つけっぱなしのテレビは、国会放送を垂れ流している。  
「……クーラー代凄そうだよな、国会議事堂」  
「一回の国会で一億円かかるってねー。死ね」  
「ストレートにそういうことを言うんじゃない。……でも同感だ。せめてクールビズれ」  
 だらけつつ、ゴロ寝を二人で続ける。  
 気温は高熱三十八度。クーラーなんて便利なものはなく、レースのカーテンを引いた室内には陽の光が、こう、蔓延している。  
「……アイスあったっけ」  
「ばか、さっき食べただろ……アイスは一時間に一本だ」  
「じゃあ次のアンタの分を、こう、アタシに譲渡するとかどうさ」  
「……くたばれもしくは死ね」  
「す、ストレートに言われたぁっ」  
 ……暑くて勢いがまったく足りない。  
 いつもはウソ泣きの演技も入るが、今回は寝そべったままだ。  
「…………」  
 彼女の方を見ると、非難がましい涙目だった。  
 いたたまれなくなって来たので、腹筋を使い、起き上がる。  
「…………!」  
 だらしなく寝そべっていた馬鹿が、四足獣が駆け出す直前みたいなポーズになった。  
 その熱烈な視線を背に浴びつつ、冷凍庫からアイスを取り出した。  
「んー……」  
 ぴり、と袋をつまんで破って、アイスを取り出し袋を捨てる。  
「……さて」  
 なにやらハァハァ言い出した四足獣ちゃんの前にしゃがみこみ、……アイスをかじる。  
 しゃり、とした歯ざわりと、急に冷やされたことによる僅かな歯の痛み。直後に来るのは、痺れにも似た冷たさと、それ以上の甘味だ。  
「…………!?」  
 今にも泣きそうな顔で、彼女は肉薄してくる。……そう、肉薄、なんて変な言葉を使うくらい、その表情には悲壮感とか憤怒とかが満ちていた。  
「よ」  
 その開きかけた唇に唇を押し付けて、口移しをした。  
「ふぉお…………!?」  
「ちょっとぬるいのは許せよ。ホレ、次行くぞ次。ステップアップだ。色々と」  
「ちょ、アンタ、スケベうわぁ――!」  
 ……テレビでは、保守派の政治家が、何かを言っていた。  
 

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