「大体ですね、力も無いのに好奇心を暴走させるのが悪いンですよ」
ちょっとしたイタズラ心が引き起こした事態により早々に宿を後にした俺は原因となった
相手から説教をくらっていた。
その相手とは見た目からすれば、スレンダーな身体に大きめの胸を持つ青い髪をした少々
たれ目の美少女である。
代金に色を付けたとはいえ、宿の主人には悪い事をしたと思う。
「あー、うん。今回は確かに全面的に俺が悪かったとは思う」
とりあえず相手の意見を素直に認め、俺は“でもな”と言葉を続ける。
「人間の村の宿で本性だして襲うなよ」
「下手に私を刺激するからじゃないですか。それに、ちゃんと手加減はしました」
「アレで?」
少女の心外だと言わんばかりにした抗議先を促し、昨晩の事件を思い出し身震いした拍子に
体の節々が痛んだ。
「私が本気なら、今頃あなたは文字どおりに骨までトロけてますよ」
可笑しそうにケラケラ笑いながら言う少女の言葉に先程とは別の意味の身震いが俺を襲う。
端から聞けば羨ましく聞こえるかも知れない言葉なのだが、この少女の正体はスライム
である。
モンスターの代名詞とも言える洞窟や森の奥などに棲息するプヨプヨとした基本的に不定形の
流動体生物で厄介な事に基本的に焼かない限り、叩いても切っても死なない上に雑食。
よく生きてたな俺。
「……にしても、そこまで嫌なら途中でスライムに戻れば良かったのに」
「極端にびっくりしてると巧く変形ができないンですよ。それに」
「それに?」
一旦区切り何やら思案している様子のスライム少女に言葉の先を促す。
「途中で溶けるな。って最初に言われましたし、途中までは同意の上でしたことですからね。
その辺も加味したンです」
昨日の夜の事件を要約すると、お互いの好奇心から事に及び、俺のイタズラ心により軽い強姦
プレイになり、スライム少女の復讐心によって逆レイプされ、最終的にスライム少女の手心に
より俺は生きている。
「……俺が調子に乗りすぎた。ごめんなさい悪かったです」
「なら、この問題は水に流しましょう」
そう言ってスライム少女は嬉しそうに俺を見た。
何となく目が合わせられない。
無理矢理であった昨日のスライム流は認めたく無いが、かなり気持ち良かった。
俺はマゾなのだろうか……。
「何をしてるンですか、行きますよっ!」
立ち止まり考えていたらスライム少女の呼び声が俺を現実に引き戻した。
鮮やかな髪が愉しげにフヨフヨと舞うのが視界に入る。
「おいっ、髪が踊ってるぞ」
「ああっ、すみません」
例によって例のごとくのスライム少女。
結局こうやって漫才のごとく俺の1人負けで奇妙な旅の日々は、のほほんと過ぎるワケだ。
そう悟り1つ息を吐くとスライム少女を追いかけた。
(終了)