「かんぱ〜い」
六畳一間のアパートの一室で4人の男女の声が渡る
「今日から念願の一人暮らしだね」
大学に入ってから付き合いだした安野 詠美は、軽く色を抜いた長い髪を右手であげ、軽く笑みを浮かべながら、上月 信也に話しかける
「あぁ」
信也は軽く笑みを返し、ミニスカートからスラッと伸びる詠美の白い太ももを一瞥してから詠美の顔を見て頷いた。
「あ〜!なんかヤラシい。シンちゃん今、詠美の足見てたでしょ」
そう言ってビールを飲みながら元気な声を上げたのは、由利浜 梢だ
上月 信也は驚いたような顔をして梢の顔を見ると、その横から大きな手を梢の肩に乗せ
「おい、梢」
そう言って、その梢を宥めるのは吉城 隼人
この二人は昨年から付き合っており、上月 信也の1つ上の先輩に当たる男だ。
上月 信也は今年大学に合格し、上京してから地元の高校の先輩だった吉城 隼人に引越しの手伝いをしたもらっていたのだ。
信也はもともとこの大学に興味があり、大学の情報や雰囲気を聞くために何度か会っており、そのせいもあって梢とも面識がある
梢は少し太めの体格で美人とはいえない容姿だったが、明るく気も利くため、男子からの人気は高い女性だ。
しかし、女は容姿がすべてだと思っている信也にとっては梢のことがあまり好きになれなかった。
だから、先ほどのような軽いノリの会話でも信也の鼻につき不愉快な気分になっていた。
とはいえ、引越しの手伝いをしてもらったことと、親密な先輩の彼女に当たる相手なので邪険にせずに愛想笑いを返すだけにとまった。
一方、安野 詠美は信也の顔を悪戯っぽくにらみつけて、大げさに太ももを隠した。
その動作は嫌悪感を示してはおらず、梢の言葉に羞恥心を見せた程度にとどめたものである。
細身の童顔わりに出ている所は出ている体型の詠美がそのようなわずかな行動を取っただけでもた大抵の男はドキっとする。
例に漏れず信也も動機が速くなり、表に出さないように舌で嘗め回し、夜が来るのを待ち望んだ。
引越しの打ち上げを始めてから2時間弱が過ぎたころ、咲いた昔話にもネタにつき始めた。
話の腰をおらないようにさりげなく台所で定期的に食器を洗い、ごみが出たら集めては袋にまとめていた梢のおかげで
大学生の飲み会にしては、驚くほどきれいな部屋の状態であった。
詠美はすこしビールを飲みすぎたためか仄かに顔を赤らめ、信也の肩に頭を乗せてウトウトしている。
底なしの隼人はまだ元気だが、空気の読めない男ではない。
宴もたけなわといった雰囲気を呼んだのだろう。
台所で食器を流している梢に「んじゃ、俺たちはそろそろ帰るか?」と声をかけた。
梢はエプロンで手を拭きながら振り返り部屋の状況を見回して頷いた。
ちなみに梢も隼人と同様、信也の倍以上飲んでいるが全く顔色に変化はない。
信也にとっては、それも気に入らない所だった。酒を飲んだ女は今となりにいる詠美のように色っぽく酔わなくてはならない。
底なしの女なんざ、恥知らずなオバサンのようなものだ。と思いながら、隼人に返事をする梢を愛想笑いをしながら見ていた。
「んじゃ、俺たちは今日は帰るわ」
「いや、本当にありがとうございます。助かりました」
酔って寝入り始めた詠美に布団をかけ、信也は玄関まで隼人と梢を見送りながら引越しの手伝いの礼を言った。
「おう」と隼人
「ゴミはまとめておいたから、明日朝捨ててね」と梢が言う。
「ええ、ありがとうございます。」信也は内心何とも思っていなかったが、笑みを浮かべ口だけで礼を言う。
「寝てるからって変なことしちゃ駄目よ」
そういいながら、感じのいい笑顔を浮かべて去っていく梢と、豪快に手をあげ無言の挨拶をする隼人が視界から去ると
信也はドアを閉め、チェーンをつけて、流し台中に唾を吐き落とした。
そして、詠美の横にまで歩いていく。
酔い薄赤い顔で力なく寝ている詠美の背中に手を回し抱き起こし、そっとスカートの中に手を忍ばせていった。
詠美は「んっ」と、かすかに目を開け、色っぽい声を上げる。
その瞬間信也の理性は飛び散った。
互いに付き合っている上に、薄着姿で男の部屋に来て酔いつぶれたということは「合意が成り立っている」ということだ。
信也は荒々しく、白く透き通った豊満な肉体を持つ詠美の体にむしゃぶりついた。
コトンッ
信也はこのとき目の前に横たわっている、詠美の肉体に夢中になっていたが故、新聞受けに“何か”が落ちたことに気づかなかった。