「ごめんなさい」  
 
屋上には申し訳なさそうに謝る女の子の声が響いた。  
 
「…あはは…。うん、分かったよ。ごめんね?変な事言っちゃって…、……でも最後に理由、だけ…聞いてもいいかな?」  
 
男の子は告白を断られたのだろう。悲しそうに、絞り出すような声で問う。  
その返事はとても残酷なものだった。  
 
「あなたに興味がないんで。」  
 
女の子は申し訳なさそうにしながらもはっきりと言った。  
 
その瞬間男の子は悔しそうに「…分かったよ。」と言って去っていった。  
 
 
そして男の子が去って数秒後…、  
 
 
「はぁ…疲れた。全く…何でろくに話したこともないのに好きとか言うのかな…」  
 
これがこの女の子の素なのだろう。しかし、そんな彼女を見る人物がいた。  
 
 
「なにやってんだよ椿(つばき)…」  
 
とさっきとは別の男の子が彼女に話しかけた。どうやら彼女は椿という名前らしい。  
 
椿と呼ばれた少女はその男の子の方を見るとはぁ…と溜め息を零し口を開いた。  
 
「覗き見とは随分悪い趣味ね、一成(いっせい)。」  
 
そう彼女に言われると一成と呼ばれる少年は心外そうに口を開いた。  
 
「趣味が悪い?俺が寝てる下でいきなり告白タイムが始まるのが悪いんだろ」  
 
「でもずっと見てたでしょ。」  
 
ズバリ言われると一成は一瞬驚いた顔をした。  
 
「気付いてたんだな」  
 
「あんなにチラチラ見てたら誰だって気付くでしょ…」  
 
「いやぁ学園のマドンナと言われる女の子の椿に告白する男が気になってな」  
 
「…ふ〜ん」  
 
「なんでOKしなかったんだ?あいつ結構モテる奴だろう?」  
 
「さっき返事であったでしょう?興味ないんでって」  
 
「試しに付き合ってみればいいじゃん」  
 
 
その言葉に対して椿は心の中でバカっ!!と怒鳴った。それもそうであろう。椿は幼なじみにして唯一自分が素で相手が出来る相手、一成の事が好きなのだ。  
 
 
「さっきも言ったでしょ?興味ないった」  
 
するて一成はそっか…と呟いた。  
 
「じゃあ帰ろうぜ」  
 
「えっ?」  
 
 
「えっ?じゃねぇよ。どうせ家が隣なんだし、帰るぞ」  
 
「…うん。」  
 
椿は思った。  
 
まだこのままでもいいのかもしれない。  
 
関係がただの幼なじみであっても…  
 
今一成の一番近くにいる異性は間違いなく自分だろうから。  
 
少し一成から離れた所で椿は呟いた。  
 
「まっ、いつか絶対振り向かせてみせるけどね!」  
 
「…なんか言ったか?」  
 
「い…、いや?別に…」  
 
「ふ〜ん…まぁいっか。行くぞ」  
 
「あっちょっと待ってよ」  
 
そして2人は夕日の中肩を並べ歩き出す。  
 
この2人が付き合い始めるのは  
 
 
そう遠くない未来ー  
 
 

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