目を開くとそこにはワーウルフの顔があった。白衣で身を包んだアランが、ラナの顔をのぞき込んでいた。  
「大丈夫ですか?」  
「大丈夫って…んん?」  
 辺りを見回して、ラナは頭に疑問符を浮かべた。  
「どこだい。ここは」  
 自分が寝ているベッドの他には、机と椅子の一セットしかないその殺風景な部屋に、ラナは見覚えがない。  
「あ、ここは診療所の、僕の自室ですよ」  
「自室…」  
 繰り返して、自分にかかっているタオルケットのにおいを嗅いでみた。確かにアランのもののにおいがする。  
「昨日、大変だったんですから。近所で倒れているラナさんをここまで引っ張るのに、二時間はかかりましたから」  
 倒れていた? しかもここの近所で? 記憶を巡ってみるがそれらしい記憶がみつからず、ラナは混乱した。  
「何か大事な事を忘れてるような……?」  
 首をかしげるラナをよそに、アランは思い出したようにくず野菜を煮込んだ、特製のスープを暖め直して、ラナへと渡した。  
 いつもとは違って白衣を着ていないアランに、ラナが質問すると、  
「今日、休診ですから」  
 笑って答えた。そっか、と言って空になった食器を渡すと、アランはそれを台所へと持っていった。  
 
「これから、ラナさんはどうするんです?」  
「えと…うん、なにかしなきゃって思ってたんだけど」  
 こめかみに指を当てて考えるが、どうしても出てこない。仕方なく思い出す事は諦めて、  
ベッドから這い出ようとした時、自分の下半身に違和感がある事に気付いて、とっさに出しかけた足をタオルケットの中に戻した。  
「どうしたんです」  
「い、いや、なんでもないよ」  
 タオルケットの中でそっとスパッツと下着を下ろす。すると、陰部がじんわりと濡れている事に気付いた。  
「アラン」  
「何です?」  
「もしかしてまたあたしの中に挿れた?」  
 言うと腰が砕けたようにして、アランが崩れ落ちた。  
「毎回毎回そんな事しませんよっ」  
「いや、まぁ、そうだよな」  
 どんなに深く眠っていようと、挿入行為をされれば起きてしまうはずだ。スパッツをはき直すと、ラナはベッドから飛び起きた。  
が、起きた瞬間、前のめりにバランスを崩して、慌ててアランは自分の胸で受け止めたが、そのままラナが押し倒す形で後ろに倒れてしまう。  
「珍しいですね。ラナさんが転ぶなんて」  
「あたしだって、こういう事はあるさ」  
 言ってラナは瞳を閉じて、彼の口と自らの口を重ね合わせた。舌を絡ませながら互いの唾液を共有し合って、  
アランはラナのスパッツをゆっくりと下ろし始めた。  
 
 昨日、すでに月光が辺りを照らすような時間、シスター服を着た、ワーシープの女性が  
自宅へ帰ろうとしていたラナに声をかけた。  
 金と黒の毛並み、エメラルドグリーンの瞳を持つワータイガーであるラナは、  
相手がシスターの格好をしていて、女だと言う事に油断していた。  
 尻の形がしっかりとわかるような黒いスパッツと、のぞき込めば,  
乳頭が見えるのではないかというタンクトップを着ていたが、辺りにラナに敵うような者はいないと思っていたのだ。  
「貴女、意中の男性がいらっしゃるでしょう」  
「え…」  
「顔に出ていますよ」  
 思わず頬に手をやった。確かに意中の男がいないという事はないが。  
「ね、その男性を喜ばせたいと思いませんか」  
 白く厚みのある毛で覆われたシスターは、メリーと名乗った。  
「男を、喜ばせる…?」  
 男、という言葉を聞いて、アランの顔がラナの脳内に浮かび上がった。  
確かに彼を喜ばせる事が出来れば、こちらも願ったり叶ったりだ。  
「知りたいですか?」  
 だが、どうしても胡散臭い。胡散臭いが、かけてみたい気持ちもある。  
何故か最近別の若い女が診療所に出入りしているようなので、ラナは言いようのない不安感が心に積もっていた。  
「知り…たい」  
 戸惑いながらそう答えると、そうですかとメリーは言った。そして次の瞬間、ラナの鼻先に香水を吹きかけた。  
たちまちラナの意識はもうろうとなり、立っている事すらままならないほど、体中から力が抜ける。  
 前倒しに倒れそうになったラナを、メリーがその両手でしっかりと受け止めた。  
 
「な…に、す……だ」  
 建物と建物の間の、小さな袋小路にラナを引きずっていったメリーは、その場で彼女を下ろした。  
 体中がしびれて、全く力が入らない。何とかして足に力を込めなければ、と思うのだが、ゆっくりと動かす事しかできない。  
「大丈夫。とって食べたりはしないわ。安心して」  
 言ってメリーは袖をまくって、倒れたまま動かないラナへと近づいた。抵抗が出来ないため、  
あっという間にラナはメリーの手で裸になってしまった。  
 月光の下、彼女の日頃隠れている部分が、外気に晒される。  
「男の人を喜ばせるためのレクチャー、私がしてあげる」  
 メリー自身も黒いシスター服を脱ぎ捨て、その体毛で覆われた身体がラナの前に現れた。そして男性器を模した、  
半円よりも短い木製の工芸品を取り出すと、片方を自らの陰部に挿入する。男の形になったメリーが、その木製の男根をラナの口元に押し当てた。  
「舐めてみなさい。首から上はもう動くはずよ」  
 メリーの言う通りで、動かそうと思えばゆっくりと首が動いた。ラナは彼女の陰部から生えた男根を、ぺろりと舐める。  
「だめだめ。もっとこの筋に沿って」  
 言われたとおりに、根本から亀頭までラナは丁寧に舌を動かした。反り返った木製のそれは、まさにアランのそれと同じ形をしていた。  
「次はくわえるの。わかる? 喉の奥まで飲み込んで、舌でペニスを掃除するように、絡ませながらしごくの」  
 唾液で汚れた木製の男根を、ラナはゆっくりと口に含んだ。言われたように亀頭から反り返った竿の部分まで、口全体を使って丁寧に前後させる。  
 だが、突然メリーがラナの頭を掴み、無理矢理その動きを強要させた。  
「ん、んっ」  
 口の中を激しく前後する男根を、ラナは思わず口から放してしまった。  
「いい? こういう事もしてくるから、注意しておきなさい」  
 むせて激しく咳をするラナを、メリーは脇を持って立たせた。そのままラナの背中を壁に押しつけ、彼女の太股を持ち上げる。  
 そして開いたラナの陰部に、メリーは木製のペニスを差し込んだ。  
 
「ん…んふっ…ん」  
 抵抗する事もできず、ラナはメリーにされるがままにされていた。そして、相手がアランではなく、  
しかも女と言う事に、なぜか特別な興奮を抱いていた。  
「もっと締め付けて。もっと力を入れて」  
 下半身に力を込める。だがピストン運動の速度は変わらない。いや、先ほどよりも速度を増している。  
愛液で濡れた木製のペニスは、ずんずんと肉壁の奥を叩く。  
「ん、あ…あっ」  
 すり切れるほどの速度になって、ラナは誰に聞こえても関係ないという風に、いやらしい喘ぎ声を上げていた。  
「こっちの穴は大丈夫みたいだから…」  
 メリーがラナに挿入していたペニスを抜いて、次はラナに背中を向けさせた。隠していた尻尾を掴んで上へと持ち上げると、その目的の“穴”が現れた。  
メリーは自らの人指し指を口に含んで、唾液をつけたその指を、肛門にゆっくりと入っていき、やがて人指し指と同時に中指も挿入される。  
「……っ!」  
「大丈夫。力を抜いて」  
 時折、ラナの愛液で指を濡らしながら、メリーは指を出し入れする。  
「う…くっ」  
「抵抗しちゃ駄目よ。血が出ちゃうわ」  
 彼女の様子を見ながらメリーは指を動かす。二本の指をくわえた肛門は、その初めての刺激に彼女を快楽へと導く。  
「じゃ、挿れてあげる」  
 ラナはいやいやするように首を振ったが、抵抗するための力が入らない。なすがままに肛門へとその木製のペニスが、  
ずぶずぶと音を立てながら挿入された。  
「……あ、…い」  
 激痛と異質な快楽がラナを襲った。愛液で充分に湿った木製のペニスの滑り方は充分なもので、  
メリーは肛門を相手にゆっくりとピストン運動を始める。  
「んぁっ…あ、あ…ん、んっ」  
 木で出来たそれは“萎え”というものを知らない。常に同じ硬さでラナの肛門を刺激して、こじ開けていく。  
 
「たまにはこっちもいいでしょ」  
 後ろから手を回し、肛門へと挿入しながらも彼女の乳首を、軽く爪を立てながら摘む。  
「ん…ん、ん、…ぅあっ」  
 最初は先端のみを挿入していたメリーは、やがてラナが慣れてきたと知ると、根本までゆっくりと挿入する。  
「お尻の穴を鍛えれば、前の方も締まりがよくなるから」  
 言いながらメリーは彼女の緊張を解くために、執拗にラナの乳頭を刺激する。  
「あ、あっ…あ、あっあっ」  
 アランの男根が前の穴に挿入された時とは違い、肛門の場合はしびれるような快感だった。肛門からくる刺激で下半身全体が、火照ったような感覚に襲われ、やがてその感覚でラナは絶頂を迎えた。  
「じゃあ、次は……っと」  
 肛門から挿入していたものを抜いて、絶頂の余韻が残るラナの股間に、メリーは手を伸ばすと、彼女の恥骨の裏側を、指で押さえた。ざらついた肉壁をメリーの指が撫でるたびに、ラナは身体を震わせた。合わせて尿意が襲ってくる。  
「う…んっ…ん、ん」  
 脱力感がさらに増して、ラナはその場に崩れそうになった。だが、メリーは彼女の腰をとっさに支え、支えながらも何度も指の腹でその周囲を押す。  
「やっぱり開発してなかったのね」  
 ラナを片手で抱きつつメリーは次に、小刻みに指を震わせた。  
「いい? ここは彼氏に時間をかけて開発してもらうのよ」  
 尿道に近いからか、膀胱が刺激を受けて強い尿意がラナを襲う。だが、ラナは必死にそれを押さえる。だが、  
「……ん、んっ、………っ」  
 勢いよく尿道から無色透明の液体が放出された。一気に羞恥心がラナの中に湧き上がる。  
「わかった? ちゃんとしてあげるのよ」  
 耳元で囁いて、メリーはラナの身体を放した。荒い息を整えながら、よろよろとラナは倒れ、そしてそのまま気を失ってしまった。  
 どうやらそこからアランの近所へと運ばれたようだ。  
 
――――あ、あの女。  
 後ろからワーウルフに胸を揉まれながら、ラナは昨日の事を思い出した。憎らしいと思えば憎らしいが、  
この際教えてもらった事を試すのも良いかも知れない。  
 耳元で荒い息をする彼に、ラナは囁いた。子供のおねだりのように。  
「えぇ! びょ、病気になっちゃいますよ」  
「いいから。…な?」  
 言ってアランは四つん這いになって尻を差し出した。自ら尻尾を上げて、彼を誘惑する。彼の目の前には、きゅっ、としまった肛門があった。  
「…行きますよ。痔になったら、僕が薬を塗ってあげますから」  
「……うん」  
 自ら誘っておきながら、ラナも内心不安があった。ワーウルフはまず指を挿入し、大丈夫そうだと確認すると、  
その肉棒を彼女の肛門に挿入する。  
「………っつ」  
 充分に愛液で湿らせたため、ワーウルフの肉棒は良く動く。遠慮を知らないのか、始めから激しく前後させる。  
 だが、その痛みすらも快楽となり、ラナはいつもよりその股間をぐっしょりと濡らしていた。  
「はぁ…ん、ん…あ、あ」  
 激しい息づかいと、じゅぽじゅぽと接合部分から聞こえる音だけが、アランの自室の中を取り巻いていた。  
「…いいですね、ラナさん。すごく気持ちいいですよ」  
 肛門を突きながら、彼がラナへと呼びかける。唸りながら、ラナも新しい快楽に目覚めていった。  
「あ、ん、んっ……は、あ、あっあっ」  
 やがて彼女の肛門の中へ、彼は精液を流しこんだ。その暖かい液体も相乗して、ラナの下半身は非常に熱いものになり、  
彼女も彼に肉棒を差し込まれたまま、快感の頂点へ達した。  
 
 その様子を窓から見守っていた一人のワーシープがいた。  
 目立たぬようにシスター服ではなく、派手な私服を身に着けた彼女は、同時にイッてしまった二人を眺めながら、ぐっ、と拳を握った。  
「なかなかやるじゃない。あの娘」  
 窓から顔の上半分を覗かせたまま、でも、とワーシープは渋い顔を作る。  
「やっぱり男の方が良いみたいね。……こっちに目覚めさせようと思ったんだけど」  
 舌打ちしてワーシープは腰をぼきぼきと鳴らしながら、診療所を後にした。  
 窓から見える部屋の中では、二人がまだ絡み合っていた。  
 
 

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