朝起きたら、彼は超能力者になっていた。  
 
何故そうなったのか?  
 
昨日、宇宙人に拉致監禁され、脳みそを改造されたからだ。  
 
何故そういうことになったのか?  
 
悪魔召還の儀式に失敗して悪質な電波を撒き散らした挙句、  
悪魔の替わりに引き寄せられた宇宙人に魂を売ったからだ。  
 
脳内にインプットされた説明書を検索し、与えられた能力でできること・  
できないことを隅々までシミュレートして、彼が初めに呟いた台詞は短くひとこと。  
 
「ディ・モールト(すばらしい)」  
 
……彼は、そういう男だった。  
彼の魂を引き換えに得た能力は、しかし非常にくだらない。  
 
1つ、自分の履いているパンツを帽子だと思わせる能力。  
1つ、パンツが帽子であることを当然のことだと思わせる能力。  
1つ、やっぱりパンツは帽子ではなくパンツであったことを思い出させる能力。  
 
どうやら彼の脳みそのプリン体は、ほとんどがパンツで構成されているらしい。  
魂を売る代わりのパンツの能力をくれと、交渉された時の宇宙人の面を見てみたいものである。  
 
「実に素晴らしい!」  
 
また呟いて、彼は着替えを済ませ部屋からでた。  
居間には妹がいて、母親が作り置いたトーストをもしゃもしゃとかじっていた。  
 
「よう」  
 
兄が挨拶すると、目配せだけしてそっぽを向く。生意気な妹である。  
何より許せないのは、童貞の兄を差し置いてボーイフレンドらしきものができていること。  
 
『ふぁっく・ゆー……、ぶちころすぞ……ゴミめら……』  
 
制・裁・決・定。  
 
「うぃーんうぃーんうぃーんうぃーん」  
 
口から漏れる魔法の呪文。  
そして彼の妹は、そんな彼をまさしく変態に対する目つきで見ながら――  
立ち上がり、自分のスカートの中に手を入れている。  
表情に羞恥はない。  
当たり前だ、彼女は当然のことをしているだけなのだから。  
 
「兄貴、あさっぱらから何をへんなこと呟いてんの?」  
 
その声音は全く優しくない、敵意50%、恐怖20%、変態は死ね30%が入り混じっている。  
言動がまさしく変質者な兄に一定の距離をとりながら、彼女はゆっくりと両手をおろしてゆく。  
白く華奢な脚が、妹ながらなまめかしい。  
 
彼は息を吸って、吐いた。  
 
1度、2度、3度。  
 
ノーパンの少女を目の前にして、何かが香るというわけでもあるまいが、  
精神的にはすでに十分キている。  
 
しかしまだまだオードブル。  
続くつなぎの料理にメインディッシュ、デザートもこれからじっくりたっぷり視姦して味わって  
しゃぶりつくすのだ。  
 
妹はさらに怪しい挙動を示す兄を前に、距離をとりつつも一応は逃げずに同じ部屋にいた。  
くるぶしから抜き取られ、右手にくしゃりとまるまった白いパンツ……いや、帽子。  
当然のことながら。  
 
帽子は、頭にかぶるものだ。  
くしゃくしゃになった白い布地を広げ、上へ。  
毎日手入れを欠かさぬ黒い髪にすっぽりと覆うように、ぱんちゅが装着された。  
 
く……  
 
 
 
クマ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!  
 
 
 
怪訝な視線を浮かべながら、パンツをすっぽりと頭にかぶる妹。  
そのぱんつには、ぬいぐるみのくまが描かれていた。  
でんせつの、アレだ。  
小学生くらいのロリのみに許されるという、くまさんぱんつだ。  
 
「……あや」  
 
震える声で、妹の名前を呼ぶ兄貴。  
その拳は固く握られ、親指は人差し指の下ににゅるりと入っていた。  
 
「ぐっじょぶ!」  
「はぁ!?」  
 
パン、TWO、まる、見え  
 
小学生なら半分くらいはやったことがあるだろうジェスチャーをとる兄貴。  
しかしパンツが帽子だと思い、その状況が当然だと錯覚させられている妹は、  
何がなにやら分かっていない。  
 
さて、諸君。  
前菜はいただいた、その次も堪能した。  
ならばメインディッシュを手につけよう。  
そう、最後の能力が残っている。能力を解除する能力が。  
目の前にはノーパンになり、代わりに頭にパンツをかぶった妹の姿。  
もちろん、やさしい彼のことだから。  
見た目は変態そのものと化した不憫な妹を、きっちり元に戻してやるのを忘れない。  
 
「パンツめくれっ!」  
 
それは魔法解除の呪文。  
 
妹は、まず両目をぱちくりと動かした。  
 
次に、顔から耳たぶ、首筋まで、羞恥の朱色で染められた。  
 
ふる、ふると小刻みに、身体が震えている。  
 
目が、伏せられた。  
 
今の、今まで顔にかぶっていたパンツに手をかけ、その手触りを確認する妹。  
 
それがほかほかの自分のモノだと認識すると、今度は自分の頬を思い切りつねった。  
 
顔をしかめる。  
 
夢ではないことに気づいた。  
 
そう、これは現実だ。  
 
そんな彼女を、にやにやにやにやと見つめる変質者が目の前にひとり。  
 
「いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーやあああああああああああああああああああ!」  
 
頭からパンツを外し、しかしスカートの下には何もつけずに暴れる妹。  
大事なところがちらほら見える。  
彼は変態という名の紳士であるので、それを指摘してやった。  
 
「見るな見るな見るな見るな、しねしねしねしねしねしねしねしね、ばかあにき!」  
 
すると妹はさらに怒って、ぽかぽか彼を殴った挙句。  
 
「おにいちゃん嫌い、だいっきらいなもん、キライ!」  
 
よほどショックなのだろう、幼児退行したかのように叫んで部屋に引きこもった。  
ぼこぼこにされ、いくつものあざをつくりながら、彼はこう思った。  
 
次は、学校の女子に試そうと。  
 
 
 
 
〜続きません〜  
 

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