ミランダさんは、百年に一度の魔力を持つ天才魔法使い、二十二歳。  
ハニーブロンドと水色の目の現代的な美人さん。オールドスタイルの黒のとんがり  
帽子(と白のパンティとDカップおっぱい)がチャームポイント。  
僕はコンポラッテ魔法学園を卒業して、ミランダさんのところに派遣中の研修生、  
十七歳。ミランダさんの館に住み込みさせてもらって、彼女の研究の手伝いを  
しながら、自分の魔法にも磨きをかけてる最中。いつか独立するときのためにね。  
 
でも、ミランダさんの館は二人で住むには広大で、前回も言ったけど掃除が大変。  
ミランダさんは綺麗好きだから余計にね。それで時々、掃除するだけで一日が  
終わっちゃって、自分の研究をする時間が取れないこともあったり。  
これからの季節、庭の草むしりなんかもあって、ますます大変になりそうで、僕は  
ちょっと憂鬱。魔法薬学の材料にする草木を植えてあるスペースなんか、わさわさと  
雑草が生えてきてて、もうジャングルになりそうなんだよ。  
 
本当はお掃除の専門の人を雇って、通いでも住み込みでもしてもらえれば、一番  
いいんだけど、それもちょっと難しい事情があって無理。  
実は、館にはあっちこっちにミランダさんの魔法をかけてあるんだ。泥棒よけだって。  
呪文を唱えないと開かない扉や、通るたびに行き着く場所が違う廊下とかがあって、  
魔力のある人間じゃないと、迷ったら一生出られなくなる。  
いや、魔力のある人間だって例外じゃない。  
お手洗いに入ろうと扉を開けたら外に出ちゃって戻れなくなり、漏れそうだったから  
そのまま草むらに入って用を足したなんてことがあったり。あとは、寝ようと思って  
寝室を目指すも辿り着けなくて、仕方がないから食堂の椅子を並べてベッドにして、  
翌朝ミランダさんに起こされることがあったり。  
……僕のことなんだけどね。  
 
そんな、もう春も終わりを迎えるような時期、ミランダさんが夕食の席で僕に言った。  
「やっぱり、掃除の件はなんとかしようと思うの」  
「えっ? ほんとに? うわぁ、やったぁーい!」  
僕は食事中だってことを忘れ、飛び上がるようにして万歳する。その喜びように、  
ミランダさんが手を頬に当てて苦笑した。なんだか少し呆れられてるみたい。  
でもすごく嬉しかったんだもん。今日の煙突掃除には苦労したから。  
   
「なんとかって、お掃除の人を雇うんですか?」  
「いいえ、ちょっと思いついたことがあって」  
あ、きっと、何か新しい魔法だ。さすがミランダさん。  
「何か秘策でもあるんですね?」  
「内緒。楽しみにしてて。……それより、君、頭の天辺に蜘蛛の巣が引っ掛かって  
いるわよ。あとでシャワー浴びた方がいいかもね……」  
 
なんてことがあってから、一ヶ月。  
ミランダさんは、その『思いついたこと』を研究するのにずっと没頭している。  
そりゃもう、すごい勢いと集中力。書斎で昔の論文あさってたかと思うと、実験室で  
わけの分かんない調合するのに三日三晩。街へ研究の材料を買いに行ってても、  
すぐにピューっと帰ってきて実験室にこもってる。  
僕と一緒にいるような時も、しょっちゅう眉間にしわを寄せて考え事をしてる。  
僕は自分の研究について相談したり、たまに僕のやらかした馬鹿な事件を話して、  
ミランダさんに緊張を解いて笑ってもらうことだって、申し訳なくて出来ないくらい。  
そんな忙しくても、ミランダさんは掃除には手を抜かない。でもやっぱり、他のことに  
気を取られながら掃除してるもんだから、ミランダさんには珍しく壺を割ったりしてる。  
僕がやりますよ、なんて言っても聞かない。  
ついにはミランダさん、ご飯を食べながらウトウトし始める始末。  
 
「ミランダさん、今日はちゃんとベッドで寝て下さいよ」  
夕食の席でスプーンを持ったまま居眠りをするミランダさんに、僕は言う。  
「うーん。でも、もうちょっとなのよ」  
「でも、じゃないです、ミランダさん。しっかり睡眠取らなくちゃダメですよ」  
「もう少しで完成するから、ね。実験が終わったら、きちんと眠るわ」  
「今だって半分寝てるようなものじゃないですか。実験はちゃんと寝て、すっきりした  
頭でやった方が良い結果を得られることが多いんですよ」  
「分かってるわ。でもね、上手くいけば量産化も……」  
僕が何を言っても、でもでもダメダメもう少しだからって言うミランダさん。  
   
「ミランダさ〜ん……」  
「ん、もう。分かってるってば。君って、お母さんみたいに口うるさいのねぇ〜」  
お、お、お母さんみたいにって、ヒドイです……。どうせなら、お兄ちゃんみたいに  
って言って下さいよ、ミランダさん。あ、いやいや、僕は決してそっち方面の素質は  
ないんですけどね。  
 
「ん〜、ふにゅ〜……」  
って、ミランダさん、またコックリコックリと船を漕いでるし。  
こうなりゃ強行手段しかないかな。  
「ミランダさ〜ん、今日こそはベッドで寝ましょうね〜」  
僕は立ち上がってミランダさんに近づく。ミランダさんが手に持っているスプーンを  
取り上げてテーブルに置き、椅子をずらしてミランダさんと机との距離を開ける。  
力なくだらりと投げ出された膝の下に右手を差し入れ、倒れそうなくらい傾いた体に  
左手を回して、よっこらしょって持ち上げる。  
いわゆるお姫様抱っこってやつ。  
 
ミランダさんは抵抗もせずに、僕に体重を預けた。よっぽど眠たいらしい。  
くくっ、腕の中のミランダさんのやわらかい肢体は、感じないふり。清楚な紺色の  
スカートがめくれ、すべすべの太ももが半分あらわになっているのも、見ないふり。  
もちろんDカップおっぱいの周囲にできた白いブラウスのしわしわも。  
なぜなら、僕は今、最高に格好いいんだから。  
こんな少年漫画の主人公のようなシチュエーションをしてる男らしい僕!なんて  
自分で自分に酔いながら、ミランダさんを寝室に運ぶ。  
まあ、足取りのよろよろしてるのが、いろいろ台無しにしてるけど。でも仕方ないや。  
なんと言っても僕はフラスコより重い物を持ったことがないんだから、なんて。  
 
「さ、着きましたよ、ミランダさん」  
僕はつぶやいて、どうにか到着したミランダさんの寝室(迷子にならずに辿り着けて  
良かった)のドアを開ける。  
寝室の真ん中に鎮座しているのは、白いレースで飾り付けられた天蓋付きの  
豪華なベッド。部屋にあちこちに、女の子の夢を体現するようなぬいぐるみや  
可愛い小物がてんこ盛り。  
ミランダさんって乙女だよね、ふふ。  
   
「うう〜ん。でも、見ててなくっちゃダメなんんの〜……」  
僕がふらつきながらミランダさんをベッドに寝かせようとすると、彼女は寝言のような  
ふにゃふにゃした声で言った。  
「僕が見てますから、ね」  
目を閉じたままのミランダさんの下半身をベッドの下の方に動かしながら、僕は  
言い含めるようにして彼女をなだめる。  
「ほんとうにぃ〜?」  
「ええ、何かあったら、すぐに起こしに来ますから」  
「ふむぅ〜」  
ミランダさんはそれを聞いて、安心したよう深い眠りに落ちていく。  
 
ああっ、ミランダさんの寝顔、無防備で無邪気で、かっわいいなぁ。  
ちょっと寝乱れてるみたいな、頬にかかる一筋のハニーブロンドが色っぽくて  
たまりません。  
ミランダさんを襲っちゃいたいよ! ぐっすり眠るミランダさんにあんないたずら、  
こんないたずら、脱がせて触って舐めて擦りつけて入れて。んで、こんなふっか  
ふっかベッドでパコパコしたら、ミランダさんの体はよく弾むだろうなあ、なんて  
妄想大爆発っ!  
 
……いやいや、やめよう。やっぱりミランダさん、これだけ疲れているんだもの。  
うん、ここは男らしく我慢するか。  
「……じっけ〜ん、んんっ」  
って、赤の他人の僕に寝顔を見られているのに、実験の方が大事ですか。  
くくぅ〜、はいはい、必ず起こしますよ、ミランダさん。だから、ぐっすりお休みなさい。  
 
僕はミランダさんにシーツを掛けて、実験室へ向かう。  
ミランダさんの実験室に入るのは久しぶりだ。最近はずっと、内緒だからって僕を  
入れてくれなかったからね。実験はもう大詰めまで来てるってって、ミランダさんは  
言ってたけど、どんな内容なんだろう。見当もつかないや。  
   
なんて、実験室の中に入って真っ先に目に入ったのが、乳白色の液体で満たされた  
大きなガラスの筒。僕の身長より高くて、円周は両手を伸ばしても抱えきれないくらい。  
筒の上下はゴム状の黒い物質で塞がれている。台座の方からは何本かチューブが  
延びていて、また別の小さめの装置に繋がれている。  
ふへ〜、こりゃまた大掛かりだなあ。さすが、ミランダさん。天才魔法使いはやる  
ことが違う。  
僕は鼻がぶつかるほどにガラス筒に接近し、目を凝らした。不透明だから中身は  
全然見えなくて、分かったのは液体が対流してることだけ。  
 
と、目の高さより少し上に、ミランダさんの字で何か書かれた半紙が貼り付けて  
あるのに、僕は気づいた。せっかくなので、それを声に出して読み上げる。  
「命名……ミドリ」  
ミドリ? ……ミドリ、ねえ。何なんだろう。  
 
僕は辺りをぐるっと見渡し、実験台の上に置いてある幾つかのレポートを発見する。  
実験内容が書いてあるかもって、それを手に取り……、ぐはっ、参りました。かなり  
高度な魔法言語で書かれてる。僕には読めなさそうもないと思うけど、とりあえず  
表題だけでも挑戦してみる。  
「……ホ、…モ…? ホモ?」  
ホモ……って、……………………いやいやいやいや。  
そんなはずないだろ、僕。……よく読めよ。  
僕は手の甲で両目をこすり、ついでに耳の穴もかっぽじって、もう一度レポートを  
見直した。  
 
「……ホ、…モ、ゥ……ムかな、……ン…クル…ス。……ホ、ム、ン、クルス? って、  
……ぇえええ!!」  
ホムンクルスー――――ゥ!!!!!  
僕は思わず近所迷惑になりそうなほどの大きな叫び声を上げた。(まあ、近所には  
家なんてないんだけどね)。  
ホムンクルスと言えば、人が魔法の力を借りて造る人工生命体。特に人間の形を  
した人造の生き物のことだ。  
それは、未だかつて誰も成功したことのない魔法で、かのコンポラッテさえ生涯に  
渡って研究し続けながらも、ついに為し得なかった秘術中の秘術!  
そのホムンクルスを、ミランダさんが……まさか、そ、そ、掃除させるために…………?  
   
僕は信じられないまま筒に近づき、手を軽く握ってコンコンとガラスをノックする。  
「入ってますか〜? 入ってますか〜?」  
なんてね。  
…………実験室の静寂が寒い……な。うん、もちろん反応はない……。  
 
反応、……ないよね?  
え? コポッ?  
何かガラス筒の中で音がした気がしたけど……。いやいや、気のせい気のせい。  
コポッ。コポコポッ。  
うん、そうだ。空耳だよ。  
部屋のどこかで、何か液状の物がチューブを通って排水されてるように聞こえる  
音は、幻聴幻聴ぅっ!  
ガラス筒の乳白色の液体が、光りつつ水位を下げているのも、幻覚幻覚ぅっ!  
ましてや、その中に何か人影みたいなのが見えるのも。  
 
なんて自分を誤魔化してると、ぷしゅーっと音がして黒い土台が外れ、ガラスの  
筒が持ち上がって、白く発光した影が僕に向けて倒れかかる。  
お化けがぁあ、出た〜ぁあああ!!! うわぁーん!!!  
ミランダさ〜ん、助けてえ〜。僕、幽霊だけは苦手なんですぅよぉおおお!  
僕はびしょ濡れの影に押し倒されて、仰向けに転んだ。  
白くて冷たくて、やわらかくて重くて、……幽霊?  
 
って、よく考えたら、幽霊じゃなくてホムンクルスだよね。はっはっは。  
僕は頭を振って冷静さを取り戻し、僕の腹の上で向かい合わせになって倒れてる  
ホムンクルスを観察する。  
布切れ一つ身に着けていない肢体。雪のように白くてやわらかい肌。絹糸のように  
極細で、腰まで伸びて広がってるシルバーブロンド。顔は……、ミランダさんとかなり  
似ている。でもそっくりってわけじゃなくて、ちょっとづつ違う。この子の方が全体的に  
色素が薄いし、見た目の年齢もミランダさんの二十二歳じゃなくて、もう少し若くて  
十七歳。そう、ちょうど僕くらい。この子とミランダさんって姉妹みたいな感じ。  
僕はミランダさんを起こしに行くのも忘れて彼女に魅入った。  
うん、すごい美少女。ミランダさんより少し平坦だけど、現代的で可愛い顔。  
この子のベースになったのは、きっとミランダさんなんだろうな。  
   
えーっと、半紙に書いてあったのは、ミドリ……だっけ。  
「ミドリ……ちゃん?」  
僕はそっと呼びかける。  
大丈夫かな。予定より早くガラス筒から出ちゃったのかもしれない。  
彼女がケホッと小さく咳をして、のどに詰まってた乳白色の液体を吐き出した。  
襟元に液が染み込んで、長いシルバーブロンドに浸透していた水分が垂れてきた  
分もあって、濡れて汚れた生地が僕の胸に張り付く。ちょっと気持ち悪い。  
でも、それよりこの子の方が心配。  
呼吸はしているみたいだけど、意識がないのか眠っているのか分からない。  
ぐったりと目を閉じたまま、僕の体の上で動かないミドリちゃん。  
 
「ミドリちゃん? ……ミドリちゃん?」  
「う、う〜ん」  
「……ミドリちゃん?」  
何度か名前を呼ぶと、ミドリちゃんがうめいて目を開けた。ミランダさんより若干幼く  
見えるパッチリした緑色の目が、迷いなく真っ直ぐに僕を見つめる。  
「うわあ〜、綺麗な色……」  
これを予想してこの子にミドリと名付けたのなら、ミランダさんはすごいな。  
まあ、それにしても、この緑色には何か見覚えがあるような?  
……いやいや、今度こそ気のせいだ。はっはっは。  
 
「大丈夫?」  
僕はミドリちゃんに優しく話しかけた。この世界に生まれてきて最初に会った人間  
だもんね、僕は。良い印象を持ってもらえるように振る舞わないと。  
「はい。ご主人さま」  
「……は? ……ご主人さまって、僕?」  
「はい、そうです」  
ミドリちゃんが抑揚のない控えめな口調で答え、僕の頭は真っ白になる。(白髪に  
なったとか、そういう意味じゃない)。  
   
「……いやいや、僕はご主人さまなんて、そんな大層なものじゃないし」  
「いいえ、私が目を開けて、あなたがいた。だから、あなたがご主人さまです」  
もしかして、卵から孵った雛鳥は真っ先に目にするものを、それが何であれ親鳥と  
認識しちゃうとか、そういうやつ?  
「ご主人さまって言うのなら、ミランダさんのことじゃ……」  
「ミランダさまはマスター。あなたはご主人さまです」  
 
だめだこりゃ。  
と、とりあえず……、僕は彼女の腕をつかみ、体の上から立ち上がらせようとして、  
……って、そういえばミドリちゃん、全裸っ! 二の腕の手触りっ! それに膝立ち  
したミドリちゃんのおっぱいがすぐ目の前で揺れて……、ぬぉおおお!!!  
いかんいかん。ここは理性を保たねば。  
 
僕はミドリちゃんから目を逸らして部屋を見回し、壁際にハンガーで掛けられている  
大きなタオルと、……おお、あれなるはメイド服っ!  
……メイド服?   
ミニスカ丈の黒のワンピース、透けそうな白のストッキングと同じ色のガーターベルト。  
白いフリルのついたエプロン、エプロンとお揃いの装飾のヘッドドレス。ワンポイントで  
青い花を模した飾りの付いているヘアピンが可愛い感じ。  
……って、どこをどう見ても本格的なメイド服……。  
ミランダさん、こんなものどこから調達してきたんだか。もしかして、そっち方面の  
趣味があるとか……?  
まあ、いいや、深く考えないでおこう。うん、メイド服でも全裸よりましだし。  
 
「ミドリちゃん。あ、あれで体を拭いて、服を着て」  
僕は大きなタオルとメイド服を指差した。だけど、彼女は首を左右に振って僕の  
上からどこうとしない。それどころか、ミドリちゃんは僕の両足の間に正座をして、  
上半身を僕の体に沿わせるようにして迫ってくる。  
「でも、ご主人さまはそれを望まれてない」  
え? ミドリちゃん、何言ってるんだか。はっはっは。  
「いやいや、望んでるよ! 目一杯望んでるからっ!!!」  
ええ、吹き飛びそうな理性の最後のひとかけらでね。  
そりゃ、僕の股間は反応しっぱなしですよ。  
実験室に来る前に、ミランダさんをお姫様だっこして寝顔を見て勃っていたのを、  
無理やり無視して押さえつけてたんだもん。  
でも、ここでミドリちゃんにナニしてしまっては、ミランダさんに申し訳が立たない。  
   
「ってか、ミドリちゃ〜〜〜んっ!!! ど、ど、ど、どこ触ってるのぉおおおおおっっ!」  
油断したぁああああ!  
ミドリちゃんの手が、手が、手が僕の股間を〜〜〜っっっ!!!  
明らかに事故とかじゃなくて、すりすりさわさわもみもみしてる。  
ミランダさ〜ん、助けて下さいよぉ。僕、ミランダさんの造った痴女に襲われてます。  
 
「ご主人さまの願いを叶えたいのです」  
ミドリちゃんが僕のベルトを外しながら、上目遣いで僕に言った。  
「待てっ! 話し合おう、な」  
僕は拒否するように手のひらをミドリちゃんに向ける。  
でも逆に、彼女はその僕の手のひらを取って、自分のおっぱいに当てた。  
ひぃぃぃいいい!!! や、やわらかいぃぃぃ!!!!!  
この大きさは、Cカップー―――――ゥ!!!  
 
「ご主人さまはそれを望んでます。それに私も……、体が変なのです」  
ほんのり色づくミドリちゃん。色が白いからピンク色の肌。明らかに興奮してる。  
「ご主人さまの願いを叶えたいのです」  
ミドリちゃんが緑色の目で僕を真正面から見詰め、繰り返して言った。  
くくっ〜。しくしくしくしく。  
まさかミランダさん、この子を造る時に例の緑色のお薬なんて入れてたりしてたり  
してないだろうなぁぁあああーはっはっはぁあああ!!!  
ああ、もうダメ。ミランダさん、ごめんなさい。さようなら、僕の理性。  
 
僕は上半身を起こし、ミドリちゃんを抱きよせて顔を寄せた。  
やわらかい唇も、ささくれ一つない柔肌も繊細で壊れやすそうで、僕は自分の唇を  
ミドリちゃんの唇にそっと押しつける。  
「ん〜んんん。……っはぁあ」  
僕が唇を離すと、ミドリちゃんが大きく息をする。  
「こういう時は、鼻で息をするんだよ」  
僕は吹き出すように笑い、ミドリちゃんもぎこちなく笑った。今までに一度も笑った  
ことがないような、どこか固さを残す笑顔。うん、きっとミドリちゃんにとって、初めて  
浮かべた笑顔なんだろう。  
 
世界に生まれ落ちたばかりで、ミドリちゃんは喜びも悲しみも知らない。  
そう、たぶん男の体も。体だけじゃなく、心も何もかも真っ白な処女、ミドリちゃん。  
   
僕はもう一回、彼女にキスをする。ミドリちゃんの唇に吸いついて、その間に舌を  
伸ばして割り込ませ、ガチガチに閉じた上下の歯の表面を舐める。  
「口、開けて。ミドリちゃん」  
ミドリちゃんは素直に従い、僕は更に舌を侵入させる。ミドリちゃんの舌を捉え、  
高まる気分を撫で起こすように絡ませる。  
「っは……あ、…ぁ」  
必死で僕の動きに付いていこうとするミドリちゃんが、いじらしくてかわいい。  
 
キスをしている間、時々ミドリちゃんがのどの奥で音を立て、やがて僕の胸に手を  
当てて苦しそうに顔を離した。二度目のキスもやっぱり息を止めていたらしい。  
顔の中心から紅く染まり、まぶたを伏せたまま、口を半開きにして息をする。  
ミドリちゃん可愛いよ。自分から迫ってきたっていうのに、キスすることもなかなか  
慣れないなんて。  
 
「恐いことなんて全然ないからね、ミドリちゃん」  
僕はぐるんと横に半回転して(脱がされかけたズボンが足に引っ掛かってバランスを  
崩した。ちょっと格好悪い)、ミドリちゃんの体を下にした。  
床に広がるシルバーブロンド。筋肉を固くしつつも組み敷かれたそのままで横たわる  
白い肢体。どうしていいか分からないのであろう手足は、関節が少し曲げられたまま  
大の字に投げ出されている。  
 
僕は両手を伸ばして、彼女のCカップをもみもみする。手のひらの下で自由に形を  
変えるおっぱい。指の間から覗くピンク色の乳首は、波間に浮かぶ小舟のように  
上下する。  
手を止めて乳首に吸いつくと、……エグい味がした。あの乳白色の液体がまだ  
肌に残っているみたい。  
でも、僕はくじけない。なぜならそこで僕が舌を動かすと、眉根を寄せて苦悶とも  
喜びともつかない表情をしたミドリちゃんが、肘を曲げていやいやするように体を  
くねらせるから。  
ミドリちゃん、反応の一つ一つが初々しくて、とってもそそるよ。  
 
僕はそのまま、れろれろちゅっちゅっしながら、顔を下の方に移動させていく。  
ミドリちゃんの陰毛は、まばらだった。これから生え揃うのかな。ふふ、楽しみ。  
そして、ぴっちり閉じた割れ目はつやつやでぷりぷり。今まで空気さえも触れた  
ことがないのだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど、その綺麗さに僕は  
感動して息をのむ。  
   
試しに僕は、ミドリちゃんの大事なところへ手をやって、中をそっと割った。  
おお、新鮮な濃いピンク色のお肉。ヒクヒクと動いてて、まるで小さな蛍光ピンク  
スライムが発情してるみたい。  
顔を寄せて息をふうっと吹きかけると、彼女の全身が一瞬、ピクンと撥ね上がる。  
「くっ〜〜んん……」  
声を出すまいとしているかのように、ミドリちゃんは握った両拳で唇を押さえる。  
「ミドリちゃん、声を出していいんだよ」  
その方が僕も興奮するしね。  
 
僕は舌を伸ばして右の溝を舐め下ろし、左側の溝をなぞった。  
そして更に、クリトリスをそっと唇で挟み、口全体を使ってぴちゃぴちゃと唾液を  
まぶしながら、彼女をねぶる。  
「んぅ〜…、んんんっんぅ〜〜、んふぅううう」  
ミドリちゃん、やっぱり息を詰めてるな。体が固くなってるし。血圧が上がって、顔が  
真っ赤になってそう。  
なんて、お豆を中心にぺろぺろすると、少し下からとろっとした愛液が出てきたりして、  
段々と味が変わってくることがあったりなんかして、……うひ。  
 
僕はたまらなくなって自分の股間に手を伸ばし、まだ服を着てることを思い出す。  
ミドリちゃんを舐め舐めしつつ、僕はもぞもぞごそごそしながら服を脱ぐ。(格好いい  
服の脱ぎ方は今後の課題だな)。  
勃起したものを取り出して握り、……おっと、先走り液が手についちゃったよ。  
せっかくの貴重な潤滑剤が、もったいない。  
 
「さ、そろそろ行くね」  
僕は前屈姿勢をとって構えた。ミドリちゃんの両膝に裏から手を当てて足を折り曲げ、  
彼女の背中を丸めてお尻を浮かせるように持ち上げる。  
ミドリちゃんの快感冷めやらぬ顔と、横に流れているCカップおっぱい、それに両脚の  
間のいやらしいところが全部丸見え。  
真ん中の縦筋から、ちょろりとのぞく濃いピンク色のクリトリスが、僕を誘っているよ。  
ふふふ、ふへぇえははぁはぁはぁはぁ。  
   
僕は綺麗で可愛いピンクの肉襞に、自分の凶暴な杖を真上からぶすりと挿入する。  
でも、ミドリちゃんは初めてだから、そこはもう固くて狭くて、入れるのは本当に大変。  
挿入するっていうより、突き刺すとかねじ込むとかえぐるとかそんな感じ。  
なるべくゆっくりやってるんだけど、ミドリちゃんは歯を食いしばって苦しそうな顔。  
「んん、ぁぁぁああああ、いっ……あっ……んんんっ!!!!」  
なんて、うめいてる。決して痛いって言わないところが、けなげなミドリちゃん。  
きっとすごぉ〜く痛いんだろうなあ。男の僕には分らないけど。  
ミランダさんの時は媚薬を塗っていたから、もっと楽だったんだよなあ。  
 
それでも、僕はペニスが奥まで入り切ったのを感じ、容赦なく動き始めた。  
「んんっ……、んっ……ぁあっ、はぁっ、……ぁああ! ……ぁはあ!」  
短い吐息を吐くミドリちゃん。  
「んあっ、……んやぁ…あ! ……ああぁん!」  
ついに声を上げて痛がり始める。  
結構おっきな声でちょっと心配なんだけど、その方が痛みがまぎれるからいいかな。  
 
ふるふる揺れるおっぱい。眉に力を入れて耐える表情。ぎゅっと握りしめたこぶし。  
ミドリちゃんの中は、ぎちぎちでぎゅうぎゅうで、押し潰されそう。僕のペニスだって  
痛いくらい。だけど、最高速で屈伸運動してると、ミドリちゃんの愛液か破瓜の血か、  
僕の分泌液かなのか分かんないけど、中がぬめぬめしてでて、だんだんとそこの  
具合が良くなってくる。  
 
「んふぅ〜、んんふぅ〜、ミドリちゃぁ〜ん、いいよ〜、いいぃ〜よ〜」  
僕はそんな彼女の処女肉を堪能する。  
「ああっ…、ああっ…。ううっ…、うっくぅ……」  
ミドリちゃんの悲鳴もね。  
 
時々、小休止しながら僕は出し入れを繰り返す。  
と、僕のペニスとミドリちゃんの肉襞の隙間から、処女の鮮血がこぼれてくる。  
これこそ、僕が彼女の一番乗りである証、僕はミドリちゃんの初めての男、なんて。  
そんな考えが僕を満足させて、にやにや笑いが止まらない。  
僕の脳みそ――もとい、竿と玉とが破裂しそう。  
うーん、ちょっと早いかな。でもミドリちゃんは初めてなんだし早めに終わらせとくか。  
   
というわけで、僕はペニスを抜いてしごいた。そして、処女血が絡まって赤く染まる、  
広がった小陰唇、膨れ上がったクリトリス、しおれた数本の陰毛に、僕の出したて  
ほやほやまっしろ精液をぶっかける。  
ピュ、ピュ、ピシャ、ピシャ。  
赤と白が混じり合っておめでたいなあ、なんてね。  
あーあー、はぁぁぁああ。  
満足、満足。  
やっぱり、処女を散らすのは男のロマンだよね。  
 
「ミドリちゃん、すごく良かったよ」  
「は……い。ご主人さま、……ありがとうございます。」  
なんて、僕が声をかけながらミドリちゃんの様子をうかがうと、天井を見上げて  
返事する彼女の瞳が、渦を巻いて黒みを帯び、それから青に変わっていくのが、  
はっきり分かった。大海が凝縮したような、ヘアピンの花の飾りに似た瑠璃色の目。  
へぇ〜これどうなってるんだろ、なんて僕が見とれていると、突然バフンと扉が開く。  
 
「ふぁあああ〜〜あ〜、良く寝たわぁ。…………って、あれ?」  
開いた扉の間から顔を出したミランダさんの寝ぼけまなこが、一瞬にして丸くなる。  
ミ、ミ、ミ、ミランダさんっっっ??? あじゃじゃじゃぁぁぁあああああ!!!  
「あなたたち、……何をやってるの?」  
…………な、何をって………………、そりゃ……ナニです…………が。  
 
*  
 
結局、あのメイド服はミランダさんの趣味じゃなくて、王宮からもらってきた物らしい。  
……ちょっと残念。なんでもミランダさんは、ミドリちゃんの実験例が成功してたら、  
量産化してメイドさんとして王宮などに貸し出すつもりだったらしい。  
でも、ミドリちゃんのようなホムンクルスは、人間に逆らわないように造ってあって、  
仕事に行った先に今回の僕のような不埒者がいたとしても、彼女たちは拒むことが  
出来ない。  
ミランダさんはそこまで考えてなかったらしく、もしも仕事先でそういうことがあったら  
可哀想だからって、量産化も王宮貸し出しも諦めてた。  
これってある意味、怪我の功名? まあ、ミランダさんにはがっつり怒られたけどね。  
はっはっは。  
   
でもミランダさんは、ミドリちゃんを造る時に例の緑色のお薬を混ぜちゃった自分も  
悪かったからって(やっぱり……)、あんなことがあったっていうのに、僕をこのまま  
ここに置いてくれるって言ってくれた。  
良かった、良かった。  
まあ、今回の罰として、夏中は庭の雑草むしりをすることを言いつけられちゃったけど、  
そのくらいはご愛敬。  
 
というわけで、僕はこの暑いさなかに庭に出て草むしりをやっている。  
ふぅ〜、暑い暑い。なんてだるだるしてると足音がして、例のメイド服に身を包んだ  
ミドリちゃんが、僕のそばでしゃがみこんだ。  
「あの、ご主人さま。……草むしりの作業、お手伝いしますね」  
「えっ、でも……」  
パンティが見えそうな長さのミニスカと、ちらりとのぞく太ももとに、ドキドキしながら  
僕が迷っていると、彼女の瑠璃色の目が、断らないで欲しいですって訴えてくる。  
「私、今日の分の仕事は、もう終わりましたから」  
うーん、やっぱりここで断るのも悪いよね。僕、これから実験の予定があるし。  
「じゃあ、お願いしようかな。正直、助かる。ミドリちゃん、ありがとう」  
お礼を言って笑いかけると、ミドリちゃんは、はにかむような笑顔。  
 
ミドリちゃん、かわいいなぁなんて思いつつ、僕は作業を再開する。  
ふぅ〜暑い暑い。でもミドリちゃんと一緒だから、しゃきしゃき仕事を進めるか、とか  
僕はせっせと雑草をむしる。と、またしても足音。  
「あら、まだ終わらないの?」  
あ、ミランダさんだ。今日のスカートはミドリちゃんと同じくらい短くて、……うふふ。  
「君、今日、実験をするって言ってなかった? 私は、今は大した実験を抱えてないし、  
少しなら手伝ってあげるわよ」  
仁王立ちしたミランダさんの有無を言わせずって様子がなんだかおかしい。本当は  
一人で実験室にこもっているのが寂しくなっちゃったんでしょ、ミランダさん?  
なんて、僕は吹き出しそうになったけど、それをおくびにも出さずに明るく答える。  
「は〜いっ! お願いしまぁ〜すっ!」  
ミランダさんは仕方ないわねなんて言いながらしゃがみ込み(うん、でもそんな短い  
スカートじゃ、パンティ見えそうですよ)、足元に生える雑草をぷちぷちと抜き始める。  
 
ミランダさんもミドリちゃんも優しいな。大好き。  
空には大きな入道雲、どこからか涼しい風が吹いて、色あざやかな草木が揺れる。  
ミランダさんとミドリちゃんの指先が草の汁に染まる夏の日。  
なんて、同じく指先に染まる僕の緑色。  
 

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