〜美夜子のこと〜  
わたしが学校から帰ると、うちは空っぽだった。  
今日も暑い一日。片手で顔を仰ぎながらわたしは廊下を進み、カバンを居間のソファーにぽんと置くと、そのまま風呂場に向かう。  
こんな日はシャワーでもすぐに掛からないと堪らないからね、と脱衣場で制服を脱ぎ  
洗濯機に放り込む。ふう、下着姿になると少し涼しい風がわたしをくすぐるけど、  
こうしていたら風邪引いちゃうな。紺のハイソックスを片足ずつ脱いでゆくと、  
ソックスからは、わたしのほんのりとした汗の匂いがした。  
 
さて、家はからっぽと言うことは、弟はまだ戻っていないということ。  
両親は幸い旅行で今夜は不在。わが弟・智継と二人っきりと言うわけだ。ふふふ。  
ぱあっと、シャワーの暖かいお湯がわたしの胸にかかり、今日一日の汗を洗い流してくれる。  
トモツグとせっかく誰にも邪魔されなく過ごせるって言う、絶好のチャンスの夜なんだから、  
トモツグに嫌われないようにしなきゃだな。なんだか今から耳の後ろが熱くなってきたよ。  
「ふうぅ」  
 
最近のトモツグはなんだか生意気盛り。いままで『お姉ちゃん、お姉ちゃん』って甘えてばかりいたのに、  
ここん所、氷のように冷たくなってきている。もしかして、わたしの事をバカにしているのかもしれない。  
わたしが中学生になった頃、少し突き放してみたらちょっとポカーンってしてたもんね。  
その頃からだ、わたしを毛嫌いするようになってきたのは。うん。男の子って難しい生き物だ。  
でも、わたしも姉として我が弟が恥ずかしくないように、しもやけしない程度の冷たさで  
世間様と同じくらいの距離で見守ってあげようと思う。トモツグは仕合せなヤツだ。  
ツモツグの冷たさとは裏腹に、暖かく体温の上がったわたしは風呂場を出る。  
 
風呂上りの火照った体は、ぼうっとしてわたしの理性を程よく壊してくれる。  
ちょっと早いけど、もうパジャマに着替えてしまえ。このあとこれといった用事もないし、  
後は寝るだけの人生なのだ。しかし、なかなか髪の毛が乾かない。首筋が隠れるぐらいの  
ミディアムショートなんだけど、わたしだってお年頃の女子高生なんですよ。  
のんびりとドライヤーを吹かしながら、ソファーでまったりしますか。  
雑誌を眺めながら、髪の毛を乾かす時間はこれこそ人生のぜいたくなり、かな。  
 
さて、髪の毛が乾くと、今だけのプレミアムステージに参るとしましょう。  
誰もいないのをいいことに、トモツグの部屋に忍び込む。扉の向こうは、青くも甘い弟の匂いがした。くんくん。  
中学生になると、さすがにわたしと一緒の部屋は嫌がるのか、それとも自分の城が欲しいのか  
自分専用の部屋を持ちたがる。ま、このお年頃の子は、何処もそんな感じなんだろう。  
しかし、お姉さんはそんな事許さないよ。世間様の目もあって、わざと別々の部屋で寝ているけど  
トモツグのいないこの部屋は、かなり陳腐な表現で申し訳ないが、わたしの花園なのだから。  
脱ぎ散らしたシャツも、毎日包まって寝ている布団もわたしにとっちゃ、どんな色鮮やかなお花よりも  
最高の香りを楽しませてくれる花園なのだから。  
 
わたしが真っ先に飛び込んだのはトモツグのベッド。  
朝起きたままの乱れっぱなしの布団が、わたしを手招きしているようで、我慢が出来なかったのだ。  
うつ伏せのまま、主のいない枕に思いっきりわたしは顔を埋める。  
「ふぁあ!はあぁ…いい匂い」  
色気づくかその前かの頃の、少年の香りは全てここに詰まっているのだろうか。  
トモツグの髪の匂いもきっと同じなのだろうか。この枕、わたしを喜ばせる為だけに  
存在しているとしか思えない。わたしの匂いも一緒に付けてあげるからね、トモくん、嬉しいね。  
 
「トモくん…わたしの…トモくん…」  
そのままわたしは腰を上げて、天に向かってかわいいお尻を突き出すと、子宮のあたりが  
なんとなく疼く感覚がする。左腕で枕を抱え、右手でパジャマ越しにわたしのうさぎ穴を擦ると、  
まるでトモツグから擦られているような錯覚に陥る。  
「トモくん…あん…だめよ、お姉ちゃん…」  
少しずつパジャマをずり下ろし、ショーツを指の腹で突付く。明らかにわたしのうさぎ穴は  
女の子の甘い蜜で一杯になっていたのだ。  
枕をトモツグと思いながら、何度も何度も口付けを夢中でしている内に、  
わたしは実の弟でムラムラと女の子の本能を目覚めさせてしまったのだ。  
 
隣のわたしの部屋から扉の音がする。あの軽い足音はトモツグのモノだ。  
長年姉をやっていると、そんなことはすぐに分かるんだからね。わたしの耳はキツネより鋭いぞ。  
トモツグがわたしの部屋に入っているうちに、音を立てずにここから逃げ出してしまえ。  
こんな所見られちゃあ、何を言われるかわかんないからね。剣呑、剣呑。  
 
 
〜智継のこと〜  
ぼくが家に帰った頃は、既に姉は家に帰っていたようだ。  
ウチの鍵も掛かっていないし、姉の靴もある。なのに、家の中にいる気配は全く無い。  
「ただいまー」  
返事をしてくれるのは、ぼくの足音だけ。あの女は早くも昼寝でもしているのかね。  
 
言っておくけど、ぼくの姉はおもいっきりダメ姉だ。  
ぼくが付いていないと、何も出来ないダメ女のお手本のような姉。  
この間は、母から頼まれた買い物に一旦出かけたもの、何を買うのか途中ですっかり忘れてしまい帰ってきてしまったのだ。  
「トモくん、お姉ちゃんと一緒に行ってあげなさい」  
って、むりやり母親からの命令で姉と二人で買い物に出る羽目になったのだが、  
中学生の健康優良な男子にとっちゃ姉と二人で歩くのは、かなり恥ずかしい。後悔羞恥プレイもいいところだ。  
だいいち、姉も嫌がっているだろうし、万が一クラスのヤツから見られたら、ぼくの顔は真っ赤になってしまう。  
 
結局、その日はぼくが全て買い物したようなものだったのだから、うちの姉は何をしに来たんだろうか。  
おまけに、両手に買い物袋をもつのはぼくだ。なんだよ、結局荷物持ちかよ。  
「トモくんが全部やっちゃうからだよ!」  
「あんたが母さんから頼まれたんだから、もっとしっかりしなさい!」  
「わ、わたしだって一人で生きてゆけますよーだ!」  
「あんた来年、大学生になるんでしょ?じゃあ、早くひとり立ちの練習でもしたら?」  
 
二人とも目を合わせずに幼稚な口げんかをしながら、てくてくと我が家へと帰る。  
ところが、この期に及んで収まりの付かない姉が横にいた。とっくにぼくは黙り込んでるって言うのに。  
あまりにも口うるさいので、一方的にしかとをしていたら姉は急に静かになった。  
ふらと、姉のほうを見ると、少し寂しげな顔をしている。普段はこんな顔、見たことが無い。  
「姉ちゃんのバーカ!」  
ぼくに姉が横から軽く体当たりしてきた。姉の柔らかい二の腕の感触は、少しも嬉しくないんだからね。  
勘違いするんじゃないよ、ダメ姉さん。  
 
しかし、そのダメ姉は何処へ行った。  
家中探すが何処にもいない。居間、台所、風呂場…。  
風呂場の洗濯機…。うん、姉は見当たらないけど、家に帰っているのは確かなこと。  
ところが、洗濯機を見ているうちにやましい心がぼくに芽生えてくる。  
 
ちょっとぐらい、ちょっとぐらい。いいよな。  
洗濯機の口を開けると、少し姉の香りがした。  
「………」  
真っ白だけど、少し陽気で汗ばんだシャツ。  
姉の肌をよく知る清楚ながらも男子の目を惑わせるかわいい下着。  
そして、一日姉に踏まれ続けられた紺のハイソックス。  
恐る恐る洗濯機の中に手を伸ばし、中のシャツを鷲掴みにするとほんのりと湿ったような  
汗ばんだ感触が正直に伝わってくる。洗濯機から取り出した瞬間、なぜか固まってしまった。  
 
うん、誰もいないよな。誰も見てないよな。  
額に汗をし、横目で確認する同時にぼくは、くしゃくしゃになった姉のシャツに顔を埋めていた。  
甘い。甘いよ。ちょうど背中の辺りが一番甘い。普段、制服のまま家にいることも多い姉、  
何気に漂ってくる姉の香りはその時のものとは格別に濃度が違う。  
少女と大人の狭間のお年頃の姉は、ぼくには敷居が高すぎず、またおこちゃますぎず、  
そしてなにより、何もかもぼくを知り尽くした優しさがある。  
 
紺のハイソックスもぼくの琴線に触れる芳しい香りをしている。  
普段は蹴られたり、ムリヤリ股間を電気あんまされたりとぼくにとっては  
凶器になる筈のこの紺ハイソ。しかし、今はぼくの手にかかって慰みものにされるが関の山。  
真裏のあたりを顔に押し付けると、姉の恥ずかしい匂いで鼻腔をくすぐられた。  
 
姉本人は扱いにくい子なのに、どうしてきみたちは素直なんだろう。その心に打たれてか、  
だんだんズボンの中が苦しくなってきた。少し前かがみになる。  
「姉ちゃん…。みよ姉…、うん…ぼく…」  
小さい頃甘えん坊だったぼくを慰めてくれたのは、姉だ。そして、今ぼくを慰めてくれるのは、姉の匂いだ。  
どうしてぼくは大きくなってしまったのだろう。  
センチメンタルな感傷に浸りながら、ズボンの中も大きくなってしまった。  
 
 
そうだ。姉を探さなきゃ。一体何処に行ったんだろう。  
残る心当たりは…じゃあ、姉の部屋かな。  
別に姉に用事があるわけじゃないけど、いないといないで少し不安なのだ。二階に上がると  
ぼくら部屋がある。二つ並んで奥が姉、手前がぼくの部屋。  
まず奥の部屋に入ってみる。扉を開けると柑橘の香りがする。  
いない。姉はいない。寂しくぬいぐるみたちが留守を預かっているじゃないか。  
畜生、どうしてうちの姉は人をやきもきさせることに関してはピカいちなんだろう。こんな自慢は恥ずかしい。  
 
ふと、目を姉の机に目をやるとぼくのCDがなぜかあった。なんで?  
おそらく、勝手に姉がぼくの部屋から持って行ったのだろう。たく、持ち出すのはいいけどキチンと元に戻しやがれ。  
こっそりと、ぼくのCDを取り戻し姉の捜索を再開することにする。  
しかし、それに構っているぼくもぼくだな。やっぱりどこかで意識しないうちに姉の事を…。  
何を言わせるんだ。みよ姉なんか、大っキライだからね。いつもぼくの邪魔ばかりしてさ。  
仕方ないので、ぼくは姉の部屋を去り下の階へ降りる。はあ。  
 
ぼくが下の階に下りたときには、姉はパジャマ姿に身を包み込み、居間のお気に入りのソファーでダラダラとくつろいでいた。  
なんだよ、心配かけやがって。安心したような、ぐったりしたような気持ちでやりきれなく思うぞ。  
「姉ちゃん!なにやってんの?」  
「わたし、眠くなっちゃたから、おやすみー」  
こんなぐうたらな姉だけど、ぼくのただ一人の姉だ。一生お付き合いしなきゃ。  
 
 
〜ふたりのこと〜  
この日の晩、美夜子と智継の姉弟は、デリバリーのピザで申し訳程度の夕食をとり、  
二人の腹を満たした後は、それぞれくつろぎの時間を過ごしていた。  
明日は休みとあって、弟の智継は居間で夜更かし体制。姉の美夜子はぜいたくに  
風呂場で長湯を楽しんでいた。夜はこれからと言った所か、少年少女の夜会は始まったばかり。  
 
深夜、居間では両親がいないのをいいことに、智継がテレビのボーリングゲームに興じていた。  
いつもは親がうるさいので、こんなに夜遅くゲームなんぞ出来ないが、今夜は特別。  
智継の手のスティック型のリモコンには力が入る。スティックというより、デザインは骨型のもの。  
そしてその目の前には、イヌの形の本体。今、人気の『wann』である。  
智継のリモコン操作とともに、画面上のツインテールのキャラがボールをポンと投げる。  
ボールはレーンを転がる。惜しい、ガーターか。  
「………」  
本物のボーリングなら、例えガーターでも多少はムリヤリ盛り上げようとするだろうが、  
残念ながら今は一人、しかもバーチャルの中。へこみ方も倍以上。  
 
「トモくん?寝ないの?」  
「………」  
「ねえ、トモくん!」  
つい集中してしまい、智継は美夜子の声に気付かない。気付かないのをいいことに、  
美夜子は智継の背後にこっそり廻り、ひざかっくんで襲い掛かる。  
同時に画面のツインテールの子も同じようにずっこけるとは、智継も思っていなかっただろう。  
 
「姉ちゃん!もう!!せっかくストライク取れると思ったのに!!」  
「ねえ、トモくん。早く寝なさい」  
「あんたも早く寝れば?」  
「下手糞なゲームをするくらいなら、姉ちゃんの言う事を聞きなさいね」  
反射的に美夜子は『wann』のリモコンを智継から奪い取り、代わりに画面の前に居座ると  
弟にじっと見ているようにと根拠のない言葉で命じる。  
「いい?あんたの下手糞さを思い知らせてあげるから、わたしの華麗なフォームを見てなさいね」  
(なんだよ、姉ちゃんもゲームがしたいんじゃないか)  
言葉の上ではつんけんしている智継だが、静かに身構える姉を真横にすると、  
姉のかすかな汗が空気を通じて智継に届く気がしてきて、飼い犬のようにじっと座っているだけ。  
何時になく真剣な横顔の姉は色気さえも感じ、智継は黙って固唾を呑んでいた。  
 
「それっ!」  
すこしマヌケな掛け声とともに美夜子はぶんとリモコンを振ると同時に、髪の毛がふわりと揺れる。  
(…姉ちゃんの香りだ…。うん)  
嗅ぎなれた香りも、乱れた髪を目の前にすると見ているこっちの恥ずかしさも加わり、  
智継は一番身近な身内の姉に、ついつい女の子を感じてしまう。  
「やったあ!ほら、ストライク!!」  
無邪気にハイタッチを智継に求める美夜子。やっぱり、みんなでゲームをすると楽しい。  
一気にアドレナリンが分泌されたのか、美夜子はゲームの虜と化する。  
智継は少し、画面の女の子に嫉妬していた。  
 
二人でゲームにのめりこんでいつの間にか、時計が12時を示す頃になると、  
さすがに二人とも眠気が差してくる。美夜子がこくりとよろけると艶やかな髪も一緒に揺れる。  
一方、智継も目を擦りせっかくの休日前夜を寝てしまうのを惜しむよう。  
美夜子に関しては、昼間あれだけ寝たというのにまだ寝たりないのかというほど。  
「いいかげん、姉ちゃん布団に入りなよ」  
「…だめよ…。トモくん」  
座ったまま、美夜子は聞き取るのにやっとの声で、智継に注意を促しているらしい。  
虚ろな顔をして『だめよ』と言われても説得力はゼロに等しい。美夜子は完璧に寝ている。  
智継は姉を布団に入るように促し、自分もそろそろ寝るかと、『wann』とテレビの電源を切り、自室に上がろうとした矢先の事。  
 
「姉ちゃん!!」  
「…あん…」  
(かわいい。こんなにかわいい寝顔…今は、ぼくだけのものかな…)  
少年よ、姉を起こすはずなんだぞ。なのに、その姉の寝顔がいとおしいと思っているのではないか。  
その無防備な子供のようなくちびる、暖かい息、柔らかい絹のような髪の毛、いとおしい。  
(許されるんだったら、姉ちゃんを…ぼくのものにしたい)  
少年の葛藤は続く。  
 
しばらく智継が美夜子の寝顔を見ていると、寝ぼけた美夜子が立ち上がった。  
乱れた髪は昼間の姉とは違う。智継には年上の優しい女の子にしか見えない、はず。  
「ううん、トモくん…」  
「ううっ!」  
 
油断をしていた智継の体に美夜子が抱きつき、一緒になってごろんと押し倒された。  
「あん、トモくんの、枕…いい匂い」  
「ま、まくら?」  
「くんくん」  
美夜子は昼間、智継の枕で欲情していたことを思い出して夢見ているのか、  
智継をすっかり枕だと勘違いして、ねっとりと匂いを嗅ぎ始めている。  
逃げ出そうとしても、美夜子が俄然しがみ付くのでムダといっちゃあムダ。  
逆にズボンを脱がされそうになる智継は、むしろ姉に従う方が自分の身のためには、有効なのだろう。  
 
「ぱくっ!」  
突然、美夜子は智継のズボン越しに苺のような唇で、膨らみかけた男子の木の実を咥える。  
直接触れているわけではないのに、智継の目線からは彼の熱くなった部分を姉から  
慰められている様にも見え、静まり返った居間にはその舌使いの音だけが響く。  
(だめだよ!姉ちゃん、ぼくたち…)  
そんな智継の思いとは裏腹に、姉の優しい愛撫は激しさを増してくる。  
少年のズボンは色気を伴い始めた少女の唾の匂いで塗られている。  
「トモくんの枕…枕…」  
「ね、姉ちゃん!!だれが枕だよ!」  
「…枕が?枕はどこ?」  
「あの…姉ちゃん、さっきからぼくのズボンを…」  
トロンとした美夜子の眼に映ったのは、枕でなくもちろん智継。  
何処とない微妙な空気が流れる。  
 
美夜子はまるで捨てられた子猫のようにシュンとなり、智継から正座をさせられていた。  
「ごめん、トモくん」  
「何やってるんだよ。早く寝なさい」  
「でも、ふふう。わたしね、夢の中でトモくんとえっちなこと…」  
「しないよ!」  
(もしかして、ぼくの頭の中を読まれてるんじゃないだろうか)  
(もしかして、わたしってトモくんの期待に答えなきゃいけない?そうなの?)  
ダメ姉弟の勝手な妄想は爆発してしまった。なんせ、姉は寝ぼけているのだから。  
 
「だめじゃないの。トモくん、さ、ズボンを脱ぎましょ」  
「わ!や、やめて!!姉ちゃん!」  
「姉の言うことは聞くものよ!!」  
(わたしって、なにやってるのだろう?)  
寝言半分、本能半分の美夜子の誘い。こんな姉の誘いを断る弟が何処にいるだろうか。  
か弱い男が背中を浮かし仰向けになる中、その子に跨るように少女は主導権を握る。  
美夜子は智継の、智継は美夜子のそれぞれのズボンに手を掛け、いちにのさんで  
ゆっくりおろすと、二人ともすでに下着は淫らな光を放っていた。  
「わたしも触ってあげるから、トモくんもわたしの…ね」  
「あ…ホントだ。ホントに濡れるんだ。…って何見せてるんだよ!!」  
「ふふふ、かわいいね。これからはお姉さんの言う事をよーく聞きなさい」  
「う、うん」  
その時二人の頭の中は、  
(本当の気持ちを出しちゃいなさいよ!!)。  
 
ゆっくり美夜子が跨ったまま智継の顔に近づくと、唇より先に汗で濡れた髪の毛が少年の  
顔に掛かってくる。くすぐったい、くすぐったいけど拒んじゃダメだ。  
「ん…」  
「んん…」  
美夜子は目を閉じたまま智継の柔らかい唇を合わせる。  
彼女には、全く化粧っ気はない。しかし、そんな作られたインチキに固められた虚構の美貌を揃えても、  
淀みのない瞳の少年からは、一発で見破られるんだろう。そんなことは重々承知な美夜子。  
いや、むしろそんなことは無意識のうちに心得ているに違いない。  
 
一方、智継は一瞬目をつぶったが、薄っすら目を開けるといつもの姉が居た。  
しかし、大きく違うのは少年の口を舐め尽くしている姿であることだった。  
「ぷふぁ!」  
「苦しかった?ごめんね。トモくん」  
「ううん、甘いね」  
昼間のこっそり嗅いだ制服もいい。だが、ぜいたくに直々甘い蜜を吸わせてくれるのもいいだろう。  
「今度は、体じゅう舐め尽くしてあげるから!」  
美夜子は智継のシャツをたくし上げると、何も知らない少年の白い胸に顔を近づけ、  
音を鳴らしながら唾液を塗りたくる。同時に姉の髪が少年の顎を擦り、そして髪の香りを撒き散らしていた。  
 
「ふふ、今度はトモくんの番よ。がんばって!」  
「ねえ、どうしたらいいの?」  
「いつもの世話焼きトモくんは何処行ったの?ほら、お姉さんが困ってるでしょ?」  
パジャマのボタンを一つずつ外してゆくと、ブラジャーをしていない美夜子の乳房がだんだんと姿を現す。  
ぐいと智継の頭を美夜子の胸に引き寄せ、桜色の乳首に下を這わせるように命じると、  
生意気盛りの智継はどこかへと消えてしまっていた。  
 
「ごめんね、トモくん。だって、トモくんがわたしをこういう風にえっちにさせるからじゃないの」  
「ち、ちがうよ!姉ちゃんが…姉ちゃんが…。ぼくの事を」  
いけない。生意気トモくんが帰ってくる。  
 
「と、とにかくえっちなトモくんを何処かに連れて行かなきゃいけないよね!」  
「ぼ、ぼくはえっちじゃありません!!」  
「えっちにさせてるのは、このおちんちんでしょ!そうでしょ!?謝りなさい!!」  
(お姉ちゃんのお説教…ぼく…もっと感じちゃうよ…)  
智継の隠された性癖があらわになるのは時間の問題。一方、美夜子は。  
(こうやっていじめておけば、トモくんもわたしとずっといっしょだもんね。  
さて、えっちをする口実も出来たし…いっただっきまーす)  
 
「はん!」  
「と、トモくん…。お姉ちゃん…頑張ってる?もうバカにしない?」  
「な、なんだか先っちょが…だめだよ!」  
「いいの!」  
「だめだよ!」  
「いいの!」  
言葉の上では嫌がっている智継は、本当は喜んでいるということを読み取っているのは  
さすが姉だと言うしかないだろう。なんせ、生まれた時から弟を見ているのだから。  
 
髪を振り乱しながら、弟を貪り食う姉を仰向けになりながら見つめる智継は我慢の限界。  
「ううっ!ご、ごめんなさい!!」  
腰から力が抜けていく感覚が智継を襲い、さらにそれと同時に羞恥の心が巻きついてきた。  
姉は腰を浮かし、智継からうさぎ穴を抜き出すと、そこから白くとろけた液を流しながら、  
ニコっと智継に向かって微笑んだ。しかし、智継にとっちゃあそんなものは少し迷惑千万。  
「ずっと、いっしょだね」  
「………」  
「これでぐっすりお休みできるね。ふぁーあ、疲れて眠くなっちゃった」  
「ね、姉ちゃん!」  
横になる姉に甘えるように、智継は美夜子のうさぎ穴をやさしくティッシュで拭いてやると、  
姉は弟の頭を撫でて感謝の意を表していた。今夜は久しぶりに二人で寝ようね、言葉にしなくてもわかっていた。  
 
この夜、二人いっしょに居間で夜を過ごしたのだが、美夜子は昼間に寝すぎたせいか  
朝早く起きだしていた。お日様はまだ顔を出したばかり。  
遅れて2時間後、智継が起き出す。しかし、姉はいない。  
「ねーちゃん、ごはんは?」  
梨のつぶてだということは智継も予測していた。もう一度呼ぶと、情けない顔をしながら  
姉がとたとたと歩いてきた。二階にでも行っていたのか。  
 
「…おほよう」  
「ごはん!」  
「うん」  
いつもだったら『あんたが作りなさいね。あんたの方がご飯作るの上手いんだから!』と返ってくるはずなのに。どうも調子が狂う。  
智継は思い当たりを考えているうちに、ある事を思いつき二階に走る。おそらく昨日のアレか。  
美夜子は美夜子で、居間のお気に入りのソファーで不貞寝をはじめる。  
 
そう、智継は昨日姉の部屋から取り戻しておいた自分のCDを再び姉の部屋に戻しに行ったのだ。  
きっと、返しておこうと思ったCDが見つからず青ざめているのだろう、と推理を働かし  
姉を懲らしめるつもりで、こっそり元の位置に戻しておく。ネタばらしは…一切しない。  
しょんぼりとする姉を覗き込み、智継はにやりと笑いながら姉に問う。  
 
「もしかして、姉ちゃんさ。隠し事してるでしょ?」  
「しないよ。そうやってまたわたしの事バカにするんだから」  
「してないよ。うそはいけないと思うな」  
(怒った姉ちゃんは、やっぱりかわいい)  
美夜子がしっかり者に成長するこ姉を期待しつつ、姉を困らせて喜ぶ智継だった。  
 
 
おしまい。  
 
 

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