水橋真帆がその夜、女子寮から抜け出して中等部校舎へと走ったのは、ただの偶然だった。  
 栗色のセミロングの綺麗な髪と、まだあどけなさを残した顔をキッと固めて、真帆は閉じられた校門を飛び越えた。  
「きゃっ……?」  
 陸上部で鍛えられているため、アクションに問題はなかったが、人目がないとはいえスカートのまま開脚をしてしまったことに気付く。  
 着地に成功した真帆は左右を見回して、ほんの少し頬を赤らめた。  
 午後八時過ぎの中等部校舎には、宿直室の明かりがひとつあるだけで、他はほぼ暗闇に閉ざされていた。  
(よりによって、やろうと思ってた日に忘れるなんて、あたしもバカだなあ……)  
 宿題をやるためのノートを、机の中に置き忘れていたのに気づき、慌てて舞い戻ったのだ。  
 せっかく寮の同居人が、難しい問題の答えを教えてくれるのだ。朝でもいいが、別のクラスなので寝坊したら忘れてしまう。  
 チェックのスカートをはためかせ、既に日の落ちた校舎の中に忍び込む  
 戸締まりはしてあったが、同級生が昨月窓を壊して以来できた秘密のルートを使えは、自分の教室に入れることを真帆は知っていた。  
(それにしても、夜の校舎ってどうしてこう不気味なんだろう?)  
 そんなことを考えながら、目的のノートを手に入れる。  
 急いで校舎を出ようとすると、帰ろうとした出入り口の窓枠に、ふと奇妙な違和感を覚えた。  
 
「やっ……。な、なにこれ……? 気持ち悪……」  
 それは虫だった。マカロニほどのピンク色のゼリー状の芋虫のような生き物が、無数に這っていることに気づいた。  
 まるでルアーのようでもあるが、それにしてはやけに艶めいていて、生き生きとしている。  
「きゃっ!?」  
 入るときにいなかったその虫が、ノミのように跳ねて真帆の腕に触れた  
 慌てて平手を使って払おうとすると、幼虫はぷちりと潰れて、同色の体液が肌の上に染み出していく。  
「いやあっ、もう、何よこれぇ……」  
 不快感に涙目になった真帆は、急いで窓をくぐり抜け、中庭に出て――  
「えっ?」  
 真帆は自分の目を疑い、立ち止まった。  
 見慣れているはずの草藪のあちこちに、さっきの幼虫が、コードライトのように点在していた。  
 ふとさっき粘液のついた自分の腕を見る。ピンク色の液体は体に浸透し、既に跡形もない。  
(何これ……? もしかして、毒でもあるんじゃ?)  
 真帆の推測は当たっていた。ただし、それはただの毒ではなく、人の性感を溶かす淫毒であった。  
(なにこれ、なんか、体が熱い……)  
 突然下腹部のうずきを覚えて、真帆が立ち止まる。その機をついたかのように、大量の虫たちが、真帆に飛びかかってきた。  
「いやああぁぁあぁ!?」  
 恐怖で我に返った真帆は、体に虫と粘液がつくのも構わず、中庭を突破しようとする。  
「誰かぁ、助けてぇ!?」  
 ふと、草藪の向こうの街灯の下に、警備員の後ろ姿があった。  
 救いと見た真帆は必死に手を伸ばし、その肩に触れた。  
「た、助けて下さいっ! なんか変な虫が、いきなり――え?」  
 
「…………」  
 警備員は振り向かなかった。返事もしなかった。代わりにばさっと、まるで砂細工のように崩れ落ちた。  
「え? あ、あああ……」  
 疑問が氷解した後、真帆の双眸が恐怖で見開かれる。それは、初めから人ではなく、人型をしたものだった。  
 制服の隙間から無数に出てきたのは、白っぽいカブトムシの幼虫にも似た大量の生き物。人の指ほどから、二の腕ほどまでのが、わっと大量に這い出てきた。  
「ひ、ひあああああ――!?」  
 “それ”が、人の形を模していたことに気づき、真帆は絶叫を上げた。  
 この一連の動作で、既に真帆の抵抗意識は崩壊していた。  
 すとんと腰が抜けた真帆の上に、ヒタヒタと虫たちが襲いかかる。  
 体育座りを崩したような格好の真帆のふくらはぎから太股へ、制服の上と下から虫たちはその膨らみかけの胸まで登ってゆく。  
「あ、ああ……んぐっ!?」  
 真帆が思い出したように悲鳴を上げようとする。  
 だが、首筋か顔にまで到達した人の指二本ほどのぬめった芋虫が、そのさくらんぼのような艶やかな唇を割り、ずるりと口内に忍び込んできた。  
(あ、いやあ……)  
 その芋虫の頭が亀のように伸び、エラを張って。口腔内をかき回す。まるで、本体そのものでありながら、男性器を模しているように。  
 残りのワームは潰れたゼリーと同じピンクの粘液を吐き出しながら、真帆の制服の中を這い回る。  
(あああ……、何これ。いやぁ……気持ち悪いのに……)  
 ぬるり、ぬるりと、まるでローションを塗った手に愛撫されているような快感と恍惚感が、真帆を襲う。  
 
 二匹の芋虫がストライプのスポーツブラの下に潜り込み、未発達な乳房に張り付き捏ね上げると、真帆はぴくんと身震いした。  
(はあっ、何これ……、気持ちいいよお……)  
 そういう行為は知識としては知っているが、試しに何度か自分でした時とは、比較にならない快楽だった。  
 芋虫たちはけして噛みついたりなどはせず、あるときは下着や制服の上から、あるときは張りのある肌をぬめぬめと這い回り、時にはその脚や口吻で、少女を愛撫し、汚していった。  
(あ、ああ、やだぁ……。なんか、変になりそう……。嫌なのに、なんで、わたし……)  
 真帆の体から完全に力が抜けて、草藪の上に仰向けになる。  
 全身を虫と粘液塗れにした真帆の肢体は、煌々とした月明かりを身に受けて、魔性を帯びたように光っていた。  
「んっ? ふぐううっ!?」  
 太ももを愛撫していたワームがショーツの上から秘裂をなぞり、下着の内側に潜り込もうとしているのを感じて、真帆は我に返った。  
(やっ!? そ、そこはあっ……!?)  
 陶然としていた真帆が恐怖に目を覚ます。  
 弛緩しきった体で最後の抵抗を試みようとしたとき。  
「いぎっ!?」  
 ずるん、と幼虫が薄膜を破って胎内に呑み込まれた。  
 同時に、口を塞いでいた幼虫の先端から、ゼリーのような液体が溢れ、抵抗できないまま喉を落ちてゆく。  
 すると、秘芯を貫かれた痛みとショックもすぐに薄れ、全身が泡立つそうな快感に包まれていく。  
(はあっ……、な、なんで? 怖いのに、痛いはずなのに……。も、もうだめ、おかしくなる……)  
 墜ちる。  
 そう思ったとき、小さな足音が聞こえた。  
「夜分遅くとはいえ、貴様らも随分と節操のないことだ。こんな人目につく場所で捕食などと」  
(……?)  
 朦朧とした真帆が見たシルエットは、剣道部の部活帰りの少女だった。  
 本来ならば既に部活は終わりの時間であり、通常それはありえないはずだったが、そんな些細な違和感に気を取られている余裕はなかった。  
「キシャアッ……!」  
 数十匹のワームが、部活帰りの少女に襲いかかったその刹那。  
 
「――“レーヴァテイン”」  
 大量に飛びかかって来る芋虫たちに動じた様子もなく、少女は腰に帯びていた竹刀袋から木刀で居合いを放つ。  
 ただの木刀であったはずのそれは、光を帯びる剣となって、紙切れのように幼虫たちを切り裂いてゆく。  
 二秒と持たずに、空中で無数の幼虫は切り裂かれ街灯の光に溶けて消えた。  
「あ、うう……?」  
 光に反応して、真帆が虚ろな目をしばたたかせると、剣道部らしき少女が、木刀を納めて見下ろしてきた。  
「ふむ。発見が遅れて済まなかったな」  
 真帆に見覚えはなかったが、一度見れば忘れられないほどの特徴があった。  
 強い意志を赤みがかった目に宿した、凛とした少女だった。  
「しかし、まだ精神も食われてはいないようだし、問題はないな。すぐに回復するはずだ」  
 呟きつつ、弛緩した真帆の体を抱き上げる。そして、虫たちが消滅した辺りに視線を走らせた。  
「“ゲート”が見あたらないということは、本体は逃した、か……。まあいい、とりあえずは保護と報告だ」  
 呟いて、木刀の少女は黒塗りの携帯電話を取り出した。  
「あ、う……」  
「大丈夫か? 待っていろ、帰ってから治療する」  
「あ、あたしはどうなって……。あ、あなたは……?」  
 真帆の問いに、切れ長の目を赤く光らせて、剣道部の少女が答える。  
「降魔六式委員会がひとり、門守夕里。だが、君の方は何も覚えておかない方が幸せだ」  
 少女が真帆を抱きかかえ、女子寮へと歩き出す。  
 その夜はそれ以上何も起こらず、幕を閉じた。  
 
***  
 
 学院の敷地外、駅前のカフェテラスの一席で、聖宝学院女生徒の制服が並んでいた。  
 つけ加えるなら高等部と中等部、一人はいかにも真面目そうな、縁無しメガネと黒のロングヘアーの少女。  
 対面に腰かけているのは、気だるげな顔つきの黒のショート、小奇麗だが目立たなそうな雰囲気の黒髪の少女だった。  
 
 ミナミが目撃した事件の日から、早くも三日が経過した。  
 明菜は鬱病ということで一時的に自宅療養にしてもらい、徐々に快方に向かっている。  
「結局、明菜は何も覚えてなかったみたい。あんなに酷いことがあったのに……」  
 ミナミが呆然と呟くと、小夜音が水の入ったコップに軽く口をつけた。  
「それはそうでしょう。サタニックに精神を捕食される過程で、表層の記憶も削り取られますから」  
「で、今日はやっと説明はしてくれるのよね?」  
 翌日以来、明菜の容態が安定してから、ミナミは真実を問いただす為に図書室に通い詰めた。  
 “占いの魔女”たる小夜音は酷く嫌がったが、根負けしてついに話をすることにしたのだった。  
「その前におなかが減ったので、何か注文してもよろしいですか?」  
 メニューを片手に小夜音がちらりとミナミを見る。  
 わざわざ聞くということは、ミナミの奢りという意味だろう。  
「いいわよ。でも私、今月厳しいから、お手柔らかにね」  
「分かりました。ところで私はチョコレートパフェが好きです。注文は任せます」  
「…………」  
 
 程なく、二人の席にウェイトレスがやってくる。  
 ミナミはメニューを開いてパフェの値段を見る。それなりに高かった。  
「ご注文よろしいでしょうか?」  
「チョコレートパフェとレギュラーコーヒーを」  
 ミナミが財布の中身を思い出しながら、ため息を吐く。  
「あ、それとエスプレッソもお願いします」  
「……ってえ! ちょっと何勝手に追加してるのよ!?」  
 ミナミが慌てて小夜音を睨むと、  
「私の飲み物がありませんでしたので」  
 平然とした顔で返された。  
「…………」  
 お金のことで小競り合いをしてる場合じゃない。  
 仕方なくミナミは折れることにした。  
「で、どこまで話ましたっけ?」  
「その、あの化け物は本当に猪川君だったの? それとも――」  
「あれは紛れもなく本人ですよ。ただし、現実を捨てて闇に身を落とした召喚師(サモナー)と呼ばれていますが――」  
 といいながら懐に手を入れ、  
「ところで、これをあなたは覚えてますか?」  
 小夜音は真っ黒な鍵を取り出して見せる。  
「それは――」  
「この鍵を、門(ゲート)と、私たちは呼んでいます。これに召喚師の身を生け贄に捧げることにより、悪魔(サタニック)を召喚します。まあ、化け物への変身プロセスはそんなところです」  
「そんな鍵……どこで手に入るのよ?」  
「ま、具体的に説明してもダルいでしょうから、まあとある宗教団体から盗み出されたもの、とでも言っておきます。そしてこれは変身アイテムと共に、サタニックの心臓も兼ねています」  
「……ってことは、その盗まれた鍵の分だけ敵がいるだけで、増えることはないってこと? 時間さえあれば、あなたたちが倒してくれるってことかしら?」  
 
「お待たせしました」  
 ウェイトレスがやってきて、注文の品をおいていく。小夜音は無表情のまま、スプーンをどでかいパフェに突き刺した。  
「そのはずです……が。もしかしたら今回は、ちょっと事情が違うかもしれません」  
「……?」  
「気にしないでください。憶測でものを話しても仕方ありませんから」  
 パフェのチョコアイスを口に運びながら、小夜音は虚空を見つめる。  
「何か気になるんだけど……っと」  
 さりげなくミナミはスプーンをパフェに伸ばすが、小夜音のスプーンにガードされ、小さな金属音を立てた。  
「…………」  
「なんですか行儀の悪い」  
 冷ややかな目で見られて、ミナミは呆れつつもレギュラーコーヒーに取り掛かった。  
「それにしても、あの化け物たちの目的はなんなのよ? なんで猪川君は変わってしまったのよ?」  
「彼らの目的は、破壊と快楽の享受。ただそれだけです。もともとこの門(ゲート)というアイテムは、そういう負の思念を色濃く持つ人間しか扱えないのですよ。ま、あなたみたいな顔も頭もいいリア充には、縁遠い話ですがね」  
 パフェを黙々と口に運びながら、小夜音は呟く。  
「あの男は、自分の長所が一切無く、周囲に認めてもらえなかった。だからあのように他人に錯覚させ、夢を見せる能力が発現したのでしょう」  
 いいながら、“門(ゲート)”と呼ばれた鍵を、懐にしまう。  
「彼らはおそらく、ゲートを十数個持ち出した人間から、何らかの形で受け取ったのでしょう。配布者の狙いは、自分の存在を眩ます為、私たちのような退魔の存在から……」  
 不思議なことに、喋りながら食べているようには見えないのに、小夜音のパフェはどんどん減っていく。  
「そして、学園で精神を喰らいつつなりを潜めて成長し、いずれはこの土地そのものを支配するつもりなのでしょう。私たち対抗組織は、それを食い止めるために動いています」  
 言い終えて、小夜音は空になったパフェグラスに、スプーンをおいた。  
 
「では、説明は以上でよろしいですか?」  
 すぐに立とうとした小夜音を見て、ミナミははっとした。  
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。その、退魔師みたいな人は、あなただけじゃないんでしょ? 教えてくれれば、協力して――」  
 ミナミの縋るような視線を、小夜音はあっさりと受け流した。  
「助力を拒むつもりはありませんけどね、無理はしない方がいいですよ? 何せこの学院は中等部と高等部、教師、他係員含めて三千人近いです。  
その中のたった十数匹など、私たち降魔六式委員会のメンバーでは、特定しきれませんし、カバーもしきれません。  
どちらにしろ、後手になるのは避けられないんですよ」  
「……でも、じゃあ事件が起こるまでは、私たちは何もできないわけ、そんなの――」  
 小夜音は思い出したように、エスプレッソにミルクとガムシロップを落とし、口元に運ぶ。  
「だからああやって細々と探してるじゃないですか? 私は後衛ですから、まともに殴り合うとすぐやられるんですよ。ドラクエとかでいうと魔法使いのポジションです。分かりますよね?」  
「いや、あの私、あんまりゲームとかは……」  
「……そうですか」  
 しばらく沈黙が満ちて、小夜音がエスプレッソをちまちまと啜る音だけが聞こえる。  
 ミナミは焦る、何か質問をしなくては。  
「じゃあ、つまり、この学院はあなたたちの抗争に巻き込まれたってことなの?」  
「どこまで私にケンカを売れば気が済むんですか? 私たちは雇われて対処しに来ただけの者ですよ。ただのお仕事です」  
「仕事って、そんなのあるの?」  
「年収は八百万ほどですがね。全くもって、割に合わない仕事ですよ」  
「ええええっ!? そんなにもらってるの!?」  
 椅子から飛び跳ねるミナミを、小夜音はジト目で睨め付ける。  
「そんなに、って。むしろ全然割に合っていませんよ。定期的に化け物に犯されるわ、精神崩壊程度で済めばまだいい方で、常に殺される危険だってつきまといます」  
「えっ……じゃあ、あなたも……その」  
 明菜のように、とその先に続く言葉を、ミナミは告げられずにいた。  
「こんな商売を二年も続けていたら、誰だってこうなりますよ。ムツゴロウさんだってそりゃ指をなくすわけです。まあ、私たちの精神耐性は常人の五倍なので、そうそうおかしくはなりませんが。その分長くて酷い陵辱を受ける羽目になります」  
 
「…………」  
「では、私も暇じゃないので、そろそろおいとまさせていただくということで」  
 飲み終わったカップを置いて、小夜音は立ち上がる。  
「ま、待って! せめて連絡先だけでも……! 私の周りに、また誰か被害に遭ったら――」  
 逃げてゆく制服の裾をミナミがつかむと、小夜音は侮蔑の目で見下ろした。  
「偽善ですね。あなたを特別視して、守って差し上げるつもりはないのですよ。これ以上面倒な真似をするなら、あなたの記憶を飛ばしますよ?」  
「……魔法って、そんなこともできるの?」  
「私は魔法なんて使えませんよ。あの呪文っぽい喋りはただの命令で、使うのはこの子です」  
 小夜音がため息をつきつつ、小脇に抱えていたスケッチブック指でをなぞる。あの魔術の格好でならいざ知らず、普通の制服姿にそれは、全く似合っていない」  
「それは――」  
「この本、“グリモワール”は他のサタニックを喰らい、その能力を吸収して使用できます。まあ分かりやすくいうとFFでいう“てきのわざ”みたいな感じですね」  
「……? 何の話、それ?」  
「だんだんあなたと話すのが苦痛になってきました……」  
 露骨に嫌そうな顔を見せて、小夜音はエスプレッソを飲み終えた。  
「まあ、そんなわけで攻め手は幅広いんですが。その分、後手に回るともろいんですよ。あと、魔力消費も大きいですしね。前回だってあなたを助けなければ、無駄に力を消耗することもなかった」  
「でも、だからって……!」  
「周囲の索敵、罠感知、サタニック本体の特定と、やることは色々あるんですよ。私が失敗したら、あなたが代わりに倒してくれるんですか?」  
「…………」  
 そう言われればミナミは口を塞ぐしかない。  
「では、そろそろ失礼します。連絡先はさっきの通りですけど、別件ではかけてこないでくださいね」  
「ちょ、ちょっと……」  
 それだけ言うと、さらりと小夜音はカフェテラスから去っていった。  
 後にはただ、伝票とミナミが残された。  
 
 ***  
 
 もやもやした気分で、寮の自室に戻り、家事と夕食を終えた午後八時過ぎ、女子寮のミナミの部屋に、いつものように妹のイリスが訪れていた。  
 テーブルで向き合い、グラスの氷が揺れる音と、テスト勉強と称した筆記の音だけが、静かに聞こえていた。  
「はあ……」  
「お姉ちゃん。どうしたの? また、明菜さんのこと?」  
「あ、ううん、違うの……何でもないわ」  
 ため息は控えるようにしているつもりだが、思った以上にミナミは自制ができていないようだった。  
「結局、分かったところで、どうしようもない、か……」  
 起こっている事件の謎が解けたところで、ミナミにできることは何もない。  
 自分は、無力。  
 それは確かに、あの小夜音という少女のいう通りなのだ。  
(分かってる。分かってるんだけど……)  
 何かこう、放っておくことに抵抗があった。  
「お姉ちゃん、そろそろ帰るね」  
「あら? 今日は早いのね」  
 時計を確認すると来てから三十分も経っていない。いつもなら、もう二時間くらいはいるはずなのに。  
「うん、ちょっと昨日から、真帆ちゃんの具合があんまり良くないから、早く帰ってあげないと」  
 ちなみに水橋真帆はイリスのルームメイトだ。  
「風邪かしら? あなたも気をつけなさい。引き初めが危ないのよ」  
「あはは、大丈夫だよ。真帆はちょっと、昨日夜に外出なんかするから、風邪引いちゃっただけだよ」  
「えっ……?」  
 屈託のない顔で言われた瞬間、夜の学院。明菜に起きた悲劇が、ミナミの脳裏をよぎった。  
 
「どうしたの?」  
「う、ううん……なんでもないわ。それより、それっていつの話……?」  
 正体不明の恐怖に押されて、イリスから経緯を問いただすと、どうやらなんてことなさそうな話だった。  
 ただ、ノートを忘れた真帆が夜の中等部校舎に探しに行って、帰り道に疲れて眠ってしまったらしい。  
「それでね、すっごい綺麗なおねーさんが連れてきてくれたのよねー。名前も聞いたんだけど、教えてくれなかったけど」  
「へえ……」  
「それじゃ、この話は真帆が詳しいから、また今度ね!」  
 イリスが笑顔で去っていく。  
(女の人が連れてきたなら、サタニックってことも、ないわね)  
 戸締まりをしっかりした後、ミナミはぼうっと部屋の天井を眺める。  
 そうだ、三千人のうちの十匹程度なのだ。  
 女のみがターゲットだとしても百五十分の一、小夜音の話では、サタニックたちは、足がつかないようにあまり多くの獲物は現在手を出している様子がないらしいとのことだった。  
「大丈夫よね、きっと……」  
 そう自答しつつも不安は消えない。  
 いつの間にか、小夜音にもらった緊急用の電話番号を、ミナミはしきりに見返していた。  
 
 ***  
 
「やっほー。真帆、ただいまー!」  
 イリスは、中等部の寮――といっても、渡り廊下一本隔てただけの距離だが。に、辿りつくと、元気よくドアを開けた。  
「あ、お帰り、イリスちゃん」  
 昨晩遅かった時以来、微妙に体調の優れない真帆は、ベッドに半身を起こして、小説を読んでいた。  
「今日もお姉ちゃんにばっちり教わってきたから、宿題は心配しなくていいよ」  
「うん、いつもありがと」  
 そう笑みを交わした後、二人は仲良く宿題の書き取りを始める。  
 何気ない時間が過ぎていく中、話題は勉強から、次第に、今学院を騒がせている怪奇事件の話に移っていた。  
「でも真帆、危ないから夜出かけるのはもうやめなよ?」  
「うん、でも、生徒会の人も有志を募って見回りしてくれてるみたいだし、大丈夫よ。それに、昨日もあの女の人が助けてくれたでしょ」  
「助けてくれたってことは、やっぱり何かあったの?」  
「うん、よく覚えてないけど。なんか酷い目に遭った気がするから、大丈夫」  
「やっぱり、思い出せないんだ」  
「うん、なんでだろう。すっごく怖かったはずなのに……。んっく……。なんで、なんだろ?」  
「どうしたの? 真帆?」  
「な、なんか変、体が、熱っく……って」  
「えっ……?」  
 急に顔を赤らめて悶え始めた真帆に、イリスは首を傾げる。  
「ちょ、ちょっと真帆。どうしたの急に? 具合でも――っ!?」  
 最後の言葉を紡ぐ前に、イリスは息を呑んだ。  
 ピンク色のゼリー状の芋虫が、真帆の背後の壁を、ずるずると無数に這い上ってきたからだ。  
「なっ、何これっ! 真帆っ! 後ろ!」  
 真帆が振り返りもせずに目を見開いて、震えだす。  
「あ、あああ……。そうだ、思いだした……。これ、これが……あの時の」  
「な、何? なんなのこれ?」  
 どこから入ってきたのだろうかと、考える間も無かった。  
 
 ピンクの幼虫がイリスに向かって飛び跳ねてくる。それを躱して立ち上がると、ボトボトと天井から、人差し指大から二の腕ほどまでの大きさの白い芋虫たちが降ってきた。  
(て、天井にまで、いつの間に……)  
 悲鳴を上げるのも忘れてイリスが戦慄していると、真帆は既に虫たちに取り囲まれていた。  
「いやあっ、こ、これぇ! これに私はっ……んぐっ!?」  
 真帆の悲鳴の出所を、群がった幼虫たちが塞ぐ。  
 数匹に張り付かれると、まるで抵抗の意志を失ったように、真帆は動かなくなった。  
「ま、真帆……しっかりして……きゃあっ!?」  
 手を伸ばすと、自分の方にも群がってくる幼虫に、イリスは後退る。  
(何、この匂い……? なんか、変な感じが……)  
 必死で振り払おうとするが、近寄れない。  
 その隙にも、部屋を覆い尽くさんばかりの虫たちはじりじりとイリスの周りを包囲していく。  
「ごめんね、真帆! 少しだけ待ってて!」  
 イリスは飛びかかる幼虫をはねのけて、トイレに逃げ込んで鍵をかけた。「あ、ふあ……。ダメ……やめえっ……んぐっ……」  
 陶然とした真帆のあえぎ声が、扉の向こうから聞こえてくる。  
「お、お姉ちゃん。早くっ、お願いっ!」  
 イリスは急いで携帯電話でミナミへコールをする。  
 ボタンを押す指が震える。既に扉の外を、無数の虫たちが這う音が聞こえていた。  
(何が、何が起こってるの? こんな――)  
 二回目のコールで、電話がつながった。慌てて助けを求めようとしたその瞬間。手首に衝撃を感じて、イリスは電話を取り落とした。  
「えっ……?」  
「キシャァアア」  
 鈍い声を上げたのは、缶ジュースほどの芋虫だった。  
 その異形の赤い目と、イリスの目が一瞬合った。  
 
 既に自分で鍵をかけた密室。幼虫の落ちてきた天井を仰ぎ見ると、全ての謎が解けた。  
(トイレの、換気扇の穴から……!)  
 一匹だけではなく、更に無数の幼虫がいつの間にかその通気口から続々と落ちてくる。  
 イリスの記憶が正しければ、ほんの数時間前まで、そこは壊れていなかったはずだった。  
「い、いやああぁぁぁあぁぁあっ!?」  
 無数の芋虫に集られたイリスの絶叫は、長くは保たなかった。  
「うう、ううう……お姉ちゃん……」  
 すっかり身動きのとれなくなったイリスの制服の上を、ずるずると芋虫たちが、まるで品定めでもしているように這い回る。  
 嫌悪感と恐怖は既に麻痺し、ああ、こんな変な液で濡れたら、洗濯して落ちるかな。などと現実逃避の思考が入り交じっていた。  
「キシャア」  
「うっ……」  
 表面を這っていた幼虫が、襟首や裾の隙間から制服の中に入り込む。ピンク色の液体を吐きながら、無数の繊毛と小さな吸盤のようなもので、張りのある肌に張り付き、じくじくと犯していく。  
「ひぃ……」  
 白いイリスの小さな頬を、ナメクジのような虫が這う。  
 嫌悪感に声も出せないまま、静かな陵辱が続く。  
(大丈夫、痛くない……。もう少し頑張れば、きっとお姉ちゃんが助けに――え?)  
 突然の変化に、イリスは目を見開いた。  
(何、これ……)  
 祝いの席でアルコールでも呷った時のように、体が熱くなる。そして、下腹部の奥の辺りに、感じたことのない疼きが沸き上がった。  
(な、何これっ? 何でこんな……)  
 
「あふ、ふああ……いいよぉ……」  
「真帆っ!?」  
 扉の向こうから聞こえてきた嬌声に、イリスは顔を上げる。  
 それは紛れも無く、真帆の、ルームメイトの快楽の享受した声だった。  
(真帆、な、何をされてるの? も、もしかして――)  
「キィィィ」  
「いやあっ!?」  
 耳元の鳴き声に、イリスは我に返る。いつの間にか、全身を這っていた虫たちは奥に忍び込み、可愛らしいリボン付きのショーツや、ミニサイズのブラの中に忍び込んで、未発達の性器を愛撫していた。  
「いやあっ、ダメぇっ!? ふあっ、あああっ……!」  
 恐怖と快感に翻弄されながら、イリスは泣きじゃくる。  
 細い太もも、小さな胸の頂、秘裂の入り口へと虫たちが張り付き、  
 不思議だった。本能しかない虫の集合に犯されているというのに、何故か人特有のねちっこさがあった。  
 赤い唇を舐め、胸の小さなつぼみに吸い付き、太ももの内側をさすり、頬を撫で、割れ目を筆先のような舌で、細かくすり上げてくる。  
「ひああっ!? やめっ、やめれぇえっ!」  
 経験のない身体に、直接快楽を刷り込まれる感覚に、イリスは身震いした。  
 
「も、いや。やめれぇ、それ以上されたら……わたしっ!」  
 快感のあまり、イリスの意志とは無関係に痙攣して、口の端から、無意識に涎が零れ始める。  
 だが、芋虫たちは手を緩めることなく、むしろ激しさを増した。  
「はっ、はっ……ひいっ……んくっ。あああっ!? やだっ、やだやだやだあっ! 助けてええっ!」  
 迫り来る絶頂に怯えるように、イリスは強くかぶりを振る。だが、無情にも助けは来ず、ついにそれは訪れた。  
「やあっ、はあああんっ! も、ダメっ、おしっこ漏れちゃうよおっ……!」  
 叫ぶと同時に、ずらされたショーツの奥から、透明に近い小水が漏れ始める。その一部に虫が吸い付いて、音を立てて吸い取った。  
「あはあああっ!いや……あっ! 飲まれてる……わたしのっ……やあ……ふあ、ああ……」  
 絶頂の羞恥の中で、やがてイリスの声はやみ、喘ぎ声だけがトイレの中に木霊する。  
「キシャアアアア……」  
 そして、固く閉じていたイリスの縦筋がほぐれたのを見定めて、指二本ほどの太さの芋虫が、狙いを定めて、一気に潜り込んだ。  
 ぬちゅり。  
「あぐっ……」  
 既に虚ろな目を虚空に向け、放心していたイリスは、破瓜の痛みに、びくりと背筋を震わせた。  
 
***  
 
「な、何よ……これっ!?」  
 息を切らせて、イリスたちの部屋に辿り着いたミナミは愕然とした。部屋中に張り付いた無数の芋虫。篭もっていたピンク色の蒸気は、意識を遠くさせる。  
 イリスからのコールで危機を察知してから、ミナミはすぐ小夜音に連絡を入れた。  
『分かりました。ここからでは遠いので少しかかるかもしれませんが、私の到着まで、絶対に部屋には入らないように』  
 数分間まで、ミナミは小夜音の指示を守っていたが、イリスの悲鳴を聞いて、ついに我慢ができなくなったのだった。  
「あふあ、ああ、ああ……」  
「真帆ちゃん!?」  
 既に無数の幼虫に犯され、はしたない顔をさらしている真帆を助けようと、周囲の虫を振り払いつつ足を踏み入れる。だが……。  
 ミナミの武器は、来るときに、護身用として勝手にもってきてしまった、ルームメイトの木刀一本のみ。  
 戦力差と形容するまでもない、あまりにも無謀な戦いだった。   
「キシャアッ」  
「きゃあっ!」  
 不意に飛んできた芋虫の一匹を、木刀で振り払う。  
 運動の成績は悪いミナミだったが、運良く一撃で虫を切り払った。  
(や、やったの、かしら?)  
 ぴちゃり。  
「んっ……?」  
 真っ二つになった芋虫の体から出たピンク色の液体が、ミナミの頬に付着する。  
 とっさに制服の袖で拭おうとすると、何も拭えなかった。  
「えっ……?」  
 まさか、一瞬で気化したのかと目を疑うと、突然ミナミの膝がかくりと折れた。  
(こ、これは……あの、獏の時と同じ……)  
 同時に、体の熱さと痺れるような快感に襲われ、ミナミは木刀を取り落とす。  
 
(しまった、あの液体は……何かの……)  
「キシャアアア」  
 致命的な失策を冒してしまったツケは、既に目の前に迫っていた。無数の芋虫たちが、狙いを定めて、ノミのように飛び跳ねた、その瞬間。  
「“somnus”」  
 小夜音の声が聞こえた瞬間、白い霧が室内に満ち、幼虫たちがパタパタと倒れていった。  
「ん、ううう……」  
 膝をついたミナミが顔をあげると、小夜音が呆れた顔で、動かなくなった芋虫たちを見回した。  
「ふう、やはり虫退治はバルサンに限りますね。いい能力を持っていて助かりました」  
「うう、小夜音……ちゃん?」  
 ミナミの声を無視して、小夜音は“グリモワール”を中空に放り投げる。 やはり開いたカバーを口に模したように牙が生え、虫たちをがつがつと喰らっていった。  
「しかしまあ、あなたが先走ることは読めていましたが、よりにもよって、姉さんの“災いの枝”を勝手に持っていくとは……。  
無知とは恐ろしいですね。万が一本物でしたら、今頃あなたは虫まみれどころじゃ済みませんでしたよ?」  
「なんの、こと……よ?」  
 小夜音がよく分からないことを言っている。  
 だが、全身を包んでいる甘い疼きよりも強い眠気がミナミを襲い。意識が遠くなる。  
 程なくして、ミナミの視界は闇に包まれた。  
 
***  
 
 薄闇の中に、小さな明かりを感じて、ミナミは目を開けた。  
「んん……ん、あれ?」  
「目覚められたようですね。一人で帰れそうならそうして下さい。あなたを運ぶのがめんどくさいので」  
 目覚めると、そこはイリスと真帆の部屋だった。  
 あの惨状がまるで幻だったかのように、室内には虫一匹見あたらず、落ち着きを取り戻している。  
 部屋は薄暗く、スタンドライトのほのかな白色が、室内を照らしていた  
 ミナミは二人がけのテーブルに小夜音と向き合うように座らされ、イリスと真帆はベッドで寝息を立てていた。  
「い、イリスっ!? イリスは無事なの?」  
「しっ! もう12時ですよ? 寮の管理人さんはあなたが退治してくれるんですか?」  
 小夜音の言葉に口を慌てて押さえつつ、ミナミはベッドを覗き込む、イリスも真帆も、無垢な表情で寝息を立てていた。  
「記憶は消しておきましたから、まあ、さっきの恐怖は覚えていないでしょう」  
「そっか……」  
 妹の無事に、ほっとミナミは胸を撫で下ろして、椅子に深く腰掛ける。  
 そして、珍しく疲れたような表情の小夜音に向き直った。  
「ありがとう、あなたにはまた助けられちゃったわね……」  
「気にしないで下さい。クライアントの無知と横暴の引き替えに、私たちに給料が支払われているのですから」  
 相変わらず捻くれた物言いに、ミナミは苦笑しつつ。部屋を眺める。  
「でも、もうあの虫たちはやっつけたのよね。これでこの事件は――」  
「がっかりさせて申し訳ないんですが、それは違います」  
「え……?」  
 小夜音が“グリモワール”を手に乗せて。  
「さっきの虫たちは、このところ委員会のメンバーが何度か交戦しているものと同じで、親玉の分身なのです。  
逃せば本体を追うことはできるでしょうが、情報を取られた戦いになります。かといって全滅させればイタチごっこ。  
まあ、敵もここまで慎重なくらいですから、念入りに罠を仕掛けてあるのでしょうが」  
「そ、そうだったの。でも……何で、私に……」  
 ミナミは不可解に思った。何故あれほど自分が首を突っ込むのを嫌っていた小夜音が、こんなに現状を詳しく話すのかと。  
 答えはすぐに小夜音が告げた。  
 
「ところで、落ち着いて聞いて欲しいのですが、妹さんとそのお友達の胎内に、さっきの幼虫が寄生しています」  
「――えっ?」  
 さりげなく放たれた衝撃の一言に、ミナミの表情が凍り付いた。  
「既に肉体と一体化してる為、取り除くことは不可能です。解決法は、経験上、本体のサタニックを倒す他ないと思われます」  
「じょ、冗談でしょ? だ、だって二人とも……」  
「一見大人しいのは、寄生したサタニックが、本来の働きをしていないためです。ですが、彼女たちはこれから発作のように強い性衝動に襲われ、  
時が来れば寄生虫に精神を支配され、宿主の餌として動くでしょう。  
分かりやすくいうと、“ツバをつけられた”状態にされたわけです」  
「じゃ、じゃあ! 早く本体を見つけて、倒さないと――!」  
 妹が化物にいつでも食べられる餌として確保されている。そんな現状を放っておくことなどできない。  
「ですが、降魔六式委員会としては、この件を放置する予定です。  
会議は明日になるので断定は仕切れませんが、まず間違いないでしょう」  
「え……?」  
 意味が分からず、ミナミが間抜けな声を上げる。  
「さっきの説明はそういう話です。つまり、“戦っても無駄なので私たちはもう、あの幼虫には関与しない”と言っているのです。その理由です」  
「まっ、待ちなさいよっ!? 意味が分からないわよっ!? あなたたちはその為にいるんでしょ! なんで目の前にいる人を見捨てて――」  
「大丈夫です。たぶんしばらくは、彼女は無事ですから」  
「なんでそんなことが言えるのよっ……!?」  
 いきり立つミナミとは対照的に、小夜音はあくまで落ちついて、諭すような声を出す。  
「餌が多過ぎるからです。基本的に、平常時のサタニックは、本体が特定されるリスクを増やしてまで、それほど餌の人間をキープする必要はありません。となればおそらく、彼女は祝いの酒として選ばれたのです」  
「……選ばれた?」  
 怪訝な顔のミナミに向かって、小夜音は静かに微笑んだ。  
「喫茶店でお話した“例外”ですよ。サタニックたちの進化と召喚にして、  
ヤツらの姦淫の狂宴……八月の収穫祭、闇サバトの供物として――」  
 
Ep2【worms】 END  
 

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