天を仰ぐと、闇夜に満点の月が煌々と光を放っている。  
まん丸の月に浮かぶのは、かつて身体を許しあった可愛らしい子狐の姿。  
月に向かって吐息を吐くと、白い吐息がゆらゆら浮かび、月に浮かべた思い人の姿諸共  
漆黒の闇に溶けていった。  
 
“例の事件”から数週間経つが、譲はいつもと変わらぬ平穏な日常を過ごしていた。  
夢であったと思いたくとも、体に傷跡がなくとも、心の中に刻み込まれた感覚が、  
あの出来事が夢ではないことを示している。  
人と違う者達、獣人と付き合う場合のリスクというものを、文字通り  
“この身を持って”思い知らされたわけだ。  
 
「はぁ」  
 
 都会の濁った夜空を仰ぎ、色々と考えを廻らせる度に溜め息ばかりを漏らし、  
寒空に白い吐息が溶けてゆく。  
 向こうの側から「もう関わらなくて良い」と言ってくれたわけだから、  
本人としては気に病む必要はない筈だが、そういわれると逆に気になるのが人の性。  
なによりも、あのふかふかの尻尾に二度と触れないかと思うと心が虚しくなるのだが、  
 
(って、それが一番なのかオレ)  
 
 一度は死にかけたというのに、実にのんきな話である。  
一端のサラリーマンに過ぎない譲は、今日も社会の歯車となり、身を粉にして働いていた。  
かつてのように、平凡な日常を送っているが、何となく物足りなさを感じる。  
 
「あぁ、雪風の尻尾が恋しいなぁ」  
 
 そんなことを考えつつ会社帰りの道を歩いていると、彼を再び非日常の世界へと誘う  
予兆が待ち受けていた。  
 前を見ると、彼の住処である会社の寮の前に止まっていたのは高そうな黒塗りの車が2台。  
周囲には真っ黒なスーツにサングラスをかけた黒ずくめの男が数人いて、  
辺りの様子をうかがいつつ、睨みを利かせている。  
 それを視界に捉えた瞬間、電柱の陰に隠れて様子を見守っている自分に気が付く。  
咄嗟に隠れてしまったのは、目の前の男たちの目的が自分であると、無意識のうちに  
感じとったからだろう。  
彼の直感は正しいのだが、残念ながらその行動は徒労に終わる。  
 
「平賀、譲さんですね? こちらへおいで下さい、なお、あなたに拒否権はありません」  
 
 突然の呼びかけに後ろを振り返ると、同じく黒ずくめの男が2人、目の前に立っていた。  
何の気配もしなかったので驚いたが、譲が‘はい’と言う間もなく彼の両脇を抱えると、  
二人の男は、譲を引きずりながら待機していた車の中に押し込み、  
 
「出せ」  
 
 1人が合図すると、譲を乗せた車は静かに走り出した。  
車中では何を尋ねても返答は帰ってこず、重苦しい雰囲気が漂うが、  
 唯一の救いと言えば、高級車のためか、車のシートの座り心地が良かった事だろう。  
時間があるので、シートに深く腰を据えつつこの男達が何者なのかを考える。  
間違いなく言えることは、彼らが“獣人”に関わりのある者達であるという一点のみ。  
 
(そうでなければ俺がこんなM.I.Bに誘拐される理由はない)  
 
という確信が、譲にはあった。  
 
 だが、ここで重要なのが、敵か味方のどちらかということ。  
先日の一件もある以上、最悪の場合は、どこか人知れぬ山中へ連れて行かれ、  
後から銃を突きつけられて“ズドン”とも考えられる。  
 しかし、それを知ることもできず、しばらくの間車に揺られ続けていると、  
いつのまにか周りの景色は緑に包まれ、道の舗装も悪いせいか車がガタガタと揺れ始める。  
先ほど思い描いた最悪の事態が頭をよぎり、額から冷や汗が垂れた。  
こうして車に揺られること小1時間、  
 
「降りろ」  
 
 促されるままに降り立った場所は、なんとも日本的で大きな屋敷の門前。  
入り口には鳥居が立ち並び、屋敷は背の高い塀で囲われている。  
 周囲には他に人工的な建物が一切無く、月と星の明りだけが唯一の光源。  
足元に注意しつつ歩みを進めると、屋敷の入口前に1人の女性が立っているのが見えた。  
 
「遠い所をわざわざお越しいただきまして、おやかた様がお待ちでございます」  
 
 強引な連行の割に丁寧な対応を受け、相手の目的が何か、余計に分からなくなる。  
牢屋にでもぶち込まれるとばかり思っていた譲がほっと胸をなでおろしていると、  
譲を連れてきた男たちは迎えの女性に身柄を引き渡し、先ほどの車に乗って  
足早にその場を去った。  
 譲としても、相手の正体が知れぬ以上は迂闊に口を出すわけにも行かず、  
案内されるまま長い廊下を進むと、手入れの行き届いた庭が月明かりに輝いていた。  
 
「おやかた様、お連れしました」  
 
 ある部屋の前で案内の女性が頭を下げながら中の人物に告げ、そっとふすまを開ける。  
部屋の中は真っ暗で様子は分からないが、だだっ広い畳敷きの部屋だということが分かる。  
 
「どうぞ」  
 
 促されるまま部屋の中に入るが、中は真っ暗で何も見えない。  
だが、目には何も見えなくとも、何者かの気配を感じることができた。  
 
「ご苦労、お前は下がってよいぞ」  
 
 部屋の奥から声が響いた、今までに聴いたことの無いような威厳を感じる声。  
その声を聞くと、案内してくれた女性は再び一礼し、譲の背後でふすまが閉められた。  
 真っ暗な部屋に残されたのは、譲と謎の人物だけ。  
 
「ほれ、そんなところに突っ立っていては話もできん、座りなされ」  
 
 時代劇でしか聴いたことの無いような口調に不安を感じつつ、  
目の前に置いてあった座布団の上に座る。一応正座で。  
 最初は闇の中にうっすらと影が浮かんでいたが、数分立つと目が慣れてきたようで、  
自分と同じように正座して座る人の姿が見え、その後ろでは何か巨大なものがゆらゆらと  
揺れているのが透けて見える。  
正体を見極めるために目を凝らしていると、室内に淡い光が燈った。  
 
 何事かと室内を見回すと、部屋の中には人魂のような碧い狐火がいくつも浮遊し、  
再び前方を見た瞬間、譲は驚きの余り硬直した。  
目の前にいるのは着物姿の女性、頭には狐耳、そして複数の尻尾、  
雪風と同じ種族、妖狐の“獣人”である。  
 
 人間で言うと、年のころは三十路を一つか二つ超えたくらいだろうか。  
雪風と似た顔つきながら、その妖艶な雰囲気と着物越しに感じられる肉置きは、  
大人の色気を醸し出す。  
だが、そこまでなら今の譲が驚くようなことではない。  
 彼が驚いたのは、目の前の獣人の後ろで蠢く巨大な尻尾、その本数である。  
雪風が2本、時雨が4本あった。だが、目の前でゆらゆら揺れているのは9本の尻尾。  
譲の知る限り、彼女達の種族で最高位の力を持つ存在ということになる。  
 
「きゅ、九尾……」  
「ほぉ、力は完全に抑えているつもりやったが、この尻尾が見えるのかえ?」  
 
 思わず漏れ出た譲の呟きを聞くと、睨みを利かせていた九尾の狐は驚きの表情を見せ、  
譲がコクリとうなずくと、今度は不敵な笑みを見せた。  
 すると、さっきまではうっすらとしか見えなかった尻尾がはっきりと視界に写る。  
1本の長さが2メートル以上はありそうな金色に輝く尻尾が9本個別に蠢き、  
そこから強い波動が譲の体に圧力を加えていた。  
いや、体だけではなく、意識を保とうとしなければ気を失ってしまうほどの力が  
譲の心に加えられている。  
 最初は爽やかな風のように感じていたのだが、それも束の間。  
段々と心が真っ白に染め上げられ、何も考える事ができなくなってゆく。  
数秒が数分に感じられ、限界を感じた瞬間、譲に加わっていた波動が和らいでいった。  
 
「これでも堕ちんとは、我が子らと交わって力に耐性を得たか、関心するのう」  
 
“我が子ら”という言葉。  
意識が朦朧とする中で譲はその言葉を聞き逃さず、目の前の獣人の正体を把握できた。  
耳と尻尾を見たときから雪風達の関係者であると薄々ながら感付いていたが、肉親、  
しかも母親だとは想像していなかった。  
 
(子らって、雪風も時雨も年齢的には相当なものだし、本当の年齢はいったい……)  
「……ぐべっ!」  
 
 頭の中で疑問を投げかけた瞬間、先ほどよりも数段強力な波動が頭上から襲い掛かる。  
目の前の妖狐、雪風の母親の顔を見ると、額に血管が浮いているように見えた。  
 
「ずいぶんと生意気な奴よ、この場でそんなことを考えておるとは余裕があるのう、  
やはり、愛しき子らを誑かし、陵辱した罪は、その命で贖ってもらおうか?」  
 
 どうやら、考えていたことを読まれたらしい。  
母親の発した発言に、雪風に出会ったとき以上に危険な状況にあることを認識したが、  
生じた誤解はあの時以上。  
 そもそも弄ばれたのは譲の方だし、陵辱されたのもどちらかといえば譲だが、  
何とか弁明しようにも、頭上から押し寄せる力によって精神的にも肉体的にも余裕がない。  
力の差は歴然、例えこの場から逃げ出せても、外には例のM.I.B達が待ち構えている可能性がある。  
謝っても許してもらえる事ではないが、拾ったばかりの命を誤解によって失うのはイヤだ。  
 
「ぐっ、罰は、受けますから……お願いです、少し話を、話を聞いてください」  
 
 薄らぐ意識の中で言葉を紡ぎ出し、意識を手放そうとした次の瞬間、波動が弱まった。  
息を荒げながら体勢を立て直すと、よろめきながら眼前の妖狐の瞳を覗き込むと、  
琥珀色に染まった綺麗な瞳の奥に宿るドス黒いものに、今まで感じた事の無い恐怖を覚え、  
冷たい間隔が体の中を奔ったのだが、  
 
「ほほ、これは遊びが過ぎたようやな」  
 
譲の考えをよそに、着物の袖を口に手を当てて上品に笑う。  
 
「自己紹介もせずに潰してはおもしろくないのでな、わしの名は“陽炎”  
既に理解しているようだが、貴様の抱いた姉妹の母親じゃ」  
 
投げかける優しい笑顔は雪風と似ているが、不気味な雰囲気は拭えない。  
 
「悪ふざけはここまでにして、さ、足を崩しておくれや」  
 
 油断のならない相手であるが、機嫌は損ねない方が良いと判断し、足を崩す。  
相手の真意を読み取れずに困惑するが、譲が危うい場所にいることは間違いない。  
 
「あの……私が、陵辱したというのが誤解と、理解されているのでしょうか?」  
「無論じゃ、子らの行動は、いつでも見ることができるゆえにな、ほれ、覗いてみよ」  
 
 陽炎が手を翳すと、譲の眼前に大きな水晶球が現れる。  
中を覗くと、巫女服の雪風が、社の布団でぬくぬくと温まっている姿が見て取れ、  
 
「アイツ、サボってるな」  
「まったくじゃ、貴様と熱い抱擁を交わしながら、強くなると約束しておったのにのぉ」  
「はっ……」  
 
瞬間、今までの行為が見られていたという恥ずかしさからか、顔を俯けてしまう。  
 
「手を出したのはこちらが先、それは認めよう。じゃが、貴様のおかげで、時雨どころか  
雪風までもが、男の味を忘れられんようなった、貴様、先ほど罰を受けると言うたよな?」  
「へ?」  
 
 自分の罪が晴れたと、ホッと胸をなでおろしたのも束の間、  
目の前にいたはずの陽炎の姿が消え、気配を感じさせることなく譲の後ろに回りこむと、  
譲の背中から両手を回し、覆いかぶさるような形で抱きついた。  
見た目は細い腕ながらも、完全にホールドされ、両手はおろか、体の自由が利かない。  
 
「罪は、貴様の体で贖ってもらおうぞ」  
 
耳元で囁いたかと思うと、譲の耳、そして首筋をペロリと舐めた。  
 
「ちょ、ちょっと、誤解は無いんですよね? だったら帰して……ひいっ」  
 
 陽炎の舌先が首筋をなぞる度に寒気が体を襲い、体が反応する。  
塗られた唾液の跡に息を吹きかけられると、感度がさらに増した。  
 
「はむっ、ちゅっ、だいぶ汗をかいておるな、暑いのかえ?  
ならば、上着を脱がしてさしあげねばな」  
 
“いえ、それは冷や汗なんですが”  
などと冗談めいた言う余裕もなしに、ボタンがひとつひとつ外され、  
上着が全て脱がされると、胸を背中に密着させ、グイグイと体を押し付ける。  
 
「ちょ、何をするんですか、止めてください」  
「なんじゃ、まだ暑いのか、よしよし、全部脱がしてしんぜよう」  
 
 譲の意見は無視され、時雨よりも大きそうな胸の感触が、  
着物越しながらもその柔らかさを十分に伝えてきた。  
ここにきて、ようやく譲は、今回も逃げることは出来ないと、諦めるに至ったのである。  
 
「ほぉ、これは良い身体じゃ、子等が夢中になるのも無理は無い……」  
 
 陽炎は、後ろから差し伸ばした2本の腕で譲の体を弄った。  
氷のように冷たい指が、臍から腹、胸にかけ、なでるように体をすべる。  
最初に異変が起こったのは、この時である。  
一度目に指が通ったときは何もなかったが、同じところをもう一度指がなぞった瞬間、  
 
「ひあっ」  
 
 思わず、叫び声をあげた。  
皮膚の表面が、神経をむき出しにされたかのように敏感になっており、  
体の中を直接弄られるような感覚すら覚えた。  
 
「こんな快感、時雨も雪風も与えてくれんかったろう?  
九尾ともなればこの程度の術は容易い事、どうじゃ、気持ちよかろう……はむっ」  
 
 耳元で甘い声に囁かれた次の瞬間、陽炎の熱い唇が耳たぶを包み込む。  
耳の上を舌が這い回り、唾液の水音が耳の中に響き渡る。  
その間も指による愛撫は続けられ、譲は快感に呻いていた。  
 
「くぅ、あっ、やめっ」  
「快感に喘ぎながら、何を言うのやら、本当はもっとしてほしいのじゃろうが」  
 
 今までに感じたことのない、背筋がゾクゾクするような快感にまともな声も出ない。  
強く熱く体を交えたときの快感とはまったく違う未知の感覚は、譲の体を、  
今まで経験した事の無い、新しい快楽の世界へ誘おうとしていた。  
 
「ふむ、なかなかに良い感度、ならば、これはどうじゃ?」  
「はうっ」   
 
 陽炎の指が乳首に触れたかと思うと、摘み上げるようにして愛撫を加える。  
冷たい指が譲の乳首をつまみ、クリクリと回しながら甘い刺激を与え、  
時間が経つにつれて快感が大きくなってゆく。  
 
(きっ、気持ちいい)  
 
 言葉には出さないが、譲は自分の胸で感じていることを実感していた。  
胸だけではない、腹や脇やへそ、指がなぞるところ全てが性感帯に変化してゆく。  
今まで快感など覚えたことの無い場所が与える初めての快楽は、自慰を覚えたばかりの  
ペニスのようで、譲を夢中にさせた。  
 
「やめっ、あうっ、ひいい……」  
 
やがて、乳首を弄んでいた腕の片方が譲の首をなぞり、顎を撫でたかと思うと、  
 
「あぐっ!?」  
 
 しなやかな指は、熱い吐息を漏らす譲の口内へ侵入した。  
2本の指は、譲の口を捏ね繰り回すように蠢き、その指に唾液を絡める。  
挿入された指を押し出そうと舌を出すが、逆に陽炎の指に絡めとられてしまった。  
   
 女に口の中を犯されるという今までに無い快感と背徳感を覚えつつ、  
数本の指によって蹂躙されている口の端から、タラリと涎をたらした。  
 
「体を直接重ねるのとは違う、本物の悦楽の味はどうじゃ?」  
 
 耳たぶを甘噛みし、なめしゃぶりつつ、優しい声でささやく。  
その口を譲の首筋に押し付け、吸い上げる度に、紫色の斑点が鮮やかに浮かび上がった。  
 
「ひやっ、はうっ、やめっ」  
 
 譲は指の動きに踊らされるよう、体をくねらせる事しかできない。  
体中の神経が敏感になり、快感が普段の何倍にも増幅されている。  
 
「どうしたのじゃ、女子ような声を出しおって、そんな声を出されたら  
もっと虐めたくなるではないか」  
 
今度は、何本もの巨大な尻尾が、譲を包み込むように回りこんできた。  
 
「さて、今度はコレで遊んでやろうぞ、いつまで耐えられるか見ものじゃのう」  
 
 神経が敏感になり、快感しか感じ取れない状態であれに触られたら……  
譲はただ、恐怖と期待に胸を膨らませ、その動きを凝視することしかできない。  
 しかし、譲を包み込もうと蠢く尻尾はすぐにその体に触れることはなく、  
まずは1本がゆっくりと、じわりじわりと近づいてくる。  
触れるのか触れないのか、ギリギリのところでお預けを食らってしまい、  
譲の脳裏には、早く触って欲しいと考えてしまう。  
 
「どうしたのじゃ、触って欲しいのか、ホレホレ」  
 
 首筋に吸い付いていた口を再び耳に寄せ、妖艶な声で囁く。  
譲の体を襲わんと鎌首をもたげる巨大な尻尾の群れ。  
ゆらゆらと揺れる尻尾達を眺め、生唾を飲み込む譲だが、  
 
「くっ、そんなことは、ない……」  
 
 その口から出たのは、否定の言葉であった。  
正直な所、今すぐにでも触って欲しいところだったが、譲の理性は、それを拒絶している。  
触れられてしまうと、何もかも壊されてしまうのではないかという恐怖が、  
快感を求めることを恐れているのだ。  
 陽炎は、譲のやせ我慢を察してか、愉快そうに譲を舐り続ける。  
体中を弄られ、首筋を舐められ、吸われ、口内を蹂躙される。  
さらに、口内を弄り唾液まみれになった指が再び譲の乳首を襲うと、  
ひんやりとした感触と快感があいまって、頭を痺れさせる。  
そのときであった。  
 
「ひあっ」  
「いかんいかん、ついつい触ってもうたわ、我慢のできん尻尾ですまんのぅ」  
 
 突如、尻尾の先端が触れ、譲の体がビクッと反応する。  
その後も、9本の尻尾が代わる代わるに譲の体をつつく。  
おそらく、思いのほか屈しない譲に止めを指すつもりなのだろう。  
 少し触られただけだというのに、その快感は強烈で確実に体内に蓄積されていく。  
触れては離れ、離れてはまた触れる。  
少しずつ与えられる快感は屈するほどで無いにせよ、確実に体を蝕んでいた。  
 
 

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