「全て見せよ」
初めて掛けられた声の意味がわからず、有君は顔を上げ声の主を見た。
その人は色が白いと褒めそやされた有君と同じ…いや、それよりも白いのでは?と思うほどの白い肌で、小柄ではあるけれど端正な顔をしていた。
「並ばれるとお雛さんのようですなあ」
お付きの者が思わず言ったのもなるほどと、有君は思った。
しかし、そんな有君の気持ちとはうらはらに再び…
「全て見せよといっておる」
若干苛立ちを含んだ言葉が、再び発せられた。
有君は戸惑っていた。
「上…様。あの………」
「全てと言ったら全てじゃ!速く!」
「あ……」
屏風の影で控える宿居の者たちも、どうするべきか様子を伺っている。
「全て…でございますか?」
「そうじゃ、早くせぬか」
有君は、乳母に見せられた枕絵を思い出す。
絵物語の男女は裸で抱き合っていたではないか。
ぎゅっと目を閉じると、有君は白い絹の帯に細い指をかけ、震える手をゆっくりと引いて行った…。
ハラリとはだけた衣。
有君の肌は羞恥で赤く染まっていたが、意に介さぬように不躾な言葉が降り注ぐ。
「そうではない。それでは分からぬ」
「あ、あの…」
「こうじゃ!」
上はそう言うと、有君の肩をトンと押した。反動で身体はのけ反るようになる。
「膝を立てて見よ」
「…?」
「膝じゃ!」
「は………い」
有無を言わさぬ物云いに有君はのけ反ったまま投げ出した膝を立ててゆく。
あと数年で二十歳を迎えるとはいえ、まだ大人の身体とは言い難い有君である。
肉付きも薄い脚に、上はひんやりとした手をかけて思いもかけぬ力でぐいと押した。
「あっ…」
有君の脚は、大きく開かれる。
「よろしいですか?閨で上様にされる事に 否 と言ってはあきませんえ」
乳母の言葉を思いだし、有君は震え、叫びだしそうな衝動を必至で抑えていた。
白い内腿の中心に開く…淡い花弁。
「ふむ…」
上はつぶやくと躊躇う事なく手を伸ばす。
「ぅっ…!」
白く、細い指は桜色の花弁をつっと撫でた。
ピクリ…と有君の身体が跳ねる。
指は何度かぴっちりと閉じた花弁をすりぬける。
「よく見えぬ」
有君は耳を疑った。 これ以上どうしたらいいと言うのだろう。