<彼氏彼女の放課後>  
 
コンドームの発祥をご存じですか?  
その歴史は古く、古代エジプト時代にその存在が確認されています。  
もっとも、その当時のコンドームは男性器を保護する一種の衣服で、現在のような役目ではなかったそうです。  
そう、現在のような……  
 
 
 
「ん……んぅ……」  
 
もうすっかり私のあそこは濡れきっていた。  
クチュクチュといやらしく愛液の音が部屋の中で一際大きく聞こえる。  
いつもの放課後、誰もいない生徒会室。私と晃(ひかる)の二人だけ。  
制服をはだけ、長机の上で彼が私を優しく愛撫してくれる。  
『生徒会長なんかやらせてんのがもったいねー』と晃が言ってくれる大きめの胸と、自分でも少しはしたないと思う感じやすいアソコを同時に責められ、興奮と切なさに声を漏らしてしまう。  
これも、いつもの放課後。  
 
「紗雪(さゆき)そろそろ入れるよ!」  
 
私がもう我慢できないのを見抜いたように彼が私に覆い被さってきた。  
私の古風な長い黒髪とは対照的な短い髪のスポーツ少年の彼。その股間も、私のあそこと一緒で熱くなっていた。  
私はそのまま身を任せて快楽を与えて欲しいという欲望を一時理性で頭から追い払い、彼の下半身を一瞥してみる。  
あーあ、案の定ね……  
 
「紗雪、いくよー」  
「待って!」  
 
さっと彼のペニスを握って挿入を阻止する。  
彼のものが「おおう!?」とばかりにぴくんと脈打つのが分かる。  
ああもうなんでこんな情けないことをせないかんのよ?  
 
「へ? どうしたの?」  
 
さしもの晃も、男の子の一番の急所を押さえられては身動きできないようだ。  
まあ、これもいつものことだ。  
 
「アレ、着けてないじゃない」  
 
……そう、彼が避妊に無頓着なこと。  
私達カップルのエッチでの避妊は古代エジプトからの伝統を持つコンドームオンリーだ。  
生では一度だってさせたことはない。  
 
……と言いたいところだけど何回かうっかり生で入れられたことはあったりする。失態だわ。  
中出ししなくても精子は漏れ出しているから生でもいけないって何回も言っているんだけど、あまり深刻には聞いていないようね。  
付き合い初めて何度もこういうことはあった。幸い中に出されちゃうのだけは死守しているのでちゃんとお月さまはきているけれど。  
晃がバツが悪そうな顔をする。  
これはたぶん私がいちいち固いことを言っているなぁと考えてるんでしょうね。  
 
「あー……わりぃわりぃ。ちょっと忘れてたよ」  
 
これもいつものことながら、苦しい言い訳だ。  
この間なんか開き直って「外で出すならいいだろ」とのたまって私に一週間エッチ禁止令を出されて泣いて謝ったというのに、相変わらず懲りないわね。  
今日はもう怒って帰ろうかな。  
でも……あたしのここも彼を受け入れないと収まらないし。  
避妊はしないけどエッチそのものはうまいのだから始末が悪い。  
まあけど、そこが好きででもある。  
少しだけ……いや、かなりかな。もう、なんかもうダメな女だ。  
彼のものから手を放して自分のカバンをたぐりよせる。  
 
「入れるなら絶対に着けて!」  
 
念を押して彼に小さな箱から一枚のゴムを切り取って差し出す。  
0.03ミリのポリウレタン製ゴム臭カットの優れもの、メイドインジャパンの避妊具!  
……定価が高いんで普段彼にはいろいろとおごってもらわなきゃ割に合わないけど。  
家は割と豊かな旧家なんだけど小遣いはけちくさいのよね。  
 
「? どうしたの早く着けてよ」  
 
彼の様子がおかしい。いつもならすごすごと着けるものだけれど。  
 
「なんだかなぁ。紗雪の求め方はちょっと萌えないんだよなぁ」  
「は、はぁ?」  
 
萌え、萌えとな?  
避妊するしないなんて萌えもなにもないだろうに。  
どうしろっていうのかしら……?  
 
「これをさ」  
 
ぴり、と彼がゴムの封を切って中身を取り出す。  
ゴムの色は薄紫で、ゴム製品特有の光沢をみせている。  
 
「お口で着けるのって知ってる?」  
「え……?」  
 
お口でって……どうするの?  
 
「なんだ、紗雪知らないのか? 今はゴム着けるならこうするのが流行りなんだぜ? ほら、前に女子トイレでやったようなのさ」  
 
そんな流行り聞いたことないけど、でも彼が避妊に積極性をみせたのは驚いた。  
学校でも生徒会長に任命されてしまう堅物の私だから、うといとまではいかずともエッチの流行なんかさすがに知らないかも。  
……晃が口から出任せ言っている可能性もあるけど。  
それにしても前の女子トイレでやったようなやつか。あの、男の人のものをく、くわえるあれね……。  
たった一週間前に彼に頼み込まれてやってあげたけど、あんな感じなわけね。  
う、うまくできるかな?  
 
「そ、それで着けてくれるんなら……いいよ」  
 
避妊に興味を示してくれただけでも進歩なのだし、ここで興を削ぐようなことはしちゃいけない。  
私はゴムを口にくわえた。  
目の前に彼がペニスを差し出してくる。  
ヒクヒクと脈打っているのがわかるほどにそそり立っていた。  
いくら彼のだからって、やっぱり恥ずかしい。  
もう、大サービスなんだからね!  
目を閉じるとそっと顔を寄せていく。  
たぶんこうやって……  
 
「あむ」  
 
晃のペニスに口づけするようにコンドームをあてがうと、そのままゆっくりと唇でゴム膜を押し広げていく。  
男の人のものを口に含むのにまだ慣れないけど、これで彼が喜んで避妊するというのなら仕方がない。  
ほんとに普通のカップルはこういうことしてるのかな?  
まあいいか、と思いながらそのままフェラチオの要領で根本まで口に含んで被せてしまう。  
 
「おぉ……初めてなのに上手じゃんか」  
 
ぷは、と歯が当たらないようにペニスを口から抜く。  
でろん、と唾液とゴムの光沢を放つコンドームの被さったペニスが目の前に現れた。  
被さった、というよりは密着したという方が正確かもしれない。薄く、ほとんど皮膚と一体のようだ。  
ゴム臭カットとはいえ、少しだけ独特のゴムの匂いが鼻孔をくすぐる。口の中に、ぬめったコンドームの感触が余韻を残していた。  
性行為の準備が整ったことを意味するこの匂いが、たまらなくいやらしく感じられた。  
 
私の両親は道徳や風紀といったことに厳しく、エッチなんかとんでもないと言われて娘の私を教育した。  
年頃になってもみだりに性行為をしてはならず、するときは必ず相手に避妊具を着けさせるのが義務だと言われた。  
晃と付き合い始めて、私は街の外れにある自動販売機で初めてコンドームを買った。  
恥ずかしかったけど、自分の部屋でその小さな箱の中から一枚を取り出し、封を切ってみた。  
ぬめったコンドームの感触と、そしてその鼻をつく匂いに私は言いようのない興奮を抱いた。  
性行為を禁じられた私にとって、コンドームはある種の免罪符なのかもしれない。  
この卑猥なアイテム一つで、私はセックスを許されるのだ。  
 
私は避妊膜に覆われた男性器を見て性的倒錯を覚える変態なのかもしれない。  
 
「ん……」  
 
もう我慢できそうになかった。  
愛液があふれてきている。  
いつも澄まし顔で生徒会を取り仕切り、彼には真面目に避妊させる癖に、自分はちゃっかりメスになっている。  
 
「ね、ねえ……」  
 
私が懇願するより早く、彼は私を抱え上げていた。  
 
「ほら」  
 
長机の上に腰をかけた状態にされる。  
彼は私の閉じた脚を強引に広げると、その愛液まみれの秘所を凝視した。  
 
「やぁ……恥ずかしい」  
 
思わず声を漏らしてしまう。  
彼はそんな私に優しくキスをすると、膣口にペニスをあてがった。  
 
「いくよ?」  
 
私は無言で頷いた。  
次の瞬間、彼が力強く腰を入れる。  
 
「あうぅーっ!!」  
 
挿入の衝撃に獣のような声で私は鳴いていた。  
濡れそぼった私の膣内は貪欲に彼の肉棒を受け入れる。  
最新のゴムが肉壁をこする感覚は女性からするとほとんど生と変わらない。  
でも、ゴムが愛液を巻き込んで伸縮するニチュニチュという音が私の劣情を促進する。  
 
「はっ! あっ! ああっ! あん! ああんっ! あっ! いぃっ!」  
 
黒髪を振り乱し、両脚は彼を逃がすまいとあさましく蟹挟みする。  
彼の突き上げにだらしなく二つの乳房が乱れ動き、固くなった乳首を彼が悪戯するように指先でつまみ遊ぶ。  
貪るようにキスを交わし、舌を絡み合わせて唾液を交換する。  
若く、激しく、乱暴にさえ見えるセックス。  
これこそ本当に私が求めているものなのかもしれない。  
 
「はっ! はぅ! もっと奥に! もっと突き上げて!」  
 
いつの間にか私は自分で彼に求めていた。  
 
「うう」  
 
彼が激しいピストンを少し弱めた。  
ふふ、ちょっとイキそうになっちゃったんだ。  
おっぱいを重点的に責めるふりしてごまかしてる。  
 
「あん……もっと動いて」  
 
気づかないふりをして彼の腰に回した脚を締める。  
同時に膣内のペニスも締め上げてあげる。  
 
「っく」  
 
歯を食いしばって晃がうめく。  
わかりやすいなぁ。  
 
「イキたいの?」  
 
私がそう言うと、晃が観念したように頷いた。  
 
「悪い……もっとイカせてやりたかったけど」  
「ううん、いっぱい気持ちよかったよ、それに、私も、もういっちゃう」  
 
彼が無言で前よりももっと突き上げを激しくした。  
男の子のたくましさに、私は意識さえ朦朧としてくる。  
そんな中で、彼の先端が最高潮に膨張する。  
ああ、射精しちゃうんだ、と漠然と感じた。  
 
「ふぁあっ あうんっ やぁっ そんなっ もう!」  
 
その瞬間、彼が私を押さえつけて子宮口まで突き入れるとそのまま止まった。  
彼のものが、爆ぜる。  
 
「くっ!」  
 
ドックン!  
 
「きゃうぅぅっ!!」  
 
悲鳴とも歓喜ともつかない声で私は達すると、彼の精を膣内で受けていた。  
 
「ひゃうううぅ 晃のおち○ちんから出てるよぅ!」  
「何が出てるんだ!?」  
「せぇしぃ!!」  
 
彼が執拗なほどに子宮口に熱い液を叩きつけてくる。  
0.03ミリの膜はまるで膣内射精と錯覚しそうなくらいに私に射精の熱を伝えてくる。  
今、私の中で本来出されてはいけないものがその薄膜に遮られて泳いでいる。  
 
「あっはぁあ……晃のおたまじゃくしさん私を受精させようとしてるぅ」  
 
私の膣内はメスの本能で精を搾り取る運動を繰り返していた。  
結婚もしていない私にとっての禁断の生殖行為がたまらなく背徳的に感じる。  
ああ、そういえば私は今日危険日だ。  
 
「ははっ! ゴムなしでその歳で孕んだらどうなっちまうのかなぁ?」  
「いやぁ言わないでぇ!」  
 
彼が私の心中を見透かしているかのように言葉で責めてくる。  
私が妊娠を恐れている反面にその危険にたまらなく歪んだ快感を見出していることも知っている。  
恥ずかしくて顔が紅くなってしまう。  
 
「く……ふ…」  
 
彼の射精がようやく収まった。  
性交の熱の代わりに、先端の精液だめに溜まった精液の熱が膣内に残っている。  
 
「はー…… はー……」  
 
二人とも折り重なってしばらく余韻を楽しんでいた。  
彼が私の黒髪を撫でてくれた。  
 
「ん……」  
 
くすぐったさに苦笑すると、彼は私に一度キスをする。  
 
「紗雪、かわいかったよ」  
「え?」  
「すっげえ萌えた」  
 
そう言うと私に何も言わせずに膣内からペニスを引き抜く。  
 
「あんっ!?」  
 
中から、私の愛液に濡れ、そして精液を先端に溜めたコンドームが抜かれてくる。  
やだ……あんなに出したの?  
今日、危険日だからもしあんなのを中で出されちゃったら確実に……  
虚ろな目でそれを見つめる私に気づいた彼が、ゴムをペニスからはぎ取った。  
パチン、と独特の音が聞こえる。  
 
「ほらよ」  
 
彼が私の胸元に使用済みゴムを垂らした。  
ピチャリと卑猥な音と、愛液とゴム臭と精液の混ざった匂いが鼻を突く。  
 
「はぅ」  
 
つまみ上げて間近で観察すると、言いようのない興奮が再び下腹部に沸き上がってきた。  
とろり、と愛液が溢れてくるのを、脚をもじもじとさせて隠そうとする。  
突然、彼がその両足を無理矢理開いてしまう。  
 
「きゃっ!?」  
「隠したって無駄だぜ」  
 
つい顔をそらしてしまう。  
がら空きになった首筋に、またキスをされる。  
そして、彼は耳元でそっと呟いた。  
 
「今度、一緒に買いにいこーぜ、コンドーム」  
「バカ!」  
 
 
<終>  
 

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