庭の畑で野良仕事している恭平のおじいちゃんへの挨拶もそこそこに、恭平の家に押し入り  
部屋に押し込める。  
 
勝手知ったる幼なじみの家。  
勝手にベッドに座り込み尋問開始。  
「さて、洗いざらい吐いて貰いましょうか」  
「えぇ〜、勘弁してよ」  
 
恭平はがっくりと椅子に手足を投げ出してもたれ掛かる。  
なんだ貴様そのやる気のなさは!とても今日相思相愛が発覚したカップルの片割れとは  
思えない。  
 
「私が納得できないの!私がどんな思いで告白断ってきたかなんて分からないでしょうからね」  
「あ、ああ、告白かぁ、俺が覚えてるのは、中3年の時サッカー部の高橋から告られていたろ?  
あれが最初だよな。あのときには俺を意識してたって事でいいのかな?」  
「な、なんで恭平が高橋君とのこと知っているのよ?」  
「自慢してたじゃん」  
「…そうでした…じゃなくって、今は恭平の話!」  
 
恭平が、んーっと笑って天井を見上げ視線を逸らせた。  
窓から入る夕日に照らされて、その整った顔を照らし出す陰影が、あんまり綺麗なんで、不覚  
にも恭平に見とれてしまった。  
 
「ずっと好きだったよ」  
天井を向いていた恭平の顔がこちらを向く。  
「っ!」  
 
あまりにも静かに紡ぎ出されたその一言に私は言葉を失う。  
 
−ずっと好きだったよ−  
 
なんか、頭の中で言葉が反響して涙が出そうになってくる。  
 
こんなとこで泣いたら一生の恥!だけど、だけど…。  
私も、恭平のことずっと好きだったんだ。ひ弱そうな外観からは想像出来ないくらい、芯の  
通った強さを持っている恭平のことを。  
 
恭平は続ける。  
「母さん亡くして、こっちに引っ越してきて、誰も友達いなくて心細かった時、和歌子が俺の  
手を引っ張って最初の友達になってくれたじゃないか、その時からだよ」  
 
野良犬から私を守ってくれた恭平、転んで足を挫いた私を家まで負ぶってくれた恭平、中学  
で高橋君がらみで孤立しかけたとき、何でもないように手を差し伸べてくれた恭平、一緒に  
色んなとこ行った、一緒に色んなことして遊んだ…色々な想い出が一気にフラッシュバック  
して頭の中に溢れてくる。  
 
「………そんなに昔から?」  
「感動した?」  
「…むっつりスケベ」  
「非道いっ!俺の長年の想い全否定!?」  
 
やっぱり素直になれない自分の馬鹿さ加減にあきれる。  
けれど…。  
ぷっ!と互いに顔を見合わせて吹き出す。  
 
緊張が取れたのか、恭平が律儀にもさっきの話の続きをする。  
「まぁ、異性として好きになったのは、多分中学生位からだと思うけれど…その、お前…  
すごく綺麗になったし…」  
「な、なに恥ずかしいこと言ってんのよっ!」  
「恥ずかしいこと言わしてるのはお前だろっ!」  
嬉しい…けれどどこか不毛な言い争い。でも嫌いじゃないよ、この掛け合い。  
 
「…ふぅ、いいわ、じゃ異性として好きになる前は?」  
「心の友」  
「何そのあなたジャイアン私のび太みたい言いぐさは」  
「どっちかってーとジャイアンはお前の様な気が…」  
「女の子に向かってジャイアンって言った!」  
 
軽口を叩きながらベッドから立ち上がり恭平へと近づいていく。  
椅子に座った恭平の両肩をつかみ顔を寄せる。  
 
「異性として好きになって…、こういうことしてみたかったの?」  
 
挑みかかるように今度は私からキスしてやった。  
唇を押しつけあうだけの幼稚なキス。でも息を吸うことも忘れてしまうくらい全身の感覚が  
唇に集中する。同時に恭平の右手がゆっくり背に回り、左手が耳のあたりを優しく撫でる。  
恭平、恭平、恭平…。  
すっと隠していた愛おしい感情が爆発しそうになる自分を押さえる。  
 
ゆっくりと唇を離し、互いに甘いため息をつく。  
「和歌子…」  
恭平も真っ赤に上気して、普段のポーカーフェイスはなくなってる。  
 
ふと、このまま想いが叶ってしまうことに怖さを覚える  
「…加奈子ちゃん」  
つい、必要のない言葉をぽつりと漏らす。  
「え?」  
「加奈子ちゃんのこと、どうするの?」  
 
馬鹿、私!今はそんなこと言う時じゃないでしょ!  
頭の中の私が怒鳴り立てるが、怖さが無くならない。言葉が止まらない。  
 
「いまなら、まだなんにもなかったことにしてあげる、私、加奈子ちゃんみたいにかわいく  
ないよ」  
声が震えてるのが自分でも分かる。  
「お前なに言って…」  
「いまなら無かったことに出来る。今ならずっと幼なじみで居られるの!」  
「お前…」  
「怖いの!恭平とこんな仲になって…恭平と喧嘩したら、もし恭平が離れていったら」  
 
感情が捻れながら激しく吹き出る。さっきまで笑いあってたはずなのに、今自分はなんで  
涙を零しているんだろう。今なんでこんな考えになってしまっているんだろう。  
 
判らない。  
ただ怖い。  
 
恭平が隣にいないことに、もう自分は耐えることが出来ないはずなのに。  
 
「俺は和歌子が本当にかわいいこと知っているよ」  
 
恭平が静かに言葉を紡ぐ。  
「お互い人間なんだからさ、喧嘩だってするさ。でも離れていったりはしない。俺は和歌子の  
隣にいたいんだ」  
恭平、好き。もうだめ、恭平が好き、離したくない、離れられない。  
自分でも顔が涙と感情の激流とでグシャグシャになっているのが判る。  
こんな顔恭平に見せたくない。恭平に背を向ける。  
 
しゃくり上げてる背中を、椅子から静かに立ち上がった恭平がゆっくりと抱きしめる。ぎくしゃく  
しながら、でもとても優しく。  
「お前も俺が好きでいてくれて嬉しい、今更幼なじみってだけの関係には戻りたくない。和歌子、  
お前が他の男に取られるなんて想像はもうしたくないんだ、お前の隣には何時でも俺が居たい  
んだ」  
 
遅ればせながら理解する。  
さっき恭平の告白を受け入れたとき、もう私たちは幼なじみじゃいられなくなったんだ。  
 
「…証明して」  
掠れた声で、震える言葉を送り出す。  
「なにを」  
「私が恭平のものだってこと、何時でも隣にいるのは恭平だってことを証明してよ」  
そういいながら、リボンを外しジャケットを脱いでスカートを降ろす。  
上はブラウス、下はショーツとソックスという姿になって、恭平を見据える。  
「!」  
恭平が息をのんでいる。どんな朴念仁だって今の状況でこの言葉の意味が分からないはず  
がない。  
 
「…和歌子!」  
抱きしめられて、キスされた。  
 
3度目のキスは今までよりずっと激しいキス。  
でも恭平の唇が動くと、その隙間から私の唇に暖かい物が触れてくる。恭平の舌が私の唇を  
つついてくるのを、そっと唇を開いて迎え入れる。  
すかさず口内が恭平の舌に蹂躙される。恭平の舌を迎え入れ、私も激しく絡ませる。  
舌でお互いの口内を嬲り、お互いの唾液を交換しあう。  
恭平ってこんな味だったんだ。思ってたより、ずっと甘い、ずっと美味しい。  
そして、舌を絡ませるディーブキスがこんなにも気持ちいいことを初めて知った。  
 
恭平の両腕に痛いぐらいに抱きしめられる。  
私も負けずにしがみつく。  
ともすれば快楽に砕けそうになる足を必死に踏ん張ってキスに答える。  
でも、その抵抗も空しくそのまま恭平に押されベッドへと倒れ込んだ。  
 
「んあっ!?…はぁ、はぁ、はぁ…」  
「だ、大丈夫か?痛くしてないか?」  
「はぁ、はぁ…、大丈夫、ちょっと驚いただけ」  
 
「和歌子っ」  
再び口を唇でふさがれる。  
さっきよりも強引に、さっきよりも力強く、恭平が私を求めてくる。その事実がうれしい。  
恭平と手と手を握り合い、お互い息を荒くしながら、ディーブなキスを繰り返す。  
こんなキスだけで背中がぞくぞくするような快感、この先どうなっちゃうんだろ。  
でも、いまは離れたくない。  
 
キスの合間の何度か目の息継ぎで、言葉を紡ぐ。  
「恭平の裸、見たい」  
言うと同時に荒い息をしながら、恭平のワイシャツのボタンを外していく。思っていたより  
ずっと広い肩幅に、Tシャツの首元からくっきり浮き出だした鎖骨が表れる。  
恭平が自らTシャツを脱ぎ捨て、覆い被さってくる。  
細身であっても締まった体、思いの外浅黒く日焼けした体に、私は柄にもなく…トキめいた。  
 
「俺もお前の裸を見たい」  
恭平がブラウスのボタンを外して脱がせてくる。あっという間に下着だけの姿になる。  
「待って、ホック外すから」  
自分でブラのホックを外す。恐る恐るといった感じで恭平がブラジャーをたくし上げる。  
私の胸が恭平の前にさらけ出される。  
 
「和歌子、綺麗だ」  
「やだ…似合わないって」  
「触るぞ、いいか?」  
「そういうのはいちいち聞かないでよ、恥ずかしい…」  
「うん」  
 
恭平の手のひらが、左胸を覆い、そのまま優しく撫でるように触りだす。  
「んっ、く、くすぐったいよ」  
我ながら色気のないセリフ、でも恥ずかしい心を隠すには調度いい。  
 
次第に手のひらに力がこもる。胸が変形するように大きく潰され揉みしだかれる。  
乳首を指先で摘まれ、捻りながら押し込まれる。  
「んん、う、ああ、ん、ふわぁ…」  
自分の声じゃないような甘えて蕩けた声が漏れる。  
「痛く…ないか?」  
「うん、痛くは…ないよ、変な…ン感じ…、んん、はぁ、あっ」  
 
「じゃあ」  
恭平が空いている右胸に頭を埋めてくる。  
「…ん」  
そっと乳首に口付けされる。  
「ひゃんっ」  
今度は歯で乳首を甘噛みされた。くすぐったさとは違う電流のような刺激が背中を駆け  
上がる。  
私の悲鳴に堰を切ったかのように、恭平は左胸への愛撫と右胸への吸い付きを強めて  
くる。  
 
「あ、ア…ン、ふわ、や、ああ、あっ!」  
恥ずかしい、私ってばなんて声をあげてるんだろう。  
 
恭平の右手が、横腹をなぞり、足の付け根へと伸びてくる。  
ショーツの上から、裂け目をなぞられる。  
「あん、ん、あ…」  
それだけで意識が飛びそう。  
上端に行った手が、ショーツに分け入り、茂みを掻き分け、私のヴァギナに触れてくる。  
 
クチュリ…  
 
「ひぅっ、ふわあぁっ!」  
確かな水音とともに、それを纏わりつけた恭平の指の動きを感じてしまう。  
溢れていることが恥ずかしい。知られてしまうことが恥ずかしい。  
しかしそれらの恥ずかしさを超えてなお、恭平の手で秘所をなぞられる快感は、意識の  
全てを真っ白に塗りつぶすような感覚を与えてくれた。  
「こんなに…濡れてるんだ…」  
呆然としたような恭平の声が、どこか遠くから聞こえたような気がした。  
 
「や、やだ、恭平…ばかり、ずるい…よぉ」  
恭平を両腕で押し返す。  
「い、嫌だったか?」  
恭平がちょっとおたおたしている。だけれどそんな恭平をからかう余裕なんて全くない。  
 
「恭平のを…全部見せて…ほしいよ」  
「え?あ、あぁ」  
恭平がズボンのベルトを外してパンツを下ろす。  
プルンと赤黒く脈打つ恭平のものが眼前に現れ目が釘付けになる。  
「…、これがオトコの…」  
先から粘液が垂れている。そっと手を伸ばして優しく触る。  
「不思議な…堅さだね…」  
きゅっと握ったり、しごいたり…その度にビクビクいう熱い肉棒。  
うっ、という吐息が恭平から漏れる。これが私の中に入るんだ、なんか不思議な感じ…。  
 
「っ!和歌子、これ以上は駄目だ!」  
せっぱ詰まった声で恭平が叫ぶ。  
「え?」  
何が駄目なの?これ以上ってどういう意味?  
「和歌子に触られているだけでイッてしまいそうなんだ」  
「気持ち…いいの?」  
「我慢の限界…理性、とびそう」  
歯を食いしばり、荒い息をはき出しながら、途切れ途切れの言葉を漏らす恭平。  
 
「それに、俺、ゴムなんて持ってないし」  
「…ゴムって?」  
「コンドーム」  
言われた単語で、今後の展開の具体性が増して、赤面する。  
でも、私、恭平に抱かれたいんだよ。恭平のものになりたいんだよ。  
熱に浮かされたようなフワフワな頭の中、私の方がとっくに理性を無くしちゃってるん  
だろうか。  
 
「…いいよ、多分大丈夫だと思う。それにね、私、恭平のものになりたいの」  
「だめだってば!それ以上お前に言われたら理性無くしちまうって。俺、和歌子を本当に  
大切に思ってる、だから今日はここで終わりだって」  
 
まじめな恭平。  
融通の利かない恭平。  
でも「大切に思っている」ってなんて嬉しい響きなんだろう。  
 
見上げると恭平は、顔を上気させてたまま荒い息をしている。  
「恭平、辛そうだよ…」  
私が再び恭平のものを優しくしごく。くぅと喉を鳴らす声が聞こえる。  
「恭平、嬉しい…感じてくれて、私のこと大切に思ってくれて」  
そういいながら恭平のものへと顔を近づけていく。蒸れた汗の匂い、恭平の匂い。  
「わっわか、こ…?ば、馬鹿やめっ、汚いって!」  
 
ちゅ…  
 
恭平のものに口付ける。  
先っぽから出ている粘液を音を立てて吸ってみる、変な味。  
「うあっ!わ、だめ、だって」  
よく分からないながらも、恭平のものを吸い出すように舌と内頬をつかってしごく。  
「くちゅ、ちゅぼっ、じゅぼっ、くちゅ…」  
淫らな水音が頭全体に響きわたる。  
溢れる唾液がだらしなく口端から流れ出る。  
気持ちいい?これで気持ちいいの?  
 
「わ…わか、こぉっ…!」  
声にならない叫びを上げながらながら恭平はガクガク腰を揺すりはじめる。必然恭平の  
ものが私の口の中で暴れ回る。  
 
「んちゅ、ひょうふぇい、ふひにひへ、ひひんあお…ん、じゅぶっ!んんっ!」  
−恭平、好きにして、いいんだよ−  
くわえたままでの発声は、すごくイヤらしくて、まるで淫乱馬鹿になったみたい。  
 
「和歌子っ!放せ、出る、くぅぅっ!」  
肩を押して引き剥がそうとする恭平に必死になってしがみつく。  
一瞬、恭平のものがびくんと大きくなった感じがした途端、恭平の腰が痙攣するように  
動いて…口の中に何かが充満した。  
 
…精液だ、これが恭平の精液だ。  
 
熱い…。そして苦い…って言うか生臭くて変な味がする。  
喉を打つ飛沫と咽せくる臭気に思わず咳き込んでしまった。  
「けほっ、けほっ、んふっ、んんっ」  
出された精液を吐きだしてしまう。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ、っ!和歌子、大丈夫か!?ほら、出せって!」  
あわててテッシュを取ってきて口を拭いてくれる。  
「咽せちゃった、でも大丈夫。恭平のだから、嫌な感じはしないよ」  
「お、お前…無理するなよ、ほら」  
胸やおなかの滴も丁寧に、優しく…、私に零れた恭平の残滓が拭き取られていく。  
 
「ごめん、なんだかんだで俺って格好悪いよな」  
「ふふふっ、恭平に格好良さなんて求めてないよ」  
ごめん、嘘付いた。こんな恭平は堪らなく格好いいよ。  
「なんだよ…、悪かったな」  
ちょっとふて腐れる恭平、好き、大好き。  
 
「そのさ…俺たち、今までも、これからも一緒だよな、無理に急ぐこともないと思うんだ」  
「…うん」  
「俺は和歌子を大切にする、お前の隣は俺の場所だと思ってる」  
「うん」  
「その…和歌子、これからもよろしく」  
 
真っ赤になった恭平が手を差し伸べてくる。  
その手を両手で握り返して、私はうなずく。  
「はい、恭平、こちらこそよろしくお願いします」  
 
「っ!は、はいだなんて、使い慣れない言葉で返事するなよ」  
照れて後ろ向いた恭平の背中に、思いっきり抱きつく。  
「ふふっ、恭平ありがとうね、大好き!」  
「わわっ和歌子、生で胸が当たってるって」  
「当ててるんだも〜ん」  
 
恭平を好きでいて良かった。恭平が好いていてくれて良かった。  
幼なじみから恋人へと一歩踏み出した関係を噛み締めながら、夕焼けの最後の残滓が  
消え去りつつある部屋の中で、私と恭平は裸のままじゃれ合っていた。  
 
 

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