一限目は自習である。  
自習といえば各々勉学に励むべきであるが、そこは快活な少年少女の常と言うか、一部真面目な生徒を除き、皆友達との話しに花を咲かせている。  
その様子を頬杖をついて眺めながら、僕は笑みを浮かべた。  
何時も通りのクラスの風景。だが一つだけ何時もと違う事がある。  
 
このクラスの女子達は皆、今現在スカートの下に何も履いていないのだ。多分。  
 
突然得た魔法の力。良く分からないが、ある認識を誤魔化すとか何とか。  
この力を実験する為、昨日の内にクラスの女子に対して僕はこの力を使ったのである。ぱんつの事を忘れて学校に来る様に、と。  
だが、何時も通り学校にやって来てみれば、目の前には何時も通りのクラスの女子達。正直本当にぱんつを履いていないのかどうか分からない。  
スカートの下を直接確認する訳にもいかない。それではただの変態である。そこで―――  
 
認識を解除する。  
 
少し間が空き、教室内に広がっていた談笑が不自然に止んだ。  
見渡してみると、ガタリと座り込む子、キョロキョロと挙動不審になる子等、女子の幾人かに少なからず不自然な行動…。  
身振り手振り事交えて話していた子も、急に話のトーンを落としてしまった。降ろした手は、スカートの裾を握り締めている。  
 
(皆、ホントに履いて無いんだ…向こうの子とか顔赤くしちゃって)  
 
勉強に励んでいた子は皆手を止め、真っ赤な顔を俯かせて縮こまっている。  
どうやら、ちゃんと魔法は効いていたらしい。  
ニヤニヤする顔を隠しながらクラスの女子達の変わり様を堪能していると、不意に一人の男子生徒が声を挙げた。  
確か、クラス一のお調子者な奴である…佐野?  
 
「くっ…この若さで痴呆症になってしまうとは…ナンテコッタ!」  
「いや、いきなりどうしたよお前」  
 
談笑収まっていた教室に突然響いたその声に、話し相手の男子はもとよりクラスの皆が彼を注視した。  
 
「いやーなんか知らんけど、俺パンツ履き忘れたらしくて、ズボンだけなんだわ今あはははは…は?」  
 
静寂。  
話し相手からのツッコミは元より、廻りの男子の野次や苦笑すら沸き起こらない。  
期待していた反応とは違う周りの様子に、佐野は怪訝な表情を浮かべ、周囲を見渡す。  
自分も視線を向けてみると、男子、女子共に例外無く、驚いた表情で彼を注視していた。  
 
(…いや、男子?)  
 
自分以外に同じ状況が起こったと告白されたのだ。女子はその顔をする事は納得できる。  
だが、男子の顔は・・・?  
 
「…あれ、まさか皆さんぱんつ履いていらっしゃいませんとかだったり?」  
 
佐野の言葉に、男女等しく皆、一斉に視線を逸らした。答えを待つまでも無かった。  
…どうやら、女子だけでなくクラスメイト全員に、自分は魔法を掛けてしまっていたらしい。  
 
「いや、別に何時も通りだったよな?…あーでも着替えた時何か腰廻りが頼り無さげだったな」  
「あ、俺も。ベルト緩い感じがずっと気になってた。ていうか今もなんだが」  
「来る前トイレでチャックに毛が」「生きろ」  
 
男子連中は始め戸惑っていたが、すぐに適応してしまった。股間を覆う布が一枚無くなっただけであるし、ぶっちゃけあまり生活に支障が無い。  
赤信号みんなで渡れば…な効果もあってか、たいして問題視せずに話しのタネとして活用している有様だ。  
一方で、話しながらも近くの女子にチラチラと視線を向けている。  
正確には、彼女等の下半身にである。  
普段から身近に居る女子達。好いている子や気になる子等が、ほぼ間違い無くノーパンなのである。気にならない方がおかしいだろう。  
 
そんな視線を受けている女子の方は、一見殆ど何時も通りに振舞っていた。  
だが観察してみると、皆やはり何処か仕草がぎこちなく、しきりにスカートを気にしている子も多い。  
女子にとってはパンツが無くなれば、男と違いスカートの下は無防備である。気にしない方がおかしい。  
今も幾人かで纏まりながら、対処法を話し合っていた。  
 
「体育今日無いし…変わりに履けるもの無い、よね」  
「どうしよ…男子こっち見てる」  
「無視無視、気にしないで何時も通り!」  
 
ひそひそと話す女子の輪から漏れ聞こえる会話を聞いて、そう言えばと首をかしげる。  
この学校だと、スカート下にスパッツやハーフパンツを履いている子は結構多かった記憶があるが、今日朝無防備だった時間帯を省みてみると、スカートからそういったガード用の服の裾が覗くのを見ていない。  
話の内容から察するに、今日彼女等はそういった防備用の服飾も履いてきていなかったらしい。  
どうやら、スカートの下に着用するもの全てを『そういうもの』だと認識していた…?  
 
「佐野ちょっと」  
「お、どうした?」  
 
傍らには、先程まで幾人かで寄り集まって、女子に直接「はいてないの?」と聞く聞かないと話し合っていた佐野。セクハラである。  
その行動力というか妄想力に苦笑しながら、彼を呼び寄せ、自分の傍目どうでも良い話…スパッツとか履いているかな論を話してみる。  
それを聞いてノーパンスパッツも良いなと呟く佐野に呆れながら、僕は「ところで、聞く…行くのか?」と尋ねる。  
 
「当然だ」  
 
間違った方向に眩しい彼の笑顔を見遣る。  
苦笑しながら、僕は特に意味も無く、なんとなく面白い展開を期待しながら、密かに女子にだけ、再度同じ魔法を施した。  
 
「なあ片桐」  
「ん?何?」  
 
心なしかぎこちなさが消え、先程まで話していた話題も自然消滅してしまった様だ。  
そんな女子達を見遣りながら、僕は聞こえてきた遣り取りへと視線を向けた。  
 
片桐さん…片桐美緒は、クラスの女子の中心人物的存在だ。  
美人なうえ人となりも良く、開けっ広げな性格もあってか男子との仲も良い。  
そんな彼女なら、割かし冗談めかして尋ねる事が出来ると考えたのだろうか。  
佐野は意を決したように、彼女に話し掛けた。  
 
「その、なんつーかお前等…はいてないのか?」  
「履いて無いって…何が?」  
「いや、何がって」  
 
恥ずかしがるでも無く、怒りもしない片桐さんの様子に怪訝な顔を浮かべる佐野。  
先程まで、はんつないてない事件をクラス中がそれぞれ話していたのだ。何の事を言っているのか分からない筈が無い。  
だが片桐さんは本当に分からないらしく…僕が力を使ったので当然だが、続きを促している。  
 
「いや、だから…スカートの下」  
「…何、セクハラ?」  
 
心なしか、佐野を見る目が細くなる片桐さん。  
彼女の周りの女子達も、そんな状況を囃し立てる。佐野は完全に悪者である。  
 
「いやいやいやだからそうじゃなくてだな!つーかお前等、何時もスカートの下体操着とか着て防備ばっちりだろ!」  
「いや…うんそうだけど?」  
「だから今大丈夫なのですか?と」  
「…ホントに何言ってるの、佐野?」  
 
両者の思考を何となく察し、一人心の中で笑い転げる僕。  
ぱんつはいてない状態が前提の佐野に対して、片桐さんは『何時もと変わらない』状態だと認識しているのである。話が噛み合う筈も無い。  
暫く考えて、辺り障りの無さそうな会話から始めようと思ったのか、佐野は平静を装いながら再び話し掛けた。  
 
「…ぶっちゃけ、皆履いてる訳か?そういうの」  
「下履き?割と皆履いてるけど」  
 
そう言いながら、クラスの女友達に同意を求める片桐さん。  
その声に「私も〜」「ていうか殆ど皆履いてるねー」と次々声が挙がっていく。  
僕も含め、なんとなくクラスの男子達に落胆の色が見える。幸有れ。  
 
「ま、そんな訳だから、あんたとかに中見られても全然問題無い訳よ」  
「じゃー捲って見せてみてくれよ。ついでに皆」  
 
何気無くを装って言ったであろう彼の言葉に、クラス中の男子達の動きが止まった。  
片桐さんの反応からして、彼女はぱんつをはいている。もしくは何かしら着込んでいる様子である。  
 
しかし、もし自分達と同じ様に、なにもはいてない状態だったら…  
 
皆、どんな光景が見られるかという妄想が、頭を駆け巡っているのであろう。  
僕も例外無くその妄想を膨らませ、彼女の正面が見える位置を確保しながら、他の男子と同じ様に、片桐さんを注視する事となった。  
その片桐さんは、彼の言葉をまともに受け取らなかった様で、呆れたように「何言ってんだか」と笑っている。  
 
「はい、この通り。残念でしたー」  
 
そう宣言し、何気なく、片桐さんはスカートの裾を摘み上げた。  
 
「…いや、ちょっと何よ?」  
 
悔しがる男子達を想像していたのか、予想と違う男子の反応に戸惑う片桐さん。  
そんな彼女を後目に、今、クラスの男子達の大半は彼女に釘付けとなっていた。  
 
履いていない。  
ぱんつはいてない。  
 
摘み上げられたスカートの下には、片桐さんの白い太股。そして僅かに黒い陰毛が覗いている。  
スカートが僅かしか持ち上がっておらず、全容を見る事は適わなかったが、健全な男子生徒にはそれだけで十分だった。  
彼女の正面、そしてそれが見える範囲の男子達は、僕と同じく食い入る様にその光景を見つめている。  
その様子に気圧されたのか、片桐さんはしばらく怪訝な表情を浮かべていたが、その様子にふと、遊び心が芽生えたのか、控えめだったスカートをより高く摘み上げた。  
 
ガタガタと、男子達の大移動が行われる。  
 
「ちょっと、こんなので…あんた達そんなに欲求不満なの?」  
「うはっ」  
「すげー」  
 
臍の下。片桐さんの下腹部から、恥丘。そして生え揃った陰毛が露になり、男子達の好奇の目に晒されている。  
すらりと伸びた太股は、真っ白ながら運動部に所属している故か、健康的な肉感を以って皆の視線を集め、横から見ている男子は、彼女のぷりぷりしたお尻のラインに釘付けとなっている。  
 
「注〜目〜!」  
「そこの飢えてる男子達ー」  
 
皆が片桐さんに注目する中、その様子を笑っていた周りの女子達から声が挙がった。  
ノリの良い子達なのだろう。顔を挙げると、何人かの女子が笑っており…数瞬後、揃ってスカートを捲り上げてた。  
男子達から歓声が上がる。  
控えめにたくし上げてみたり、一気に捲り上げる等、女の子の性格によって様々だったが、それは特に問題とはならなかった。  
女子達は、見られても構わないスパッツや体操服を見せているつもりなのだ。  
しかし男子達の目には、そんなものは映らない。  
映るのは、普段絶対に晒される事の無い、クラスメイトの少女達の恥部。そしてそれに気づかない彼女達の痴態である。  
 
それからの教室は、ある種異様な雰囲気だった。  
男子達の反応の可笑しさに気を良くしたのか、はたまた感化されたのか、周りの女子達も次々スカートを捲り上げ、男子達の性欲を高める事となったのだ。  
極少数の女子は、元々スカートの下にぱんつしか履かない故か、最後まで晒す事は無かったが、彼女等に思いを寄せている男子以外には些細な問題でしか無かった。  
最終的にクラスのほぼ全ての女子が、男子に対しその下半身を晒す事となったのである。  
因みに、ぱんつを履いて無い所為もあってか男子は股間に普段よりも大きなテントを張る事となり、どうやって隠すか、擦れる股間の処理等に四苦八苦する事となる。  
何人かの女子はそれに気づいて顔を赤くしていたり、軽蔑の目を向けていたが、多くは見て見ぬ振りを貫いていた。  
 
最初に捲って見せていた片桐さん等は余程男子の反応が面白かったのか、馬鹿だなぁと言いながらもスカートをたくし上げ、予想外な男子達の反応を楽しんでいた。  
今も机に腰掛け、足を開く様にしてスカートを捲っている。正面の佐野はその光景…陰毛の奥の秘部を見る事が出来たのか、彼女の前でよろめき、それを笑われている。  
隅で勉強に励んでいた女子も、隣の男子に聞かれて渋々太股を晒し、食い入るように見つめられている。彼女も満更では無い様で、地味に反応を楽しんでいるらしい。  
僕自身も目の前の席の女子にそれとなくお願いし、気恥ずかしそうに振り向く彼女の真っ白で可愛いお尻を間近で堪能する事が出来た。  
 
ふと、クラスを見渡すと、クラス中が女子のスカートの中の鑑賞会になっている事に気づいた。  
 
(下にちゃんと履いてても、この光景ってエロ過ぎるよなあ)  
 
苦笑しつつも、そろそろこの状態も仕舞いにするかと、僕は意識を集中する。  
 
認識を解除する。  
 
 
 
そして、教室に女子の悲鳴が響き渡った。  
 

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