宇宙の混沌の中に地球という星が生まれました。  
 
星の女神の慈愛は人間を作り出し、大地に与えました。  
 
人の誕生がこの星をより大きな愛に包むはずでした。  
 
しかし、人間達はお互いに殺し合い、戦いあいました。  
 
星の女神は知らなかったのです。  
 
人間がここまでお互いに憎みあう生き物だったことを。  
 
星の女神は考えました。  
 
―――何故、人と人とは争いあうのか。  
 
―――全ての人々が笑って暮らせる世界は永遠に訪れないのだろうか。  
 
悲しくなった女神は一粒の涙を落としました。  
 
涙は一つの形となりました。  
 
 
 
―――光は天から現れた。  
 
「はぁ……はぁ…」  
深夜。必死に自転車をこぐ俺。  
目的地は公園。  
見えるのだ。  
ボンヤリとした光…流星か何か、  
そういった感じのものが、ゆっくりとそこに向かって落ちて行く。  
 
眠れなくて、偶然、星を眺めていたのが幸いだった。  
 
公園に到達。  
辺りには俺しかいない。  
どうやらあの光に気がついたのは俺だけのようだ。  
 
光が束になって落ちてくる。  
ドキドキと高鳴っていく心臓。  
何が起こるかはわからないが、  
俺は歴史的瞬間を感じていたのだ。  
 
公園が淡く黄色い光に包まれていく。  
星の光をこの身に受けながら  
ゆっくりと落ちてくるものに心を奪われていた。  
 
「………人?」  
 
光に包まれ  
空より舞い降りた少女。  
白い肌。  
華奢な体つき。  
纏われた白い衣。  
そして背中には白い翼。  
その全身を象徴するものは汚れなき白だったのだろう  
だが、今の少女の体はまるで戦いでもあったかのようにボロボロな姿だった。  
 
俺は落ちてきたその少女を両手でしっかりと受け止めた。  
落下による衝撃はない。  
むしろ鳥の羽のように俺の手にふんわりと落ちてきたという感じだった。  
 
「…………ハァ……………ハァ……」  
 
俺の腕の中。  
少女の体はひどく熱い。  
浅い呼吸。本当に苦しそうに………。  
だが、それはたしかに生きている感覚だった。  
 
深くは考えない。  
すぐさま、その少女を助けなきゃと思った。  
病院。  
いや…病院はマズイ。  
空から落ちてきた羽の生えた少女…それをどう説明しろと…。  
だから俺は、俺の家まで必死に走った。  
 
―――。  
 
「こんなもんでいいんだろうか………?」  
治療が終わる。  
体中包帯でグルグルにしてしまった。  
ふき取った血はゴミ箱一杯分にもなった。  
不思議な感じの漂うその少女。  
この少女が誰だとか  
どこから来たのかとか  
そういったものは考えずに  
俺は少女の無事だけをただひたすらに祈っていた。  
「やっぱり病院に連れて行った方がいいのかなぁ…」  
「う………うっ…」  
「あっ!」  
目を覚ました少女。  
「うっ………?」  
不思議そうな顔つきでキョロキョロとあたりを見回す少女。  
「大丈夫かいキミ?」  
俺は少女を驚かせないように優しくそっと声をかけた。  
ビクッっと反応して立ち上げる少女。  
「………誰だキサマはっ?」  
 
少女の第一声は、俺の予想とはかなり違うものだった。  
その言葉使いは可愛らしい外見に似合わないというかなんというか、  
とにかく面くらってしまった。  
まぁ、俺が想像していた性格を当てはめるもの、少女にとっては失礼な話だ。  
気をとりなおして、俺は少女の質問に答えた。  
「あっ…お、俺は、河野シグレ。  
 公園に落ちてきたキミを助けてあげたんだよ」  
「…………落ちてきた………?  
 ………そう…か……。  
 くっ………忌々しい…。  
 戦いに敗れ…こんな汚れきった世界にまで落とされてしまったとは………」  
何かを考え込む少女。  
俺は訪ねた。  
「キミはいったい?」  
「私の姿を見たのは貴様だけか?」  
「………えっ?」  
「答えろっ!私の姿を見たのは貴様だけかと聞いているのだ!」  
「………ん…。多分そうじゃないかな…」  
「そうか、我が姿を見てしまった以上、死んでもらわねばなるまい」  
「えっ?」  
 
………耳を疑う。  
なんか…今、この少女…  
しれっと…とんでもないことを口にしたような………。  
 
少女はその場でクルっと回る。  
その姿はまるで白い妖精か何かのようだった。  
その手にはいつの間にかバトンが握られていた。  
その先を俺の方に向ける。  
「ま じ か る と ぉ る ー っ ! !」  
 
ドッカーーーーーーン  
 
バトン先から放たれたのは超圧縮されたレーザービーム。  
俺の家が半分消し飛んだ。  
「キ、キサマっ!何故よけたっ!!!」  
ギリギリと歯軋りして怒り心頭のご様子。  
ときめいていた俺の気持ちも吹き飛んだ。  
「じょ…じょ…冗談じゃねェ!よけなきゃ死んでたぞ俺!」  
「せっかく苦しまぬよう、一思いに殺してやろうと思ったものを!」  
「ちょ…ちょっとまてオマエ!うっ………」  
言葉を飲み込む。  
目前に迫る死の気配。  
圧倒的な殺意で迫る少女。  
それで話し合う余地など全くないことがわかった。  
 
平和な日常からいきなり魔界へ…。  
このまま訳もわからないまま死ぬのか?俺は…?  
 
「死ねいッ!」  
矛先が光る。  
「ひぃっ」  
普通の人間なら全力で逃げようとするのだろう。  
だが追い詰められた俺の爆発力は、とんでもない冒険を生んだ。  
生死を分ける一瞬の判断。  
俺は少女に飛び掛った!  
「えっ!」  
「うおおおおお!」  
「きゃあああああ!!」  
そのままベットの上に押し倒す。  
「くっ!は…はなせっ!この変質者めっ!」  
足掻く少女。  
その力は少女の…いや…怪我人のものとは思えない。  
だが、こっちも必死。  
少女の体にしがみつく。  
特に右手にあるバトンだけは絶対にふるわせてはいけない。  
「は、放さないぞっ!絶対にっ!」  
放したら死ぬ。  
俺は普段の数十倍の力を発揮していた。  
 
「この………いい加減にっ」  
ムニュ  
「あっ……?いやあああああ!!」  
バチンっ!  
少女に勢い良く弾かれる。  
「げふっ」  
ついにベットの下に落とされた。  
すぐには身動きできない体制。  
俺は死を覚悟し、頭を抱えた。  
それが無駄な行動だと思っていても。  
だが……いつまでたっても俺の死は訪れない…。  
…ベットの上では俺の予想を超えた事態となっていた。  
「うっ……ぐすっ…うえっぇええん」  
「!?」  
そぉーーっと視線を向ける。  
そこでは…泣いていた。少女があんあんと…泣いていた。  
顔を手で隠して座り込みながら号泣…。  
その仕草は外見に相応しい行動で……なんとなくカワイイなどと思ってしまった。  
なんだか知らないけど悪いことした気になったので、謝ろうと思ったら、  
近づいた途端、キッ!っと涙で潤んだ目で一生懸命目つきを吊り上げて睨んでくる。  
「き…キサマ………人間の分際で我の胸によくも………  
 ええぃ…もはや八つ裂きにしても飽き足らぬっ!  
 キサマにはこの世でもっとも醜く残酷な最後を送ってやるっ!  
 覚えてろよ!バカっーーーー!!」  
そのまま、プンプンと怒りながら空に飛んでいく少女。  
「………」  
俺は訳もわからないまま、ただ呆然と空を見上げていた………。  
 

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