「お邪魔しま〜す」
先日から何度も訪れるようになった部屋に、私は来ていた。
『お前も知ってるヤツらで集まるんだ。』
だから来い、と誘われたのは今朝のこと。
それから数時間後…。
なぜか迎えに来てくれた亮の車で、食材の買い出しに付き合った。
行き先は、安いと評判のスーパーで、一人暮らしが板についているようだ。
あっという間に、何人集まるの?というくらい、大量の賞品が籠に積まれた。
会計を済ませ、テキパキと袋につめていくその後ろ姿は、まさに主婦のようだ。
大きい袋3袋分になった様子を見て、納得した。
こりゃ、荷物持ちがいるわ…。
私も1つ袋を持ち、並んで車へと戻る。
それにしても、これ、見た目の割に軽い。
…わざわざ1番軽いのを渡してくれたんだろうか。
そう考えると、なんだかくすぐったいような、嬉しいような。
昔は私の方が力持ちだったのに。
亮の部屋へ帰ると、今度は料理の下ごしらえが始まった。
といっても、焼き肉なので具材を切ったりする程度だが。
私は野菜を任され、焼き野菜用カットの他に、キャベツの千切りサラダと、軽いカルパッチョ風の一皿を作った。
基本不器用な亮にとっては、どちらも感動するものだったらしく、喜々として褒められてしまった。
そういえば、折り紙が壊滅的に苦手だった、この人。
何度教えても、折り鶴が折れなかった幼少時代が思い出され、笑えてきた。
変わったようで変わっていないんだなぁ、と、ぼんやり背中を見ていた。
夕方になってぼちぼち集まってきた友人は、懐かしい面々ばかりだった。
久しぶりの再会をみんな喜んでくれて、話も大いに盛り上がった。
「亮〜、ビールこれで終わり?」
「いや、まだ冷蔵庫にあるぞー。持ってくる。」
友人の一人の問いに、亮がそう答えた。
食べていた箸を置いて席を立とうとした亮に、声をかける。
「私の方が近いし、取って来るよ?」
そう言って立ち上がると、ふわりと席に座らされた。
そして、くしゃくしゃと頭をなでられた。
「いいよ、座っとけ。ありがとな。」
優しい笑顔でそう言われ、頷いて従うしかなかった。
頬が熱い気がするのは、アルコールのせいだろう。
そう思いながらふと友人達を見ると、狐につままれたような顔をしている。
「…何かあった?」
そう尋ねるが、曖昧な返事しか返ってこなかった。
「あの、呼んでくれてありがとね。」
みんなが帰って、私は後片付けを手伝った。
何しろ10人近く集まっていたのだ。
食器と鉄板だけでもかなりの量の上に、ビールやらチューハイの缶がそこかしこに転がっている。
一人で片付けさせるのは、忍びなかった。
片付けが終わり、2人でソファーに座りながら、そう告げた。
「こっちこそ、手伝ってくれてありがとな。」
そしていつものように、優しくなでなでされる。
それが心地良くて、目を閉じた時だった。
亮の手が、首に触れた。
「…っ…ぁ…!」
思わずびくり、と反応してしまった。
はっとして亮を見る。
ごくり、と喉が鳴るのがわかった。
そのまま、両手は首筋を優しく愛撫し、熱い吐息が耳をくすぐる。
私は、漏れそうになる声を抑えるのに必死だった。
「はぁっ…は…っ…」
息が上がり、恐らく顔も真っ赤になっているだろう程に熱くなっていた。
不意に、首筋をはい回っていた両手が動きを止める。
そして、頬へと伸びてきた。
ぼーっと目を開けると、信じられないほど近くに、亮の顔があった。
「ふっ…ん……」
そのまま、ゆっくりと唇に熱が伝わるのを感じた。
「んん…はっ…ん…」
そのうちに、温かいものが舌を絡め取り、奥まで犯して来る。
容赦ないその攻めに、完璧に力は抜け、息つぎをするのが精一杯だった。
「っぷ…はぁっ…はぁっ…」
ようやく解放された時には、息も絶え絶え、頭は朦朧、思考回路は麻痺状態だった。
だから、囁かれた言葉の意味も、考えられなかった。
「ごめん…我慢の限界…。」
亮は、優しい手つきだけど焦らすように攻めてくる。
それがなんとももどかしくて、心地良くて、たまらない。
私は成す術もなく、ただ与えられる刺激に耐えていた。
敏感になりすぎて、全身のどこでも感じてしまっているみたい。
「早紀…入れたい…」
ふいに後ろから抱きすくめられて、耳元でそう囁かれた。
お尻には、熱いものを感じる。
「え…ちょっ…ダメッ…!生はっ…!」
「いいじゃん…オレの子供、産んでよ…」
優しい声色でそう囁かれ、首筋にキスをされる。
そのまま、返事もできないまま…。
「っ…ふあぁっ…!!入って…く、るっ…!」
もう頭は真っ白で、何も考えられなかった。
なけなしの理性など、優しい声に吹っ飛ばされてしまったのか。
「あっ…ぁっ…おっき……りょお…っ!」
「くっ…早紀…きつ…もうちょい力抜け…」
身体が言うことをきかない。
やっと中に入ってきたモノに歓喜したように、収縮が止まない。
「あぁっ…っめ…こんな…だめ…ぇ…」
「そ…んな、締め付けんなっ…持たねぇ…!」
「だめ…っ…あっ…はっ…」
「うっ…早紀っ…で…るっ!!」
「…!!!」
その直後、激しく奥まで突き上げられると同時に、熱いものが拡がるのを感じた。
「っ…ぁ…なか…ぁっ……」
意識が薄れゆく中、抱きしめられて、囁く声がきこえた。
「早紀…愛してる…。」
ぼんやりと意識が戻って来た。
なんだか温かくて…良い匂いがする。
まだ目覚めたくなくて、隣にある温もりにしがみついて擦り寄った。
…隣にある温もり…?
ぼんやりと目を開けて、一気に脳が覚醒した。
隣では、亮がすやすやと眠っていたのだ。
私は亮の腕枕で、抱かれるような状態でいる。
すなわち、身動きをとれば起こしてしまう。
混乱と恥ずかしさでこの状態から逃げ出したい衝動に駆られるが、なんとかそれを抑える。
ふと視線を上げると、亮の顔があった。
その端正な寝顔を見ながら、ぼんやり考える。
意識を手放す直前、確かに『愛してる』と聞こえた。
今まで、ちょっとしたすれ違いで、違う道を歩んできた。
しかし、今からは、そばにいても良いのだろうか。
昔のように、でも、昔とはちょっと違うポジションで。
胸に暖かいものが溢れてくる。
穏やかな寝顔を見ながら、そっと囁いた。
「私も、愛してる」