その日、ルイーゼと言うワーフォックスの少女が尋ねてきたのは、  
午前中の診察時間が終わろうとしていた頃だった。  
 彼女は受付を済ませて診察室へと入ると、アランに背を向け、  
おもむろに水色のワンピースをたくし上げて尻を向けた。その下着と金の毛並みをアランの視界に入る。  
 アランはその下着をゆっくりと下ろして、背中を向けた彼女の肛門を、  
白い軟膏を付けた指で優しくさすった。彼女の太い尻尾がゆっくりと揺れる。  
「ん、…」  
 中指の腹を、彼女の肛門に押し当て、そっと愛撫する。彼女が充分にその刺激に慣れたところで、  
アランは指の第一関節までゆっくりと中指を挿入する。  
「ん、ふ…んふっ」  
 ずぶずぶと挿入し、指をゆっくり回転させては引き抜き、その後軟膏を付けてもう一度挿入する。  
肛門だけを刺激していたにも関わらず、ルイーゼはいつしか秘部さえも濡らしていた。  
「んっんっ…ん」  
 何度も何度も肛門を刺激されるたびに、ルイーゼは声を漏らす。そして愛液が満ちてきたところで、  
「はい、終わりましたよ」  
 と、アランの声がかかる。  
 ルイーゼは何だか恨めしい気持ちになりながらも、下げられた下着をはき直し、  
たくし上げたワンピースを元に戻した。  
 
「だいぶ良くなったみたいですね」  
 カルテを見ながらアロンがにこやかに笑った。だが、ずっとルイーゼは無表情なままだ。  
――――困ったな。  
 嫌われているのか、と毎回こうやって、彼女の痔に軟膏を塗るたびに思ってしまう。  
ワーフォックスという種族は、種としてはワーウルフやワードッグなどに近いものの、その性格の傾向はワーキャットに近いという。  
 つまり、クール、というか無口、無愛想なのだ。  
「あと何日ほど通えば……?」  
 ルイーゼが無表情のままアランに質問した。ただ自分がしゃべるばかりで、よく会話が一方通行になるアランにとっては、  
ルイーゼが自分からそうやって質問するのは、珍しかった。  
「あと、三日って所ですかね。嫌でしょうが、三日間ちゃんと通って下さいね」  
 言うと、ルイーゼはこくりと頷いて、アランに一礼して診察室を出て行ってしまった。  
「やっぱり嫌われてるのかな」  
 ワーキャットと同類型のワータイガーであるラナは、全然そんな所はないのだが。うーん、とアランは唸ってしまった。  
 
 診療所の女子トイレの中で、ルイーゼは濡れた股間と胸の鼓動を整えていた。  
 胸に手を当てると聞こえてしまうのではないかと言うほど、心臓が大きく鳴っている。  
肛門を誰かに見られ、そして弄ばれるというのは緊張する上に羞恥心がわき起こる。しかもそれがアランだともっとだ。  
 どうにも彼には、他の者に好かれる才能があるらしい。そしてルイーゼもその才能にあてられた一人だ。  
 当初、痔の治療に行った時、不安で堪らなかった自分を落ち着かせ、飲み薬のみで治療しようと言いだした。  
女としては男に臀部を晒す事にやはり抵抗がある。それを悟ってか飲み薬だけを渡されていた。  
 だが、ある日激痛に耐えかねて、ルイーゼは夜中に診療所の門を叩いた。  
無視されるか明日の朝まで待たされるだろうと思っていたのだが、アランは飛び起きてすぐに彼女に症状を聞いた。  
 血便がついた汚らしい姿を見ても何も言わず、アランは湿らせた脱脂綿と綿棒で、  
丁寧にそれをふき取ってくれた。軟膏を塗り、痛みが取れて、患者用のベッドで眠れるまでずっと付き添ってくれた。  
 恥ずかしい思いをしたというのと同時に、むしろ通院できるようになってよかったという思いが、ルイーゼの中にあった。  
 
「すみません、こんな所までわざわざ」  
「君だって二日おきに自転車で来てるじゃないか」  
 午前の診療時間が終わって、午後の診療時間との間の昼休みに、  
ワーカウであるアセリアはアランの診療所へと足を運んでいた。  
「君が肉を好きだと言ったから」  
 持ってきたバスケットの中に入った包みを、アランへとアセリアは開いて見せた。  
包みに包まれた弁当箱の中には、色とりどりの野菜や果物、そしてアランの好物である厚く切った肉が添えられていた。  
「わぁ、すみません。ありがとうございます」  
「正直言って私は肉を食べないから、調理のバリエーションはあまりよく知らないんだ」  
 そう言って照れ笑いを浮かべていたアセリアが、アランへと視線を移した。  
弁当箱に十枚近く入っていたはずの厚切れの肉片は、すでにアランの胃袋の中へと押し込まれていた。  
「……早いな」  
 そう呟くしかなかった。  
 
 診療所から家への帰り道を歩いていたルイーゼは、その途中でまだ診療所に用がある事を忘れていた。  
 最近偏頭痛がひどいので、その痛み止めをもらおうと思っていたのである。  
少し診療時間は過ぎているだろうが、問題はないだろう。それに、何か不服そうであれば、  
アプローチも兼ねて、食事でもおごればいい。彼はあまり良いものを食べて無さそうだから、  
自分が作ってやるのもいいかもしれない。  
小走りで今まで来た道をルイーゼは戻った。水色のワンピースと尻尾を揺らして、診療所へとたどり着く。  
“昼休み中です”と拙い文字で書かれた看板が掲げられたドアを叩こうとしたが、  
ほんの少しルイーゼにいたずら心が湧き上がり、ルイーゼは診療所の裏手へとまわった。  
そこにはアランが寝泊まりする部屋の窓がある。そこから呼びかけて、驚かせてやろうというのだ。  
笑みを浮かべながらその窓へ向かって、足音を立てないように近づく。そっと壁に背中を向けてのぞき込むと、  
そこには二つの影があった。  
一人は目的のワーウルフで、もう一人は見知らぬワーカウだった。二人とも服を脱ぎ捨てており、  
ワーカウは椅子に座った彼の男根を、その豊満な胸ではさみ、その男根を丁寧に舐めている。  
唾液で濡れた彼の亀頭を柔らかい胸の脂肪が包み込み、ワーカウは自らの乳頭を両手で掴みながら、  
彼の肉棒へ舌を走らせる。  
 
唾液で濡れた彼の亀頭を柔らかい胸の脂肪が包み込み、ワーカウは自らの乳頭を両手で掴みながら、彼の肉棒へ舌を走らせる。  
 ワーカウの舌から、唾液と先走りが混じった透明な液が糸を引く。そうやって上目遣いで男根を舐めるたびに、  
ワーウルフの表情は恍惚じみたものとなる。  
 勃起し、充血したその肉棒と、ワーカウの妖艶な舌使いが、ルイーゼの目に焼き付けられた。  
そしてじっくりと見はまってしまったルイーゼは、股間から太股にかけて液体が流れている事に気付いた。  
 ワーカウがその白と黒のまだら模様の身体を上下に揺らし、彼の肉棒をしごき始める。  
それに伴って彼の呼吸が荒くなった。  
 いつもは飄々としてそんな表情を見せない彼が、ルイーゼの前で興奮して鼻を鳴らしている。  
いつしかルイーゼは自らの股間に指を伸ばしていた。  
「ん…んっ」  
 彼の肉棒がはち切れんばかりの胸に挟まれ、真っ赤に充血していた。  
ワーカウ自身もその股間を愛液で濡らし、乳汁がその乳房から流れていた。  
「んっんんっ……んふっ」  
 ワンピースをたくし上げ、ルイーゼは下着の中に手を入れていた。クリトリスを摘むように撫でながら、  
尻尾を振ってワーカウの奉公を受ける彼を見つめる。  
「アセリアさん。僕、もう…!」  
 彼が叫んだ。  
同時に、胸に挟まれた彼の男根から、白濁とした粘液が発射された。そのどろっとした粘液はワーカウの胸元から顔面にかけて、  
大量に放出された。  
 
「ん…は、…あっ」  
 それに合わせてルイーゼも自らの縦すじを激しく愛撫していた。  
ちょうど彼が自分の肛門にしてくれたように。中指を入り口の奥深くまで入れて、  
円を描くようにしてかき混ぜる。いやらしくルイーゼの腰が動き、太い尻尾は左右に揺れる。  
「…入れますよ」  
「うん…頼む」  
 ワーウルフがワーカウへとまだ冷えない肉棒を陰部へと挿入した。四つん這いになったワーカウの内部を、彼が後ろから激しく突く。  
「ん、んっ、…んはっ…ん、ん」  
 相変わらず尻尾を振り続けながら、彼女に対してピストン運動を止めない。  
一心不乱に腰を突き続けながらも、ワーカウの乳房を優しく揉んでいる。  
 一方、ルイーゼの方も、大量の愛液をまき散らしながら、手の動きを止めなかった。  
下着が湿っている事も関係なしに、自らの秘部に中指を挿入し続ける。  
「ぁ…ぁ、ぁ、ぅん、んっ…ふっ」  
 ワーカウの口調には似合わないあえぎ声が、彼の性欲をさらに刺激したようだ。  
彼は自分が後ろへと倒れると、彼女に背中を向けさせたまま、  
自らが腰を動かすように指示をする。  
 指示を受けたワーカウは、稚拙ながらもゆっくりと腰を動かし始めた。  
ぬちゃぬちゃと粘液による音がルイーゼの鼓膜を叩き、頭の中を性欲一色に染め上げる。  
 ワーカウも、ワーウルフも、どちらも激しく息をして、その淫乱な運動をし続ける。  
「…な、中に出しますよ」  
「ん…ん」  
 彼がうなり声を上げ始めた。やがてワーカウの中で射精してしまったのか、彼女との接合部分から愛液と精液が流れ出てくる。  
「ん、ん…んん」  
 ワーウルフと視線が合いそうになって、ルイーゼはとっさに窓から顔を隠した。その場にへたり込むが、  
それでも指の動きが止められない。まだあそこが足りない。  
 そして何を思ったのか、ルイーゼは一人、その場から立ち去った。  
 
「今日はありがとうございました」  
 頭を下げると、アセリアは何故か戸惑った表情を見せた。どうしたのか、とアランが聞くと、  
「いや、その…なんだ、今日の…気持ちよかったか?」  
 聞いてみて恥ずかしいのか、アセリアはアランから目を合わせられずにいた。  
「えと…どっちがですか」  
「その、さ、先にやったほう」  
 ああ、とアランはその時の状況を思い出して、  
「良かったです!」  
 元気よく答えた。あまりにはっきり答えるものだから、アセリアは恥ずかしくてたまらないという様子だった。  
 
「じゃあ、また、今度」  
「はい。ありがとうございました」  
 笑顔でアセリアを見送り、アランは自室へと戻る事にした。  
まだ昼休みは一時間ほど余裕があるし、それに大抵の患者さんは老人で、  
しかも午前中によく来るので、昼はかとなく暇になる。  
 部屋のドアを開き、読書でもしようかと思っていた矢先だった。  
後ろからアランは押し倒され、その長い口に何者かの舌が入れ込まれた。  
――――ルイーゼさん!  
 金色の尻尾を揺らしながら、ルイーゼはアランに馬乗りになると、カッターシャツの間から、  
彼の毛並みを撫でながら、自ら水色のワンピースを脱ぎ始めた。  
「なんでこんな事を」  
 ようやく舌から解放されたアランが、ルイーゼに向かって叫んだ。下着すらも脱いで、  
裸になったルイーゼは、アランへと倒れこんで体重を預けた。  
 いきなりの事なので、心臓を鳴らしながらも、  
アランはそのワーフォックスをどけることができなかった(一応女性で、患者なので)。  
「何も言わないで」  
 ルイーゼはそう耳元で呟くと、身体を起こし、彼のベルトをゆるめ、すでに萎えている肉棒を取り出した。  
 
「ちょ、ルイーゼさん」  
 慌てるアランをよそに、ルイーゼはその肉棒を根本までしっかりとくわえた。口内で舌を使って弄びながら、彼のそれを刺激する。  
 案の定、すぐに彼のそれは勃起し、硬さを帯びてきた。  
「きついと思うけど、ちょっと我慢して」  
 再度硬くなった男根をルイーゼは股間の口で飲み込んだ。洪水を起こしていたルイーゼはすぐに騎乗位の状態で腰を動かす。  
「ちょ、駄目だって。ルイーゼさん」  
 二度も射精したので、理性が働くアランは、彼女を止めようと腕を伸ばした。だが、彼女は難なくそれを掴んで、床へと押しつけた。  
「だめぇ。こんな事になったの、貴方のせいなんだから」  
 いつもとは違って口数が多くなったルイーゼは、腰を激しく動かし始める。  
「んっ、は…ん、んっん」  
 すぐに彼女との接合部分は愛液で濡れてくる。音を立てながら、ルイーゼは下にいる彼の姿を見つめていた。  
「と、止めてください。ルイーゼさん」  
「だめ、とまんないの」  
 胸が身体の動きに合わせて上下に揺れる。挿入されて、いざこういった状況になると、  
二度も射精してしまったとは言え、アランの頭の中に性欲が復活してくる。  
「ん、ん、…んっんっ」  
 やがて彼自身が腰を動かし始め、彼女の奥を叩くようになる。  
当初、ねちょねちょとした控えめだった音も、今ではじゅぶじゅぶという音に変わっている。  
「まだ足りませんか」  
「まだ、まだぁ…」   
ワーウルフの質問に、ルイーゼは子供のように答える。火照った身体を動かしながら、  
彼女はワーウルフにさらなる刺激を求めた。  
「足りないの。まだ足りないの」  
じゅぶじゅぶと音を立てて彼女は腰を動かす。まだ足りないと言ってさらに腰を動かし続け、  
やがて快楽の頂点へと達した時、彼女は気を失ってしまった。  
 
暗闇の中、彼女は目を覚ました。周りを見渡してみると、  
そこが昼間腰を動かしたアランの自室だとわかり、自分はそこのベッドに寝かせられていたのだと気付く。  
「目、覚めましたか」   
 二つのカップを持ってアランが現れた。机に置いてあるランプの光だけが、暗闇の中部屋を照らしていた。  
「ココアです。どうぞ」  
「…………」  
 何も言わずにアランからココアの入ったカップを受け取った。ゆっくりと啜ると、ひどく身体がぬくもった。  
「今日、なんであんな事したんです」  
 ココアの水面に目を落としたまま、アランが言った。ルイーゼはその時の自分を思い出すと、羞恥心で鼻息が荒くなった。  
 結局、何も答えないまま、沈黙が二人の間に流れる。  
「ルイーゼさん」  
「あの」  
 アランの言葉を遮って、ルイーゼが口を開いた。二人の目線が交差し、アランが少しだけ口元を持ち上げて微笑んだ。  
ルイーゼに話せと言っているらしい。  
「今度は、事前に連絡するから。……お願い」  
 ルイーゼの言葉を聞いて、アランは頭を縦に振ってあげた。  
 
 

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