あくびが出るほどつまらない授業も、さすがにテスト前となっては真面目に受けるざる  
を得ない。から学ぶ習慣を身に付けていれば学期末試験くらいで慌てることもないの  
だろうけど、分かっていてもできないのが人間ってもんだ。  
 明日からテスト前の部活休止期間に入る。それが理由かどうかは知らないが、何となく  
部内の雰囲気はふわふわしている。  
 顧問が出張でいないので、みんなで部長を説得し、部活を早く切り上げた。どうせ明日  
から長い休みになるのだから、あまり気合を入れても意味がない。  
 まだまだ日は沈む気配がなく、友人は帰りにゲーセンに寄ろうと提案した。校則では違  
反となっている下校途中の寄り道だが、そんなのを遵守する中学生は希少価値が高い。  
 なかなか来ない友人を校門近くで待つ。背後では軟球テニスボールの小気味いい音が  
ポンポンと響いている。  
 ふと後ろを見ると、体育館でバレーをしている俺はあまりお目にかかれない光景が広が  
っていた。  
 コートのあちこちに生えている女子生徒のおみ足。短いスコートから大胆に晒されてい  
る太ももは健康的な色気を放っている。純な男子中学生には刺激が強過ぎるんじゃないか  
と思えた。  
 犯罪的な露出狂の集団の中には、それなりに仲のいい女子もいる。例えば今、コートの  
外で座って友達らしき女と談笑しているのは、クラスメイトの佳織だ。完全に油断してい  
るようで、俺が見ているとも知らずに、脚をだらしなく開いている。  
 膝の辺りまでは白いのに、付け根の方は白いという奇妙な太ももの間から、濃紺のブル  
マが覗いている。正直に言うと、どきっとした。  
 佳織の臀部を包む青いスコートと、股を隠す濃紺のブルマを見ていると、体の芯が熱く  
なったようで、陰茎がむくむくと成長した。やばいと思い、とっさに近くの階段に腰かけ  
た。  
「おーい、遅れてわるーい」  
「ばか、遅えぞ」  
 怒張の疼きが静まったころ、丁度よく友人は玄関から駆けてきた。  
 
 その夜おれは、ベッドの中で佳織の姿を思い出し、かたくなったものを握った。悪友に  
教えてもらった書店で買った雑誌など要らない。想像だけで充分なオカズになった。  
 短いスコート、そこから伸びる日焼けした太もも、打球する度にスコートがめくれてそ  
こから現れるブルマ。いつもくだらない話をして笑い合っている女の、少々 刺激的な姿  
を見かけてしまっただけで、簡単に性の対象として考えてしまう自分が情けない。  
 余裕で二発ほどティッシュにぶちまけた後、ムラムラといけない欲望が湧き上がってき  
た。  
 どうにかして、あのスコートとブルマを盗めないだろうか。  
 
 俺は一晩中 考えた。幸いにして明日(この時点では既に今日)から部活動はなくなる。  
部室に忍び込むには絶交の好機であると言って過言ではない。施錠の実情がどの程度のも  
のかは分かりかねるが、大した防犯対策は施していないはずだ。  
 もし忍び込めたら、まずは佳織の所有物を探そう。毎日ユニホームを持ち帰っている可  
能性も否定できないが、そうなったら他のやつのものでも構わない。いや、顔の分からな  
い女のはやめておこう。返り討ちに遭うかもしれない。  
 なんて思慮しているうちに俺は、睡魔の波状攻撃に降伏した。  
 
 翌日、目の下のクマは試験勉強の産物と勘違いされた。これで平均点以下だったら笑い  
者だ。  
 教師の口から流れるお経に似た音の連続は、見事に耳から耳へ抜け、頭の中はソフトテ  
ニス部の部室の件でキャパシティ満杯である。  
 待ち遠しい放課後、三十分ほど図書室で勉強でもしようと思ったが、さすがに眠かった  
ので机に突っ伏して熟睡、結果的に一時間そこにいた。  
 急ぎ足で靴を履き玄関を飛び出して俺は、人目をはばかりながらもダッシュで女子軟テ  
ニ部室まで移動、部員の不在を確認した後に大きな深呼吸をし、ドアノブを握った。  
 カチャリ。なんの抵抗もなくノブが回る。開いていた。  
「マジで……?」  
 一旦周囲を見渡してから、魅惑の箱へ侵入する。  
 むわっと漂う女の匂い。芳香に包まれたおれはこれ以上ない高揚を感じていた。女子の  
部室に不法侵入した罪悪感と、目的はクラスメイトのユニホームを汚すことという背徳感  
で、もはや佳織の服がなくても問題ないくらいだった。  
 ロッカーを眺めると、すぐに佳織の姓が書かれた名札の差し込まれた扉を発見した。自  
らを軽蔑したくなるほどの周辺視野の広さだ。  
「すまん、佳織」  
 一礼、比較的新しいロッカーを開く。  
 中には白いシャツとブルーのスコートがハンガーにかけられていて、底にブルマが置い  
てあった。ついでに部活の仲間で撮ったのであろう写真も扉の裏に張りつけてある。  
 本当にいいのか? おれ、このまま戻れなくなっちゃんじゃないのか? 女の身に付け  
た衣服を盗んで自慰をする犯罪者になりそうで怖い。しかし理性とか道徳なんてのはあっ  
さりと捨てられるらしく、目の前に餌が吊るしてあるのにそれを見過ごすなんて愚行はで  
きない。  
「佳織のブルマか……」  
 こういうとき、まず匂いを嗅ぐのはなんでだろうね? 甘い匂いがするという保証はな  
いのに、男として冒険したくなるのは不思議だ。案の定ブルマからは汗の匂いがした。  
 既にガチガチにかたまったおれの怒張は、ズボンにテントを張って存在を主張している。  
 今、気持ちよくしてやるからな。  
 ベルトを外してズボンとトランクスを下ろすまで、五秒もかからなかった。朝に遅刻ぎ  
りぎりで起きたときでももうちょっと長引く動作も、滑らかに済ませられる。  
「佳織、ごめん佳織」  
 ブルマで男根を包み、絶妙な力加減で扱く。  
「はぁ……はぁ……佳織……佳織……」  
 このナイロン生地のすべすべ感は堪らない。まさかここまで快いとは。猿もびっくりす  
る勢いで自らを慰める。普段は五分以上かかるオナニーだが、早くも絶頂が近い。  
「佳織のスコートに、出してやる……」  
 左手を伸ばし青いスコートを握る。先端をそのスコートに向け、右手でひたすら陰茎を  
摩擦する。  
「くぅっ、佳織、ごめん、佳織……!」  
 下半身が痺れる。腰が抜けそうな快楽が全身を走り、次の瞬間、白濁がプリーツスコー  
トに飛び散った。青い布に白いどろどろの液体が付着し、ところどころ染みを作っている。  
 とうとうやってしまった。あのむちむちの健康的な太ももを想像して、本人のブルマと  
スコートで欲望を満たしてしまった。終わった後の情けなさは通常のそれとは比にならな  
い。もちろん快感もひとしおだが。  
 無駄だとは分かっていながら、証拠隠滅しなければ不安になってしまうので、とりあえ  
ずロッカーにあったティッシュで精液を拭き取る。ほとんど染みこんでしまったので、あ  
まり意味はない。  
 ブルマをポケットにねじ込み、そろりそろりと退散、校門を通り過ぎてからは何事もな  
かったかのように涼しい顔で下校した。  
 佳織のブルマがなくなって騒ぎになったのは、一週間後のことだ。  
 
 

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