薄暗い室内に、呻きとも喘ぎともつかない声が切れ切れに響いている。  
そこには、何かに耐えている人間特有の悲壮感が滲んでいた。  
 
加茂英志は、左右に逃れようとする女の顔を左腕で押さえつけて、  
半開きの唇に舌を捻じ込んだ。そのまま唾液を交換する。  
女の反意は、陰部に触れられたときより明らかに強かった。  
 
「んっ……ぷ、くっ、ちょっ……」  
抵抗が許されない立場を認識してなお、愛美は不快感をあらわにした。  
単純な生理的嫌悪とは違う、部屋の押入れを勝手にのぞき見られたときのような  
無遠慮に対する怒りがそこにあった。  
 
「ちょっ……と、もう」  
そこまで言いかけた彼女の顔に、まるで息を嗅ごうとするかのように鼻を寄せると、  
英志は再度唇を寄せる。彼女が嫌がる姿をもっと見たかった。  
そのためなら幾らでも粘着質に、いくらでもしつこくなれる気がした。  
 
英志の右手は、乱暴、という言葉のおよそ正反対の動きで彼女の陰核を刺激していた。  
もっとも、どれだけ優しくしたとしても、嫌いな男の指先で性的快楽を得られるほど  
女性の肉体はシンプルに出来ていないだろう、とも彼は想像する。  
 
数分前から、デニム生地を押し上げている陰茎が、電流でも流れているように痺れていた。  
このままだと、自分の下着を汚してしまうのではないかと危ぶむほどに。  
 
彼は何度も何度も女の唇に吸い付きながら、左手をわき腹に這わせた。  
くすぐったさに彼女は身をよじる。  
あごにキスをして、それから首筋へつう、と唇を動かした。  
 
「脚を、もっと広げて」  
英志は耳元でそう囁いた。  
もう彼氏のことを口に出して脅迫する必要はなさそうだ、と考えている。  
 
英志の中指が、膣内に押し込まれていく。  
指先に抵抗を感じないのは意外だった。  
もちろん潤滑剤を塗っているせいだろうが、もしかしたら彼女の意に反して、  
液体が分泌されているのかも知れない。  
指と膣内壁の摩擦で「くぷ」と音がした。  
 
英志の左手が、背中に触れた。  
それから下着のホックを外し、ストラップを肩から取り払った。  
乳房にわずかに埋没した乳頭が姿を見せると、英志はすぐに唾液でそれを濡らした。  
 
「ふっ……んー、ぅ……ふっ、ちょっ……」  
鼻から噴出されるような愛美の吐息には、腹筋をしているかのような硬さがあった。  
生理的嫌悪感には、慣れるということが無いらしく  
英志の行為ひとつひとつに対し非難めいた言葉を小声で口にする。  
 
女の乳頭が尖るまで執拗に舌で弄んだのち、英志はようやく自分の衣服に手をかけた。  
 
「俺だけが服を着てるのもおかしいからね」と言って、彼はジーンズを脱ぎ捨てる。  
シャツとトランクスを妙に几帳面に折りたたむと、ベッドのわきのテーブルに置いた。  
歩くと、陰茎が天井を指したまま左右に揺れた。  
 
愛美はさんざん太い指でこねられた股間を、押さえるような姿勢で立っている。  
さすがに今さら指示に逆らうつもりは無いようだが、目つきには変わらぬ鋭さと冷たさがあった。  
ここに至っても、やはり自分が悪いとは思っていないのだろう。  
少なくとも、ここまでのことをされる謂れは無いと。  
 
「ベッドに両手をついて、立ったままで」  
英志はまた唐突に指示を出した。  
命令以外、彼女と会話をする必然性が無い、とでもいうように。  
 
愛美は黙って、無闇に長い脚をぴんと伸ばしたまま、ベッドに両手をついた。  
当然、腰を突き出すような姿勢になる。  
英志はしばらくその、間抜けと言っていい姿を眺めた。  
 
かかとを合わせて立ってもなお、間に隙間が出来るほど細い両脚だが、  
丸みを帯びた太股やふくらはぎと、窄まった膝と足首が作るボトルネック形のラインは  
肉感的としか形容出来ない美しさを誇っていた。  
突き出された尻は、程よい脂が乗っていて、男を凶猛にさせるなにかを発散している。  
潤滑液で湿った下着が、何故か笑いを誘った。  
 
にやにやといやらしく笑う英志に気付いたのか、愛美はその格好のままで睨んできた。  
 
「いや、失礼」  
誤魔化すように手を振ると、英志は再びボトルから透明の液体を手のひらに落とした。  
そして歩み寄ると、いきなり彼女の尻を手のひらで軽く打擲した。  
ぱあん、と景気のいい音がする。  
 
「いッたい!!」  
予期せぬ衝撃に、愛美は体を起こしながら悲鳴をあげる。  
 
「ベッドに手をついたまま」  
強盗を現行犯逮捕した警官のように、英志はそう言い放つ。  
それから先ほど叩いた部分を今度は撫で回し、しゃがみこんで唇を当てた。  
 
「反省してるか……?」  
まるで肛門に語りかけるような姿勢でそう問いつつ、指先で陰部をかき回した。  
大量の潤滑剤を膣内壁に塗りたくる。その目的は明らかだった。  
 
開かせた股の下から、彼女の顔が見えた。  
今日ここにきてから初めて見る、屈した表情がそこにあった。  
 
英志は立ち上がると、自分の陰茎の先端、つまり尿道口を彼女の膣開口部へ当てた。  
このまま押し込めば、彼女の中に入り込める。  
 
うつむいていた愛美は、当てられたものが何か分かるとすぐに顔を上げた。  
首を回して英志の顔を見上げる。懇願や陳情がそこに浮かんでいた。  
眉を寄せた切なげな表情は、人に哀れみや罪悪感を思い出させるに十分である。  
 
しかし、このときの英志の心に、彼女に対する同情心は一握も無かった。  
逆恨みをして店から平気で品を盗む姿と、  
英志に対して「カワイソー」と侮蔑の言葉を口にしたあの表情を思い出す。  
 
「やだ、ちょっと……待って!! 無理!! 無理なんだけど!!」  
田丸愛美は、悲鳴としか言いようのない大声を上げた。  
 
「くぷ」という奇妙な音とともに、英志の亀頭は彼女の中に飲み込まれた。  
腰を振って逃れようとする愛美を押さえつけて、ずぶずぶと無遠慮に  
自分の性器を沈み込ませていく。  
 
「ゃ、んーっ……んん……」  
注射を我慢する子供のように、愛美は声を漏らす。  
 
丸四秒間かけて、英志の男性器は根本まで愛美の体の中に納まった。  
 
「愛美ちゃん、さっき言ったの、覚えてる?」  
陰茎が溶けてしまいそうな悦をこらえながら、英志はそう呼びかけた。  
愛美は何も答えなかった。下唇を噛んだまま、自分を犯している男をただ睨んでいる。  
 
――俺が出したものを、吸ってもらうよ  
 
心の中でそう呟いてから、彼は本能を剥き出しにし始めた。  
 
加茂英志の、四半世紀におよぶ人生の中で、性行為をした回数はわずかに二回だった。  
一回目は、大学生のときに付き合ってすぐ別れた女性と。  
二回目は、会社員時代に連れて行かれた風俗店だった。  
 
つまり、田丸愛美が彼にとっての三人目にして三回目の女性であったのだが、  
このときに感じた緊張と興奮と性的愉悦は、初めて味わうものだった。  
 
無理もない。  
相手の合意を得ない行為は初めてだったし、  
自分の思うことを、好きなように出来たのも初めてだった。  
それに避妊具をしないで、そのまま挿入したのもまた初めての経験だった。  
 
過敏になった亀頭を、剥き出しのままで裂け目に押し込んでいくと、  
粘り気のある液体で満ちた暖かな肉襞が、ざらりとした感触で締め上げてくる。  
 
愛美が悲鳴を上げて、体に力を入れるたびに、ぎゅう、と穴は狭まり  
膣から異物を押し出そうとしてくる。  
その外へ押し出そうとする圧力に逆らうように、奥へ陰茎を突き入れると、  
思考が霧散するような快楽が背骨を伝って脳へ駆け上がった。  
 
「愛美ちゃん、もうしないって約束する?」  
「……んっ、ゃ……はぃ……もうしません」  
 
掘削機のような荒々しい動きを続けながら、英志は彼女に謝罪を要求した。  
彼はかつて妄想の中でそうしたように、愛美の尻を何度も手のひらで打ち、  
けだものじみた声をあげながら、夢中で肉をむさぼった。  
 
愛美が鼻をすすっていることに気付いても、罪悪感は湧かない。  
却って嗜虐の火がともるだけだった。  
自分の快楽の果てがそろそろ見えてきたことに英志は気付く。  
 
英志は彼女の腰を背後から抱きしめ、暴れても逃げられないようロックをした。  
それから彼女の背骨に向かって小さく「出すよ」と予告をする。  
 
男が避妊具をしていないことを知っている愛美は、脚をばたつかせて反抗する。  
「やだ」や「無理」を連呼して体を捩り、逃れようとした。  
もちろん、事前に腰に腕を巻きつけている英志から逃げるすべはない。  
 
英志の脳内は既に、脂ぎった白い液体で満ち溢れていた。  
思考能力も思案能力も放棄している。交尾をする動物そのものだった。  
その証拠に「お」と「あ」以外の言葉をもう発することが出来なくなっていた。  
 
「やぁっ!!」という甲高い悲鳴が上がったその瞬間。  
英志の陰茎が、女の体の中でぶくん、と膨れ上がった。  
体液が尿道を流れる数秒間。全ての意識が尿道口に集中した。  
 
愛美の膝が、がくんと床についた。  
英志は性器を挿したまま、それに合わせてしゃがみこむ。  
全ての体液を出し切るのに、十秒近くかかった。  
 
荒い呼吸音だけが部屋に反響する。  
射精をした男の常として、急速に理性を取り戻した英志は  
先ほど何度も叩いてしまった彼女の尻を撫でた。  
 
「いつまでくっついてんのよ」  
驚くほど冷たい声が、英志を突き刺した。  
すっかり柔らかくなった性器を引き抜くと、先端に白い残滓が残っていた。  
 
愛美は床に正座するように座り込むと、真っ赤な眼で男をにらみつけた。  
それを受け止める強さを全て放出してしまった英志は、いそいそと服を着始める。  
 
「また連絡するよ」と言い残し、彼は全裸の女から逃げるようにホテルを後にした。  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!