奈美恵が風呂場から出てきた。バスタオルを身体に巻いた、それだけの格好で。
年頃の男、つまりは俺が居るのだから、少しは気を使って欲しい。
「姉ちゃん、ちゃんと服着てくれよ」
「なにさ、コーフンしちゃう?」
そう言って、奈美恵は両手を組んで前屈みになり、豊満なバストを強調して見せた。本人
としてはほんのおふざけなのだろうが、たまったものではない。慌てて顔を背けると、から
からと笑う声が部屋に響いた。
「がきんちょのくせにぃ」
冷蔵庫から缶ビールを取り出して豪快に飲み始める奈美恵。そのがきんちょは、あんた
のデカチチに向けて射精したんだぜ――そう心中で毒づいた。
今しがた見た谷間は、今夜から早速オカズになるだろう。
「ねえ隆彦、ちょっと来てよ」
ソファに寝転んだ奈美恵に呼ばれた。
「何さ」
「ちょっと肩もんでよ。疲れちゃってさあ」
渋々、というのは表面上。内心喜んでさせていただく。
奈美恵の背中に跨って、体重をかけないように膝立ちで両肩に手を伸ばす。
「ああ〜、うまいじゃないか。気持ちいー気持ちいー」
「そりゃどうも」
どことなく嬉しい会話をしながらも、視線はうなじに釘付けになっている。
「肩甲骨の下も頼むよ」
言って、奈美恵はバスタオルを取り払った。これは予想外の幸運。むしろわざとやってる
んじゃないかとも思えるラッキーマンもびっくりの役得だ。
さすがにこのまま仰向けになってくれるのは期待できないが、首筋から腰、さらヒップまで
丸見えである。
「腰の方もやろうか?」
「おう。気が利くねえ」
やった! シミ一つなく真っ白で、滑らかな肌の感触を堪能する。ぺろぺろ舐めてやりたい
くらいだった。
もう少し下っていけば、肉付きのいい尻があるのだが……そこに触れようものなら容赦の無
い蹴りが飛んでくるであろうことは明白だ。
命を捨ててまで触りたくはない――とも言い切れないが、やはり憚られる。今俺の脳髄を優
しく蕩けさせる柔肌の感触も、命あってのモノダネなのだから。
「ん〜。ありがとさん。もういいよ」
「あ、そう?」
おっと、いけない。残念なのが声に滲み出てしまったかもしれない。
「気持ちよかったよ。お礼に今度何かしたげるね」
言うと、奈美恵は再びバスタオルを身体に巻いて着替えを探しに行ってしまった。
俺はそのまま、彼女の体温の残るソファに座り、手に残る感触にしばし陶酔していた。
その夜、サービスしてくれた谷間に、肌の感触に、ヒップにと、オカズに困ることはなかった。
しばらくはこれでイケそうだ。