あれから一年が経ったのか…
「お義母さん、大丈夫ですか…」私の前を歩くお義母さんは一気に老け込んでしまった。
精霊流しの為に私達は河原に下りた。川の水面には無数の灯が見える。
私は、古いCDを舟に乗せた。友人達は、果物類の間に黒ずんだペンダントを置いた。
浅黄色の着物姿のお義母さんが手作りの餡餅を乗せた。
舟は私の手を離れて流れて行く、涙を見せないように上を向いていた。
家に帰ったら、十二歳違いの弟と義姉が遊んでいた。兄貴が庭にバケツを置く。
みんなで夕食を食べた後、花火をする事になった。
義姉さん達と弟は吹き出し花火を消費している。私は蒼い浴衣を着て線香花火に火をつける。
あなたは空の上から見ているだろうか…
皆が帰った後、昨年までの想い出の詰まった動画を開く。
出会いはあの階段だった…
津田隆は高校二年生だ。遅刻ギリギリに教室に突っ込むのが彼の登校スタイルだ。
彼はいつもの様に階段を駆け上がり、教室に入ろうとした。
階段に手袋が落ちていたので拾い、名前を見た。
2-2高崎早紀と書いていた。隆は教室に入ると、真っ直ぐに窓側三列目の席に向かった。
高岡早紀は黒髪の長髪で、「歩く校則」の異名を貰っていて、学校でも有数の美人だった。
「高岡さん!落とし物っ!」隆は女の子と上手く喋れなかった。だからこんな口調になった。
「津田君、ありがとう。あっ、津田君頭。」早紀も照れながら返した。
「ん?」隆は頭を触ってみた。隆の頭は寝癖全開だった。
この事がきっかけでお互い関わる様になった二人は高校三年になり、やっと交際し始めた。
「ただいまお母さん!隆君連れて来たよ!」早紀は玄関から母親、紀子を呼ぶ。
「おかえり、いらっしゃい。話は聞いてるわ。」
紀子は玄関の男女に声を掛けると台所に入っていった。