「お父さん、いってきまーす」葉子がまだ眠ったままのおれに声をかける。  
「んん…いってらっしゃい、葉子」おれは横になったまま葉子にこたえる。  
「じゃあお母さん、行ってくるね」  
「いってらっしゃい」雅子が愛娘を見送る。  
今年小学校で3年生になったばかりで元気いっぱいの葉子は母親の返事を聞くや否やものすご  
勢いで部屋を飛び出していく。  
「葉子、あぶないわよ!」雅子が注意してもその忠告すら耳に入らない勢い。  
雅子はやれやれといった表情で玄関まで愛娘が倒れて怪我でもしてないかと出向き、もう姿が  
ないことを確認すると、開けっ放しになった玄関を閉め部屋に戻る。  
 
「あなた、まだ起きない?」雅子がおれに尋ねる。昨日、仕事で日曜にも関わらず出勤した  
おれは、珍しく平日の月曜日に休みを取っている。  
「そろそろ起きようか…」おれが眠そうな表情のまま体を起こす。  
「まだ眠いんだったらのう少し寝てたら?せっかくのお休みだし」  
「そうしようか」そうつぶやいて瞳を閉じると、雅子が玄関先の掃除のため外に出て行く気配  
を感じる。  
 
 
「あら、あなた、起きてたの?」掃除を終え居間に戻ってきた雅子が食卓でくつろいでいるお  
れの姿に気づき声をかけてくる。  
「ああ、やっぱ一度目が覚めるとなかなか寝れなくてね」先ほど用意してくれていた朝食を丁  
度食べ終えたおれがこたえる。やはり体についた癖で一旦目を覚ましてしまうともう眠れない  
ようだ。  
そんなおれの横に雅子が腰を下ろす。  
「二人っきりなんて…なんだか久しぶりね」雅子がつぶやく。  
「どうしたんだい?」  
「となりの奥さんにあなたが今日休みっていったらふたりっきりね、って言われて。この年に  
なっていまさらそんなこといわれてもって思ったけど…確かに久しぶりだなって思って」  
「そうだな…」おれはなんとなくこたえる。  
雅子は結婚直後に葉子を妊娠したため、雅子は葉子の世話で手一杯になってしまった。おれ達  
夫婦は葉子から数多くの喜びを貰ったが、仕事の忙しさを理由に夫婦としての時間はそれほど  
取れなかったかもしれない。  
最近やっと葉子が一人で寝るようになったため夫婦の営みを以前より持てるようになったが雅  
子にとってはまだまだ物足りないのかもしれないと今さらながらに思う。  
「お皿…下げるね」そう言っておれの食べ終えた皿を片付けるため席を立つ雅子。  
台所で皿洗いをする雅子をぼんやり眺めるおれ。雅子も既に35歳。若いころに比べるとさす  
がに年をとった。しかし…おれにとってはまだ十二分に魅力的だ。  
「雅子、俺達が結婚して何年になるかな?」  
「えっ…何年かしら…?」そういって雅子が指折り数え始める。  
「ははは…今年で10年だよ」おれが笑ってこたえる。  
「わかってて聞くなんて…」雅子が少し膨れる。  
「ごめんごめん。それで雅子に無理を承知でお願いがあるんだけど…」おれは少しまじめな顔  
になる。  
「な、なんですか?」皿洗いを終えた雅子が食卓の指定席に座り尋ねる。  
「実は…二人目はもう…無理かな?」おれは最近ずっと考えていたことを打ち明ける。  
「えっ…」雅子が驚きのあまり声を失う。  
「雅子の体に負担が大きいのはわかってる。でも…やっぱりおれ、もう一人欲しいんだ」  
「…」おれの言葉に雅子は思わず考え込み始めたようだ。  
長年倹約してきたおかげが経済的には全く問題ない。問題は…35歳という雅子の年齢なのだ。  
「今すぐ答えをくれとはいわないから考えといてくれないか」おれは雅子を見つめる。  
「わかりました」  
「うん、そんなに焦ることないから。暇なとき考えてくれたんででいいから」そういっておれ  
は雅子に微笑みかける。  
「あら、今のわかりましたはもう一人作りましょうのわかりましたよ」雅子がにっこりと微笑  
む。  
「えっ…いいのかい、そんなに簡単に?」おれが驚いて雅子に尋ねる。  
「ええ…あなたが望むのならあたしはあなたのいうとおりにするわ」  
雅子のいじらしい言葉におれは思わず抱きしめてしまいたくなる。  
 
「じゃあ雅子…こっちにおいで」おれは寝室の入り口に立ち愛妻をベッドに誘う。  
「今から…ですか…?」顔を赤くする雅子。  
「ああ、せっかく二人きりなんだから…」おれはそういって雅子を再度促す。  
「わかりました…」そういうと雅子はエプロンを外しベッドの脇に立つ。  
おれは雅子をおもむろに抱きしめ口づけを交わす。  
「んん…」雅子がいきなりおれの欲情を刺激するような甘い喘ぎ声をあげる。  
おれはそのまま雅子の舌の感触を楽しみながら…ブラウスのボタンを一つずつ片手で外し始め  
る。  
ボタンに気をとられていると雅子が今度はおれの舌を弄び始める。そういえば付き合い始めた  
とき彼女のこの舌技に夢中にさせられてしまったことを思い出す。  
彼女は…職場の先輩事務員であった。しかしおれは4大卒、彼女は短大卒なため年齢は同じ。  
おれは彼女に仕事のことをいろいろ教えてもらっているうちに女性の体についてもいろいろ教  
えてもらう関係になった。  
「あなた…相変わらずキスは私の方が上手ね」唇を離した雅子がいたずらっぽく笑う。  
「敵いませんよ、先輩には」おれは付き合い始めた当時の調子でこたえる。  
「先輩って…懐かしいわね」今度は雅子がおれのパジャマのボタンを外し始める。  
「あのころは雅子がおれのものになってくれるなんて想像もできなかったよ」おれは当時を思  
い出しながら雅子につぶやく。雅子はものすごい美人というわけではないが男好きのする容姿  
で、職場では誰が雅子をものにするかで男達の間ではいつも噂になっていたようだ。それを新  
人のおれがかっさらっていったのだから職場の先輩や同僚には今でも飲み会の席でからかわれ  
る。  
「ふふ…私はあなたのこと、一目見たときから気に入ってたのよ。そうじゃなければ入社した  
ばかりの新人の食事の誘いなんて断るに決まってるでしょ」雅子がおれのパジャマを脱がせな  
がら嬉しいことを言ってくれる。  
 
「雅子…」おれは雅子の言葉になんだか胸を熱くしながら彼女のブラウスを脱がせ…スカート  
のホックを外す。すると彼女の赤いスカートはあっけなく床に落下し彼女は下着姿になってし  
まう。  
「あなた、そこに腰掛けて」雅子がおれのパジャマのズボンを脱がせながらつぶやく。  
「雅子、おまえまさか…」おれは驚いてつぶやく。  
「たまには…口でしてあげる」雅子が顔を赤くしておれに目を合わせずに囁く。  
雅子がフェラチオはあまり好きでないのはもう知っている。それなのに自分からすると言い出  
すとは…。  
「どういう風の吹き回しだい?」おれは不思議に思い雅子に尋ねる。  
「私ね…すっともう一人欲しかったの…。でもあなたはそうでもなさそうだったから…」そこ  
までいって雅子は口をつぐむ。  
なんということだ。自分の妻の本心さえ全然気づけなかったとは…。おれは猛烈な自己嫌悪に  
陥る。  
「私ずっと前からあなたに相談したかったの、もう一人…作りましょうって。それで今日は葉  
子もいないからあなたに話そうって思ってたらあなたの方から言ってくれて…。私なんだか嬉  
しくて…」雅子がおれのトランクスを脱がせながらつぶやく。見下ろす雅子は耳まで真っ赤だ。  
「雅子…」おれはそれ以上言葉が続かない。10年も夫婦をしているとはいえ、同じ日に同じ  
ことを考えていたと知るとやはり二人が結ばれるのは運命だったのかもしれないと恋愛小説み  
たいなことを考えてしまう。  
そんな甘いことを考えていたおれは…現実の甘い刺激に我に帰る。雅子がおれの愚息に手を添  
え、動かしだしたのだ。雅子はおれの愚息の竿の部分をしごきながら…その先端に舌を這わせ  
る。  
「おおっ…」おれは思わずうめく。雅子の舌の熱さにおれの愚息は敏感に反応してしまう。  
雅子がしばらくの間おれの愚息をいたぶり続けるとおれはあっという間に限界が近くなってし  
まう。そもそも雅子に口でして貰うこと自体、数ヶ月ぶりなのだからその強烈な刺激と雅子に  
口でしてもらっているという感覚におれは早くも白旗を揚げそうになる。  
 
「どうしたの?なんだかもうやばそうね」雅子がおれの愚息から舌を離しおれに尋ねてくる。  
「口でして貰うのは久しぶりだから…」おれはあっさりと限界が近いことを白状する。そもそ  
も先っぽを舐め続けるのは反則だ。  
「なんだ、だらしないのね」そういって雅子は今度はおれの愚息を奥まで口に含む。  
「雅子、やばいって…」そんなおれの言葉を無視して雅子は頭を前後に動かしおれをますます  
追い詰める。  
「雅子、おれ…」おれは魔法にかかったかのように雅子の口から与えられる刺激に身動き一つ  
出来ない。しかし、このままでは雅子の口に出してしまう。それは雅子が最も嫌うことのはず  
だ。  
「雅子、すごくいいんだけど…このままじゃおまえの口に…」  
おれの言葉に雅子は愚息を口にしたままおれの顔を見る。その目は…それで構わないといって  
いる。夫婦だから目だけでいいたいことはわかる。しかし…。  
「雅子、おまえ…いいのか?」おれはそんな雅子の反応が信じられず野暮なことを尋ねる。  
雅子はおれの愚息を口にしたままうなずく。おれはその雅子の表情に…思わず放出してしまい  
そうになるがなんとか耐える。せっかく雅子が口でしてくれているのだ。存分にその感触を愉  
しみたい。  
おれはおそるおそる雅子の頭をつかみ…表情が良く見えるように上に向かせる。雅子はとても  
恥ずかしそうにしながらも黙って従ってくれる。しかしおれは雅子のその切なそうな表情に…  
ついに我慢しきれず…。  
 
ドクドクっ…  
 
おれの熱い精が雅子の口の中に放出される。雅子は目をつぶったままおれの精を受け止める。  
おれはふと気づき慌てて枕元のティッシュの箱に手を伸ばし雅子に渡す。すると雅子は口の周  
りを拭き始めるが…一向に吐き出す様子を見せない。  
「雅子、おまえまさか…飲んじまったのか?」  
「全然おいしくないわね」雅子が不機嫌な表情で言う。  
「この間お隣の奥さんと見たやらしいビデオではおいしいって女の人が飲んでたわよ?」  
雅子がおかしいな、という表情で尋ねる。おれは唖然とした表情になる。  
「雅子、ビデオってAVか?」  
「うん、なんだかやらしいタイトルだったわ」雅子が機嫌が悪そうにこたえる。  
「ああいうのは男が見て興奮するように見せているだけで、まずいに決まってるじゃないか」  
おれは思わず苦笑する。  
「そ、そうなの?」雅子がきょとんとしてこたえる。  
「ああ、そうだよ」  
「なんだかだまされた気分だわ」雅子はご機嫌斜めだ。  
「まぁまぁ、とりあえずこっちへ来いよ」おれは雅子に手を伸ばす。おれには雅子を満足させ  
る義務があるのだ。  
「ちょっと待って、口ゆすいでくるわ。あなた、今の私にキスするの嫌でしょ?」そういって  
雅子が立ち上がる。おれはそんな雅子の手を掴み…ベッドに押し倒す。  
「あっ」雅子がおれの乱暴な行為に悲鳴をあげる。おれは雅子にのしかかり彼女の両手の自由  
を奪う。  
「あなた…」いつもと違うおれに雅子がおびえた表情をみせる。  
「嫌じゃないよ…」そういっておれは…雅子に優しく口づけする。  
「おれはいつだって…雅子にキスしたい」おれは唇を離し彼女の黒く澄んだ瞳をみつめながら  
囁く。  
「でも…」なにかいいかける雅子に再度口づけして黙らせる。このいじらしくかわいらしい愛  
妻を…おれは一時も離したくない。  
 
「雅子…」おれは愛しい妻の名を囁きながら首筋に舌を這わせる。  
「ああ…」雅子がおれの舌の動きにあわせて喘ぎ声をあげる。おれはいつまでも聞いていたい  
その声を聞きながらじっくりと首筋から鎖骨にかけて口づけする。雅子の体もだんだん温まっ  
てきたようだ。そしてついにおれは第一目標である乳房までたどり着く。  
ブラジャーをめくりその先端を舐めあげると…もうすでに硬くなってしまっている。おれは素  
早く雅子のブラを外し、本格的に乳房の攻略に取り掛かる。  
まずはゆっくりと雅子のそれほど大きくはないがなかなか形がいい乳房を揉み始める。  
「はぁ…」雅子はせつなげな声を漏らし始める。おれはそのまま両の乳房に手のひらをかぶせ  
親指で乳首をこねくり始める。  
「あっ!」雅子が思わず鋭い声をあげる。雅子は乳首をこうされるといつも声をあげる。それ  
は初めて雅子を抱いたときから変わらない、おれを初めて感動させた反応…。  
 
おれは今でも雅子を抱くときは必ずこの愛撫を行う。雅子はこの愛撫でスイッチが入るのだ。  
しかし、そんなことは重要だが大切ではない。なにより大切なのは…雅子が初めておれの愛撫  
で声をあげてくれたときの感動をふたたび思い出すこと。  
 
おれはいつもどおり雅子の乳首に刺激を与え続ける。  
「あん…!!」おれの親指の動きに雅子ははしたない喘ぎ声を発する。当時ほとんど女性経験  
のなかったおれでもよがらせることができたほど彼女は乳首を責められると弱い。今では微妙  
な指加減で彼女の快感を簡単にコントロールすることができる。  
「あなた…それされちゃうと私、変になっちゃうから…」おれに一方的に責められ雅子が悲鳴  
をあげる。  
「雅子、変になっていいんだよ」おれは止めるつもりは毛頭ない。今日は…嫌というほど雅子  
を愛しぬきたい。  
おれは悶える雅子の姿を存分に堪能する。雅子は堪えられないのか顔を左右に振ったり体を反  
らしたりする。そんな雅子の表情はとても卑猥でおれはもっともっと感じさせたい。  
「あなた…」雅子がおれの愛撫に体をくねらせながら突然声をかけてくる。  
「どうした?」  
「もう…あなたの好きにして…」雅子が顔を赤らめておれの愛撫を求める。こんなことを言う  
ときは雅子が理性を抑えきれないほど欲情してしまっているときだ。どうやら雅子もおれと同  
じ様にすっかり興奮してしまっているようだ。このような場合は雅子の言うとおりにするのが  
一番いい。  
おれは雅子の乳首を口にし舌先で弄ぶ。もちろん反対の乳首には指で挟んだり摘んだりして同  
じように休まず刺激を与え続ける。  
「ああっ…」雅子がまた喘ぎ声をあげる。彼女の喘ぎ声は平凡だ。だからこそもっともっと雅  
子の感じている声を聞きたい。  
おれはそのまま右手の指を一本、雅子の最もプライベートな場所に指を忍ばせる。雅子にとっ  
て最もプライベートな場所のはずだがおれにとっては十分に慣れ親しんだ場所にすぎない。  
「ひぃっ…」雅子の喘ぎ声が少し変わる。  
おれは雅子の最も敏感な突起を指で刺激し始める。雅子がおれを求める言葉を口にするのはも  
はや時間の問題だ。  
 
「あなた…そろそろ私…」雅子がおれの予想通りの言葉を口にする。  
「そろそろなんだい?」おれは少し意地悪をしてみる。  
「もう…わかってるでしょ…」雅子が息を絶え絶えにおれに抗議する。  
「わからないよ」そういっておれは胸への愛撫を止め、雅子の下半身へ移動する。雅子の大事  
なところに舌を侵入させ、目の前で蠢く突起を指の腹で刺激する。  
「やだ!そんなところ…」雅子が思わず声をあげる。しかしおれも雅子に口でしてもらった以  
上、同じようにしてこたえる義務がある。  
「雅子、どうだい…?」おれは雅子に感想を求める。  
「そ、そんなこと…」雅子はそこまでいうともう言葉に出来ないようだ。おれはすぐにも雅子  
を貫きたい衝動を抑え愛撫を続ける。  
「あなたお願い。楽にして…」雅子がまたもやおれを求める。もはや彼女は限界なのだ。  
おれは指と口だけで雅子を一度満足させるつもりであったが、愛妻からそこまで求められては  
夫として無視できない。おれは雅子の中から舌を抜き愚息を雅子の大事なところにあてがう。  
「雅子、それじゃあいくよ」おれは雅子に確認する。  
「は、早く…きて…」雅子がもう我慢できないといった表情でおれをみつめる。  
おれは…そんな雅子の表情に自分を抑えることができず雅子の両足を脇に抱えて…一気に彼女  
を貫く。  
 
ズズっ…  
おれの愚息が雅子の中に、久しぶりに生で侵入する。  
「はああぁぁぁ…!!」雅子が一際高い声で喘ぎ声をあげる。雅子の中は熱く、慣れた侵入者  
であるおれの愚息を優しく締め付けてもてなしてくれる。  
おれは雅子が自分だけの女であることを実感できるこの瞬間がなによりも好きだ。  
「雅子、何年たっても…雅子は最高だよ」おれはお世辞でもなく雅子に本心を伝える。  
「はぁ…はぁ…」雅子はおれの言葉にこたえない。いや、こたえられない。もはやおれの言葉  
は耳に入っていないようだ。おれは愛妻を楽にしてやろうと腰の回転を早める。  
グチュグチュ…  
おれの愚息が雅子の中で卑猥な音をたてる。そしておれの腰の動きにあわせて雅子が控えめな  
喘ぎ声を響かせる。  
「ああ…だめよ…」  
おれの眼下で10年間見慣れた雅子の裸体が腰の動きに合わせて揺れる。なんど見ても見飽き  
ることのないその姿を見続けるために…おれはそのまま雅子を責め続ける。  
「くぅ…」雅子がかわいらしい喘ぎ声をあげ体を震わせる。雅子が絶頂を迎える前兆を確認しおれはさらに腰の回転を早める。  
「あああっ…!!」雅子が思ったより小さな声をあげおれの愚息を締め付ける。おれは雅子の  
もてなしを必死に耐える。今も昔も雅子のもてなしに耐え抜くのは一仕事だ。  
 
雅子の体から力が抜けたのを確認したおれは雅子の上半身を抱き起こしおれにもたれかからせ  
る。もちろん、まだおれとつながったままで俗に言う対面座位というやつになる。  
「雅子、大丈夫かい?」おれは雅子を抱きしめ、彼女の胸の感触を味わいながら尋ねる。  
「うん…」雅子が息を弾ませながらこたえる。彼女を強く抱きしめると彼女の鼓動を感じるこ  
とができる。  
「気もちよかったかい?」おれはストレートに尋ねる。  
「うん…」雅子が顔を伏せて素直にうなずく。イった直後の雅子はいつもとても素直でかわい  
らしい。そんな雅子をあらためて愛しく思いまたもや彼女と口づけを交わす。  
「あなたは…まだよね?」唇を離すと雅子がつぶやく。  
「ああ。…どんな風にしようか?」おれは雅子にリクエストを募る。  
「あなたがやりたいように…」雅子が殊勝なことを言う。  
「じゃあこのまま…」おれは雅子にそう告げると彼女の小柄なお尻を両手でかかえ彼女の体全  
体を上下に動かす。  
「ああ…いいわ…」雅子がため息をつく。  
「自分で腰を動かして」おれは雅子に協力を求める。自分の力だけでは疲れてしまう。  
雅子の協力を得たおれは再び雅子のもてなしを受けながら彼女の耳元で囁く。  
「この10年間…おれは雅子にとっていい夫だったかな…?」おれの言葉を耳にした雅子が突  
然腰の動きを止める。  
「なに、あなた自信ないの…?」雅子がおれの首に両手を回し瞳を覗き込んでくる。その瞳で  
見つめられると…おれは嘘をつけなくなる。  
「正直…わからない。雅子はおれにとって100点満点の妻だけどおれの方は…」おれは思わ  
ず瞳を逸らしてしまう。  
雅子はそんなおれの反応に黙り込む。  
「おれは…もっと雅子のために出来ることがあったんじゃないかって…」おれは雅子がなにも  
言ってくれないため間を保とうとするがどうしてもうまくいかない。  
 
「いい加減にしてよ!」雅子が強い口調で突然おれの言葉を遮り体を離す。  
 
「あなた、ちょっとそこに座って」  
「もう座ってるよ」おれはどうでもいいことをこたえる。  
「言い訳しないで!」  
おれは雅子の剣幕に圧倒される。  
 
「あれからもう10年…」雅子がつぶやく。  
「あなたが私を幸せにするっていってくれてからもう10年、私は一度だって幸せを感じない  
日はなかったわ」雅子がおれを睨みつける。  
おれは何も言えずただ雅子の言葉を黙って聞く。  
「私はあなたに会えたこと、あなたという人を愛したこと、葉子を生んだこと、その全てを…  
今も誇りに思うわ。だってあなたはこの10年間ずっと私を愛してくれたじゃない」  
「…」おれは言葉が出ない。  
「本当に情けないわ、私の気持ちが…さっぱり伝わっていないなんて…。いい夫どころか…最  
高の夫だって思ってるのに」雅子がさびしそうに俯く。  
「すまない」おれはだらしなくも雅子に謝る事しか出来ない。  
「少しは自信持ってよ…」雅子は俯いたままだ。  
おれは…雅子の言葉になにも返せない。雅子がここまでおれのことを思ってくれていることが  
素直に嬉しい。だからこそきちんとおれの気持ちを伝えなければ…。おれは決意を胸に秘め雅  
子に語りかける。  
「雅子、すまなかった。どうやらおれの目は節穴だったようだ。」  
「ほんとにそうね」雅子が冷たい目でおれを見る。  
「この10年、君はおれのことをいい夫と思ってくれていたようだけど…やっぱりいい夫じゃ  
なかったようだ。だって雅子の気持ちが全然わかっていなかったんだから」  
雅子が複雑な表情でおれを見つめる。おれはそんな雅子の手を握る。  
「実はおれ、今でも雅子のこと、職場でからかわれるんだ、もう結婚して10年もたつのに。  
それはやっぱり会社のみんなも雅子がおれなんかに似合わないほど魅力的だと思ってるからだ  
と思う。もちろんおれにとっても雅子はものすごく魅力的で…もしかしたら自分が雅子にとっ  
て不釣合いなのかもしれないって心のどこかで思ってしまってたんだと思う。だからさっきみ  
たいなこといってしまったんだ」おれは一気に胸のうちを雅子にさらけ出す。  
「でもさっきの雅子の言葉を聞いてこれじゃ駄目なんだって思ったんだ。だから…この先の1  
0年、いや20年、30年、雅子にとっていい夫だと自分で思えるように…これから自分なり  
にがんばるよ。雅子のために、そしてなにより自分のために」  
そういうとおれは思い切って雅子を抱きしめる。  
「そうすれば…いつかおれは雅子にとっていい夫だって胸を張っていえるようになると思う」  
雅子はなにもこたえない。ただ黙っておれの背に両手を回し逆におれを強く抱きしめてくる。  
しばらくの沈黙の後、雅子がつぶやく。  
「私はあなたが思ってるようなそんな凄い女じゃない。だけど…一つだけははっきりしてるこ  
とがあるわ」と雅子。  
「こんなにも…愛されてるって私に実感させてくれるあなたは…やっぱり私にとって最高のだ  
んな様よ…」そういって…雅子はおれに口づけをしてくる。  
「雅子も最高の奥さんだよ」おれは心からの言葉を雅子に告げる。  
「愛してるわ、あなた…」雅子がおれの瞳を見つめつぶやく。  
おれの言葉はもう決まっている。  
 
「おれも…雅子のことを世界で一番愛してるよ」  
 
決まった。おれの言葉に雅子も感動してくれているはずだ。  
 
「あなた…」雅子が顔を赤らめておれに尋ねる。  
「なんだい、雅子?」  
「あなたのがその…あたってるわ」雅子は顔を赤らめたままだ。なるほどおれの愚息が異常な  
までに固くなり雅子の太ももに当たっている。  
「続けて…いいかな?」  
「ほんとに雰囲気のない人ね!」口調とは裏腹に雅子の顔は笑顔で溢れている。  
「だってこのままじゃ子供できないじゃないか」  
そういうとおれは…再び雅子の体に挑みかかるのであった…。  
 
 
「10 years」 完  
 
 

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