春になりかけた昼下がり。  
パソコンの前からようやく解放されたしがない物書きの俺は、日の当たる廊下で  
日向ぼっこをしていた。  
 
「あったけぇ」  
 
にゃん丸という名の猫を腹に乗せながら、幸せのひと時を味わっていた。  
 
ふと、窓の外を見る。  
そこには。  
 
膝下まである髪の毛をたたえた女性が突っ立っていた。  
 
「ぶおぁ!?」  
にゃん、と俺の腹から猫が逃げ出す。だが、その女性は俺の見間違えでもなければ  
幽霊でもない。  
 
「だ、誰ですか!?」  
 
きりきり、という音が聞こえるような口の動きから、その女性は言葉を発した。  
「ひどい… もう忘れたの…?」  
 
忘れた?何を?俺は、こんな人知らな…  
…し…  
っている…  
俺は…  
 
「せ、先輩…」  
中学校二年間、俺を追い掛け回し、俺を観念させ、俺と付き合った一歳年上の先輩。  
何故、今頃?  
 
「でも… 気づいてくれなかったのは、もっとひどいよ…」  
 
「え?」  
 
「ずっと見てたのに」  
 
「ずっと見守っていたのに」  
 
「ずっとずっとずっと見てたのに」  
 
「ずっと電話もかけて元気かどうか、声を聞いてたのに」  
 
「ずっとずっとずっとずっとずっとずっと!貴方がロングが好きだからって髪の毛切らずにいたのに!」  
 
「なんで… 貴方は… 私を… 見つけてくれなかったの…?」  
 
ギリ、ギリ、とガラスを押す音が聞こえる。  
 
うちの窓ガラスは決して強化ガラスでもなんでもなく、ただのガラスだ。  
押されれば、破砕する。  
ぴしり、とひびが入る。  
 
「でも、もういいの… この窓を割れば貴方に触れられるから…」  
 
パリィ、という音と共に窓が割れ、俺の生活は…  
 
また、あの中学校2年間に戻った…  
 
 
 
カツ、カツと靴の音が迫ってくる。  
 
誰のものなんだ、いや。答えはわかっている。自分で結論を出したくないだけなんだ。  
 
雨の中、俺は彼女から逃げようと走っていた。  
 
走っている最中にも懐に入れた携帯電話が鳴り続ける。  
 
彼女の番号からの着信に登録してあるゴッドファーザーのテーマ曲が、俺の耳に微かに聞こえる。  
 
「(もうやめてくれ…!)」  
 
ハイヒールなのか、パンプスなのかわからないが、その高い足音は距離を保ちながら俺を追ってくる。  
 
後ろから、くすくすという笑い声が聞こえる気がする。  
 
雨が降り注いでいるのに、喉はカラカラに渇いて水に飢えている。  
 
俺は家へと逃げ込むことが出来るのだろうか。  
 
 
彼女との再遭遇から3日。俺は実家を出て一人暮らしを始める決意をしていた。  
 
荷物は少しの着衣と愛用のマグカップ、そして仕事用のノートパソコンだ。  
 
誰にも知られずに、俺は家を出たつもりだった。  
 
家族にも彼女の事を話し、住所を伝えずに携帯番号だけを教えただけだった。  
 
それなのに、4日目の朝。  
 
可愛い封筒に口紅でキスマークがつけられた封書が、俺の新しい住居に投函されていた。  
 
恐る恐る開くと、そこには恐ろしく長い髪の毛と手紙が入っていた。  
 
そこにはこう書かれていた…  
 
「はやく 合鍵を ちょうだい?」  
 
俺は発狂したかのようにその手紙を破り捨て、髪の毛を流しへとぶちこみ、排水溝へと流した。  
 
4日目の昼。俺はインターネットの工事を頼んだ業者の応対をした。そして、仕事を少し進めた。  
 
5日目の朝。俺は仕事の話し合いのために家を出たんだ。雨が降りそうだったので、傘をもって。  
 
その、帰りだ。足跡がついてきているのは。  
 
誰がついてきているのか? 考えるまでもなく、「先輩」だ。  
 
八広 佐緒里 先輩。彼女が、俺を視認している。振り返ることもできずに俺は駆け出した。  
 
傘を投げ捨てて。  
 
 
古びたアパートの階段を駆け上り、俺は自分の家のカギをあけ、凄まじいスピードで逃げ込んだ。  
 
ドアを閉め、カギをかけ、チェーンロックを施し、さらに実家から持ち出した書籍が入ったダンボールをおいた。  
 
カリ、カリリ、ガリッ。  
 
置いた瞬間、扉から嫌な音が聞こえる。  
 
「クスクスクス・・・」  
 
笑い声も、聞こえる。  
 
俺はこの恐怖から逃げ出すことができるのだろうか。  
 
足も手も、いや全身が震えている。  
 
この「先輩」の恐怖が刻み込まれた身体を解放することができるのだろうか。  
 
5分ほどして、手紙を投函した「先輩」は、  
 
「また・・・ くるね?」  
 
という言葉を残して、去っていった。  
 
 
 
手紙の数が、二桁を越えた頃。  
 
鏡に映る俺の顔は、痩せこけくまがある不健康人間そのものになっていた。  
 
「本当… 勘弁してくれ…」  
仕事は家でもできる。というより、インターネットが開通した今だとほとんど家で事足りるのだ。  
 
朝起きると同時に、コトリ という音と共に投函される手紙。  
俺はそれを握り締めくしゃくしゃに丸めた後、部屋の片隅に投げ捨てる。  
 
俺の全てを熟知しているかのように、窓を覗くと下の道にいる先輩。  
 
その笑顔は地獄の悪魔の誘いだ。屈服してはならない。  
 
盗聴器の有無を調べたが、わからない。機材があるわけでもなく、1時間で断念した。  
 
カタ、カタリ と文章を打ち込む俺。仕事だけは、しなければ。  
努力して築き上げた信頼が崩れ去り、俺のアイデンティティが消えてしまう。  
 
なんとか原稿をあげきった。担当に連絡をいれ、俺はベッドに寝転んだ。  
 
天井を眺め、俺は先輩と付き合っていた当時… 中学生時代を思い起こした。  
 
 
「なぁ、あれ誰だ?」  
友人が声をかけてくる。教室の扉をふと見ると、黒髪の人がこちらを覗いていた。  
 
「さぁ、知らない」  
俺はそう、答えた。顔が見えないし、何より彼女居ない歴が年齢と同じだからという事もあったが。  
 
だが、俺はその時既にその長い長い髪の毛に、運命を巻き取られていたのかもしれない。  
 
放課後。俺は、授業で使った辞書を図書室へ返しにいった。  
ついでに借りていた本等も大量に返す。図書委員の友人に無理を言って大量に、長期間貸してもらっていたんだ。  
 
だが、いつも俺をアホなポーズで迎えてくれる友人はカウンターには居らず、女の人が座っていた。  
それは、昼休みに見た黒髪の女性だった。  
 
「(やべ、アイツじゃない人に返したら怒られるかな)」  
 
不安に思いながらも返さないわけにはいかない。とにかくカウンターに大量の本を持って行く。  
 
「本・・・ お好きなんですね」  
低いが、女性のような可愛らしい声で応対する彼女。  
 
「ええ、ゆくゆくは文章で食っていきたいって思ってるんで・・・」  
夢を語る、俺。だが、そんな和やかな雰囲気も彼女の言葉で打ち消される事になる。  
 
「・・・この前、書店で京極夏彦さんの本を買ってらっしゃいましたね・・・」  
「・・・それに、安部龍太郎さんの著書も・・・」  
「他にも、指輪物語、ソフィーの世界・・・ 素敵な本をお好きなんですね・・・」  
 
俺は、確かに本が好きだがそれを図書委員の友人以外に話したことは無い。  
本は家でゆっくり読むタイプなので見られることも少ない。  
 
そして、友人と一緒に書店に行くことも、無い。  
 
なのに、彼女は俺の買った本を全て言い当てている。  
 
当てている、のではない・・・ 見たものをそのまま口に出しているだけなんだ。  
 
ごくり、と喉を鳴らした俺は、彼女の瞳をふと見た。  
 
黒く、濁り、何か狂気に取り付かれているようにも見える双眸が俺を射抜く。  
歪んだ唇から、言葉が発せられる。  
 
「私も、あなたが買った本を買ったんですよ・・・ 貴方が」  
 
最期まで聞かずに、俺は図書室から逃げ出そうと駆け出した。  
 
扉を開く瞬間に、全ての音が消えて。  
 
「貴方が 知りたくて」  
 
彼女の言葉が聞こえた・・・ 気がした。  
 
図書室から命からがら、という状態で逃げ出した俺は、コンビニまで走る。  
店長と知り合いで、自転車を隠してもらっているんだ。  
 
俺は颯爽と、というには見苦しい勢いで自転車に跨り、必死に家へとこいだ。  
 
「(なんだ、なんだ!なんなんだ、あの女性は!)」  
怖い。ホラー映画等のどっきりな怖さでも、心霊写真を見た底冷えする怖さでもない。  
 
ねとり、ねとりと身体を少しずつ… 恐怖が覆ってゆく。  
そんな表現しかできない。俺は頭の中であの双眸から放たれる狂気と恐怖を反芻していた。  
 
だが、その日からぱったり彼女を見なくなった。  
 
いつぞやの昼休みのような監視の目も無く、図書室に毎日行っても、アホなポーズをする友人しかいない。  
まるで学校から存在が消えているように、彼女の存在が見えなくなったのだ。  
 
昼休みに彼女に気づいた友人も、「そういや誰だったんだろうな、全然見ないコだったし」と言っている。  
 
あの事件から1ヶ月。俺は彼女の存在を忘れかけていた。  
 
いや、忘れたかったのかもしれない。  
 
あれは白昼夢だったんだ、その証拠に、彼女が居ないじゃないか―…  
 
そんな甘い考えを頭の片隅に置きながら、俺は日々を過ごした。  
 
かさり。  
 
「ん…?」  
 
放課後。俺の手に当たったのは、"口紅でキスマークがつけられた可愛らしい封筒"だった。  
 
「(うーん・・・)」  
 
誰も居なくなった教室で、俺は手紙とにらめっこをしていた。  
手紙の内容はこうだ。  
 
「放課後、5時まで そのまま教室に居て下さい」  
 
こういうのは呼び出すのがセオリーなんじゃないか、と彼女居ない歴=年齢の俺は考えた。  
だが、この学校には呼び出すような体育館裏は無い。  
 
なにせ、体育館裏は部室棟があるからだ。  
校舎裏も意味が無い。職員室から丸見えだからだ。  
 
だとすると、これは妥当である。うちのクラスは部活生も多く、皆さっさと教室を出て行くのだから。  
 
初めての事態に、俺はうんうんと唸りながらも嬉しがっていた。  
何せ、こんな手紙を貰ったのは人生初であるし、彼女ができるかも・・・ という期待もある。  
 
俺は、窓際一番前の自分の席で様々な妄想をめぐらせながら手紙の主を待った。  
 
カチッ。  
 
時計が5時を指す。  
 
思わず周りを見渡したが、誰も居ない。  
まぁ、ダメならダメで別にいい。こっちから告白したわけでもなしに、ダメージは少ない。  
多少切ない気分にはなるだろうが、そんな時には小説があるー・・・  
 
「少しお待たせしてしまったようですね・・・」  
 
どくん、と心臓が高鳴る。  
この声、忘れもしないこの声。いや、忘れていたのだけれど、忘れたかった声。  
 
女性にしては低く、可愛らしさを残しながらも静かな女性を演出するその声の主。  
 
俺は古びた人形のように軋む首を曲げ、声のする方向へと顔を向けた。  
 
居た。  
音も無く扉をあけたのか。  
胸のワッペンが赤い。ということは一年上か。  
図書室の時は確認できなかった事が、見えてくる。  
 
さら、さらと髪の毛の音が聞こえてきそうな綺麗なロングヘアー。  
垂れた、まつ毛が濃い眼の奥に見える黒い瞳。  
整ったスタイルの身体。  
 
そして、歪んだ笑顔。  
 
「またお会いできましたね・・・ 猛さん」  
 
瞬時に逃げ道を探す俺だが、この距離だとどの逃げ道も無理そうだ。  
さらにここは三階。一年生の教室は全て三階になっている。割り当てを決める教務を恨んだ。  
 
かつ、かつとパンプスの音が近づいてくる。  
圧倒される。強い意志を持っている彼女に。  
 
一言も発することができないまま、俺は彼女の接近を許した。  
 
「手紙・・・ 読んでくださったのですね」  
机に置かれた手紙を摘み上げながら、彼女は笑みを浮かべた。  
 
「う れ し い ・・・」  
 
恍惚の表情で、手紙を胸に抱きしめる彼女。  
 
普通じゃない。普通じゃない。普通じゃない!  
この笑顔は、普通じゃない!  
 
一刻も早く逃げ出したいが、既に逃げる場所は窓しかない。  
 
それに、彼女を押し退けてまで逃げ出す気力も、今の笑みに奪われてしまっていた。  
 
「この二ヶ月・・・」  
彼女は語り始めた。  
 
語る、というより暴露、といったほうがいいのだろうか。  
 
まず俺の家を調べ、戸籍を調べ、家族を調べ、家族と接触し、既に家族とは顔見知りになっているらしい。  
さらに俺の友人達も調べ上げたらしい。その中で最も親しい図書委員の友人。俺が本を返しに来る日を  
計算し先生を使ってあの日を演出したらしい。さらに俺の小学校、幼稚園まで完全に言い当て、俺の経歴を  
そらでペラペラと喋ってくださりやがった。俺のプライベートは完全に把握されているらしい。好きな食べ物、  
好きな本、あらゆる俺の「ステイタス」を淀みなく、間違いなく語り続ける彼女は。一体  
 
「なんなんですか!アンタは!」  
 
思わず叫んだ。女性に叫ぶなんて、俺の紳士のステイタスが許すはずもないが、これはまた別だ。  
 
「貴方と一緒に居るべき人ですよ・・・ 猛さん」  
 
さん付けされることに違和感を感じつつも、この女性が大変危険なことはわかった。  
最悪の状況だ。  
 
こちらには彼女の情報が欠片も無いのに対し、あちらは全て知っている。  
外堀を埋める、という行動を超越している。お前の周りに味方は居ない、と宣告されているに近い。  
 
「お、俺は」  
「いいんです・・・ 貴方は、何も知らなくても。私が、護ってあげますから」  
「ち、違う。俺はアンタなんかと付き合う気は・・・」  
「今日はどこかへデートに行きませんか・・・? 美味しいクレープのお店を知っているんです・・・」  
「猛さんは大のクレープ好きでしたよね・・・ それに、甘党。美味しいですよ・・・?人気のクレープ店ですから・・・」  
 
会話が噛みあわない。精神異常者とは会話が噛みあわないと聞いたこともあるが、これほどとは。  
未知の生命体に出会ったような感じだ。  
 
いつのまにか、拳が入らないほどに顔が接近していた彼女を押し戻す。  
「あん・・・」  
無我夢中だったため、胸を触ってしまったがこれは不可抗力だ。  
 
「俺は・・・ アンタとは付き合わない」  
 
はっきりと眼を見つめて、言う。だが・・・  
 
「・・・名前を知らない人とは、付き合えませんよね・・・」  
いや、そういう解釈をされるのは想定の範囲を飛びぬけているのですが。  
 
「私の名前は、"八広 佐緒里" 2年4組。気軽に、先輩って呼んでもいいですよ・・・」  
 
さおちゃんでもいいかな、と嬉しそうな、それでいて濁った瞳で笑いかけてくる彼女。  
 
嫌だ、こんな人と付き合うのは。  
全身がそう訴えていた。  
 
俺は、最後の力を振り絞る。  
 
「とにかく!俺はアンタとは付き合わない!!」  
 
話が通用しない、話が噛みあわないなら、こちらも配慮する意味はない。  
俺は最後の力を振り絞り、彼女を押し退けた。  
 
教室を、駆ける。  
 
ガツン!と扉にぶつかる様に手をかけた。  
 
だが、その扉は開かない。  
 
焦った俺は、開かない扉を何度も開こうとする。  
考えれば、カギを開けるという行為を行なうのだが、その時は混乱していたんだ。  
 
逃げ足に自信があった"自称・帰宅部部長"である俺は、ただ廊下を走って逃げることしか考えていなかった。  
 
すう、と背中に気配が立つ。  
全身の毛穴が開き、冷や汗が背中を伝う。  
 
「扉が壊れますよ・・・ カギを あけないと」  
片手は、俺の腰に。片手は、カギをあける。  
 
解き放たれた扉は凄まじい勢いで開け放たれ、廊下にその音が響き渡る。  
 
そして、逃げ足時50m6秒台の俺の俊足が、廊下を駆けた。  
 
今度こそ、確実に。  
 
だが、図書室の時と同じように、耳に聞こえてきた言葉。  
 
「クスクス・・・ ま た あ し た ・・・」  
 
戦慄する俺の身体に鞭を打ちながら、俺は駆けた。  
 
 
 
 
それから。  
 
俺は。  
 
屈服した。  
 
 
 
一日目  
猛さんは今日も元気に登校してくると思っていたのですが、少し挙動不審です。  
やはり昨日の事がこたえたのでしょうか・・・ はやく私にゆだねれば楽になるのに。  
お昼休みにも何も食べていませんでした。私のお弁当を、こっそり鞄に入れておいたのですが、  
叫びながらゴミ箱に投げ入れていました。  
悲しいけれど、これも愛の試練。  
そんなことより、周りに心配される猛さんが心配です。  
でも、猛さんのことだからきっとすぐに元通りになるでしょう。私、 信 じ て い ま す か ら ・ ・ ・  
 
二日目  
今日は学校は休みの日。猛さんの家へ行き、猛さんの部屋の窓を見つめます。  
ああ、窓を見つめるだけなのにこの高揚感。もし猛さんに抱きしめられたら・・・ 私はどうにかなってしまいます。  
この前、胸を触られた時ですら快感で立つのがやっとだったのに、どうなってしまうのでしょうか。  
ふと、猛さんが窓の外を見ました。ああ、こちらを見ています。戦慄した瞳も素敵です・・・  
でも、カーテンを閉めるのは少し寂しい・・・  
夕方まで猛さんの窓を見つめて、その日は帰りました・・・  
警察無線や猛さんの家の電話を盗聴しているので、捕まることはないでしょうが、念には念を、です。  
嗚呼、早く猛さんと話したい・・・ その唇から放たれる言葉を、こ の 鼓 膜 で 受 け 止 め た い ・ ・ ・  
 
三日目  
今日も学校は休みの日。土日の連休というわけです。  
今日も同じように猛さんの部屋を見つめ続けます。カーテンは、昨日と変わりなく閉まっています・・・  
それと、猛さんの姉様に偶然を装って出くわすことに成功しました。  
この前のデパートでの接触が功を奏しました。  
猛さんが、部屋に引き篭もって出てこないという情報を聞けました・・・  
猛さん、あまり部屋に引き篭もると不健康になっちゃいますよ・・・  
私は、美味しいもので釣ればいい、と助言しました・・・  
本当は私を連れて行くといい、と言いたかったのですがそれはまだ時期尚早です・・・  
嗚呼、早く猛さんの部屋で一緒に過ごしたい・・・ 私の作ったお菓子を、口 に 運 ん で も ら い た い ・ ・ ・  
 
四日目  
週の始まり、今日も元気に登校です。  
猛さんと一緒の学校に通っていると考えるだけでも胸が締め付けられるようです・・・  
私ほどの愛を持つとなると、同じ世界に生きるだけでもそうなるのですが、やはり学校は別腹です。  
猛さんは昨日一日部屋で過ごしたらしく、だるそうに登校しています。  
あ、転びました。友人に馬鹿にされています。  
猛さんの周りには明るい空気が集まるのに、今の猛さん自身は全然明るくありません。  
でも、それも私と一緒になれば解消できると信じています・・・  
猛さんと付き合ったら、どうなるのでしょう。私は多分、毎日デートを要求してしまいそう。  
もちろん、デートと言っても出かけるだけがデートではありません。  
私の家で、膝枕をしてあげて耳掻きをしてあげたり、最近習得したクレープを作ってあげたり・・・  
あ、勿論味は保障済みです。何せ、友達になった猛さんの姉様に試食してもらったのですから。  
猛さんの姉様は、どうも猛さんと同じ味覚の持ち主らしいです。  
嗚呼、早く猛さんをこの部屋に呼びたい・・・  共 に 同 じ 空 間 と 時 間 を 共 有 し 続 け た い ・ ・ ・  
 
五日目  
今日の朝は、猛さんと出会い頭にぶつかってみました。  
漫画本で読んだ展開で、ぶつかった後、猛さんに「大丈夫ですか!」と駆け寄られました。  
抱き起こされる時、猛さんの温もり、腕の感触、かかる吐息を感じました。至福の時です。  
しかし、猛さんは私に気づくやいなや「うぁぁ」と言いながら逃げ出しました。  
少し傷つきましたが、それも仕方ありません・・・  
やはり、まだまだ私の愛が足りないようですね・・・  
もっともっと猛さんの事を知らないと。そして、猛さんに好かれるような女性にならないと・・・  
今はまだエクステで伸ばしているけれど、髪の毛もロングにしたい。  
お手入れが大変だけれど、これも猛さんに好かれるためと考えると幸せです。  
夕方に、猛さんの家へと訪問しました。その時は、猛さんに会う事はできませんでした。  
猛さんの姉様と談笑して、その後、クレープを作って帰りました。  
猛さんにも、と少し多めに作っておきました。  
姉様は「猛も喜ぶよ」と言ってくださいました。私の将来の姉様は、とても優しい方です・・・  
嗚呼、早く猛さんと家族になりたい・・・ この髪を、愛 し て る と 言 う 言 葉 と 共 に 撫 で て も ら い た い ・ ・ ・  
 
六日目  
今日は猛さんの体操服姿を見れる日です。  
嗚呼、野生の獣のように太いそのおみ足・・・ 逞しいその二の腕・・・  
帰宅部とは思えない肉体。  
さjfdさjfdjf(にじんで読めない) あら、いけない・・・ よだれをたらしてしまいました。  
あの身体で抱きとめられ、抱かれたならば私はそのまま天国に上ってしまうかもしれません・・・  
もちろん、その時は猛さんも一緒に、なのです。これは決定事項なのです。  
けれど、流石に殺害したりするのはダメです。私は、まだ猛さんとこの世を味わいたいのですから。  
それにしてもあのお身体は逞しい・・・  
身長も高く、女性の中でも背が高い私が遥かに見上げる・・・ とまではいきませんが、かっこいい身体です。  
私のちょっとした我侭なんか、簡単に受け止めて抱擁してくれそうな、そんなお身体です。  
ほとばしる汗、染み込む汗、流れる汗、ああっ、そんな!流し場で汗を流してしまってはいけません・・・!  
体操服に染み込む汗が、流し場に流れていってしまいます・・・!  
・・・ 残念ですが、今日の体操服は薄味のようですね ・・・  
嗚呼、早く猛さんの汗を胸いっぱいに味わいたい・・・ 猛 さ ん を 、 貪 り つ く し た い ・ ・ ・  
 
七日目  
今日で告白一週間記念です。  
猛さんは少し回復してきているようですが、やはりまだ挙動不審です・・・  
一週間記念ということで、校門で待ち構えてみました。  
猛さんは一人で帰ろうとしていました。嗚呼、その隣に是非私を・・・  
気恥ずかしいですが、手を振ってみました。  
猛さんは戦慄した面持ちでこちらを見て固まっています。  
嗚呼、恐怖に歪んだ顔も素敵です・・・  
あ、こちらにゆっくり進んできます。帰宅するには確かにこの門を潜らなければならないのですが・・・  
これまでにない行動です。  
 
「ゆるしてくれ」  
「おれが・・・ わるかった・・・」  
「だから、もうやめてくれ・・・」  
 
何を仰っているのか・・・ 猛さんは私に謝ることなど一つもないのですが・・・  
 
「なんでもする、なんでもするから・・・ もう、やめてくれ。きがくるいそうだ」  
 
嗚呼、猛さん。ようやくわかってくれたのですね。ようやく気づいてくれたのですね。  
私の愛に。私の想いに。私の心に。  
 
私は、気恥ずかしいですが満面の笑みを湛えながら(その時、猛さんは戦慄していましたが)それに応えました。  
「すきです、つきあってください」  
猛さんは、涙を流しながら頷いてくれました。  
 
ああ、ああ!ついに猛さんが私に応えてくれたのです!  
神様がもし存在するのならば、私は祈りを捧げているでしょう!  
 
でも、猛さんの身体は衰弱しています。今日は、猛さんのお家へと送り、姉様へ引き継ぎました。  
帰り際に、ベッドで寝ている猛さんにこう耳打ちしました。  
 
「 明 日 、 来 ま す か ら ね 」  
 
快楽からか、猛さんは身震いをしてらっしゃいました・・・ 嗚 呼 、 何 も か も が 愛 し い ・ ・ ・  
 

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