―――四日前。  
 
『陰毛が生えているのが恥ずかしい。女子は今日からその認識を徐々に強くしていく』  
 
 
 
「あー…終わった」  
 
明日までという提出期限の迫っていた宿題をようやく終わらせ、片桐美緒はベッドへと飛び込んだ。  
柔らかいベッドの感触を楽しみながら、枕に頭を預け、仰向けに寝転がる。  
そのまましばらく、美緒は勉強からの開放感と心地良いまどろみに身を任せ、ボーっと天上を眺めていたが、何時しかここ最近、クラスメイトの女子の間で懸念事項となっている出来事に対し、思考を展開していた。  
 
先日から続く、幾つもの騒動。  
自分が知らぬ内に奇妙な行動、恥ずかしい行動をとってしまい、気がつくと正気に戻る。  
自分個人や、女子だけが、その騒動に巻き込まれているだけならまだ良いのだが、傍らには何時も傍観者がおり、それが女子達の悩みの種となっていた。  
何時もクラスメイトの男子に、その痴態を見られてしまっており…というか、半ば彼等の性欲を満たす為の見世物の様な状態となっており、それが男子女子間での関係に微妙な変化を与えているのだ。  
表面上はそれまでと変わらないのだが、男子から何処か女子に対し上に立つような、踏み込んで来るといった感じの雰囲気が、最近顕著になっている。  
それに対し、女子が強く出る事が出来ない…何度も見せてしまった数々の痴態が、弱みの様になってしまっているのだ。  
対処法は、未だ無い。  
女子の間では原因や犯人が何なのか、誰なのか等と話がされているが、起きる事は全て、まるで魔法に掛かったような不可思議な事態ばかりである。  
解明が進む筈も無く、空回りするばかりで、クラスの女子は日々憂鬱な学校生活を送っていた。  
 
美緒も、同じく憂鬱に時を過ごす一人であったが、そんな中でも原因の究明をしなければと、暇な時には騒動を思い起こし、頬を赤くしながらも考察に勤しんでいた。  
彼女は数日前に起こった、プールでの騒動に注目していた。  
下着を着て水泳を行ってしまうという痴態の中、それが続いている騒動と同じものなのか確認の為、男子に意見を求めた時の事。  
彼女を含めた幾人かの女子が、男子の何人かに彼等の行動を咎めるような言葉を投げ掛けた。  
それを契機としたかの様なタイミングで、男女共に来ていた下着、水着を脱ぎ出してしまうという大騒動に発展してしまったのである。  
 
(あのタイミング良過ぎだし…前の時とかも、そんな感じの間の良さで頭の中切り替わってた…やっぱりすぐ近しい誰かが原因かな?)  
 
傍らで鳴ったメール着信の音を聞き、携帯に手を伸ばしながら、考えを進める美緒。  
それまでの騒動も思い起こしながら、あの時の自分達の言葉が発端なのではと考え、その時居た当事者達を思い浮かべていく。  
教師も居たが、彼は体育のみの先生だ、プールの前から続く騒動の場には当事者として存在しない。  
では、クラスメイトの誰かだろうか。  
女子の可能性も有るが、今まで起こってきた騒動は全て女子に不利益を被るものばかり。  
可能性が高そうなのは、男子生徒の誰か…ひょっとしたら彼等全員が結託して、色々と事を起こしているのかもしれない。  
携帯を弄くりながら、ふと、美緒はある疑問を思い浮かべた。  
 
(そう言えば、あんなに…恥ずかしいとこ見られたのに、携帯に撮ったりする奴、居なかったな…)  
 
興奮していて、携帯を使う事を忘れていたのかも知れないが、思い起こしてみると、最初の騒動の時なども、携帯片手にこちらを眺める輩は居たが、そういった行動は見られなかった。  
カシャリというシャッター音も、聞いていない。  
 
(自分の写真を撮られたくなくて、そう言う事を忘れさせた…女子?それともクラス以外に騒ぎを広げたく無かっただけの…やっぱり男子?)  
 
「…ああもうっ!」  
 
結局考えは纏まらず、メールチェックを終え、不貞腐れるように枕へと頭を打ち付けた。  
不機嫌になった彼女の脳裏に、その原因となった数々の騒動、そして自分の痴態が浮かんでいく。  
 
下着を履いていない事に気づかず、堂々とスカートを捲り上げ、あまつさえ男子達の反応が楽しくて何度も秘部を晒してしまった。  
疑問に思う事無く、自ら履いていたパンツを男子に差し出し、下着で泳ぎ、裸を晒し…そんな自分を見つめる、男子達の好奇の視線。  
思い起こせば、彼等は皆股間を膨らませ、クライメイトや自分の体に釘付けとなっている。  
そんな男子達の視線に晒され、恥ずかしさと一緒に、別の感情も―――  
 
「…ぁ」  
 
何時の間にか、パンツの中に手を滑り込ませている事に気づき、美緒は頬を赤くした。  
そんな行為に及んでいる自分、そしてその理由を認識し、軽い自己嫌悪に陥る。  
そんな中でも、下半身で蠢く手は抜き取られる事は無く…ザラリとした陰毛の感触が右手に広がり、快感を感じていた思考の中に、羞恥心が発生した。  
惚ける思考に身を委ねながら、美緒はその対処に考えを巡らす。  
 
(ああ、前処理した所、もう伸びてきちゃってるな…。水泳まだあるし、Vラインぐらいはちゃんと……全部剃らないと、恥ずかしい…処理しないと…)  
 
―――どうやって、処理ってするんだっけ…?  
 
「んっ…!」  
 
頭に思い浮かんだ疑問は、次の瞬間下半身から発せられた快感に打ち消され、美緒は行為へと没頭していった。  
 
 
―――三日前。  
 
『しかし、彼女達は皆処理の仕方を忘れてしまっている。解決法を知っているのは、男子だけ』  
 
 
就寝の為、潜り込んだ自室のベットの上で、高瀬涼子は今日、学校で聞いた片桐美緒の話を思い起こしていた。  
クラス内の誰かが原因ではないか。  
筋道立った話に、涼子も含め話に加わっていた女子は皆同意を示していたが、そこから先はやはり断定も出来ず、皆一様にため息をついていた。  
 
(…でも)  
 
心地良い眠気に身を委ねながら、涼子は更に、そこから一歩踏みこんだ考察を進めていた。  
一番新しいプールでの騒動。美緒の考察の中で出ていた、自分達の言葉を契機とした様な次の騒動の発生。  
自分達の言があの時の騒動に関係すると言うのなら、その言葉を直接投げ掛けた男子生徒が可能性として有力なのではないだろうか。  
ぼんやりと視界に広がる天井を見上げながら、プールの時、傍に居て自分達の非難を受けた男子達を思い浮かべる涼子。  
あの時、居たのは五、六人。  
 
(彼等の誰か…だとしても、それ以上は断定し様が無いわね…)  
 
それが正しければ、考えるべき相手はかなり限定されるが、それ以上の対象の絞込みは無理である。そもそも、前提となる推察も確証が無い。  
自身の考えのあやふやさに、ため息を付いて、涼子は寝返りを打った。  
投げ出していた手が下半身、股間近くに触れ…途端に、生え揃った自分の陰毛の存在を思い起こし、暗闇の中で顔を赤くする。  
それまで抱いていた騒動の原因への考察は瞬く間に霧散し、涼子は自分の黒々と茂る陰毛について意識を向けた。  
 
(…何故、私はこんなに沢山、生やしたままにしていたんだろう)  
 
陰毛を生やしたまま等という、恥ずかしい事態をずっと放置していた自分を、心の中で責める涼子。  
取り敢えず今日はもう遅いしと前置きし、早い内に全部処理しなければと、涼子は思考を巡らす。  
暫く、処理の仕方を思い起こし…浮かばない対処法に、涼子は軽くショックを受けた。  
 
(そう言えば、全部剃った事なんて、今まで無かったわね…)  
 
やり方が分からないのも当然だと納得し、別の手段を模索する。  
自分で分からないのなら、書物を見たり、知っているであろう人物に聞けば良い。  
 
(そんなのが載ってるもの…無いわよね)  
 
思い浮かばない該当書籍から、即座にその方向を切って捨てる。  
続いて頭の中で知り得るだろう人物を検索し…次の瞬間、顔を真っ赤に染めた。  
 
(男子しか、居ない…)  
 
愕然としながら再確認を行うが、涼子の記憶中には、対処法を知っている人物は彼等以外に居ない。  
何が悲しくて男子なんかに処理方法を聞かなければならないのかと、顔を赤める。  
何とか検索結果を否定しようと、めまぐるしく頭を働かせるが、他に対応策を見出す事が出来ず、涼子は途方に暮れた。  
 
同時に、頭の中でその様子のシュミレートが勝手に始まってしまい、その内容の恥ずかしさに涼子は慌てて目を閉じた。  
考えるなと自分に念じ、眠ろうとするが、一度意識した手前、中々そこが頭から離れない。  
 
(寝ないと…男子に、聞く…違う、処理をお願いして…)  
 
男子の前で股間を晒し、処理を行ってもらう自分。  
そんなはしたない姿を思い浮かべてしまい、涼子は枕に顔を埋め、悶絶した。  
ふと、知らない筈の処理の仕方、それを行う図が思い浮かんだ事に一瞬、首を傾げる。  
しかし、その後も続く妄想とその恥ずかしさに、浮かんだ疑問はすぐさま、思考の奥へと沈んでいった。  
 
 
 
―――二日前。  
 
 『聞かれたら、手取り足取り処理してあげる様に』  
 
 
 
川越志乃は、風呂上りの熱い体を扇風機で涼ませながら、今日の学校で語っていた数人の女子、その会話を思い出していた。  
最近起こっている騒動の原因の追求。その情報交換や考察を行っていたのである。  
特にその会話の中には入っていなかった志乃だったが、そういった思考をまったくする事が無かった彼女にとってはその話は新鮮であり、つい聞き耳を立ててしまったのである。  
 
下着姿で風に当たっていて尚、浮かぶ汗を拭き取りながら、志乃は女子と会話をなぞる様に、先日起こったプールでの騒動を思い起こした。  
下着姿で授業を受け、終わる頃、着ていた物が突然おぞましい何かと感じてしまい、クラスメイト全員が着ていた物を脱ぎ捨て、裸になってしまった事態。  
その時、投じてしまった自分のブラ。それが丁度、一人男子の頭に引っ掛かってしまったのだ。  
自分のものであった為、飛んだ軌跡の先をずっと見ていただけだったのだが、今から考えてみると、その引っ掛かった男子生徒の挙動に、ある疑問点が浮かんだのである。  
女子が脱ぎ捨てた後、男子達もまた同じ様な感覚に陥り、水着を脱ぎ捨てていた。  
そんな中、引っ掛かった男子も同じく、水着を脱いでいたのだが、彼はその前に頭のブラを右手で外し、そのまま志乃のブラを持ったまま、水着を脱いでいたのである。  
 
(水着…じゃなくて下着、あんなに気持ち悪く感じたのに…男子も多分似た様な感じだっただろうに、そんなの持ったまま脱ぐもんかな?)  
 
慌てて持ったまま脱いだという事も考えられる。  
脱いだ後握っていたかどうかは、すぐに正気に戻ってしまった為恥ずかしさでそれ所ではなく、思い出す事が出来なかった。  
それに、よくよく考えてみれば一瞬の出来事であり、穿った目で見なければ、それほど不自然でも無い。  
しかし、女子達が言っていた考察、その時当事者だった男子の一人に、彼は当て嵌まる。  
 
(…まさかねぇ)  
 
大人しそうなその男子の顔を浮かべ、とても原因とは思えず苦笑する志乃。  
大体もし彼が原因だとしても、騒動をどうやって起こしているのか、その辺りを解明する方法も分からない。  
 
「結論、判らない!」  
 
言ってみた自分の答えに軽くため息をつきながら、志乃は扇風機の風に晒される自分の体を見遣った。  
胡座をかいている故に、内股、そして腰が無防備に晒されている。  
その腰に履かれているパンツ、その淵から見える黒い陰毛を見つけ、志乃は途端にそれまでの思考を忘れ、顔を真っ赤に染めた。  
 
「うわ…折角忘れてたのに」  
 
ここ数日で、急に気になりだしてしまった、自分の陰毛。  
陰毛がある事は恥ずかしいというのに、恥知らずにも自分はそこの毛を伸ばしてしまっていたのだ。  
別の事に打ち込んでいれば、その事を忘れる事が出来たが、今日は特に意識してしまった時の恥ずかしさが顕著であり、茹蛸の様な自分の顔を自覚する志乃。  
パンツを脱ぎ去り、体育座りをする様に足を抱え、股間を覗き込む。  
ここ数日、何も手を加えていなかった為、気持ち伸びたであろう自分の毛が見え、心臓が高鳴るのを彼女は感じた。  
 
なんでこんなに、この場所の毛を伸ばしてしまったのか。  
 
子供の頃、トイレで生えているのを発見して喜んだ自分を殴りに行きたいと思いながら、志乃は昨日辺りから頭の中で燻り続ける対処法を反芻した。  
 
(全部剃る方法…誰か、男子に剃ってもらわないと…)  
 
処理の方法は男子しか知らない。当然だ。  
しかし、頼んでしまえば、自分が陰毛を処理していない事が衆目に…それでなくとも、男子達に露にされてしまうだろう。  
そんな屈辱を甘んじる事が出来るかと自問自答するが、股間を撫でる手に触る感触に、その思いもすぐ萎えてしまい、変わりに耐え難い羞恥心が鎌首を擡げてくる。  
 
(知られたくない…けど、こんな恥ずかしい状態にずっとしてる訳、いかない…)  
 
羞恥心で固まる頭をなんとか動かしながら、志乃は悶々と、溢れる恥ずかしさを持て余していた。  
 
 
 
―――今日。  
 
 
男子達の机に、魔法の内容を印刷した紙を捻じ込んだのが、四日前の朝。  
その後、段階的に恥ずかしさ以外の要素を忘れてもらっていった結果、日々大きくなる恥ずかしさに耐えられず、一人の女子が、男子の一人に下の毛の処理を頼み込んだのが昨日。  
その様子を見聞きし、雪崩をうったかの様にその日次々と、クラスの女子が男子に陰毛の処理を頼み込み。  
ほぼと言うか、女子全員が処理の必要性を訴えた為、どうせなら皆合同でしよう、準備もあるしと、次の日に処理を持ち越し。  
最初は請われた男子と女子のペアで処理を行う方向だったのだが、剃られたい男子、剃りたい女子という希望の剥離が生じてしまった為、黒板全面を利用した大アミダクジが行われ、公平に男女の組み分けが行われる事となり。  
部活等の用事の処理、日時、場所の指定等を得て、今日、放課後の空き教室にて、クラスメイト全員での大毛剃大会が開始される運びとなった。  
 
人の寄らない、校舎の端の空き教室に集合したクラスメイト達。  
男女共、皆気恥ずかしいのか、集まって暫くは他愛の無い会話に終始していた。  
しかしやがてボソボソと「やろっか…?」等と、行動を促す声が伝播して行き、おずおずと皆、行為もとい作業に勤しみだした。  
 
最初は、服飾を脱ぐという行為に抵抗を示していたのか、男子に促されても中々行動を起こさなかった女子達。  
しかし、一人がスカートに手を掛けると後は芋づる式で、数分後には、それぞれの男子達の前に一人づつ、教室中にスカート、ぱんつを脱いだ下半身裸の少女達が立ち竦んでいた。  
皆恥ずかしいのか、一様に手を股間の前に翳し、秘部を隠している。  
僕の目の前の女の子も、同じ様に黒々とした陰毛を、両の手で僕から見えない様に覆っている。  
下半身を人前に晒している事への恥ずかしさもあるのだろうが、彼女達は今、意図的にそれを忘れようと必死である。  
陰毛が生えている事への恥ずかしさ、そしてその処理を行うという思いの方が、優先順位が高いのだろう。敢えて目を瞑っているのだ。  
 
そんな彼女達の思考を予想しながら、僕は改めて、目の前の女子を見遣った。  
川越志乃さん。ショートカットの印象的な、陸上部所属の子だ。  
その為体も鍛えている様で、日に焼け、引き締まった手足が今も目の前で震えている。  
強気な性格で、男相手でも一歩も引かない。勝気な女の子である。  
しかし今、彼女の様子は、自信に満ちた、男勝りな普段の状態とはまったく違う。  
不安げに辺りを見渡し、赤くなって縮こまる川越さんに、僕は思わず口元を歪め、落ち着かない様子の彼女に言葉を発した。  
 
「恥ずかしい?」  
「見られて、恥ずかしくない訳ないでしょ…」  
「けど、毛、剃らないと」  
「分かってるわよ!」  
 
僕の言葉に気分を害したのか、どっかりと自分の椅子の上に腰を下ろす川越さん。  
他の女子も、男子に促されて、あるいは恥ずかしさを誤魔化す様に着席していく。  
 
「…あたしの使ってる道具とかだけど、使う?」  
「ん、取り敢えずそこに置いといて」  
 
先程から傍らに持っていたポーチを、脇の机の上に置く川越さん。  
少し気になって中身を見てみると、剃刀、毛抜き、クリームかジェルだかが入った缶等、所謂女の子の嗜みの為の物品が幾つも入っている。  
後、何故か線香があった。女性の毛の処理に詳しくない僕には、使い方が分かる筈も無い。  
ふと周りを見渡すと、教室内の女子達の殆どが、普段自分達が使う処理用の道具を持参していた。  
一応、男子達は髭剃りの為の道具等を持ってきてはいたが、専用のがあるならと、彼女等の道具を借りて処理を行う者も多い。  
 
使う道具が揃っている、分かっているのに、どうやって毛を剃れば良いのかが分からない。  
 
そんな女子達の認識の可笑しさに笑みを浮かべながら、僕は作業をし易い様にと、川越さんに座る体制を変えて貰う様お願いした。  
その内容の恥ずかしさに、最初は怒りを露にする彼女だったが、方法を知っている男子の指示には逆らい難いのだろう。加えて早くこの恥ずかしい状態を脱したいという気持ちもある。  
幾分か躊躇していた川越さんだったが、暫くして観念した様に、椅子に座っていた状態から両足を持ち上げ、それを両手で抱え込んだ。  
体育座りの様な格好の川越さんに、僕は体や足をもっと後ろ、背もたれ側に預ける様に指示する。  
渋々従う川越さんだったが、その顔はずっと真っ赤に染まっている。  
結果として、僕の目の前には腰が突き出され、両足によって隠されず、曝け出された股間、そしてその中心に存在する黒々とした茂みが露となっていた。  
僕自身は床に座っている為、文字通り目の前にその様子が広がり、ゴクリと、唾を飲み込む。  
本当は、そこから更に体制を崩して腰、背中を椅子の座る部分に付け、まんぐり返しの様にしてもらいたかったのだが、スペース的に無理そうであった為、自粛する。  
周りでは机に座らせたり、床に寝転ばしている男子も居る様だが、皆等しく女子達の秘部に目を奪われていた。  
 
少しして、皆作業に取り掛かり出したのか、周りから鋏を扱う音や、スプレーを噴き掛ける様な音が幾つも上がってきた。  
僕も早速、伸びた毛を鋏で鋤き、剃刀で処理し易い様に毛を整えていく。  
川越さんはと言えば、恥ずかしさをぐっと堪えるかの様に、強く両足を抱き寄せている。  
しかし、どんなに恥ずかしくても、隠すべき股間はそのままだ。  
邪魔もされず、僕はチョキチョキと、鋏を動かしていく。  
 
「恥ずかしい?」  
「…見るな」  
「けど、見ないと危ないし」  
「じゃあ、笑いながらするの止め…っ!?」  
 
ある程度、毛が切り取られ、短くなったのを見越して、僕は川越さんの恥丘に息を噴き掛けた。  
途端、その感触に驚いたのか、小さく悲鳴を発して、言葉を引っ込めてしまった川越さん。  
切られた毛は床や椅子の淵、そして川越さんのお腹へと飛んでしまい、後には不恰好に切り揃えられた陰毛、そして奥に覗く川越さんの性器が、夕暮れの日の光に照らされていた。  
耐える様に体を震わせ、俯く川越さん。  
そんな彼女の股間は、短くなった陰毛が既にそこを隠すという役目を果たしておらず、綺麗な色の割れ目を覗かせている。  
じっと見つめていると、その間に耐えられなかったのか、小さな声で川越さんが、懇願する様に「早く…」と呟いた。  
 
「…ひぁっ!?」  
「んっ…ちょっと…?」  
 
頼まれては仕方ないと、作業に取り掛かろうとした僕だったが、突然聞こえた女子の嬌声に驚き、顔を上げた。  
声のした方を見ると、普通と言ってしまっても良いかは判らないが、周りと違わず、女子の毛を剃る男子の姿。  
しかしよくよく目を凝らせば、毛を剃りながらも、それ以外の動きを女子の股間で行う男子の手。  
 
(…それは、処理とは関係無いだろうに)  
 
どうやら、男子が彼女達の秘部を弄っているらしい。  
目の前に女の子の大事な場所が、アップで鎮座しているのである。興奮と興味から、その部位を気にしてしまうのも分からなくは無い。  
加えて言えば、今までの騒動で、男子は彼女等の痴態等を散々見てきたが、逆に言えば見てただけなのである。  
それが、直に彼女達の体に触れ、更に陰毛を剃る等と言う、支配欲を刺激する様な事を行えるのだ。興奮度合いは段違いだろう。  
対する女子はと言うと、最初は抗議の声を挙げる仕草を見せていたが、少しして、男子の言い訳に、軒並み口を閉口させていた。  
 
「場所が場所だからどうしても触ってしまう」「これも処理の方法の一つ」  
 
普通では絶対に了解されないであろう言い訳。しかし、女子は仕方なさそうにそれを受け入れ、身を委ねている。  
それを見て、他の男子も次々と、目の前の女子の嬌声を聞こうと、作業を進めていった。  
シェービングジェル等を塗り込む時に、ついでを装って触れたり刺激を与えていく男子達。  
中には、露骨に彼女等の割れ目を弄くる輩も居るらしく、所々で悲鳴じみた声も上がっている。  
対する女子はその刺激に、声を出す事を恥じているのか、必死に口を噤み、耐えるかの様に体を強張らせている。  
しかし、時が経つと同時に辺りから上がる声は段々と増えていき、そんな周りに感化されたのか、次第に女子は皆、固く結んだ口を綻ばせていった。  
尚、一部頭のまわる男子は、あくまで偶然を装った触れ方を貫いていた。  
女子達が何かある度、普段の彼女達に戻る事を考慮しているのだろう。正気に戻った後が怖いのだ。  
 
「あ…ぁ、んっ…」  
「ふぁっ」  
 
時々漏れ聞こえる女子達の嬌声を聞きながら、僕は剃刀を川越さんの恥丘にあてた。  
剃る部分毎に、川越さんの持っていたジェルを塗り込み、剃刀で肌の表面を撫でていく。  
ゾリゾリと、毛を剃る音が頭の中で再生され、彼女の陰毛が体から剥ぎ取られる。  
暫く作業を進めて、痛くは無いだろうかと彼女の表情を窺ってみると、顔を赤くしながらも、何処か安心した様な穏やかな表情を浮かべながら、僕の作業を見つめていた。  
 
「痛く無い?」  
「…大丈夫…凄い、気持ち良くて。どんどん無くなってくし」  
「ああ…恥ずかしかったものが無くなって、嬉しいと」  
「うん…」  
 
整えられた陰毛、大人の女性を連想させる様な秘部では無く、子供の様な状態の、まっさらな股間になる事が嬉しいと感じている。  
彼女の感慨に、ニヤニヤと顔を歪めながら作業を進めていくが、恥ずかしさから開放されていく感覚が心地良いのか、川越さんは僕の笑みに気づく様子も無い。  
そんなまどろむかの様な川越さんの様子を見て、僕は片手で持っていたジェルの容器を置き、その手を彼女の秘部にあて…ゆっくりと滑らせた。  
ピクリと、反応するように体を動かしたが、特に何かをいう事も無く、川越さんはそのままぼうっと僕の処理の様子を見つめている。  
少しづつ、毛を剃りながらも、片手で毛や剃刀の位置を整える様に見せかけ、掌で性器を圧迫する僕。  
 
「ん…ぁ、くぅ…あんっ」  
 
剃るペースを少々落としながら、僕は暫く、漏れ聞こえる川越さんの甘い声に聞き入っていた。  
 
全ての毛を剃り終え、剃った毛をジェルごと、タオルで拭き取っていく。  
 
「はぁ…ああっ」  
 
ため息をするかの様に甘い声を出す川越さんの頬には、明らかに恥ずかしさとは別の感情による赤みがさしていた。  
漏れ出る声をもはや抑えようとはせず、姿勢も体をだらしなく弛緩させ、見せ付けるかの様なM字開脚となっている。  
ピクピクと反応する腰周りを拭き取り終えると、ツルツルになった恥丘が露になり、中央の割れ目からは、僅かに透明な液体が滲み出ていた。  
子供の様な状態でありながら、それでいて性的快感を感じている川越さんの秘部。  
そのギャップに、自分の股間が熱くなるのを自覚する。  
 
「終わったよ」  
「はぁ…ん…」  
 
同意とも嬌声とも取れる川越さんの声を聞きながら、僕は周りのクラスメイト達の様子に視線を向けた。  
見れば川越さん以外も、同じ様に剃り終わった女子は男子に股間を拭かれており、はしたない声を挙げている。  
皆、作業中男子にじっくり割れ目を弄られたのだろう。女子の表情には皆、程度の違いはあれ、性的興奮の色が見て取れた。  
早く終わった子等は、既に着込んだスカートをたくし上げながら、剃り残しが無いか、まだ生えていないか確認している。  
チラチラと見える、真っ白な股間が艶かしい。  
 
「…ありがと」  
 
その声に振り返ると、スカートを着付けつつ、モジモジとした様子の川越さんが立っていた。  
恥ずかしがりながらも感謝の言葉を述べる彼女を見遣りながら、僕はここで認識を解いたらどんな表情をするかなと、下卑た想像を行う。  
そんな僕の様子に、川越さんは僕が先程までの自身の恥ずかしい様子を思い出していると思ったのだろう。  
視線をさ迷わせながら、「何よ」と呟いた。  
その態度に苦笑を浮かべながら、落ちつかなげな彼女に対し、僕は「どういたしまして」と言葉を述べ―――認識を解除する。  
 
 
 
頬を叩かれた事に気づくのに数瞬を要しながら、僕は怒りの形相で佇む川越さんを見つめていた。  
 

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