そろそろ陽も落ちかけて診療時間も終わろうとしていた時だった。  
基本的に老人の神経痛や関節などの面倒を見るのが、ワーウルフである医者のアランの、  
この村での仕事であったが、その日、珍しく若いワータイガーの娘が診療所へと赴いた。  
「あ、ラナさんじゃないですか」  
 そろそろ診療所を閉めようかと思っていたアランが、そのワータイガーを見て声をあげた。  
 ワータイガー特有の鮮やかな金色と黒の縞模様。ワーキャットよりも太いその尻尾と、  
エメラルドグリーンの瞳が魅力的な女性だ。半袖のTシャツにぴっちりとした年期の入ったジーパンをはいている。  
「今日は捻挫でもしたんですか?」  
「あ、あたしが捻挫なんかするわけないだろっ」  
 乱暴に応えてラナは診療所のソファーに腰を下ろした。  
「じゃあ、…えーと、打ち身とか筋肉痛とか腰痛ですか」  
「そ、そんなんじゃない」  
 ラナのカルテを探しながら、アランがワータイガーへと質問する。彼女は村で子供たちに“タイキョクケン”という、  
東方の武道を教えている。そのため、よくシップやら痛み止めやらをもらいに来るのだが、どうも今日は違うらしい。  
 男勝りで、近所の家に入った泥棒をボコ殴りにしたという逸話を持つラナに、貧弱なワーウルフのアランは、  
彼女が道場破りを打ちのめすたびに、自分も“タイキョクケン”なるものを教えてもらおうかなと思うのであった。  
「じゃぁ何なんです? …あ、あった。ラナさん、診察室へどうぞ」  
 カルテを取り出して、アランは一足先に診察室に入った。  
「…あぁ」  
 ラナも後を追ってゆっくりと診察室へと足を運んだ。  
 
「で、どこがどんな感じなんです…?」  
「あ、別に痛いとか、そんなんじゃないんだけどさ」  
 診察室にある小さな回転椅子に座ったラナが、おずおずと応えた。  
「じゃあ、どんな…? かゆみがあるとか、しびれがあるとか、違和感があるとか、もやもやするとか」  
「いや、あの、だからそんなんじゃなくて」  
「斑点ができてるとか、イボができてるとか」  
 至極真面目な顔をして問いかけるワーウルフに、ラナはひどく困ってしまった。  
まさか“あんな事”を男であるこの医者に言うわけにはいくまい。  
 だが、このまま放っておくわけにもいかないのだ。  
「だから、えと、…ニンジンが入ったまま、とれないんだ」  
 ニンジン? ニンジンをどこにいれるというのだ。鼻の穴にでも詰まったのか? いや、見る限りそんな様子はない。  
「どこに、ニンジンがどこに入ったまま、とれないんです?」  
「ぇ……あの、あ、あの部分に」  
「あの部分じゃわかりませんよ」  
「あ、だから……あそこ」  
 自分の頬がひどく熱くなっている事にラナは気付いた。顔から火が出るというのはこういう事だ。  
「だから、あの部分とかあそことか言われたってわかりませんよ。もう子供じゃないんですから、具体的に答えるなり、  
指で指すなりしてください」  
 この男はわざとやっているのではないのだろうか。何度も口の周りを舐めて、自分の太股をもじもじとさすりながら、  
ラナは羞恥心に耐えた。  
「え、えと、その…マ」  
「マ?」  
 だめだ。この言い回しは下品すぎる。もっと別の言い方で言わなければ。  
「ち、違った!」  
 頭の中で“あそこ”の正式名称は何だったかと必死にかき回していると、アランがしびれを切らした。  
「もう、いい加減にして下さい。…直接患部を見せて下さい。ニンジンでも大根でも取り出しますから」  
「み、見せるって! 馬鹿言うんじゃないよ」  
「だって、見なきゃ取り出せるものも、取り出せないじゃないですか」  
 本当に真面目な顔をして言い出すアランに、ラナは腰が砕けそうになった。羞恥心が最高潮に達し、  
手が震えてしまう。心臓がドキドキと早鐘のように鳴っていた。  
 
「さ、早く見せて下さい。もう診療時間ギリギリなんですから」  
 恥ずかしさでラナはアランの顔を見る事が出来なかった。震える手でベルトをゆるめ、  
ホックを外してチャックを下ろす。ジーパンを膝まで下ろし、白い下着と毛並みが見えた瞬間、アランが声をあげた。  
「な、何やってるんですか!?」  
「何って…見せろって言ったじゃないか」  
「…………あそこってその部分だったんですか」  
 こいつは本当に気付いてなかったのか、とラナは心の中で叫び、湧き上がってきた更なる羞恥心に、  
思わず顔を手で覆い隠してしまった。  
「あ、いや、すいません」  
 じゃあ、と言ってアランはとりあえず、“あそこ”の様子を見る事にした。  
「じゃあ、診察台に乗って、四つん這いになって下さい」  
 言われる通りにラナは四つん這いになった。アランの指示によってジーパンは脱ぎ捨て、  
下半身は下着だけで診察台へと横になった。肛門と陰部が、アランの前に晒される。  
 アランは下着を丁寧にずり降ろし、閉じていた“あそこ”を両手の親指で開いた。  
「…っ」  
 綺麗な桃色をしたその中は、なぜか愛液でぐちゃぐちゃに満ちていた。  
「暗くてわかんないな」  
 のぞき込んだがニンジンは見あたらない。呟いてアランはラナに尻を向ける方向を百八十度変えてくれと頼んだ。  
尻尾を揺らしながら、ラナは日の光が陰部を照らすように方向転換した。  
 早速アランは明るくなった彼女の内部をのぞき見た。そしてその奥にニンジンの欠片を発見すると、ラナへと視線を移した。  
「…なんでこんなのが?」  
「…オナニーしてて」  
「……そうですか」  
 声が震えていた。あまりにも恥ずかしいのだろう。悪い事をした、  
と思いながらアランはニンジンを取り出す事にした。  
 
「今から指を入れますからね」  
 一応声をかけると、小さくうん、と声が返ってくる。  
 左手で秘部を開きながら、右手の中指と人差し指を内部に侵攻させる。愛液がアランの指の毛並みを濡らす。  
「っん…ふんっ」  
 その動きに思わずラナはあえぎ声をあげ、下半身に力が入ってしまう。  
肛門とあそこがひくひくと動いているのが自分でもわかって、羞恥心が限界まで跳ね上がる。  
「取れないな…くっ…後少しなんだけど」  
 中指の動き、跳ね上がり、空を掻いて指を曲げ、同じようにして跳ね上がる、楕円を描く動きは、  
上下するたびにラナの肉壁を叩き、また、手首の角度を変えてその動きをするものだから、  
ラナは今までのどんな自慰行為よりも快感を得ていた。その証拠に透明な愛液が陰部からあふれ出し、  
割れ目から太股へ流れ落ちていた。  
「っん、ふぅん…ぅん…ぁっ」  
 入れられた中指と人差し指の動きが素早く、多用に、そして小刻みになってきた。まるで意志を持った生き物のように、  
彼女の中で激しく動き、頭の中を淫乱な気持ちにさせる。  
「ぁっ…は、…あっあっ」  
 しだいにその指の動きがラナの熱く火照った下半身を、さらにいやらしいものへと変えていく。桃色をしたそれは赤く充血し、  
膣壁から発生した愛液はその量を増して、診察台へこぼれ落ちる。  
「あ、あっ…んぁ…あっ」  
 激しさを増したその指の動きに、心の隅に羞恥心を置きながらも、その快楽に溺れ、いつしか愛液を垂れ流しながら絶頂を迎えた。  
 
「取れないと、どうなるんだい…?」  
「そうですね、ニンジンですから確実に腐りますね。そうなると、衛生上の問題で、  
病気になったりするかもしれません」  
「えっ」  
 エメラルドグリーンの瞳が、大きく開かれた。同時に、ひどく不安げな声を、ラナはその口から漏らした。  
「でも、大丈夫です。僕の先輩も同じような女性を治療した事がありましたから」  
 ただ、と付け加えて、  
「局部麻酔を打って、その間に器具を使って取るんですけど、ここじゃそんなものはないんですよ」  
「そんな」  
 エメラルドグリーンの瞳が、今度は潤んで来た。やがて声をあげて小さな雫をラナはこぼし出す。  
「だ、大丈夫。ちゃんと代わりのものはありますから」  
 慌てふためいてアランは一枚の葉を取りだした。  
「これを何枚か煎じれば、強力な睡眠薬になりますから、その間に何とかして」  
 泣きじゃくるラナが顔を上げた。雫が毛並みについて、まるで頬に何か飾りをつけたようになっていた。  
 いつも気丈でたくましく、まさに姉御肌のような物言いをする彼女が、こんなにも不安でたまらなく、  
医者とはいえ、男に自分の陰部を見られる事を恥ずかしがっている。  
 彼女も女だという事を改めて気付かされ、アランは早急に彼女から不安の元を取り除いてやろうと考えた。  
「早速やりましょう」  
 
 葉を煎じた睡眠薬で、ラナは深い眠りに落ちた。  
 死んだように静かに、診察台で寝息を立てるラナの陰部に、金属の拡張器を取り付けた。  
膣口が大きく広がって、これならニンジンも取り出せるだろう。  
 中指と人差し指を入れれば取れるかも知れないが、先ほどのように苦戦してしまっては意味がない。  
ここはひとまずピンセットで取り出す事にした。  
 慎重にニンジンの欠片を取り出した。ワインのコルクぐらいか。中にある時はよくわからなかったが、  
出してみると小さなものだ。  
 器具を取り外し、広げていたラナの股の間を、戻す前に数秒ほど観察し、そして自己嫌悪に陥りながら、  
アランは彼女の下半身にバスタオルをかけて、ラナ揺さぶった。  
 
「ん…ぅん」  
 愛らしく唸って、ラナは寝返りを打つだけだった。  
 さて、どうしたものかとアランは首をかしげると、どうしてもタオルのかかった下半身が目に入る。  
先ほど寝返りを打った時に、タオルはずり落ちて、その金色と黒の毛で覆われた下半身が、アランの目に飛び込んできた。  
――――駄目だ駄目だ。何を考えているんだ僕は。  
 性欲と理性が頭の中で戦闘を繰り返し、因数分解をする事によって何とか優勢に持ちこめていた理性が、  
ラナの股間が目に入ったせいで崩れ去った。  
 ベルトをゆるめて勃起した肉棒を取り出し、寝息を立てて幸せそうに眠るラナの股を開いた。  
そして診察台へと登り、それを彼女へと接合した。  
「ん…」  
 事前に溢れるほど出ていた愛液によって、その挿入のなめらかさは抜群だった。  
ワーウルフは仰向けのラナへ挿入したまま、肘を伸ばして腕を張り、ラナの胸に顔が来るように、身体を傾けさせた。  
「んんっ?」  
 舌を出して荒く息をするワーウルフと、目覚めたラナの目があった。エメラルドグリーンの瞳がじっとワーウルフを見つめていた。  
 
 一気に冷や汗がワーウルフから流れた。思わず息を止めてしまうような、  
そんな気まずい雰囲気が流れようとした瞬間、ラナがくすりと笑って、ワーウルフの腰を優しく抱いた。  
 そのままラナの胸のふくらみへとワーウルフは体重を預け、そのままピストン運動を再開した。  
「ん、はっ…あっああっ」  
 顔は彼女の胸へと預けたまま、ワーウルフはひたすら彼女の秘部を突く事だけに専念した。  
愛液は彼の動きを求めるように、常に彼女の中を濡らして、ラナを快感へと導く。  
「あ、あっあっあ…んぁ、あ」  
 亀頭が彼女の肉壁を刺激する。ぬちゃぬちゃと音を立てる、愛液と先走りが混じったその粘液が、  
接合部分からあふれ出す。  
 ラナはその性格や職業からか、あまり女性として見られていないのでは、  
とコンプレックスを感じていた。自らの身体が女らしい姿になっていくのに、周囲の反応が変わらないのに、苛立ちを覚えた。  
 だからただひたすらに武術の道を極め、女としての自分を捨てようとした。  
だが、身体がそれを拒んだ。  
 夜になる度に身体がうずき、淫夢すらも見るようになった。  
「あぁっ…あ、あっ…ぁ、あ」  
 軟弱なワーウルフという彼、女でありながら男勝りという自分、  
その矛盾した部分を共通点として、ラナは彼に愛を求めた。  
 
「ふっ、くぅん…ん、ん」  
 だが、彼も女として自分を見ていないと感じた。道場でわざと怪我をして、診療所へ通うたびに、  
彼は“怪我をした女”ではなく、“怪我をした強者”として治療をした。自らが貧弱である事に彼も、  
その貧弱さにコンプレックスを持っていたのだろう。包帯を巻きながら自分に憧れると彼は言った。  
「ふ、ふっ…ん、んんっ」  
 ワーウルフはラナを横向きに寝かせた。挿入したまま、自らも横になり、  
彼女に自分の身体を太股で挟むようにさせて、二人は抱擁し合うように身体を密着させながらピストン運動を繰り返した。  
 今、こうして自分を抱いているのは、性欲処理として抱いているのだろうか。それとも、  
女として抱いているのだろうか。自分にはよくわからない。  
 でも、それでも女として自分はこの男を喜ばせたい。  
 膣内を打つような感覚があった。今まで激しかった彼の肉棒が彼女の中で、  
ゆっくりとしたものになって、やがて彼は挿入していたそれを彼女から抜き取った。  
 互いに激しい息づかいをしながら、ラナはワーウルフの身体を抱きながら、  
自分の身体に残るこの暖かみを忘れまいと思った。  
 
「とにかく、今度からはそんな無茶な事はしないでくださいね」  
 アランがシャワーを浴びたラナに向かって言った。無論、アランはニンジンの事を言っているわけである。  
「それと…この事は内緒ですよ」  
 それを聞いてラナは思わず微笑んだ。  
「あたしがあんたに強姦されたと言っても、誰も信じやしないよ」  
 うっ、と言葉に詰まって、アランは頭の中で何度も強姦という言葉を繰り返した。  
繰り返すたびにアランの自己嫌悪が高まった。  
「ま、これであいこだな」  
 ニンジンと強姦。確かにあいこかも知れないが。  
「とにかく、彼氏でも見つけて、こういう事は無くして下さいね」  
「うん。そうだな」  
 そう言ってラナは診療所から出て行こうとした。ちなみに治療費は半ば強引に無料にさせられた。  
「………どうしても、やりたくなったら、あんたの所来るからさ」  
 扉を後ろ手で閉じる瞬間、ラナはそう言って笑った。  
「へ?」  
 診療所から家までの足取りは軽かった。  
 

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