(1)  
   
 この一帯に壮大な暗闇が広がっている。ここは天井も壁も床も無い、果てを失った空間。  
 ただ暗闇と言っても光の点が無数に散らばり、真の暗闇ではなかった。それは満天の星空を思  
わせるほど見事なものだ。  
 そんな空間に一人の少女が一糸まとわぬ産まれたままの姿で浮かんでいる。そして、まるで寝  
ているかの様に目を閉じている。  
 灰銀色の長い髪、赤に近い茶色の目、凝視できないほど美しい肌と体のライン、可憐と言う言  
葉が似合う容姿、それらを持った十五歳くらいの少女がそこにいたのだ。  
 その少女は二つだけ、普通の人と違うものを持っている。それは白地に先だけ黒い狐耳と白い  
狐尾、つまりその少女は稲守狐(いなもりぎつね)なのだった。  
   
 そんな最中、少女の耳に微(かす)かな人の声が聞こえてきた。  
「コン……」  
「誰?」  
「コン……俺や……」  
「誰なの?」  
 それは幼い少年の小さな声。そして、その少女を呼ぶ声。  
 しかし、その名前は違っていたのだった。心当たりの無い少女の心中(しんちゅう)に少しの混  
乱と不安感が渦巻き始める。  
 『あなたはどうして私をコンと呼ぶの?』そう思った少女は、狐耳は素早くその方向に向けた  
のだった。  
「俺や……起や、コン……」  
「誰? 私を呼んでるの? でも私は……楓(かえで)……」  
 少女楓は反論してみたものの、どうしても目を開ける勇気が出ないでいる。  
 しかし散々迷ったあげく、意を決してゆっくり目を開けた。それでも楓はしばらく状況を把握  
できずにいたのだった。  
 だが、把握できるや目を見開き驚いた。  
「あっ! あなたは……」  
 楓の目前に一糸まとわぬ産まれたままの姿をした、六歳くらいの幼い少年がいたのだ。短髪の  
黒髪に黒い目を持った、よく見る普通の少年だった。  
「あなたは……もしかしてカッちゃんなの?」  
 少年を見た楓はしばらくすると懐かしそうな表情に変わっていた。『私……この少年知ってる、  
覚えてる……』楓の中に少年の記憶が蘇(よみがえ)り、少年がコンと呼ぶ理由も悟ったのだった。  
「そうや俺やコン……会いたかったんや……探したんやで……」  
「……私を? 探してたの?」  
「もちろんや……国中(くにじゅう)立ち寄ってへん所なんか無いって言うほど探したんや……俺、  
一時(いっとき)も忘れたことあらへんよ、コンのこと……」  
「それ……本当なの?」  
「ああ、もちろんや……」  
「うっ、嬉しいっ! 私嬉しいよ! カッちゃん……」  
 知人との再会。楓はよっぽど嬉しかったと見え、少年に向けて微笑み始めた。  
 そんな嬉しさから、無意識に楓の狐尾が振れ始めている。それはまるで犬の様に……  
「そりゃよかったわ……俺、わざわざ会いにきた甲斐(かい)があったちゅうもんやな」  
「それはそれはご苦労様でした。それでね、カッちゃん……」  
「何や?」  
「私全然見当がつかないんだけど……カッちゃん、ここどこなのか分かる?」  
「さあ……俺も辺り見てみたんやけど全然見当つかへんな………………………………そやっ!   
ここ、二人だけの世界っちゅうのはどやろ?」  
「ブッ……ハハハハハ……二人だけの世界って……何言ってるのよぉ、カッちゃんは」  
 二人の世界って言葉、臭いと言うかむずがゆいと言うか、楓は『冗談はよしてっ』と言いたげ  
に手を上下に振って笑い飛ばしていた。  
 その言葉、幼い少年には合わない。楓は少年のそれに滑稽さ感じたのだった。  
「わ……わ……笑わせないでよぉ……ハ、ハハ……」  
「やっぱ変か? セリフ何か可笑しかったんか?」  
 
 少年は楓の行動を見て、“二人だけの世界”なんてセリフに羞恥を感じたのか、頬を赤く染め  
照れてしまったのだ。  
「うんっ、何だか変過ぎぃ……カッちゃんには合わないよ……でも確かに私達以外誰もいないみ  
たいだね。ここって」  
「そやろ? まるで二人の世界みたいやんか、ここって」  
「まぁ、確かにそう言えなくもないかなぁ?」  
 楓はしばらく辺りを見回していた。しかし何を思ったのか、楓は少年へ向き直り、突然ポンと  
手を一つ叩いた。  
「……そうね……誰もいないんだし、ここは二人の世界ってことにしちゃおうか? フフ」  
「おうっ! 俺も賛成やっ!」  
 楓は片手を大きく上げ、少年は親指を立てている。  
 彼らはこの暗闇を勝手に自分たちの世界としてしまった訳だ。まるでこの状況を楽しんでいる  
様にしか見えないのだった。  
「ここが俺達の世界に成った所でやな……俺、コンにお願いがあるんやけど?」  
「お願い? お願いって何? 金貸してって言われても出せないよ? 持って無いし……」  
「いやいや、それは見たら分かるがな……金じゃなくてやな……」  
「じゃぁ、何かな?」  
「何て言ったらええんやろな……その……」  
「うにゅ?」  
 楓はきょとんと少年の顔を見ている。  
 少年は非常に言い難(にく)いお願いをしようとしていた。なぜ赤くなるのか分からないが、  
段々少年の頬が赤く染まって行くのだった。  
「あの……コン……コンがほしい……」  
「はい? ……ほしい? 私を?」  
 少年はこくり頷(うなず)くと、顔を真っ赤にさせて俯(うつむ)いてしまったのだ。  
 その言葉の意味を楓はしばらく理解できなかった。  
 しかし、その言葉の理解は突然やってきた。このほしいとはエッチの隠語、楓は半心そう悟っ  
たのだ。しかし半心で否定もしていた。  
 楓は少年の様子を見てあせり、ごまかし笑いを始めたのだ。  
「や、やだなぁ〜カッちゃん……顔を赤くして黙られても、私困っちゃうじゃないのよ〜」  
「じゃあ、はっきり言うわ……」  
 『この子は一体何を言い出そうとしてるの?』そう思いつつ楓は唾を飲んだ。  
 さっきまで振っていた尾もいつのまにやら止まっていたのだった。  
「俺のお願いはな……コン……コンの全部が欲しいんや……つまりコンとその……コンとエッチ  
したいんやっ!」  
 少年はさっきの小声から一変し、大声で楓に広言(こうげん)した。  
 それを聞くや楓の顔が瞬時に攣(ひきつ)った。楓自身が悟った通りだったので、驚いた。そし  
て楓はこれを少年の冗談だと強引に位置付けしようとし始めたのだ。  
「えっと……あの……カッちゃんの目、本気(まじ)……冗談に聞こえないんだけど……」  
「冗談やないで! 俺……コンと……コンと本当にエッチしたいんや……」  
「えぇぇっとその…………あの…………え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」  
 それを聞いた楓の、狐尾の毛全部が一瞬で逆立った。これはかなりの驚きだった様だ。  
「エ、エッチぃっ! エッチって……あのエッチっ!」  
「そやっ!」  
 少年は純真無垢な笑顔で肯定した。楓はエッチの行為自身にもその言葉にも免疫が無い。  
 楓は頬だけ赤く染め、驚きとあせりで叫びながら意味の無い動きで両手をパタパタさせるだけ  
だった。  
「それまずいよ! まずいって!」  
「まずいの? ……そっか……コンやっぱり俺のこと嫌いなんやな?」  
「そんなことないっ! そんなことないけど……でもね……」  
「そやのに? コンどうして拒否するんや? あの時俺の子供産むって言ってたやんか?」  
「それは……えっと……」  
 『まさかそれを持ち出してくるなんて……』楓はどう説明しようか悩み続けた。  
 でも、何とかして説明を行うしかない。仕方なくも、楓は口を開いた。  
 
「カッちゃんに初めて出会ったころ、私は無知な霊狐の子狐だった。そしていつの間にか、私は  
『将来あなたの赤ちゃん産むことになるのかな?』と単純に思う様になってた。もしそうなった  
ら、あなたを受け入れようとも考えてた……そんなの不可能だってことも知らずにね……でも今  
は状況が違うのよ」  
「状況やて? ……今コンは稲守狐で、しかも一部の稲守狐しか許されてへん特殊変化(とくしゅ  
へんげ)で人間になってるやんか? ……今は人間と変わらんのやろ?」  
「そりゃ人間に変化(へんげ)してるんだから、人間と同じことできるけど」  
「だったらええやんか?」  
「だからこそねっ、心の準備が必要なのよ…………じゃなくって、社会常識をねっ」  
「社会常識って言われてもやな……」  
「だから……あなたはまだ子供! エッチなんかしちゃいけない歳でしょっ!」  
「コン、歳なんて関係あらへんよ」  
「ある……あるんだってばぁ……」  
 少年はさらに楓を追い込んでいく…………  
 楓は完全に断ることができない。それは楓がその少年に嫌われたくないと言う心情なのだった。  
 楓は不安と困惑で狐耳を倒し狐尾を股に巻き込んでいる。  
「我がまま言わないでよ……分かってよ……お願いだから……」  
「大丈夫や、コンの全てを俺に預けてや。今まで味わったことのあらへん素晴らしい世界を味あ  
わせてあげる」  
「素晴らしい世界って? ……あのね分かってる? 君はまだ子供だよ、こんなことしちゃいけな  
………………………………うぐっ!」  
 楓は少年に対して少し強めに忠告を与えた。しかし、少年は目を閉じ『何も言わなくていいよ』  
と言わんばかりに、口をふさぐがごとく楓の唇を奪った。  
 楓は突然の行為に驚き、眼(まなこ)を広げて少年を見ている。  
 そして少年野郎はさらに行動をエスカレートさせていく。  
   
                   (2)  
   
 それは少年と思えない行動。  
 少年の舌が楓の口を割って入ってくるや楓の心を解(ほぐ)すため、口中のあらゆる部分を刺激  
し続けた。  
 それは楓の常識を心の底に沈め、本能的思考を押し広げ陶酔させる行動となった。  
 そんな行為が続き、楓も少年の舌を迎え入れるかのごとく自分の舌を絡ませ始める。  
「んぐっ…………ふはっ……はぁはぁ……」  
 少年は自分の唇を楓から離した。  
「……こんなことして……後悔しても知らないからねっ」  
「俺は子供やし……後悔なんかせえへんよっ」  
 唇を離された楓は頬を赤く染め、トロンとした目で少年を見ている。同じく少年も楓を微笑で  
見ている。  
 楓の狐耳も少年の行動を捉(とら)えるべく、その方を向いている。楓は『もうどうにでもなれ!』  
と言う心情で固まっていたのだった。  
 とうとう少年は楓の性欲と呼ばれる本能に火を点けてしまったらしい。  
「もうやめるの?」  
「うんにゃ、本番はこれからや……」  
「ほ、本番?」  
「それはやな……ここなんかどや?」  
「そっ……そこはっ……」  
 少年は楓の両乳房を弄(まさぐ)り始めた。つまり、行為のシーケンスを実行し始めたのだ。  
 とたん楓の反応が変わる。口で息をしつつ段々荒くなり、目を閉じつつも恍惚の表情に変わっ  
ていた。  
 楓の体が面白いくらいに反応している。と同時に狐尾も同様に反応するのだ。少年は楓の反応  
を面白がっている様に見えた。  
「……あふ……ん……はぁはぁ……んく……」  
「まだまだ行くで、覚悟しいや……」  
「あっ、あく……あんっ……あ……んん……ああっ、あああっ……」  
 
 少年は楓の両乳房を両手に納め、少し押さえ気味に円を描きながら愛撫し始める。  
 少年は愛撫を強くしたり弱くしたりしながら、時に膨らみを震わせて刺激しつつその柔らかい  
乳房への愛撫を楽しんでいる。  
 楓は狐耳を倒し、荒い息を混ぜながら善がり声を強めていった。  
「んああっ……だめぇ……そんなに揺らしちゃ……だめぇぇっ! 感じ過ぎるっ!」  
「何や何や? ここで音を上げたらこの先大変やで、コン」  
 楓は感じ易い体質なのか、または性的快感で苦しいのか、涙を滲ませ少年に懇願していた。  
 少年は楓を確実に絶頂まで押し上げたいと願望し、今度は秘部に向けてゆっくり手が滑り始め  
る。  
 しかし、その手は感じると思われるあらゆる場所を寄り道していたのだった。  
「あっ! ……な……何っ? 何っ?」  
「ここはすごいで……女の特権や、極楽浄土見せたるで」  
 少年の手が下腹部に到達すると、楓は恐怖と羞恥が心に生まれた。  
 そのため楓は仰向けに膝を立てた状態で抵抗の意思を示すべく、狐尾を挟んだまま膝と太もも  
を硬く閉じてしまったのだ。  
「い……いや……極楽浄土……だめ……」  
 楓は強く懇願していた。当然、少年は聞く耳など持っているはずもない。  
「コン……大丈夫、大丈夫や、心配あらへんよ。だからその脚、開いてや」  
「だめ……だめ……」  
「ええやん、ええやんか……」  
 それでも楓は涙を浮かべつつ、首を左右にゆっくり振って拒否している。  
 しかし少年は楓の両膝をつかんで力を込め始めた。少年は楓の股を広げるべく、段々と力を強  
めていく。  
 楓はそれに抗(あらが)おうと必死に耐えていたがどうすることもできない。それは少年と思え  
ない力だったからだ。  
 そして楓の太腿(ふともも)がプルプル震えながら開かれていく。  
「だめ……だ……だめえぇぇぇぇぇっ!」  
 とうとう少年の力により、楓の股があらわにされてしまったのだ。  
 最後の砦である狐尾も難なく払われてしまい、その中心にある綺麗なピンク色の秘部があらわ  
にされた。その秘部は少し濡れ、光っていた。  
 そして楓は羞恥心のため、頬を赤く染めて横を向いてしまった。  
「うわぁぁ、コン……ここ、綺麗なピンク色してるやん。それにキラキラ光ってるやん」  
「いや……いや……」  
 楓は横を向いたまま、羞恥心に耐えるかの様に目を閉じている。  
 少年は自分と楓の体制を整えると、楓の秘部、淡いピンク色のそれに誘われるがまま自分の顔  
を近づけていく。まずは楓の香りを楽しむ。  
「おお、これはフローラルの香りや……って、どんな匂いから知らんけど…………んぐ……」  
 少年の舌が楓の秘部に触れた時楓は「あうっ」っと小さな声を漏らすと同時に、狐耳狐尾と体  
が反応したのだ。  
 少年は舌による愛撫を繰り返し始めた。最初は一定のリズムで……  
「ああっ……んあああっ……だめ……そこも感じ過ぎるっ…………感じ過ぎるぅぅぅっ!」  
「大丈夫、大丈夫や……段々よくなるから……」  
 その愛撫は乳房と比較にならないほど強い性的快感が押し寄せてくる。  
 楓が懇願しても少年はやめてくれず、楓は少しの恐怖心と戦いながら善がり悶えるしかなかっ  
た。  
 しかし楓自身期待もあって、拒絶までは至らないのだった。  
「あはぁ……んっ……んあっ……はぁはぁ……んっ……ああっ……んんっ」  
 少年は舌による愛撫のリズムをいろいろ変化させていく。それが後押しとなり、楓は絶頂へ少  
しずつ少しずつ上がっていく。  
 狐耳は倒れたまま微かに振るえ、痙攣している様に見えた。  
「あっ、やっ、やっ、あっ……ああっ、んんんっ……んああっ、んふっ……」  
 この間少年の行為を受け止め様としているのか、ぴったり閉じていた楓の秘部はまるで雌花が  
開花するがごとく性的興奮を受けてゆっくり開き始める。  
 そして淫核――クリトリス――も少し覗き始めている。  
 
 しかし、あごに疲れを感じた少年はあっさりその愛撫をやめてしまった。  
「あかん……舌とあご疲れたわ……」  
「はぁはぁ……」  
 楓の秘部は愛液で満ちあふれ、一部は漏れ落ちていた。  
 楓は恍惚の表情のまま狐耳を少年に向け、そして少年をじっと見ている。少年は無邪気に、微  
笑を楓に向けていた。  
「カっちゃん……そこ……気持ちよかった……」  
「な、ええやろ? でやな……もっと気持ちよくしてええか? ええよなコン? 俺、コンの可  
愛い鳴き声もっと聞きたいんや」  
「う、うん…………………………んくっ……」  
 少年は楓の両太もも内をゆっくり念入りに撫で続け、そのまま楓の股に手の平を滑らせた。  
 その時淫核に触れたのか、楓の体が微かに反応したのだった。  
 楓は狐耳を倒して顔を横に背(そ)けているものの、頭の中は羞恥心と期待が混濁していた。  
「ここはな、こうやって可愛がるんや……気持ちいいやろ?」  
「ああっ! …………あは……んっ、んんっ……んああっ、はぁ、はぁ……あはぁっ」  
 少年は楓の秘部全てを手で覆い、幾度も幾度も小さな円を描く様に手淫を与える。  
 楓は即効で善がりと悶えに落ちた。そして、狐尾は時折反応しながら小刻みに揺れいる。  
 楓は善がり声でまともな言葉にならない状態になっていた。  
「あんっ、んんっ、ああ……んはぁ……ああっ……んぐっ……」  
 少年は楓に慣れさせるためかしばらくはゆっくり擦(さす)り、それを徐々に早めていった。  
 少年が楓の秘部を擦る度に秘部全てが弄(もてあそ)ばれる様に踊り、そのつど愛液による粘り  
気を帯びた音が聞こえてくる。  
 その性的快感は絶頂に向け、ゆっくりと強くなっていく。楓の善がり声、お腹と腰の痙攣、狐  
尾の痙攣から、強く感じているのが見てとれた。  
「ひゅぐっ!」  
 少年は膣口に中指を、処女膜の抵抗に遭いながらもゆっくりと挿入していく。そしてGスポッ  
トのありかを探り始め、それはすぐに見付かった。  
 この場所に触れた時、楓は明らかに違う反応を示したのだった。  
 少年は本格的に楓のGスポットへ手淫を与え始めた。当然、淫核の手淫も怠(とどこお)り無く  
与えられている。  
 楓は絶頂へ向け猛ダッシュでかけていく。ここはそれほどまで強い性的快感を楓に与えてしま  
う所なのだ。  
「んっ、んんっ、んあっ、んあっ、あああっ……」  
 しばらくすると楓は頭と喉を反らせ、時々背中も反らせ、足はバレリーナの様につっ張らせて、  
何かを求めるかのごとく時折動かしていた。  
 楓が絶頂に近づくにつれて善がり声が段々甲高くなっていく。そして狐尾が時折反応している。  
 少年は楓の淫核とGスポットに激しい手淫を与え始めた。ラストスパートに入ったのだ。  
 その間その二点を擦る度、気泡音と多量に濡れた愛液の音が鳴り響いている。  
 楓は頬を赤く染め、性的快感に耐えるかの様な表情をしている。  
 そして楓は忙(せわ)しない息づかいと激しい善がり声をあげながら絶頂に向かって登っていく  
のだった。  
 その間お腹の辺りと腰が激しく揺れている。さらに狐耳や狐尾も頻繁に反応している。  
「あっ、ああっ、んあっ、んんっ、いっ、んいっ、いっ、んいくっ!」  
 強烈な性的快感に、楓はほとんど言葉にできない。いつの間にか体全体に力が入るため、時折  
全身が痙攣している様に見える。  
 楓が絶頂に達そうとする瞬間強烈な性的快感が全身を駆け抜け、痙攣させながら体を大きく反  
り返らせた。そして……  
「そらコンっ! フィニッシュやっ!」  
「……んくっ………………んああああああっ!」  
 楓は悲鳴の様な甲高い善がり声をめいいっぱい上げ、そして狐尾を伸ばし狐尾の毛全てを逆立  
て達したのだった。  
「……逝く時コォォォォォン≠チて言わんのやなぁ」  
 楓の意識はそのまま暗闇の彼方に逝ってしまった様だ。  
 
                   (3)  
   
「ほにゃあぁぁぁぁ……ほにゃ? ………………………………げっ!」  
 楓は目を覚まして、最初寝ぼけていたが我に返ると瞬時に飛び起きた。あのエッチなできごと  
は全て夢の中、つまり楓は布団に寝ていたのだった。  
 つまり楓の妄想ってことか?  
 それにしてもここにいる楓の姿は――――誰が見ても四足獣の狐、右前足の半分が白いキタキ  
ツネの姿になっていた。  
 尾の先付近に装着している黄金色の狐宝輪(こほうりん)が正式な稲守狐であることを示してい  
る。  
 楓は今エッチで強烈な夢に、頬(ほほ)を赤く染めつつ心の中はかなりパニクっている様だ。そ  
して楓は何やら心の中でつぶやき始めた。  
『やばっ! そんな勇気も無いくせにあいつとエッチする夢見るなんて……しかもすんげぇリア  
ルだった……でもどうして子供で出てくるのよ? 私ってショタの気ありなの? もしかして、  
私ってやばいやつ? うううぅ〜』  
 楓は狐耳を倒して頭(こうべ)を垂れ、心の中をブルーに染めていく。  
 善悪は別にして今やロリ・ショタの時代ゆえ落ち込むことは無いのだろうが、楓自身よほどシ  
ョックだったらしく落ち込むしかないのだった。  
「はぁ……アルバイト行くか……憂鬱だよぉ……」  
 それでもアルバイトをサボる訳にはいかない。  
 楓はただちに裸だが人間の少女へ変化(へんげ)した。かかった時間はほんの二、三秒くらい。  
 ただ狐耳と狐尾はそのまま残ってしまう。こればかりはどうしようもないのだが、幸いにして  
普通の人には見えない様だ。  
 さて、裸のままでは当然まずい。そこで服を出現させようとしたが結局失敗してしまった。  
 毎日挑戦しているものの、これまで成功したことは一度も無いのだ。  
「はぁ……今日もだめだったのね……どうして服できないんだろなぁ? 白狐を飛び越えてキタ  
キツネまで戻っちゃうといい、どうなってんのよっ? この狐宝輪はぁ……」  
 と言って、尾にある狐宝輪を恨めしそうに見ている。楓はこのことで悩んでいたのだった。  
 とは言え、これはいつものことなので楓は考えるのをやめ、予(あらかじ)め準備しておいた下  
着と裾が太腿まであるパジャマTシャツを着たのだった。  
「うにゃぁぁ……何だか眠うぅぅ……」  
 楓は服を着た後も、布団に座ったまましばらくは眠そうにボーっとしていた。  
 しかし、これではだめだと思った楓は両手の平で両頬を軽く叩き、立ち上がったかと思ったら  
「おっしゃあぁぁぁぁぁぁっ!」と、大声とともにコブシをあげて気合を入れた。  
 とにかく、まずは朝が弱いらしい妹を起こさなければならない。  
「おい諷歌(ふうか)! 朝だぞっ起きなさいっ!」  
 隣には楓の、十歳くらいの妹である諷歌が眠っていた。彼女も楓と同じく狐耳と狐尾が付いて  
いたが、尾に狐宝輪を付けてはいなかった。  
 楓は諷歌を起こすため、彼女を思いっきり揺さぶり始めた。  
「うんもぉぉ……何だと言うのだ、姉御ぉぉ……」  
「だから朝なんだってっ」  
「ええ〜、もう朝ぁ〜…………何だか寝足りんぞぉぉぉ」  
「ほら、あなたも掃き清め行くんだから起きた起きた! 早くしないと遅刻するよ?」  
「分かったから……朝っぱらから怒鳴らんでもよかろう……」  
 楓に起こされた以上起きるしかない。諷歌は何だか面倒そうに起きると、楓の方を見た。  
 目はまだ眠足りないと語ってる様だが……  
「………………なぁ姉御?」  
「何よっ?」  
「昨日の夜寝てる時だが、うなされてる様な違う様な……何と言うかその……妙な声あげてたが、  
あれは何なんだ?」  
「げっ! …………私、寝言を言ってた? 寝言聞こえた?」  
「おう、言っておったぞ……あれは寝言と言うよりうめき声だった。すごかったぞっ!」  
「あっちゃぁぁぁ……」  
「メモ録機で録音すればよかったと、つくづく残念に思うぞ」  
「やめてよっ」  
 
 楓は一瞬真っ白に硬直し、戻るや『ひえぇぇぇぇ! あの声、妹に聞かれたぁぁぁ!』と、心  
の中で叫び泣いていた。そして顔が真っ赤になっていた。  
 楓は頭脳をフル回転させて言い訳を導き出そうと、必死に思考し始める。  
「うぅぅんとね……いやちょぉぉぉっと怖い夢見てね……大丈夫、何でも無いよぉぉ……ニャハ  
ハハハ……」  
「怖い夢とな? うなされておったのか……大丈夫なのか? 姉御?」  
「大丈夫大丈夫! 気にしない気にしない! だから忘れなさい……」  
 楓は悟られない様に両手をパタパタさせながらごまかしていたが、幸いにして諷歌は気にする  
様子も無い。ただ「お、おう……」と眠そうに返事を返しただけだったのだ。  
 しかしながら、楓が考えた言い訳は頭脳をフル回転させたわりに陳腐(ちんぷ)な内容だった。  
   
                   (4)  
   
 日差しがまぶしい七月夏の早朝、どこからともなくセミの声が聞こえてくる。  
 ここは都会から外れた田・畑・農家の点在する田舎町。その中心にある大狼山(だいろうざん)  
の山麓に於清稲荷神社(おきよいなりじんじゃ)がある。  
 ここは楓達のバイト先なのだった。  
「あ、楓ちゃん、おはようさん」  
「ほいっ! おはようございます、沙奈さんっ!」  
 楓はまるで敬礼でもするかの様な仕草で、沙奈に元気よく挨拶していた。楓と諷歌が社務所の  
出入口で、二人にとって先輩にあたる沙奈と出会ったのだ。  
 沙奈は宮司の娘で、二十三歳の正式な巫女兼事務員であった。そして稲守狐ではなく普通の人  
間なのだ。  
 見ると、楓も諷歌も巫女装束を着ている。つまり彼女達もアルバイト巫女なのだ。  
「ハハハ……朝早いってのに相変わらず元気だねぇ、楓ちゃんは」  
「そう見えます? 佐奈さん」  
「うん、見える見える」  
「なんせ、元気が私の取り柄みたいのものなんですよ。だからたとえ演技でも元気にしとかない  
と、私じゃないんですよねっ」  
「いや……演技はまずいでしょ……」  
 沙奈は笑って言い、楓はそれを受けて照れ笑いをしている。  
「姉御の言う通り、昔から姉御は馬鹿′ウ気だけが℃謔阨ソなのだよな?」  
「あのね……それじゃあまるで私がアホ丸出しに聞こえるでしょ! ……てか、他に取り柄は無  
いのかっ!」  
「あったか? 我は知らぬぞ?」  
「……てめっ!」  
 諷歌は言葉を放つや、してやったりとほくそ笑んでいた。  
 それを聞いた楓はコブシを震わせながら掲げた。そして楓の額、コブシには怒りの血管が次々  
と浮かび上がっていく。  
 沙奈はヤバいと思ったのか、話題をそらし始めた。  
「……でも……楓ちゃん見てるとてんで悩み無しって感じだね」  
「いやいやいや……これでも悩みくらいありますよぉ、やだなぁ……」  
「何かあるの? 悩み?」  
「そっすよ……例えば……こいつの存在とか!」  
「痛でっ! 痛でででででででっ! つ、つねるなっ! 痛いではないかっ!」  
「か、楓ちゃんやめなさいって……」  
 楓は諷歌の頬をつねりつつ、後ろ頭をなでながらまるでごまかす様に笑っていた。  
 沙奈はあせりながら楓を制した。楓はしょうがなく、つねるのをやめたのだった。  
「それに引き替え諷歌ちゃんは……朝はいっつも眠たそうな顔してるのね」  
「諷歌……またも言われてるし……」  
「誰が何と言おうと、我(われ)は朝とても眠いのだ……仕方あるまい?」  
「諷歌っ……分かってると思うけど、眠たいからってサボるんじゃないよっ」  
「分かっておるわっ!」  
 楓は諷歌に向かってしつこいほどに忠告を与えた。妹はうんざいりという感じの様だ。  
 
「まぁまぁ楓ちゃん抑えて……それからね、寝ながら掃除するなんてことしちゃだめだよ、諷歌  
ちゃん」  
「寝ながら掃除だと?」  
「それは流石に……そんな器用なことは無理ですよぉ……佐奈さん……」  
 楓は笑いながら否定していた。否定したものの楓は、諷歌ならやりかねないと思ったのも事実  
だった。  
「いやね……前から諷歌ちゃんならできそうな気がしてたのよねぇぇ……」  
「できぬわっ、そんな芸当っ」  
「ハ、ハハ……そう言えば、君達もう夏休みよね? 私はもう思い出の彼方になっちゃったけど、  
楓ちゃんは試験終わったのよね?」  
「そ、そうなんですよっ! 当たって砕けろってやつで期末試験に臨(のぞ)み、それも終わって  
夏休みですよ。だから気分はもう『終わったぜえぇぇっ! 夏休みだぜえぇぇっ! べらぼぉぉ  
ぉめぇぇっ!』って、海に向かって叫びたいくらいですっ! いやほんとに……」  
「どうして江戸っ子で、海なのかな」  
 沙奈は苦笑していた。海が出たのは夏だからなのだろう。  
 しかし楓は突然暗雲をめぐらすがごとく、どんよりと落ち込んでしまったのだ。  
「でもね……結局……当たって砕けちゃったんです……」  
「あららぁぁ……」  
「姉御は英語が苦手で、英語の成績悪かったとか嘆(なげ)いておったよな?」  
「まさか……もしかして英語補習だとか?」  
「訊かないで下さいよ……沙奈さん……」  
「ハハハ……図星だったみたいね……あそっか、それも悩みって訳ね?」  
「ぐすん……」  
 楓は肩を落としたまま涙が止まらず、それを見ていた沙奈と諷歌は笑っていたのだった。  
「おぉぉぉい君達っ! なにサボってんだよっ!」  
「しまったっ! 兄さんきた……」  
「もしもし沙奈さん、この後厄払い祈祷しなくちゃならないんだけどね? 早くしないと依頼者  
きてしまうぞっ! 君達、竹箒(たけぼうき)持って朝のお勤め早くやりなさいっ!」  
 突然二人の後ろから声がかかった。二人が後ろを振り向くと、竹箒を持った禰宜が少々ご立腹  
の状態で立っていたのだ。  
 禰宜は三十歳の、宮司の次に偉い神主。当然この人も純粋な人間なのだ。  
「朝から怒鳴らないでよぉ……兄さんはもぉ〜」  
「おいっ!」  
「痛っ! ……いったあぁぁぁぁぁ……何するのよ兄さんてばっ!」  
「兄さんじゃねえっ! ここでは禰宜さんと呼べ、禰宜さんとっ……こんなこと言っちゃ不謹慎  
だが、職場だぞここはっ!」  
「こだわり過ぎっ! どっちだって同じでしょっ!」  
「同じじゃねぇっ!」  
 沙奈の発言に禰宜は頭の線がぶち切れてしまい、沙奈の頭にげん骨を落としたのだった。  
 こうして今日も、禰宜と巫女――実態は兄と妹――のバトルが始まった。  
「あ、あのおぉぉ……禰宜さん沙奈さん……この後厄払い祈祷があるから、サボってる時間無い  
んじゃありませんでしたっけ? ………………んもぉぉぉこの二人、全然聞いて無いしぃ」  
 楓は少し不安になりつつ、忠告はしてみた。しかし案の定、このバトルが停止することはない  
のだった。  
「姉御よ、こういう喧嘩(けんか)を『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言うんだったよな?」  
「いや……夫婦違うから……」  
 楓と諷歌はただ観戦しているしかなく、二人は呆れていた。  
 この神社は禰宜も含め大勢でこの掃き清めを行うのだが……時折、こんな兄妹バトルから始ま  
る日もある。  
 見ると、於清稲荷講社の人達や主典――神主見習い――の人達も集合している。そしてみんな  
呆れ果てながらそのバトルを見ていた。  
 そしてこのバトル、この後宮司――つまり彼らの父親――が放つ一発の雷で幕を閉じるのだっ  
た。  
 
                   (5)  
   
 それから半月が過ぎた……  
 楓はある丘に立っている。暑い夏のくせに、この丘を渡る風は涼しく何だか気持ちがよかった。  
ここは三田山霊園、海が一望できる広い霊園だ。  
 楓はちょっと歩みを止めた。見ると、展望台公園では小さな男の子と女の子が楽しそうに遊ん  
でいる。『兄妹なのかな? それとも幼馴染なのかな?』そう心で呟きながら再び歩みを再開し  
たのだった。  
 それから数え切れないほどのお墓を通り過ぎ、楓はあるお墓で止まった。  
 このお墓が目的だったのだ。そこには鷹羽家之奥都城≠ニ彫刻されている。  
「お参りはこれで何回目だっけ? もう忘れちゃったな…………せっかくこの身一つで稲守狐と  
して尋ねてきたのに、あんたが死んでたんじゃ稲守狐になった意味無いよ……」  
 呟いた楓は、お墓の供物台に和菓子・塩・酒・榊を供え、ロウソクを灯した。  
 楓が死んで間もない子狐だった頃一緒に遊んだ少年、言わば楓の幼馴染と言える少年がここに  
眠っている。  
 だが、楓はその少年の本名を知らない。知っているのは愛称だけ……ただ忘れているのかも知  
れないが……  
 楓はお墓の前にしゃがみ、手を合わせた。  
「今日もきたよ……カッちゃん……」  
 もうあの楽しい時間は二度と帰ってこない。そう思うと……楓の頬を一粒の涙が流れた……  
   
   
                                   【おわり】  
 

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