蒸し暑くて日差しが鋭くて、雲が白くて風が温くて、何の変哲もない空がそこにある。  
 茶褐色に汚れたユニフォームをぱたぱたと叩く。疲労で重くなった体を引きずり、休憩  
終了を待たずに練習を再開した。  
「おい、ボール受けてくれ。今日はこれで仕上げにするつもりだから、力入れていくぞ」  
 呼び掛けたそいつは首肯し、ホームベースの少し後ろに腰を落とした。  
 まずは直球からだ。百三十キロが最速の、地区大会レベルの球。とてもじゃないが甲子  
園には及ばない。  
 腕を上げ体をひねり右腕を大きく後ろに伸ばし、適度に力加減をして放った。  
 乾いた音。コースは意識してど真ん中を狙った。  
 返球を胸の前でしっかりと捕球する。この動作も慣れたもので、キャッチャーもどこへ  
投げれば捕りやすいかも熟知しているし、そこへ投げる技術もある。  
 今の俺たちの実力なら初戦負けはまずないだろう。  
「調子良いな。もっとバンバン投げてもいいぞ」  
 言われなくても、さっきのは休憩を挟んだから抜いて投げただけだ。  
 マウンドを踏みしめる。土は若干乱れている。  
 最後の夏だ。さすがの俺も名残惜しく思う。だから悔いを残さないようにしよう。どう  
せ次に待つのは受験だ。それまでやりたい事やっても構わないだろ。  
 
 部室には俺以外誰もおらず、ひっそりと着替えをしていた。  
 温暖化の所為かどうかは知らないが妙にキツイ日差しは緩み、だんだんと太陽は傾いて  
いた。  
 六月中旬、これから暑さは厳しくなる一途を辿るわけで、もう少し過ごしやすい国に生  
まれろよと赤ん坊の俺を恨めしく思っていた矢先の事件。  
 急にドアが開かれて、反射的にそちらに振り向く。意外な人物がいて、さらに驚愕した。  
「え、あ、すいません!」  
 そこには見慣れた女の子が呆然と立ちつくしていて、数秒の後状況を把握したのか、な  
んとも可愛らしい恥じらいを見せた。  
「い、いたんですか? いるなら一言言ってください」  
 こちらにも意見はある。入るならノックをしてください。  
「だって先輩がいるなんて思わなかったんですよ。あー、びっくりした。もう驚かないと  
思ってたんですけどね」  
 このコはもう一年と数ヶ月マネージャーを務めている。男の半裸に対する抵抗も薄れて  
いるはずだ。  
 その少女、野村恵理は意外にも頬を赤らめていた。いまさら恥ずべきものでもないだろ  
う。こっちも申し訳ない気になってくる。  
「恵理ちゃんまだ着替えてないんだ。ごめん、すぐ終わるから」  
「急がなくてもいいですよ。……それにしても筋肉ありますねー。惚れ惚れしちゃいます」  
 思わず体を強張らせた。恵理ちゃんの手のひらが俺の胸板を擦っていた。  
 感心したように肉質を確かめる恵理ちゃん。第三者から見れば情事の前戯かと思うくら  
い、手付きが妖しかった。  
 どうにかなりそうだ。  
「くすぐったいって。ほら、着替えるから」  
 手首を掴んで制してみた。このまま続けても結構なのだけれど。  
「もう少しいいじゃないですか。うわっ、硬ーい。ムキムキだー」  
「みんなこれくらいあるって。バッターのほうが上半身は筋肉質だろうし」  
「じゃあ下半身は先輩のほうが肉があるんですか」  
 死ぬほど走りこみさせられたし、イヤでも土台ができあがる。  
「あのね恵理ちゃん、女の子が安易に男の体に触っちゃ駄目だよ。勘違いするヤツもいるか  
らね。後々苦労するかもな……」  
 事実分かっていても心拍数が上がっている俺がいるし、体育会系の男は容易にオチてしま  
う傾向にある。免疫ないんだよ、女に。  
 俺が自己防衛の助言をしているのに、恵理ちゃんは全く相づちを打たない。  
 恵理ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。  
 
「それくらい分かりますよ。わざとです」  
 冗談も選んで言おう。本気で将来が怖い。打算的だったらさらに怖い。  
 手首を掴んでいた右手に力を入れ、胸から離させた。あまり長時間こうされていては俺の  
理性も限界に達する。  
「……変に我慢しないでください」  
 寂しそうな表情に見えるのは、俺の主観だからだろう。きっと気のせいだ。  
「本当は恥ずかしいんですよ、こんな事するの」  
 俯いているので表情は窺えない。真剣なのかもふざけているのかも定かでなく、困惑し戸  
惑ってしまった。  
 おちょくっているなら早急にそうだと言ってくれ。じゃないと俺はどうしようもない。  
「自分でも馬鹿だなって思います。でもこうでもしないと先輩振り向かないだろうし」  
 初めてだった。女の子の切ない様子なんてドラマの演技くらいで、本物(だと思う)を実  
写で見るなんて想像もしなかった。  
 野球をしている間は女に縁がないと腹を据えていたからね。  
 視線が合わないのが余計に庇護欲をそそる。はっきり言って可愛い。  
「……本気だよね」  
 一応尋ねてみた。  
 恵理ちゃんは無言を貫いた。答えるのが嫌だったのだろう。それとも無粋な質問をしたの  
かもしれない。  
「俺ってそんなに鈍い?」  
「……あたしも意識されないようにはしてましたけど……。友達にはバレてます」  
 悪い事したな。俺はマンガの主人公並に鈍いらしい。そういう場合は大抵女の子の友達は  
分かっていたりする。典型だな、こりゃ。  
 素直に好きだと打ち明けようか、言ってくれるまで待つか、迷ったのは数秒だった。  
「俺は好きだよ、恵理ちゃんの事」  
 恵理ちゃんは僅かに驚いて、微笑した。  
「よかった」  
 ふくよかな感触が生肌に伝わった。  
 恵理ちゃんはジャージを着ているのに十分過ぎる柔らかさを持っていた。  
 抱きつかれて一瞬妄想の世界かと思ったけど、恵理ちゃんの体温を感触がすぐに現実だと  
分からせてくれた。  
 理性なんて簡単に吹っ飛ぶ。細い肩をできるだけ優しく抱き締め返した。  
「汗臭い……」  
 含み笑いに指摘され、少々の羞恥に彼女を離してしまった。汗臭いらしいし。  
「嫌っていう意味じゃないですよ。男の人に抱かれてるんだなーって」  
 崩れてしまいそうな道徳を必死に支えるので精一杯で、返答するのも代わりに何か動作を  
するのもできなかった。  
 もう一度抱き締めたら抑制が効かなくなってしまう。自分の体は自分がよく知っている。  
 それを知ってか知らずか、もとい知っていながら恵理ちゃんの顔は徐々に接近してくる。  
 
 柔らかいな、唇は。麻薬だろ。さよなら理性。  
 恵理ちゃんは離れようとする俺を許さず、長いキスを求めた。  
 時折隙間から甘い吐息が零れるのが官能的で、まるで直に下半身を刺激するようだった。  
初めてのキスではなさそうだ。もちろん俺は一回目。  
 ようやく腕を解除した恵理ちゃんは、上気した顔でこちらを見つめてきた。  
 年下にリードされるのは情けないと思う。しかし俺に先導する知識も技術も経験もない。  
まあ俺は投手だし、リードされてナンボだろう。  
「一人で突っ走っちゃうかもよ」  
「……激しいのはヤです」  
 恵理ちゃんは背を向け上着を脱ぎ出した。脱がす楽しみは剥奪か。スムーズに脱衣させる  
自信はなかったので構わないが、残念だ。  
 衣擦れの音と共に衣服がはらりと落ちていく。  
 一枚一枚おずおずと脱ぐ恵理ちゃんは妙に色っぽく、堪えきれずに後ろから抱き締めた。  
「あ、先輩、まだ脱いでる途中――」  
「下着くらい俺が脱がしてもいいじゃん」  
 全部脱ぐつもりだったのかよ。それはあまりに大胆不敵だ。  
 胸に手を伸ばした。腹の辺りで手を滑らせつつそれほど大きくないそこへ向かう。小さく  
ても全く悪くない。微乳は可愛いぞ。  
 心臓が張り裂けるかと思うくらい緊張しながら乳房に触れた。布越しでもふわふわとした  
手触りは伝わる。  
「可愛い……」  
 無抵抗で息が荒くなりつつある恵理ちゃんは本当に可愛く、俺は欲情を抑えられない。喘  
いだらどんな声を出すだろう。  
 じれったい。ブラジャーの下へ手を侵入させた。  
 生肌の温もりと生乳の弾力。指を沈めると形を変えるのだが、何もなければ簡単に形状が  
戻るのは少し驚いた。  
「……っ……んっ……」  
 せっかく声を出したのに堪えられては面白味がない。必死に耐える様子なら官能的だが恵  
理ちゃんは余裕があるようだ。  
 突起を苛めてみたりもするがあまり声を漏らさない。胸の快感はたかがしれている。  
 ならばと右手を股へ移動させた。  
「濡れてる」  
「……言わないでください」  
 羞恥を味わわせるのは案外楽しいものだ。言葉責めが好きなヤツの気持ちも分かる。  
「胸もちっちゃくて可愛い」  
 これは先程の感想。  
「気にしてるんですよ、それ」  
 口に神経を集中させると手がおろそかになってしまうので、これ以上の会話は遠慮しよう。  
「んっ……あっ……んん……あ……ふぁ……」  
 指を這わせていると多少感じてきたらしく、高ぶりがはっきりと確認できる。  
「あ、ん……あっ……せん……ぱい……」  
 くりくりと弱点らしき部分と弄る。見つけるのに多少時を費やしたが。  
 立っているとやりづらいので「座ろう」と促した。恵理ちゃんも同感だったらしい。  
 左手は胸で右手は陰部を愛撫。甘い吐息と喘ぎを堪能しながら恵理ちゃんの身体そのもの  
を愉しんでいた。  
 
「んぁ……先輩……入れて……」  
 没頭しすぎて時が経つのも忘れていた頃だった。  
 まだ時期尚早と思っていた。しかし恵理ちゃんが求めてくるならそれは別問題で、俺の身  
など自由に使わせてあげよう。  
 自分から挿入を求めるのだから非処女説は正解だったらしく、恵理ちゃんの純潔を奪った  
男が憎い。この野郎。  
「ここじゃ背中痛いよね。なにか敷くものでもあればいいんだけど……」  
 野球部部室にそんなものはない。殺風景な部屋だ。  
 と思っていたら、おあつらえ向きのものがあるじゃないか。  
「あ、マット……」  
 恵理ちゃんも気付いたらしい。多少汚いし硬そうなマットが巻かれた状態で壁に立てかけ  
られている。巻かれていた内側を使えばそれほど汚れていないだろう。  
 熱中症になったヤツが出た時に持ってきた代物で……説明は割愛しておく。  
 無駄に重量があって運ぶのに一苦労した。行為が中断にならなかっただけマシだな。薄汚  
れたマットに恵理ちゃんを寝かす。  
 本人の手も借りてショーツを脱がしていく。現われたのは液体で光る秘部。これを目前に  
して「奇麗だ」とか言うヤツは嘘つきだ。異様なまでに浮いた存在だからこそ興奮するので  
あって、小奇麗なものでなく動物的な性器だからこそ、また動物的な男のモノは反応する。  
「……いい?」  
 恵理ちゃんの首肯を確認し、怒張をあてがい、沈めていった。  
 先端しか入っていないが既にそれがどんなものだか身をもって理解した。まるで別の意志  
を持つようだった。  
「うあ……あ……んっ……気持ちいっ……」  
 徐々に侵入していくそれを受け入れるのは快楽を伴うらしく、反対に飲み込まれるのに任  
せている俺も未知の快楽を味わっていた。  
 これは危ない。いつ射精してもおかしくない――ここで理性が復活した。  
 避妊具はない。俺は外に出す自信が微塵もない。  
「俺、ちゃんと出す前に抜けるか分からないよ……」  
 いきり立ったそれは半ばまで進んでいる。  
「ん……中に出して……」  
 嬉しい。確かに嬉しいが安易にしてしまって平気だろうか。恵理ちゃんがそれで構わない  
のなら遠慮することも必要ないはずなのに、そればかりは気が引ける。  
「先輩のが欲しいんです……」  
 とどめの一言だった。もう躊躇うことはない。理性は返り討ちにあった。  
 一気に腰を沈めた。  
「あうっ、あっ、……いきなりなんて酷いですよ……」  
「ご、ごめん。でももう我慢できない」  
 眼下の恵理ちゃんの容姿と陰茎を包む膣の魅力に圧倒され、性欲を内に秘めることが困難  
になってきた。無理に耐える必要もない。劣情に身を任せてしまえばいい。一心不乱に彼女  
に身体を愉しめばいい。  
「動くよ……」  
 ゆっくりと腰を前後に動かす。  
「あ……あんっ、あ、あ……せん、ぱい……」  
 歯止めがきかなくなってきた。一点に集中する快感に酔い始め、それを求めていた。  
 だんだんと速まる動きを遅くする術は俺にはない。  
 刺激に正直に反応してしまい、喘ぎが止まらなかった。それは恵理ちゃんも同様で。  
「あっ、やぁっ、ああっ、あん、もっと、あっ、んっ、あっ……」  
「恵理ちゃん……気持ち、良いっ……」  
 うわ言のように彼女の名を呼んだ。意識の全てを目の前の女性に集中させるために。  
 ヘタな思考はご法度だ。本能的に恵理ちゃんの膣内を突き、少しでも長くこの時間を共有  
したい。それだけで十分だ。  
「恵理ちゃん……あっ……出るっ……!」  
――性器を引き抜こうとは思わなかった。  
 そんな間もなかったし、あってもしたくなかった。  
 恵理ちゃんのなかに、白濁をぶちまけた。  
 
疲労困憊の下半身をやっとの思いでお越し、汗だくになった身を拭く。  
 隣ではいそいそと着衣にいそしむ恵理ちゃん。  
「なんか俺だけ気持ち良くなった気が……」  
 恵理ちゃんは首を横に振った。  
「今まで一番気持ち良かったですよ。もう少しで――なんでもないですっ」  
 言いかけたのなら全部口に出してほしいが、まあいいだろう。恵理ちゃんの微笑を見てい  
たらどうでもいいやと思える。ああ、この笑顔が俺のものなんだなと思えば感慨深い。一種  
の感動だ。  
「あ、先輩」  
 何? 短く応答した。  
「大会頑張ってください」  
 おう。再び短く応答。  
「またしましょうね」  
 もちろん。短く即答。  
「今度はちゃんとゴムつけてしないとな」  
 一ヶ月安心できないのはまっぴらごめんだ。子供を養う力はまだないし。  
 ただ、避妊具をつけると快感が半減するのは惜しい。あれは病み付きになる。まあそこは  
人間としての理性でどうにかしよう。  
――後日、無事妊娠回避が判明してようやく安堵できた。  
 

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