雨がしとしとと降っている。 湿っぽい。  
 依頼を受けて来てみたものの、どうにもこうにも廃村というものは気味が悪い。  
 辺りに明かりらしき明かりはなく、いくつもの潰れそうな小屋やそこら中にぼうぼうと茂った草木。  
 聞こえてくる音は風の唸る音とそれによって擦りあう葉の音だけ。  
 小屋の一つ一つの窓からこちらを見られている気がしてどうにもこうにも落ち着かない。  
 依頼内容はこういうもの。  
「最近、ある妖怪が人を騙しては八つ裂きにするという事件が多発している。〜〜という廃村は知っているか?  
 どうやらそこにそいつの『ねぐら』があるらしい。君にはそこに行ってそいつを退治・・  
 まぁ、殺しても良いが、どうにか人を襲わないようにでもしてきてほしいのだ」  
 よくもまぁ、簡単に言ってくれる。  
 人を騙せるほど知恵があり、尚且つ人を八つ裂きにできるほどの力を持った妖怪。  
 そんなものを『人を襲わないようにしろ』だなんて、どうすりゃいいのだ。  
 一回や二回、躾がてらに退治をした程度じゃ言うことを素直に聞いて貰えるとは思えない、  
かといって単純に考えれば、殺すしかないのだろうか。  
 いやいや、殺すのは俺の性に合わない、ここは何とかトンチを利かせて・・。  
 かさっ。  
「!」  
 
 確かに聞こえた。 何かが動いた音。  
「・・・」  
 咄嗟に身構え、こちらを気取られぬよう息を殺すがそれ以降、相手の動きが見えない。  
 しばしの沈黙。  
 もしかしたら、ただのネズミの類だったかもしれない。  
 だとしたら、俺の勘も鈍ったものだ。  
 かさかさっ、がさっ。  
「!?」  
 音がまた聞こえてきた。 今度は音が大きい。  
 それどころか近づいてくるような音。  
 がさがさがさがさがさっ!!  
「(来るかっ!?)」  
 がさっ。  
『にゃー』  
「あらっ・・?」  
 拍子抜けである。どうやら、本格的に勘が鈍ったらしい。  
 ぼうぼうと茂った草の根元から、ひょっこりと顔を出したもの。  
 それはツヤツヤとした黒毛の猫だった。  
 かすかな月の光で目を爛々と光らせ、こちらを見ている。  
「なんだ、驚かすなよ、ほら、チチチッ…。」  
 しゃがみ込んで、指を出しておいでおいでをする。  
 案外人懐っこい猫なのか、特に物怖じせずにこちらまでトタタっと駆け寄ってくる。  
『にゃー?』  
「ごめんな、今はオヤツなんて持ってないんだ」  
」『にゃー』  
 どうやらすごく人懐っこいらしい。  
 俺の足元にぐしぐしと頭をこすり付けている。  
「ははは、可愛いなお前、ん…?」  
 気のせいだろうか、この猫から何か『気』のようなものが洩れている。  
「(いや、気のせいじゃないっ!!)」  
 俺は転がるようにして『そいつ』から飛び退く!  
「お前、もしかして『すねこすり』かっ!?」  
 体勢を立て直して、『そいつ』に問いかける。  
『にゃー?』  
「おおよその正体はわかっているんだ…、それ以上とぼけるようなら一度、術で…」  
 右手でぎっ、と「形」を作る。  
 すると、黒猫の形をした『そいつ』がこちらを見据えたまま口を開いた。  
『勘は良いみたいですけどぉ、残念ですね、私は『すねこすり』ではないんですよぅ』  
 その流れで、あんな犬もどきと一緒にしないでください、と付け加える。  
 体は猫なのに人のように喋られると違和感がある。  
「お前は一体・・」  
 何者なんだ、と聴こうとしたところで  
『まずはご自分から名乗ってはいかがです?』  
 もっともなことを言われた。  
 妖怪(?)に対してでも礼儀は持つべきだ。  
「俺の名前は・・『狗牙』(くーが)。 まぁ本名ではないが通り名みたいなもんだ」  
『くーが…。 あぁ、わかりました! あの何だかっていう機関の人ですねっ!』  
 随分楽しそうだが、とりあえず名乗って欲しい。  
『んふふふー、失礼しましたー。 私の名前は『コマ』と言いますっ。』  
 
「俺がここに来た察しはついているな?」  
念を押して聴いてみる。  
『…なんのことですかぁ?』  
くいっと首を傾けて?マークを頭の上に出すコマ。  
「何度も言わせないでくれ、『とぼけるな』」  
『そんなこと言われましても、知らないと言ったら…』  
 そこまで言ってコマが突如視界から消えた。  
『知らないのですよっ!!』  
 声のする方向に振り向くと、猫の手には不釣り合いな大きさの爪をこちらの顔面目掛けて振り下ろそうとするコマの姿。  
「ぬぉっ!?」  
『あぁ、避けちゃ駄目ですよぅっ!』  
 間一髪、爪が鼻先をかすめたが、とりあえず避けることには成功したようだ。  
「不意打ちは卑怯じゃないか?」  
『列記とした戦術ですよぅ〜♪』  
 コマとまともにやりあってもやりづらい、動きを止めるか。  
 コマを見失わないよう、見据えたまま自分の腰についている呪符ホルダーに手を伸ばす。  
 伸ばす。 伸ばす。 伸ばす・・?  
「あれ・・。」  
 しまった、どこかで落としたか…?  
『お探しのものは、これですかぁ?』  
 コマが足で「ぽむっ」と踏みつけたもの、それはまさしく俺が探していた呪符ホルダー。  
『これで私の動きを止めようって言うのですね〜』  
 コマが楽しそうな声で喋りながら、まるで毛糸玉で遊ぶ猫のように呪符ホルダーをぺしぺしと弄ぶ。  
「くっ…」  
 まぁいい、武器はまだある。  
 なにかあったかなとウェストバッグに手を伸ばそうとした時、コマがその動きを静止する。  
 
『あぁん、動かないでくださいよぅ?』  
 コマの体から「ガカッ!」と怪しい光が放たれ、目を眩ませられる。  
『下手に動かれたら困りますから…んふふっ♪』  
 目が急な明るさに慣れて、周りのものが見えるようになった時、目の前にいたものは『黒猫』から『若い女性』に変化を遂げていた。  
 年齢は18ぐらい、背は160ぐらい、少し長めでツヤツヤと光る黒髪を下げ、白い和服を着ている女性。  
 頭に猫のような耳を生やし、着物から飛び出るように尻尾が生えている。  
胸は少し大きいぐらいで総合的に見て中々良いスタイルをして…  
『くーがさんはエッチなのですねぇ〜、私の人間体(にんげんたい)、そんなに好きになっちゃいましたか?』  
 言われて我に返る。  
「くそっ、チャーム(魅了)か何かだな!?」  
『失礼な、まだ使ってませんよぅ〜!』  
 猫の時からそうだったが、やけに楽しそうに喋る。  
 というか、使えるのか、チャーム。  
『さぁて、どうでしょうかね♪』  
 手の内を探ろうとしても無駄のようだ。  
『さてと、ど・れ・に・し・よ・う・か・な…?』  
 あの、なにをやられておられます?  
『なにって、呪符を選んでいるのですよぅー、見てわかりません?』  
「それはわかっている。その俺の呪符をどうするつもりなんだ」  
『いやぁ、私、呪符って話には聞いていたり、使われたりしたことはあるのですけど』  
「ふむ」  
『いざ本物を手に入れてしまうと』  
「ふむ」  
 コマが呪符の一枚を「ぴっ」と二本指で挟むようにして抜き出す。  
『使ってみたくなっちゃって♪』  
「!」  
 ドゴッン!!  
 呪符が光り、音が鳴ったと思った途端、俺の後ろにあった木造家屋がガラガラと音を立てて崩れてゆく。  
 あまりの破壊力に俺も驚きだが、一番驚いているのはそれを放ったコマ自身だった。  
『す、すごいですね…コレ』  
 
 まずいものを敵の手に渡してしまったかもしれない。  
 呪符は札に術の簡略式が書いてあるものなので、ちょっと起因力を与えることが出来るヤツなら誰でも使用が出来る。  
 それに加えて、ここに来るために揃えた呪符は万全を期して強力なものを用意した。  
 あの初発を貰っていたら、完全にアウトだったな。  
『えーと、じゃあ次の呪符は〜っと♪』  
 おいおい、待てよ、完全に味をしめてるよ。  
「ちぃっ!」  
 三十六系、逃げるにしかず! 出直しだ!  
『あ、待ってくださいよぅ、これなんていかがですかー?』  
 びかっ、チュインッ! ずざざざざざざっ!!  
「おい、なんかレーザーみたいなの出てるぞ!?」  
『すっごーい!』  
 びかっ、ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!  
「危ねぇっ! 地面が割れ始めた!!」  
『んー、もうっちょこまかと!』  
 びかっ!! パシンっ!  
「しまった!!」  
 ツタのようなもので絡め取られる手足。そのままX字(垂直方向)に固定されてしまう。  
 捕縛用の呪符!? 今までの呪符は完全に囮として使っていたというのか!!  
『やったぁっ、ラッキーですよぅ〜♪』  
 割と適当に使っていたらしい。  
『残念ですねぇ、もうちょぉっと楽しめるかなぁ、と思っていたのですけど…んふふ』  
 ふんふふ〜ん♪と鼻歌まじりにこちらに悠々と近寄ってくるコマ。  
「来るなっ!」  
『釣れないですねぇ…、結構私好みなのにぃ』  
 嬉しそうなのか、残念そうなのか微妙な顔をする。  
『まぁ、どちらにせよ、ここで死んでもらうのですけどねぇ…』  
 
コマが一枚の呪符を構える。  
その呪符に記された文字、『破壊』。  
「おい、よせ、その呪符はやめておけっ!」  
『えー、なんでですかー、こんなに強そうなのにぃ…』  
「そんなのを使ったら、俺の存在そのものが吹飛ぶ!!」  
『好都合じゃないですかっ☆ んふふ♪』  
 コマが嬉しそうに呪符をこちらに向ける。  
「お、おい、ほんとに、やめ・・」  
『コレで…さよならですっ!!』  
 びか―――っ!!  
・  
・・  
・・・  
『あれ・・?』  
 中々発動しない呪符を疑問に思い、呪符に顔を近づけるコマ。  
 その時!!  
 ドゴンッ!!  
『う、うにゃぁーっ!?』  
 呪符から出た衝撃波はコマの顔面に直撃した。  
 それと同時に俺にかかっていた捕縛用の『呪』が解ける。  
「だから、言っただろ、『やめておけ』ってな」  
 コマの意識はここで飛ぶ。  
 
 
 
 
――――30分後  
『ん…んにゃっ…?』  
 むずがゆそうに目を覚ますコマ。  
 ぎしっ…!  
 猫特有の顔を洗う行動を取ろうとして腕を動かそうとするが全く動かない。  
 腕どころか足も動かない。  
 見れば、コマはさきほど自分が「してやった」、『X字で拘束される』捕縛用の「呪」にかかっていたのである。  
「お目覚めかい、コマとやら?」  
 コマを覗き込むような形でわざとらしく語りかける。  
 
『こ、ここここれはどういうことですか!』  
「なにが?」  
『さ、さっき私はトドメの一撃をあなたに使おうとして…!』  
「あぁ、あれはだな」  
 簡単に話せばこうだ。  
 呪符(武器)を使う上において、それを奪われて相手に使われるという事態は強力な武器であるほど避けておきたい事態である。  
 そのため、呪符ホルダーにはあらかじめ3枚に1枚ぐらいの割合で自分だけがわかるような『ダミー』を潜ませており、その『ダミー』が使用されると、全ての「呪術的要素」がリセットされ、同時に使用者に気絶程度のダメージを与えるのである。  
『な、ななな…ずるいですよ、卑怯ですよ!!』  
「俺はちゃんと忠告していたんだからな?」  
『う、うぐぐぐ、こうなったら…』  
「変化すれば、猫に戻った分、小さくなれるから、その流れで捕縛から逃れられると思ったか?」  
『ぇ、ぁ、ぁれ、変化できないですよぅ!?』  
 コマが目に見えて焦り始める。  
「ちょぉっとばかし、お前の首に俺特製の『飼い猫の首輪』をつけさせてもらった」  
『なんですかぁ、それぇ!』  
 コマが首を横にブンブンと振ると、首輪についた小さな鈴がチリチリと鳴った。  
「それはな、お前の能力を制御するためにつけた。今のお前は俺がそれに許可を出さない限り人並みの女の子と同じ状態にあると言って良いだろう」  
『はーずーしーてーくーだーさーいー!!』  
 チリチリチリリリチリリ。  
 コマがブンブンと体を動かそうとするが、がっちりと拘束されているため揺れ動く程度にしか動かない。  
「まぁ、落ち着けって」  
 コマののど元を軽く、くすぐってやる。  
『…んにゃっ、ごろごろ。…ってやめてくださいよっ!』  
 若干、目が細まっていたところを見ると、割と気持ちよかったのかもしれない。  
 
「まぁ、兎も角として、一応、俺の立場上お前を退治せにゃならんわけだが…」  
『や、やめてくださいよぅ! 私何も悪いことして…んにゃっ!?』  
 コマの体がビクンッとエビのように腰から跳ねる。  
「どうした?」  
『な、なんでもないですよっ! …あにゃぁっ!?』  
 また跳ねた。 絶対何かあるな。  
 隠し方も切羽詰っているように感じる。  
「やっぱり何かあるな?」  
『い、いま、私が変化してからどれぐらい経ちましたんにゃぁんっ!?  経ちましたかぁっ!?』  
「ん、あ、時間? そうだな最初の変化からは大体40分くらいかな…?」  
 そう言っている間にもコマの体はビクン、ビクンと跳ね続ける。  
 ほんのりとだが、顔も赤らんでいる気がする。  
『そ、そんなに長い時間…』  
「どうしたんだ、事情を話してくれれば助けにならんでもないぞ?」  
 コマの顔が一層赤みを増した。  
『そ、そんなこと私の、ゃぁぁっ…言えるわけ、んにゃぁ…』  
 な、なんだ、急に色っぽい声を出し始めた。  
「へ、変な声出すな! また何か企んでるのか!?」  
『ち、ちがっ、ごろごろ…わたひっ、わたひぃ…にゃぁぁ…』  
 色っぽいと思ったら、急に切なそうな声になり始めた。  
『さわってぇ…、お願いですから、触って下さぃぃ…切ないんですぅぅ』  
「ば、ばか、なに言ってんだ、おまえは! 少しは場っていうものをだなっ!」  
『言いますぅ…正直に言いまひゅかりゃぁ…』  
 なんのことだ。  
『わ、わたひ、長いこと人間になってりゅとぉ…』  
 ふむ。  
『は、はっ、発情しちゃうんれすぅぅ…んぁぁぁっ!?』  
 あぁ、つまり今の状態は物凄く疼いてしょうがないのだけど、自分では動けないからどうしようもない、という状況か。  
 良いことを聴いたかもしれない。  
 これを上手く利用すれば『約束』ぐらいは結べそうだ。  
『ひゃ、ひゃぅっ…うにゃぁぁっ!?』  
 ちょっと耳に息を吹きかけただけなのにこの反応。 いけるな。  
「コマよ、何とかしてやっても良いぞ」  
『ほ、ほんろれすかぁっ!?』  
「ただし条件がある」  
『にゃ、にゃんでもいいれふぅ、ひゃやきゅどうにかしてくらひゃぃぃ…!』  
「その言葉、二言はないな?」  
『ないれふ、ないれふきゃらぁぁぁっ! ひゃやきゅぅぅっ!!』  
「心縛術・口約束!!(しんばくじゅつ・くちやくそく)」  
 途端にコマの体を光が包み込む。  
『な、なんれふかぁっ、これ、なんれふぅぅぅ!?』  
 一瞬、物凄い勢いで光ったかと思うと、それはすぐに霧散してしまった。  
『はぁっ…はぁっはぁっ…』  
「少し収まったか?」  
『な、なんとか・・んぁぅっ!?』  
 多少の制御術じゃどうにもならんな…。  
 かと言って相手の意思も尊重せにゃ…  
『い、良いですよ…?』  
 え?  
『くーがさん、気を使ってくれなくても…』  
「いや、しかしだな、あまりこういう状況になれていないから…」  
『い、いいのですっ、この疼きを止めて下さるならどんなことだって甘んじて受け入れます…』  
「んーむ…」  
『は、はやくしな・・いと・・また来ちゃっ・・来ちゃっ・・・ふにゃぁぁぁんっ!?』  
「わ、わわわ、わかった、何とかやってみる!」  
 と言っても性的欲求による疼きを沈めるって言ったら、アレが最善策だろうが…。  
『はやくぅぅ…』  
 ごくり・・・。  
「えぇぃ、ままよ!!」  
 
 コマの着物の帯をしゅるりと外してやる。  
 帯をそのまま地面に落とし、着物の前をはだけてやると、コマの肌はほんのりと紅潮し、その上、うっすらと汗で濡れていた。  
 苦しそうに上下する胸、心臓の鼓動が強いのかコマの胸は一定のリズムでふるふると揺れていた。  
 出来るだけ気が迷わないように、俺はまっすぐコマの胸に手を伸ばした。  
 その手をコマは切なげとも懇願しているとも取れる目で今か今かと誘っていた。  
『はぅっ…』  
 俺の掌がコマの胸に覆いかぶさったとき、コマはぴくりと体を揺らした。  
 コマの胸は心地良く吸い付くような手触りで、出来ることなら思いのままに堪能したいところだったが、俺は出来るだけ優しく、ゆるやかに、コマをいたわるようにやわやわと揉みこんでいった。  
 事情が事情だ、欲望のままに、なんて手荒なことはしたくない。  
『ふにゃぁぁっ……はふっ、はぁぁぁっ…』  
 コマの体が俺の揉みこみに合わせて妖艶な舞いを見せる。  
『だめですぅ…胸ばっかり、だめですよぅ……これ以上、切なくなったら、わたしぃ…』  
 コマの息遣いが荒くなっていく。  
 潤む瞳で俺を求めるようにして見つめてくる。  
 あまりそんな目で見られると、変なスイッチが…。  
『…ふにゃあぁんっ!? あ、あ、あにゃっ…く、は、んんっ…!』  
 気付けば、俺はコマの乳首に鋭さのあるキスを何度もしていた。  
『だ、だめです…変に…なっちゃぃ、にゃぁ…』  
 キスをそのまま、胸から首筋へ、首筋から口元へと運ぶ。  
『んちゅっ…んんっ…ちゅぷっ…』  
 キスが恥ずかしいのか、コマはうっすらと目を閉じている。  
 口内へ舌を差込み、お互いの舌を絡ませあう。  
 コマの舌は猫独特のザラザラとした舌で、最初は違和感があったが舌を絡ませあううちにそれは心地良い感触へと変わっていった。  
『んっ、んんぅっ…ぷはっ、んちゅぅっ…くちゅっ…くーがひゃん、ぷはっ…』  
「なんだ?」  
コマが何か言いたそうだったので、一旦キスを止めて至近距離で見詰め合う形となる。  
キスが止まり、離れていくのが若干、名残惜しそうだったが、コマが口を開く。  
『お願いです…、逃げないので、呪いを一旦解いてくれませんか…? 決して逃げないことを誓います…今はただ…切なくて…』  
 何故か、だが。  
 今、コマが口にしていることは信じられるような気がした。  
 コマにかかっている捕縛の『呪』を一旦解除する。  
 途端にツル状の拘束物はかき消えて、コマが解放される。  
 
 解放されたコマは重力に従い、俺のほうによりかかるように倒れてくる。  
『ありがとうございます…んっんんっ…ぷちゅっ…』  
 間髪居られずにコマが俺の首と頭に手をかけ、さっきの続きと言わんばかりにキスを始める。  
「?」  
 気付くと、俺の上半身の服が脱がされ始めていた。  
『一緒に…気持ちよく…んちゅっ』  
 駄目だ、流されている、俺、流されている、コマのペースに、流されている。  
 どうにかして、一旦流れを俺の下に…。  
『ついでに下も脱い…あにゃぁぁっ!?』  
 コマの背筋がぴぃんと伸びて俺の胸に飛びつくような形になる。  
『ふゃぁっ、背中、背中だめですよぅっ…!』  
 コマの背中に上下に線を描くように指を這わせる。  
「お前にばかり『してやられる』のも嫌なんでな…」  
『そ、そんなっ、わたひっ、ふにゃぁん!?』  
 俺によりかかるようになり、崩れ気味の体勢のところに追い討ちをかける。  
『み、みみっ、みみもだめっ、ですっ、だめえぇぇっ!』  
 軽く抱きしめてコマを逃げられないようにして、耳元に「ふっ、ふっ」と息を吹きかける。  
 勿論、背中を這わせる手は休めない。  
 むしろ、背中を這わせていた手をふとももにも伸ばす。  
 コマの体が俺の思い通りに体を震わせ、ぴくぴくと弾ける。  
『ぅぁ、くっ、ぇ、ぁ、ぃっ…』  
 俺は這いまわせていた指をコマの秘部へと持っていく。  
 くちゅっ。  
『ん、ふぁっ、ふぁぁぁっ!?』  
 コマの体が今までは違うほどビクビクッと攣縮を起こす。  
「もしかして、今のでイったのか?」  
 俺はほんの一瞬、コマの秘部に指を這わせただけである。  
 それほどまでに上り詰めていたということなのか。  
『はぁっ、はぁっ、はっ…まだ、足りないです…今のじゃ、まだ…』  
 

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