなくなる。  
私達は駅の階段に腰を落ち着けた。  
 
ぐるるるるっと…。  
 
疲れきった体にお腹の虫も鳴り止まない。  
「お姉ちゃん…お腹すいたヨぉ………」  
「うん…………わかってる」  
「そういえば…晩御飯もまだ食べてなかったなぁ……」  
「朝ごはんも食べてないし、お昼もうどんだけだったヨ………」  
 
時刻は23時を回った。  
励ましあう声から力が失われていく。  
あまりの空腹さに身動きがとれない。  
視界がだんだんぼやけてきた。  
空腹でアタマまで空っぽになって、  
何も考えられなくなってきた。  
妹はすでにぐったりとしている。  
ああっ…こんなはずじゃなかったのになぁ…。  
本当なら今頃ホテルで豪華なディナーが私達を待っているはずだったのになぁ………。  
 
だんだんと絶望色が強くなっていく。  
何とかしたくても体に力がはいらなくて……。  
私達の女優になる夢はこんな所で朽ち果ててしまうのだろうか…。  
「お〜い?お〜い?」  
「えっ…」  
ふいに飛び込んできた声で意識が戻る。  
私達の周りを5人…いや6人の男性が囲んでいた。  
奇抜なファッション。各人それぞれ着色された髪の色。  
少なくとも私達の町にはいないタイプの人間。  
「………お姉ちゃん…」  
妹がまるで異性人にでも遭遇したかのように怯えている。  
ぐっと妹を抱きしめ、キッと目の前の男達を睨み付けた。  
もしもの時にはマヤだけでも守ってみせると決意する。  
 
男達のリーダー各であろうヒゲの男が語りかけてきた。  
「大丈夫かいキミたち?ぐったりしてるけど気分でもわるいの?」  
それは驚くほどに優しい声だった。  
「よーく見るとキミ可愛いねェ。年いくつ」  
「えっ…可愛い…ホント?」  
ぐるるるる  
こんな時にも私のお腹の音は鳴ってしまい、顔は朱色に染まる。  
「なんだ?ひょっとして腹減ってんのか?」  
うんうん、と涙混じりに必死に首を縦に振る私達。  
「一緒に来るか?」  
「やったぁ!まじぃ!?超ラッキー!!」  
 
頑張ってる私達を  
やはり女優の神様が見捨てるはずはなかった。  
 
こうして男達と向かった場所はカラオケ屋だった。  
「ふーん。アヤちゃんとマヤちゃんは女優になりたいのか」  
「じゃあ、何か歌ってよ」  
「うん。いいよっ!」  
女優を目指すもの、最新の曲ぐらい知っていなければならん。  
私達は男達の前で日ごろの練習の成果を発揮した。  
「おっ。うまいじゃん。HAHAHA」  
私達の声に満足したのかヒゲの男は上機嫌になった。  
そこで料理も届く。  
「ご褒美だ。じゃんじゃん食べてくれ」  
「ありがとうお兄ちゃん」  
「あはは…未来の大女優にひもじい思いをさせちゃあ申し訳ないからナ!」  
「親切な人がいてよかったねマヤ」  
「うんお姉ちゃん」  
私は彼らの人情にほろりと涙をこぼすと、目の前に出されたお皿を平らげた。  
 
 
――そして数時間後。  
 
場のテンションは衰えるどころか高まる一行。  
「アヤちゃん。うまいよ!本当うまいよ。最高だよ。YAHAHA」  
「エヘ。まあね」  
男達におだてられ私は得意になっていた。  
「アヤちゃんは女優になりたくてたった二人で田舎からやってきたの?」  
「うん。そうよ」  
「でもご両親、心配してるんじゃないの?」  
「そんなこと絶対にないって。  
 きっと私達がいなくなって清々してるわよ。  
 まぁ、それは私達だって同じなんだけどね。  
 とにかく、すっごくヤなヤツでさ。  
 いつも私達の顔みるたびに勉強しろ勉強しろってうるさいの。  
 ……(略)………  
 だから勉強なんてできなくったって幸せになれるってことを証明してやるんだから」  
「ふぅん。そうかい」  
「でも二人とも可愛いし、歌もうまいから本当に女優にもなれるんじゃないか?」  
「ホント!」  
女優になるという夢。  
今まで自分達だけで言ってはしゃいでいただけだけど、  
他人に言われたおかげで自信がついた。  
やっぱりこの街に来てよかった。  
 
ガチャリ。  
扉を開ける私。  
「…ん?どこに」  
「えと…その…ただのお手洗いです」  
「………じゃあ、俺が案内してやるYO」  
「あっ…あの。一人で行けますから…」  
 
―――。  
 
ジャー。  
「よかった。外見と違っていい人達だ  
 …マヤもなついてくれてるし…。  
 やっぱり人はみかけで判断しちゃあ駄目ね!  
 ………。  
 そうだわ……家を飛び出してきたこととか  
 ………財布落として無一文になったこととか相談してみようかしら…  
 うん、きっと……力になってくれるわ!  
 いや…まって!  
 ひょっとしたらあのヒゲの人。  
 ああ見えて音楽業界のすんごく偉い人なのかもしれないわっ!!  
 うん、そうよ!きっとそうよ!!  
 私の歌唱力を高く見てくれてるし、  
 なんか普通の人とはでてるオーラが違うもん!  
 ………ひょっとしたら明日にも女優デビューとかできちゃったりなんかして。  
 それで初CDが100枚ぐらいうれて、いきなりビックスターになったりなんかしちゃってェ!  
 きゃ!!きゃ!きゃ!  
 バカな両親達がテレビに映る私達の姿を見て、面玉ひんむく姿が目に浮かぶわ。  
 それでお金がはいったら10億円ぐらいの豪華な豪邸でも建ててやって  
 そこに済ませて一生私の恩恵による屈辱の日々をおくらせてやるんだからぁ!!  
 …それで、それで…………(略)」  
 
トローンとした妄想に10分ほど浸り、現実に戻る  
 
私はルンルン気分で戻ってくると  
「おねえちゃん。なんだか せかいが まわってみえるヨぉ」  
「!?」  
そこには酔っ払ったマヤの姿があった。  
「こ、こらぁ!誰よマヤにお酒飲ませたの!!  
 マヤはまだ未成年なのよ」  
「だいひょーぶだヨぉ。わたしぐらいの ねんれいの おにゃのこなら  
 みんなのんでるヨぉ」  
頭がぐらんぐらんしているのはどう見てもただ事ではなかった。  
こいつ…私がいない間に何倍飲んだ!?  
「ほらっ。アヤちゃんもどうだい?お酒飲んだことある?」  
「の、飲みませんっ!そんなもの!」  
私は全力で否定した。  
 
夜はさらにふけていく。  
 
―――時刻は深夜3時。  
 
「さーーーーて。それじゃあ、そろそろアレをやろうかな」  
「イエェーーーーーーーー!!」  
いきなり男達のテンションが今までとは比べ物にならないほどに上がった。  
「そうだなぁ…6:2だから………フフッそれじゃあ4Pか♪」  
「さて…問題はどっちをとるかだな」  
「あれは絶対両方とも未開通だぜ」  
(エ?エ?何をやるの??)  
置いてきぼりの私とマヤをよそに男達の会話は進んでいく。  
「じゃあ。おれマヤちゃんで」  
「ふんっ。このロリこんめ」  
「うるせぇ。マヤは俺のものだ」  
何故かジャイケンをし始める男達。  
なんだかやけに盛り上げっているようだがこれは一体…。  
 
たまらなくなって聞いてみる。  
「ねぇ…いったい何を…しようとしてるんですか?」  
「どうしたんだいアヤちゃん?変な顔しちゃって」  
「あっ…ヒゲの人………?」  
「………」  
「………」  
どうしてなのだろうか、次の言葉が浮かばない。  
よくわからないけど…なんだかこれ以上聞いてはいけないような…。  
いや、この場にいてはいけないような気すらしてきた。  
 
「あ…あの………私そろそろ帰ります…」  
「は?」  
「…で、ですからマヤもなんだかぐったりしてるし」  
「おねーしゃま わたしならまだ ぜーんぜん だいひょーぶだヨぉ」  
そういって、再びビールを飲み干すマヤ。  
「こ、こらぁ!!」  
ゴツンと拳骨をいれ、マヤをお姫様だっこする。  
「それじゃあ。みなさんのご好意は忘れませんから。おやすみなさい」  
「おやすみぃ。じゃあまたねぇ。おひげのひとぉ」  
「おいおい。人に飯おごってもらっといて、  
 まさかこのままただで帰れるなんて思ってねェだろうな?」  
この時………和やかな表情を崩さなかったヒゲの男の表情が始めて変わった。  
「えっ………」  
態度が豹変するヒゲの男は一瞬、別人かと思った。  
「こんな夜中まで男に付き添って遊ぶってことがどうゆうことか  
 もちろん知っててきたんだよなぁ?」  
ヒゲの男はギュっと加えていたタバコを灰皿に押し付けた。  
「……エ………エ?」  
ゴクリと生唾を飲む。  
男達はみな欲望のままの行動する猛獣のような目を私達に向けている…。  
ゾクリと背中が氷水でも入れられたように冷えた。  
 
―――まさか…この人たち私達を○○○しようと…。  
 
その言葉が浮かんだ瞬間、私は妹を担いだまま…走った。全力で入り口へと。  
 
走る。  
わき目も振り返らず。  
全力で床を蹴る。  
 
男達は微動だにしない。  
「おいおい。逃げられるとでも…………」  
ヒゲの男の周りが空間が異質に曲がりだす。  
「おもってんのかYOッ!!」  
ドンッ!  
「んっ!」  
男が言葉を発した瞬間、私の体は床にへばりついた。  
「な…なに…………これ」  
体が鉛のように重かった。  
「う…あっ……………」  
まるで重力が私達の周りだけ10倍ほどになったかのような…そんな感覚。  
いや、それは幻覚などではなかった。  
信じられないことに私の周りの床が…まるで月面のクレータのように陥没している。  
「………あ…や…あああ…」  
すさまじい重圧に押され、私は叫びをあげることすらできない。  
「お姉ちゃん…………な…なに…これ…………」  
(マ…マヤも…なの…?)  
こんなこと私にだってわからない。  
だけど何かに巨大なものに圧迫されているように私達は動くことができない。  
背骨がギリギリとなっている。  
圧迫された胃から、吐き気のようなものまで込み上げてきた。  
 
ガジャリ。ガジャリ  
 
後ろから機械がかみあうような音が聴こえている。  
男達はホームビデオのようなものを取り出して組み立てていた。  
私の耳に男達の会話が、あまりにもはっきり聞こえてきた。  
カラオケの音量はさっきから下がっていない…。  
「こないだみたいに、途中で切れるってのは無しだぜ」  
「バッテリーこれで、もつかなー?」  
「ああ、それだけあれば十分だろ」  
(…な…何を言ってるの…?この人たち)  
ここに居てはいけない。  
一刻でもはやくこの空間から逃れなければ  
本当にとんでもないことになってしまうのはわかっているのに  
逃げようとして必死に腕と足に力を入れても体は動いてくれない。  
どうしようもないことがわかってくると、  
どうしようもなく恐怖が込み上げてきた。  
奥歯はガチガチと振るえ、目からは玉のような涙がこぼれていく。  
あまりに異常な状況に、言葉すら発することすらできない私に  
男達は下卑た笑いを浮かべながらゆっくりと歩み寄ってきた。  
「女優になりたいっていってたねェ」  
「それじゃあ僕達が女優に育ててあげるよ」  
「あっ………ああ…………」  
「た だ し A V 女 優 だ け ど ね ! !」  
「いやああああああ」  
 

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