「くっ、はっ……」  
「ほれ、尻尾の先、気持ちよかろう、そろそろ尻尾に絡め付かれたいのではないか?」  
 
快感に屈するまいと気を張る譲に、悪魔のささやきが続くが、  
 
「ふむ、おぬし、本当はもっと虐めて欲しいのではないか?」  
 
陽炎の一言に思わずギクリとする。  
 
「もっと虐めて欲しくて我慢しているのではないか? どうじゃ?」  
「そっ、そんなことはっ……あうっ」  
 
否定の言葉を発した瞬間に尻尾が体をさすり、ビクリと反応する体を愉快そうに眺める。  
 
「ふふふ、尻尾の先が触れただけというに、可愛いのう」  
 
 ついっと突付かれるたびに体中の快感が刻み込まれる。  
何度も何度もそれは繰り返され、そのたびに体が反応してしまう。  
 
「ほれ見ろ、お前は女に虐められて感じる変体なのじゃ」  
 
 冷静ならば受け流せる言葉も、極度の緊張状態にある今はそうすることもできず、  
刻み込まれる快感と同時に、頭の中に声が響いてくる。  
 
“屈してしまえ、堕ちてしまえ、私を求めろ……さあ……”  
 
何度も何度も頭の中に届く声は、譲から正常な判断力を奪っていく。  
 
(触られたい、あの尻尾で思いっきり触って欲しい、包み込んで欲しい)  
「どうじゃ、きちんとおねだりできたらもっと虐めてやるぞ?」  
 
 耳元での優しいささやきは譲の心を強く揺さぶるが、  
心の何かが欲望に従ってはいけないと警鐘を鳴らし続ける。  
 
「うくっ、いや、この程度じゃ、雪風や陽炎と変わらないですよ」  
 
 この強気の姿勢だけが譲にできる唯一の、そして最後の抵抗だった。  
喉の奥から一杯の力をこめて言い放つと同時に尻尾の動きが止まり、一瞬の静寂が訪れる。  
 
「ふふっ、うふふふっ、うふふふふふふっ」  
 
静寂の後、体をまさぐる動きを止めていた陽炎が、怪しい笑い声を発した。  
 
「楽しい、楽しいぞ、相手が抵抗し、悶える様を見るのがわしの楽しみよ!」  
 
 突然、今までつついていただけの9本の尻尾が一度に襲い掛かる。  
背中には陽炎の体が密着したまま、ふかふかした尻尾の感触が体の表面を動き続ける。  
外からは、譲と陽炎が尻尾で出来た繭に包まれたように見える。  
 
 繭の中では快楽の宴が繰り広げられ、敏感になった肌をふかふかのしっぽが蠢く。  
体の表面をしっぽのやわらかな感触が突き抜け、  
先ほどとは比べ物にならない快感の波に身をよじらせる。  
快感に対してだけ敏感になった神経が、一本一本の細かい毛の感触まで拾っていく。  
 
「どうじゃ、待ち焦がれた分だけ、その悦びもひとしおであろう」  
「うわっ」  
 
 体の表を尻尾に任せた陽炎は、今度は譲の背中を指で優しくなぞり始めた。  
腹と同じように、指になぞられた神経が、快感に対して敏感になってゆく。  
体の正面は9本の尻尾に、裏面はしなやかな指の動きに弄ばれる。  
 
「ひぃぃぃっ、ああっ」  
 
 背後では、背骨の辺りを下から上へと舐め上げた舌が、縦横無尽の動きを見せ、  
前後からの快感の挟み撃ちを受ける形となった。  
舌の通過し、わずかに唾液の残った部分がジンジンしびれ、断続的に快感を与える。  
 
「もう、おかしくなるっ」  
「良いぞっ、おかしくなってしまえ、壊れてしまえ」  
 
 首筋を舌で舐めながら、豊満な胸を俺の背中に押し付けて体を上下させる。  
胸のやわらかい感触、乳首のわずかな突起が背中から譲を攻め立てた。  
 
「うっ、でるっ」  
 
ついには、下半身に一度も触られることなく、絶頂にまで高められた。  
しかし、  
 
「だめじゃ」  
 
 陽炎が言葉を発すると、誰も触れていないイチモツの根元が急に締め付けられ、  
行き場を失った精液が譲の中で暴れまわる。  
突然の痛みに体をくねらせようとしたが、尻尾に包まれた譲の体はビクともしないが、  
その痛みのせいか、飛びかけていた意識が快楽の海から引き上げられ、  
正常な判断ができるようになる。  
 
「上半身だけで達してしまうとは、なかなか素質があるのぅ」  
 
再び、陽炎が優しい声でささやく。  
 
「だが、これは罰じゃ、簡単にイかせては褒美になってしまう?」  
 
 発言から察するに、何か術のようなものを使って射精を止められたようだ。  
陽炎は簡単にといったが、譲は今まで体験したことのない快感にさらされながらも、  
イけない苦痛を味わっている。  
 これ以上この刺激にさらされ続けたら、どうなるのか考えも付かない。  
 
「では、今度は下半身を攻めてやろうぞ」  
 
 今度は9本の尻尾が譲の体を浮かせ、器用に下半身の服を剥いでゆき、あっという間に  
全裸にされた譲は、尻尾によって空中で磔にされた。  
四肢を尻尾に巻きつかれ、体や顔にも絡み付き、顔にまきついた尻尾のせいで周りの  
状況は一切確認できず、次に何をされるのかわからない状況が譲を更に興奮させた。  
 
「ほほっ、こんな状態でも興奮できるとは、たいした変態じゃな」  
 
興奮の中で大きく勃起した譲のモノを見て、陽炎が言い放つ。  
雄雄しくそそり立つモノをうっとりとした瞳で眺めつつ、尻尾はさらなる行動を開始する。  
 
「うっ、ひやぁぁっ」  
 
 空中で磔にされた体に、何本もの尻尾が巻きついた。  
手の先から足の先まで尻尾が絡みつき、しゅるりしゅるりと這い回ってゆく。  
尻尾の先端で撫でられるのとはレベルが違う。  
敏感な体中の神経を、尻尾に生えた無数の毛、その一本一本が確実に犯す。  
 
「はっ、あうっ、あっ、くっ」  
 
 尻尾の動きに呼応して譲の呼吸が荒くなり、脳に送られる酸素の量が減っていく。  
体中をランダムに攻め立てられるが、未だにペニスには何も触れていない。  
いきり立ったまま放置される俺のペニスだったが、突如、ペニスの先端に何かが触れた。  
おそらく、尻尾の先端が触れたのだろう。  
 ようやくペニスをいじってもらえるのかと期待したが、先ほどのように体を弄られる  
だけで、それからペニスへの刺激が無く、しばらく快感に悶えていると、  
今度は続けざまに何かが触れたが、またしても空白の時間が訪れる。  
 
「あっ、くっ」  
 
譲は、ペニスへの直接の刺激を欲し、無意識に太ももをすり合わせていた。  
 
「そんなに足を動かして、どこに何が欲しいのじゃ?」  
 
陽炎の言葉で我にかえるが、自分の行っていた行動に、顔に血が上るのを感じていた。  
 
「なっ、なんでもない」  
 
 思わず強気の発言をしてしまうが、その強がりは見抜かれている。  
陽炎の怪しい笑みが、さらに深みを増した。  
 
「顔を赤らめて愛い奴じゃ、じゃが、素直になれん子にはさらなる仕置きが必要かの」  
 
 拘束されていた顔が開放されたかと思うと、今度は首に絡みつき、  
譲は無理やり自分の下半身を向かされる形になると、  
両足に絡みつき、やさしく愛撫していた尻尾が足を締め付け、股を開こうと力をこめた。  
 
「うわっ、やめっ」  
 
 疲労した譲に抗う力は無く、譲の眼前でゆっくりと股が開いてゆく。  
陽炎の尻尾なら、力技で一気に出来そうなものだが、それをやらないのは譲を  
じっくりと辱めるためだろう。  
 自分の無力さ、人の非力さ、そして、獣人という種族の恐ろしさを再認識し、  
怯えた瞳で見続けることしかできない。  
 
「恐れるな、恥じらいも快感のひとつ、思い知らしてくれよう」  
 
 譲は自分の無力さに耐え切れず、最後はあっけなく尻尾の動きに従った。  
開かれた自分の股、そこに見えるには、射精を許されずにいきり立ったイチモツ。  
 
 更にその先には妖艶な笑みを見せる陽炎の瞳と楽しそうに揺れる狐耳……  
股の間から陽炎の顔がニョッキリ現れて、譲のイチモツを凝視した。  
 
「ほぉ、イチモツから我慢汁が溢れて輝いておる、まるで射精しておるようじゃな」  
 
譲は、恥ずかしさに陽炎と目を合わせることが出来ないでいたのだが、  
 
「ほれっ、しっかりとこっちをみんか」  
 
 首根っこを押さえた尻尾に引っ張られ、無理やり顔を合わせる形となった。  
視線を合わせないように瞳をずらしてわずかな抵抗を試みるが、  
陽炎から発せられる無言の圧力に耐え切れず、どうしても視線を合わせてしまう。  
琥珀色の輝きを見せていた陽炎の瞳は、今は不気味なほど赤く輝き、その瞳を見ている  
だけで、自分が侵されているような感覚に陥っていた。  
 いや、陽炎は実際に瞳で犯しているのだろう。  
その、交差する視線の間に数本の尻尾が舞い降りてきた。  
譲と陽炎との視線の間で揺れ、いつでもペニスを愛撫できる体制になる無数の尻尾。  
 
「おや?何を期待しているのじゃ?」  
 
 自分では気が付かなかったが、譲は何かを待ち焦がれるような眼をしていたのだろう。  
それを見透かしてか、尻尾はゆらゆらと揺れるだけで、決してペニスに触れることはない  
 
「さっきも言ったであろう? きちんとおねだりできたら……イかせてやるぞ?」  
 
 譲は答えず、無言のまま、ただただ揺れる尻尾を見続ける。  
陽炎も、未だに抵抗を続ける譲におもしろみを覚え、さらな行動に移る。  
 
「ふふふっ、こんなに楽しいのは何年ぶりか、もっと楽しませておくれや」  
 
 陽炎は、自分の顔を股の間に近づけると、顔を落とした。  
股の間から見えるのは顔の上部と、ピコピコ動く狐耳。  
陽炎が見ているのは譲のペニスではない。  
譲は、陽炎が何をしようとしているのか察したが、尻尾に四肢を固定され、  
空中で磔にされていては何もできない。  
これから何をされるのか、できる限り考えないようにしていたのだが、  
 
「ふーっ」  
「!!」  
 
 予想していた通り、尻のあたりに強烈な快感が突き抜ける。  
陽炎が息を吹きかけたようで、思わず尻の穴をすぼめてしまうが、  
吹き付けられた冷たい息を感じただけでイきそうなほどの快感である。  
術で射精が封じられているため、射精する事は出来ないのだが……  
 
「ふふふっ、貴様の‘ココ’も、性感帯に変えてやろう」  
 
 陽炎は自分の人差し指を口の中に入れると、ゆっくりと舐めまわし、  
唾液にまみれた指の、その先を尻の穴に近づけてゆくと、  
予告も無しに、唾液に濡れた指を譲に挿入した。  
 
「ひっ」  
 
 譲は、自分に与えられる快感を、ただただ受け入れる事しかできないのだ。  
尻から異物が進入する違和感、普段なら嫌悪感を覚えるはずの感覚が、  
快感として脳に伝えられる。  
 
「まずは、ひとつめ」  
 
 陽炎の人差し指は第1関節まで挿入されているが、それ以上奥へは一気に進めず、  
指先を出したり入れたり、入り口を馴染ませるようにゆっくりとピストンを行う。  
唾液で滑った指先が出入りする度に、譲は声を噛み殺しながら喘いでいた。  
 
「これこれ、この程度で悶えては後がもたんぞ、次は、2つ目まで」  
 
 続いて、予告通りに第2関節までが挿入された。  
ただ出し入れを行うだけではなく、指先を折り曲げて穴を広げるような動きをさせ、  
指先を押し付けながらの動きは、まるで何かを探しているかのようでもあり、  
陽炎の指が譲の中にある“あるところ”に触れた瞬間、体が仰け反るほどの快感が奔った。  
 
「見つけたぞえ、ここがお前の弱点か、ほれほれ」  
 
 そこは、男の性的な弱点のひとつ、前立腺。  
体の内側から快感の元を直接刺激されるが、相変わらずイくことは許されていない。  
それからもズブズブと指を奥まで挿入し続け、ついには人差し指が全て収まった。  
快感を押さえるため尻に力を込めるが、それは陽炎を喜ばせる事でしかない。  
 
「おやおや、こんなに締め付けおって、貴様は尻が好みなのかえ?」  
 
 今度は奥まで入っていた指を一気に引き抜き、すぐさま挿入を再開する。  
腸液で滑った陽炎の指は譲の中を出入りすると、その度に恥辱という名の快感が送られた。  
そして、そのままピストンを繰り返すだけだと思っていたら、不意打ちとばかりに、  
指を2本に増やして一気に挿入する。  
 
 指を動かしながら、身悶える譲の表情を見て楽しそうな顔をしている陽炎であるが、  
与えられる快感とイけない苦痛に身を捩らせる譲のいたいけな表情は、  
陽炎の心をさらに燃え上がらせた。  
 
「おや、これはすまんかったのう、体の方が寂しそうじゃ、ほれっ」  
 
 合図と共に、譲の眼前で揺れていた尻尾が、体を蹂躙するために這い回る。  
体を触られるだけでも絶頂しそうな快感であるのに、尻の穴からも責められている。  
四肢を固定され、体中を尻尾が這い回り、尻を指で犯される。  
さらには自分の痴態を見ることを強制され、萎える事の無いペニスは  
イクことを許されずに勃ちつづけた。  
 
「さて、ここを弄るのはこれまでにしておこうか」  
 
捏ね繰り回していた指を一気に引き抜いた瞬間、‘アッ’と、思わず口から声が漏れる。  
 
「そんな残念そうな顔をするでない、“今宵は”ここまでなだけじゃ」  
 
その言葉に、再びこの行為をしてもらえると言う期待と不安を覚えるが、  
陽炎の行為はとどまる事を知らない。  
 
「しもうた、ワシとした事が、大切な事を忘れていたぞ」  
「大切な……こと?」  
「えいっ!」  
 
 尻尾の一つが、譲のへその辺りに触れたかと思うと、陽炎が気合の篭った声を上げ、  
それと同時に、尻尾から譲の体内へ力の波が押し寄せる。  
 雪風や時雨との行為でも感じたのと同質であるが、数倍のエネルギーを感じ、  
拒絶できぬ体はビクビクと震えながら、ある変化を見せる。  
   
 人には存在しないはずのもの、獣にしか存在しないはずのモノが、  
譲の頭と尻に姿をあらわしたのだ。  
 
「うっ、まさか」  
「くくっ、人の身でありながらソレを生やす者は、わしも久々に見る」  
 
 そう、時雨と初めて遭遇した際に生えるようになった尻尾と耳。  
狐のソレが譲の体からニョッキリと姿を現していた。  
 無論、拘束されている譲に自分に生えたモノの姿など見えはしないが、  
今までに無い器官から脳に送られる電気的な信号は、一度経験したら忘れられぬものだ。  
 
 尻から手を引いた陽炎は、自らの波動を送り込んで生み出した耳と尻尾を満足そうに  
見つめると、新たな獲物の出現に対し、蠢く己の尻尾と共に喜びの表情を見せた。  
譲も、度重なる雪風との行為で、そこが彼女達の弱点である事は知っているが、  
今まで自分のソレを弄られた事は無かった。  
 見た目の幼い雪風ならまだしも、勝気な時雨でさえ、耳や尻尾を弄られただけで悶絶し、  
絶頂の潮を吹いては恍惚の表情を見せていた。  
 ただ、眼前にいる陽炎は、弱点であるはずの尻尾を9本も持ち、それを使って譲の体に陵辱の悦びを刻み込んでいるわけだから、必ずしも弱点とはいえないのだが。  
 
「お主、雪風の尻尾と耳を弄るのが好きであったな」  
「ひっ、お願いしますっ、それだけは、やめ……」  
「もっとして下さいと言うようになるまで、煽ってやろう」  
「あっ、あああっ、ひあぁぁぁっ」  
 
 途端に始まる、叫び、悶絶。譲の耳と尻尾に、陽炎の口と複数の尻尾が襲い掛かる。  
興奮からかピンと張った譲の尻尾に、グルグルと巻きつくような形で陽炎の尻尾が  
覆いかぶさると、そのまま回転を始める。  
 
 毛と毛が触れ合い、絡みつく感触。  
強く締め付け、引っ張ったかと思うと、優しく、恋人の顔を撫でるかのように  
滑らかな動きを見せ、強弱を付けた動きが譲の尻尾を犯す。  
譲の耳には、陽炎の口が這い回り、時には吸い、時には甘咬みしながら  
2つ並んだ三角の山を唾液に濡らす。  
唾液に濡れた耳の毛が、尻尾の起こす僅かな風を拾うだけで、言葉にならない絶叫を上げ、  
声を詰まらせる。  
 
「中々に雄雄しいではないか、しかもこの感度」  
「ひあっ、やめっ、もうやめっ、ひあぁあぁっ」  
「ふふ、こうして陽炎を虐めて楽しんでいたのだろうが、自分で味わうのもよいだろう?」  
 
 譲に生えた尻尾に対する責めも、時が立つにつれて巧妙さをましてゆく。  
最初は一対一であったのが、いまや一対三となり、一本が譲の根元をガッチリと掴み、  
別の二本は輪を形作ると、根元から先に向けて、シゴくように上下動をくりかえす。  
 ペニスの根元をつかまれ、2本の腕でしごかれているのと同じ状況であるが、  
毛と毛が絡み合い、縺れ合う感覚は、その比ではない。  
 
「これ、首を揺するでないぞ、狙いが付けられんではないか」  
「うっ、ひあぁ」  
   
 譲の首に巻きついていた尻尾が強く締め付けると、譲は天を仰いだまま  
顔を動かせなくなる。  
 
 陽炎は、譲の尻尾への愛撫を続けつつ、耳を攻めていた口を離すと、  
涎まみれになった譲の獣耳が、ビクンビクンと性器のように微動する。  
そこに、鎌首をもたげた2本の尻尾がゆっくりと距離を詰め、  
 
「ひっ、ぎやぁぁぁっぁ」  
 
 2本の尻尾が飛び込んだのは、譲の獣耳、それも、耳の穴であった。  
狐耳だけではない、人としての耳にも尻尾の先端が入り込むと、ドリルのように回転し、  
耳の奥深くへと侵入を開始する。  
   
「必殺の耳掃除、貴様の羞恥心も、そこから全て掻きだしてやろうぞ」  
 
 人としての耳はとかく、獣の耳の穴は、一体どこへ通じているのか、  
脳天から快感を打ち込まれている譲にはそのようなことを考える事はできない。  
 
「はっ、はっ、はっ、はっ、あっ、ひああっ」  
 
 4つの耳から続けざまに与えられる快楽の波。  
それらを放出するための堰は陽炎によって堅く閉ざされ、行き場を失った波は  
譲の体内で廻り続ける。  
 終いには、脳みを尻尾によって掻き出されているような感覚となり、口の端から  
だらしなくよだれを垂らし、思考が停止する。  
 このまま数分、いや、1分も続けていれば、譲の心は完全に陽炎のモノとなっていたが、  
陽炎は、譲の心が壊れる直前、全ての愛撫をピタリと止めた。  
 
「はっ、はっ、ふぅ、ふぅ、はぁ」  
 
 責めては引き、引いてはまた激しく責める陽炎。  
しばらくの休息と共に意識は回復を見せるが、体に滾る興奮は収まるどころか、  
時間が経つにつれてその度を増した。  
 
 一時の間を挟むたびに強くなる陽炎の愛撫は、次は何をされるのかという恐怖を、  
新たな境地へ導かれる期待へと変化させ、恨めしげに陽炎を見る譲の瞳も、  
“なぜもっと犯してくれないのか”と、さらなる行為を望む、オスの光を帯びている。  
   
 最早、譲が堕ちているのは間違いないが、陽炎はそれで満足しない。  
陽炎にとって“男を堕とす”というのは、心の底からの願い。  
ただ単に、イきたいというのではなく、オスとして、眼前のメスに搾り取られたいという、  
心からの従属。  
 
 陽炎を見つめる譲の、瞳の奥に燈る淡い光に、屈服した男の証を垣間見た陽炎は、  
スッ目を細め、最後通牒を突きつけた。  
 
「今宵は十分楽しんだ、最後にお前の堕ちるさまを見させておくれや」  
 
 退いていた尻尾達が、ある一点に狙いを定める。  
蠢きながら迫る尻尾、その目的はもちろん、  
 
「さ、堕ちよ」  
「くっ、あああぁっ」  
 
 四肢と首を固定している以外の、4本の尻尾が、貪るようにペニスへ絡みつく。  
激しい愛撫を繰り返す尻尾達と、それを嬉しそうに眺める陽炎の瞳。  
(見られてる……俺の、感じているところをっ……)  
 
 もはや、見られることすら快感である。  
だが、精液が昇ってくるのを感じても、再び寸前で射精を止められてしまう。  
 
「あっ、ぎいいいいぃ」  
 
 これは、快感というより苦痛といっていいだろう。  
陽炎の言っていた“罰”それは、イきたくてもイけないという快楽の地獄。  
 
「ふふっ、痛みと快感は紙一重、まだイってはならんぞ」  
 
 続けざまにペニスに与えられる刺激。待ちに待った性器への刺激。  
しかし、絶頂を迎えようとする寸前に尻尾が離れ、  
根元が締め付けられるためにそれを迎えられない。  
そして、快感の波が退いたと思うと、再び愛撫が繰り返される。  
 
「ひっぃぃ、やめぇ、もういやだぁ!」  
 
 イきそうになると、体がビクビクと反応するが、決してイくことができない。許されない。  
そして、快感の波がひと段落するたびに繰り返される愛撫。  
 
「イかせて、お願いだからイかせてくれ」  
「駄目じゃ、喘げ、もっと喘げ!」  
 
 自分が射精を拒んでいたことなど、今は射精を懇願していることなど、  
最早どうでも良いことだった。  
目を閉じても、陽炎の姿がまぶたの裏に焼きついて離れない。  
 
(感じろ・喘げ・もっとだ)  
 
 まるで呪文のように頭の中で木霊する言葉。  
譲の、人としての耳から聞こえるのではない、獣としての耳から、直に入ってくる声。  
 
「あっ、ふぅん、よいのぅ、実に良い……」  
 
 突如、怪しげな水音が室内に木霊する。  
いつの間にか、陽炎は自分の秘所に指を当て、自慰にふけっていたのだ。  
着物の中に手を突っ込み、己の性器に指を添える。  
 尻尾の動きを休めることなく、快感に喘ぐ譲の痴態を眼にし、恍惚の表情を見せる。  
 
「はぁ、快感に悶え、悦楽に浸るオトコ、何度見てもすばらしぃオカズじゃ」  
 
 だが、あいにくその姿も言葉も譲に届くことは無かった。  
なぜなら、譲は再び快楽の虜となり、他は何も考えていなかったから  
ただただ、体中を這い回る尻尾の感覚に悶えながら……  
 
 

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