――あっ、今日は何時もより早く3割引に、ラッキー  
 
 スーパー高富のお惣菜・お弁当コーナーの値引き開始時間はマチマチだ。  
 毎日同じ時間にすると、それを狙ってその時間まで売れなくなるからか、客に値引き開始  
時間を読ませない為、毎日時間をずらしている様である。  
 たまたま足りない物を買いに来た時間帯に、3割引品が残っていたのはラッキーだったと、  
璃樹那は思った。  
 
 ――ハンバーグにすると、ご主人様喜ぶかな…  
 買い物に来た目的の物と、ハンバーグ丼2つと、揚げシュウマイもカゴに入れた。  
 些か胃に重い感じもしない事もないが、ご主人様なら喜んで平らげるだろう。  
 
 レジに並びお会計を済ませて帰ろうとした時、ふとお惣菜コーナーに目をやった。  
   
 ガンッ……  
 ショックだった。  
 半額シールを持って、早速残っていたお惣菜類にシールを貼り始める店員さんの姿が  
見える。  
 さっきまでの「私ってお買い物上手」と少しいい気分だったのが、一気に冷やされた。  
 残るのは…… 敗北感。  
 
 
 <場面は、お屋敷に>  
 
 
 「<かくかくしかじか>……というような事があったんですよ。 3割引でいい買い物  
 したなぁと思ったんですけど、あともう少し待ってれば5割引で買えたのに……」  
   
 帰るなり、ご主人様にそう璃樹那はボヤいた。  
 
 「あぁ、そういう事もあるよね。 でも3割引で買えたんだから良かったじゃないか」  
 「そ、そんなに落ち込むなって。 そうだ、代わりに今日は夜のお勤め時間を3割引、いや  
 5割引にするよ。 璃樹那もそれで疲れなくてラッキーだろう?」  
 
 「ご主人様、夜のお勤めは契約内容には入っておりません。 純然たる私の好意に拠る  
 ものでございます。 といいますか、なんとか5分もたせてるってトコロが3.5分や2.5分で  
 終わってしまうんですか? むしろ全然物足りません。 せめて10割増、いや20割増を  
 目指して頑張って下さい」  
 
 ――なんて言える筈もない。  
 
 「お気遣いありがとうございます、ご主人様」  
 ニコッと璃樹那は微笑んで答えた。  
 夜のご奉仕後に不完全燃焼の体をどう慰めようかと、考えながら。  
 

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