とある日常  
とある家で夫妻と思われる人物が話をしていた  
 
「今日隼人はお友達の家に遊びに行っているんだったな…」  
夫と思われる人物が、ふと昔を思い出すように話を続け  
 
「あれから一年か。光陵では引き抜きとかで勝負どころじゃなかったのに、  
土生君も山下君も…そんで隼人も今はこれまで以上に逞しく練習しているって話だしな」キッチンで調理の支度をしていた妻に向かいそういうと妻も  
 
「そうねぇ…毎日練習で勉強の方が心配とはいえ…いつも野球ができてうれしいとか  
土生君や山下君の事。それから新しく入った勇気ちゃんって子よね  
今日隼人が遊びに行っているのは勇気ちゃんって娘よね…  
隼人ったら光陵の女の子はみんなかわいくて胸の大きい理奈ちゃんや大人びたかな子ちゃんとかいるって言っていたけど  
隼人としては一番元気一杯な勇気ちゃんって子と仲がいいみたいね  
今日は勇気ちゃんの家で食べていくって言っていたし」  
と合の手を入れるのだった。  
 
今日は二人とも仕事が速く終わり、息子の隼人がチームメイトの瑞原勇気の家に遊びに行くと連絡が入って、夫妻だけの食事を楽しんでいるのだった。  
 
だが…不幸は予期しない所から襲いかかるのを橡浦夫妻はまだ知らないのだった。  
 
「ん?何か焦げ臭いな…」  
と橡浦父が言い…思った時にはもう…遅かったのだった。  
 
気になるあいつのストレート 外伝 VER:F/H  
 
その後…燃え盛る業火に橡浦家は包まれてしまっていた  
隣家からの出火に巻き込まれる形で、あっという間に火は燃え広がり、瞬く間に野次馬なども集まって来ていた。  
 
そして少し時をさかのぼり  
「いやあー今日も大変だったねぇ保奈美」  
とショートカットの少女が、炭酸抜きのコーラを飲んでエネルギーを補給していたのだった。  
 
保奈美と呼ばれたソバージュの少女も彼女からコーラのペットボトルを受け取り  
「んーーー生き返るね凪ちゃん!!」と舌鼓を打っていたのだ  
二人とも熱いのか下着姿のままだったが、二人とも少女とは思えないほど発育をしているようで…  
ブラジャーから胸があふれんばかりに盛り上がっていたのだ。  
 
この二人はソフトボールサークルリリアムでホットスポットコーナーコンビと知られている芙蓉凪と村田保奈美の盟友コンビだった。  
 
今日何でこのような格好でいるかと言うと…  
「保奈美・凪ちゃん……入るわね」  
とノックをして女性が入ると…慣れた感じで  
「綺麗にして置いたわ二人とも」  
とユニフォームを二人に手渡す  
 
「ありがとうお母さん」  
「おばさんありがとう!」  
との動作に保奈美と凪は続けざまに礼を言うのだったが、保奈美の母は  
 
「ケーキの味見を手伝いしてくれてありがとう。保奈美・凪ちゃん  
おかげで来週の売れ線が決まったわ」  
と仕事上の手伝いとして手伝ってもらったようだ  
その見返りとしてきっちりユニフォームを洗濯して返してくれる  
ただ流石に保奈美の母は娘と娘の親友の下着を脱がして全裸にする訳には行かず、下着だけは履いてもらったようだが  
 
そんな保奈美の母に対して凪は  
「あたいでよかったらおばさんや保奈美の手伝いを幾らでもしますよ  
おじさんが作るケーキは何時でも美味しいですし」  
と世辞ではなく本心から保奈美の父が作るケーキを褒めちぎるのだった。  
 
保奈美も  
「お父さんが作るケーキはなんかほっとする味なんだよね  
だからホッとケーキ…なんちゃって!」  
と照れながらも冗談を言うのだった。  
 
実際二人が褒めちぎる様に地元密着型の洋菓子店を保奈美の母は店の経営をしており、父はパティシエを務めている。  
味が良く値段も手ごろな為店の評判は高く。東小少女達が買い食いや家で食べる為に通うメッカとして有名であるが  
こっそりと危険を承知で西小所属の女の子が来たり、所謂上流階級と言われる付属小の少女達も  
同じく付属小に通っているリリアム副キャプテン鷲沢奈津の紹介・ネットや口コミなどで遠くからわざわざ買いに行くほど定評があるのだった。  
 
「保奈美ったら…面白い事を  
それから凪ちゃん。今日はその格好だからキッチンに入れてあげられなくてごめんね」  
と保奈美の母は、普段保奈美の父と一緒にケーキを作る所が、  
流石に今回は娘だけならまだしも半裸の状態で娘の親友を招き入れる事が出来ず、部屋である程度待ってもらったのだ  
 
だが凪はそういう事もあるとばかりに  
「いえいえおばさん。おばさんの言うとおりだとあたしも思いますから。  
おじさんとかにも気にしないで下さいと言っておいてくださいよ」  
と気にしていない様子だった。  
 
そんなこんなで女三人で話が弾むのだったが…凪の携帯から着信が入り  
一同はたちまち緊迫した表情になる  
普段の着メロと違って重々しい…こういう着メロの時は近隣で何か大事になった時だ。  
 
「凪ちゃん……この着メロ……おじさん…だよね??何か…あったのかな?」  
とあからさまに不安げな表情で凪に言うも、凪は保奈美に少しごめんと頭を下げ携帯を取るのだった  
 
「もしもし…オヤジ??どうしたの???  
……え…火事??どこで……それ…ヤバくない??うん…大丈夫……ちゃんと連絡網通り回すから」  
と凪は緊迫した表情で父親らしい相手と会話を交わしているようだった  
 
保奈美も保奈美の母も心から不安げな表情のまま聞いていたが、凪は電話を切り  
二人に向かってこういうのだった。  
 
「大変!!オヤジの話だとS地区で大火災だって!!  
どうも橡浦の両親も巻き込まれたみたい!!とりあえず良く橡浦とつるんでる土生の家に連絡入れるから…  
おばさん電話借ります!!」  
と大急ぎで凪は勝手知ったる保奈美家の電話で土生の家に掛ける  
 
だが勿論この場合は……  
「……もしもし!!土生?大変!!橡浦の両親が…あれ??」  
と凪は少し戸惑ってしまった、電話を取った主は  
 
「君は…どう言う事なんだ?橡浦のご両親がどうしたって???」  
と事情が飲み込めず困惑しているようだった。勿論電話を取った人物は土生ではなく光陵監督中井その人だったのだ  
 
凪は気を取り直し、自分の素性を相手に伝え、中井も事情を察し  
橡浦家付近で大火災が発生し、大変な事になっていると理解した  
「中井さん。土生が今どこにいるかわかりませんか?  
とりあえずあたいは他のクラスメートとかにも伝言を回さないといけないので」  
とひとまず凪としては土生や橡浦と仲のいい山下とも連絡を取りつけたかったが  
周囲のクラスメートにも連絡を回す必要もある為申しなさそうに告げるも、中井は  
 
「あいつやみんなに関しては俺の方からも連絡を入れるし、土生の携帯番号も君に伝えるから心配をしないでくれ。  
それよりも君は一刻も早くクラスメートに連絡を頼む」  
と凪に連絡を頼み話しこんだ後、中井から電話を切って連絡を入れる様子だった。  
 
保奈美は凪にどうだったと言う表情をするも、凪は  
「保奈美。クラスの連絡手伝って  
土生達は中井さんが連絡を取り付けてくれるみたいだから…もちろんあたい達はあたい達で連絡網は回す!  
それからまたオヤジからも細かい事情は連絡してくれるだろうけど」  
と迅速に連絡を入れる事にするのだった。  
 
二人で…電話と携帯を使った連絡は迅速に行われ、瞬く間にクラスメート全員事情を知る事となったのだ。  
 
その頃中井監督は土生に連絡しようとしたが、土生の方から電話がかかり、今日因縁深い巨神の件で話した後  
「実は俺からお前に…いやお前達に連絡をするところだったんだ。  
たった今橡浦の家付近で火災が起きて両親が巻き込まれたようだ……まだ細かい事情なども分からんが…それなりの覚悟をしてくれ  
それから理奈は今近くか?悪いが土生。お前の方からも理奈や赤松らにも連絡を入れてくれ  
芙蓉君達からも連絡が行くと思うが、改めて俺もかけられる限り連絡を付けるから」  
と土生にこの一件の連絡をチーム名と全てに回して欲しいと頼み…土生も  
 
「分かりました監督。理奈は俺と今一緒なんで事情を話して、赤松や連絡をかけられる奴に限り連絡を取ります」  
と了解する…ただ土生としては先日チームに入った緒方かな子に関して、彼も中井監督も連絡を取り様が無く、後回しにせざる負えないと言う事だった。  
 
「それじゃあ頼む」  
と中井監督は電話を切るのだった。  
 
そうしている間…土生の遠くから鼻歌が聞こえ、翔の前に上半身裸の爆乳少女でエースの理奈が現れた。  
「翔!どう??今日はHなあたいのおっぱいにチョコレートを塗ってみたんだけど?」  
と事情を知らない理奈が何時もの様に翔と乳繰り合おうと、自慢のJカップバストにチョコをかけて何時も以上に激しく吸ってもらいたかったようだが  
翔は理奈の積極的な態度にドキッとしつつもそれどころじゃないとばかりに  
 
「吸いたいな…でも今はそれどころじゃなくなった!  
橡浦の近くで火事が起きて橡浦の両親が病院に担ぎ込まれたようだ!  
病院の場所とか細かい話はまた後で中井監督や同じ学級の芙蓉って奴から入ると思うが…」  
 
と今連絡を受けた事をかいつまんで話し、理奈も流石に青ざめ  
「橡浦君の両親が?橡浦君は!!」  
と心配そうな表情で翔に尋ねるも、翔は首を振り  
「橡浦自身は巻き込まれていない……無事だ。  
だが中井監督は覚悟をしておけと言っていた…もしかしたらも…ありえる」  
と橡浦はたまたま勇気の家に遊びに行っていたおかげで巻き込まれずに済んだが、両親の具合は良くない様子だった。  
 
理奈は涙ぐみ  
「これから…巨神と試合って時に……橡浦君……」  
橡浦家に起こった悲劇を嘆くも、翔は理奈を抱き寄せ  
 
「俺も…辛いさ。俺とあいつは事情こそ全然違うが、家族を失う気持ちは俺にもよく分かる  
だけどな理奈?そういう状況だからこそ沈むな…沈んだ表情のままだったら橡浦も悲しむ」  
とチョコが自分の服に付くのを気にせず、たわわな理奈の爆乳が…乳首や乳輪の熱まで自分に伝わる位に抱いて慰める。  
 
理奈も土生に抱かれたまま  
「翔…分かった。出来るだけやってみる……だから」  
言葉とともに潤んだ瞳で土生を見つめる  
 
土生はそんな理奈を可愛いと思いながらも  
犯罪的な爆乳を押しあてられる事でこんな時に肉棒が臨戦態勢になった事を呆れながらだが、性欲には勝てず  
「まあ。とりあえず今日中にたぶん芙蓉辺りから詳しい事情が聞けるから、詳しい場所を聞いてからその病院に行こう  
だけどそのまえに服汚しちゃったから一緒に風呂入ろう理奈。  
お前さんのチョコ味おっぱい吸って…俺も元気を出したいから」  
と明日と切り替え、意気揚々と風呂に行って楽しもうと言い  
 
理奈も翔に抱きついて  
「うん!!翔にあたしのおっぱい沢山吸って…あそこも弄って欲しいな……  
出来れば翔とSEXしたいけど…駄目?」  
おねだりするも、翔は  
 
「SEXまではねぇ…でも理奈の綺麗なあそこもおっぱいも弄ってやっから」  
と存分に理奈を可愛がる事を決め、更衣室でお互いの興奮した裸体を使って、何時もより激しい淫らな遊びを楽しむのだった。  
 
勿論風呂から出た後は大急ぎで着替え、橡浦にメールなどを送って事情を聴き  
 
その直後  
土生の携帯が鳴り響き、土生本人が「はい?」と取ると少女の声が響き  
 
「土生!良かった!!  
中井さんからあんたのケータイ番号聞いておいて…詳しい話は橡浦からも聞いていると思うけど」  
と噂をすれば影とばかりに、芙蓉凪から連絡が来た。  
 
土生は本来凪とはあまり接点が無く、そんなに親しい間柄でもないが別段気に留めず  
「わりいな芙蓉。中井監督からも聞いた  
お前病院先とか詳しく分かるか?俺も橡浦から病院の場所とか聞いたが、流石にあまり細かい所まで書けてなかった  
悪いが細かい部屋とか教えてくれねえか?両親が面会できるような状態じゃないのかとかも聞きてえし」  
と細かい事を聞き、凪もそれに答えるかのように  
 
「ああ…命は取り留めたみたいだけど思いっきり煙を吸っちゃったみたい  
意識が回復してないってお袋は言ってたな…面会は何とか大丈夫みたい…  
先にオヤジが橡浦と付き添いなのか勇気ちゃんって女の子と一緒に病院へと連れてったみたいだからあんたも行ってやって」  
と自分が知りうる限りの情報と見舞いに行ってやれと土生に伝え  
 
「それじゃああたいはこれで電話を切るから。それじゃあまた学校で…じゃあね」  
と伝え、土生もそういえば瑞原家に遊び行ってたなと思いながらも  
 
「今日は助かった。ありがとう芙蓉…俺も切るわ」  
と凪に礼を言って電話を切る。  
 
その様子を見ていた理奈だったが、そんな理奈に翔は向き直り  
「病院の場所と詳しい部屋番号が分かった。俺達に出来る事は限られているが  
橡浦とユキが一緒にいるようだ。行こうか理奈」  
と病院場所など説明し、土生と理奈はそのまま病院へと向かう。  
 
そしてそこらへんの時間帯で凪の父がどうしていたかと言うと  
 
「まずいぞ…もうこんなに火が……」  
消防士として現場に駆け付けた凪の父だが、火の周りが速く家の全焼は避けられない状況だった。  
だがこのまま手を拱けば財産以前に橡浦夫妻が焼け死ぬ。或いは呼吸不全で死ぬのはまず間違えない。  
 
大急ぎで「急ぐぞ!!とにかく橡浦さん夫妻を助け出すんだ!!」と突撃するが、門前で男の子と女の子が揉めている状態だった  
こんな時に何をと舌打ちしつつも、どういう状況だと思い近寄ると  
 
「離してくれ勇気!俺の脚だったら…オヤジとお袋を助けて戻ってこられるから!!」  
と良く見たら以前父母参観に来た時見かけた橡浦隼人で…必死で止めている少女は  
「ダメ!!こんなに火が回ってたんじゃ!!よしんばチュウが両親を助けられても、今度はチュウが死んじゃう!」  
と誰だか知らないが泣き出しそうな表情で橡浦の腕を掴んで離さなかった。  
 
その様子を見ていた凪の父だったが、消防士として  
「君達!今すぐここから離れるんだ!!危ないから下がるんだ!!いいね!!」  
と二人を力ずくで下がらせ、懸命な消火に当たる  
 
凪の父やスタッフの必死な消火作業に突破口が見え、凪の父は  
「よしっ!!俺が行く!!皆は周辺の消化を…急げ!!!」と言いいまだ紅蓮の炎で焼かれる橡浦家に突撃を敢行する。  
 
凪の父は後ろから  
「…ジ!!おや……!!!」  
「……丈…夫!!絶…チュ…の……は助かる…ら!!」少年少女の悲痛な声を聞き  
死んでも助けると心に誓うのだった。  
 
その甲斐もあり凪の父は  
「…橡浦さん!大丈夫ですか!!くっ!!意識が…だがまだ間に合うかもしれん!!」  
何とか夫妻を担ぎ、医療班に二人を預けるのだった。  
 
担架で運ばれる橡浦夫妻を見届け、何とか周囲の炎上は抑えられたが橡浦家の炎上は未だ止まらず、懸命に消化したがもう手遅れだった。  
 
燃え朽ちた家の消火を仲間に任せ、凪の父はうなだれる橡浦隼人と少女の元へと歩む  
「橡浦君……すまない。もっと俺達が速く到着していれば」  
と自分を責めるが、少女は首を振り  
 
「そんな事無いです…おじさんは必死でチュウの…橡浦のご両親を助けてました…それは私が保証します」  
と手落ちが無かったとはっきり答える。  
 
そんなやるせない雰囲気の中。携帯から連絡が入り取ると  
「ああお前か…おう……橡浦さん達は…そうか今集中治療室に……分かったまた落ち着いた時にでもかけ直すわ」  
と電話を切り二人に対して  
 
「橡浦君。ええと…君は…」  
と改めて少女の名を聞こうと尋ね  
 
少女の方ははっきりと  
「瑞原勇気です」と勇気は凪の父に名前を名乗るのだった。  
 
凪の父はそれを聞き  
「橡浦君・勇気ちゃん。  
今俺の娘や保奈美ちゃんがクラス中に連絡を入れているから、土生君達もすぐに事情を知って駆け付けるだろう  
俺の方で橡浦さんが収容された病院に連れていくから…行けるかい橡浦君?」  
と病院に行く事を勧めたので、困憊状態の橡浦だったが  
 
「助かります。芙蓉のおじさん」  
と元気なくだが凪の父に答え、消防車で病院まで連れてってもらう事になった  
言うまでも無くだが勇気も同行と言う形となる。  
 
そして橡浦の携帯にはひっきりなしに光陵メンバーからメールが入り  
“橡浦大丈夫か!”  
“ご両親が担ぎ込まれた病院はどこ?あたし達もすぐにいくから”  
などなどと心配や安否を気遣う文字が流れていた。  
 
それを見届けるが、今の橡浦は何とか病院の場所と礼を言う事しか出来なかったのだった。  
暫く長い時間が過ぎる中。橡浦と勇気は二人で待合室の椅子に座っていたが  
そんな時担当医師であろう白衣の男が橡浦達の前に来て  
“少し話が……”と橡浦のみ来てもらい、話を聞く事になったが……  
 
「こんな状況下で済まないが…君のご両親は…もう目を覚ます事が無いかもしれない」  
との衝撃的な内容の言葉を投げかけられた  
何でも致死量寸前まで煙を吸ってしまい、意識が回復する見込みが現状絶無と言う事を  
もう一生寝たきりの植物人間として、今後生きていく可能性も視野に入ってくると言う事を……  
 
「そんな…そんな……」  
絶望に打ちひしがれる橡浦を医師も不憫そうな表情で見つめながらも  
「私達も君のご両親の意識が戻る様に懸命に動く。だから希望だけは…捨てないで欲しい」  
と慰めの言葉をかけるが…今の橡浦にはその言葉に答える元気は残されていなかった。  
 
そのまま橡浦は黙って礼をした後。勇気が待つ待合室に戻るが  
「チュウ!チュウの両親は??」と自分に好意を持つ少女から心配そうな表情をされ、橡浦は元気なく  
「…ユキ…」とその少女に答えるのが精いっぱいだった。  
 
だが何とか精気を振り絞り…橡浦は  
「病院の先生から部屋を聞いたから…見に行こう……ユキ」と勇気に伝え、勇気も黙って頷くのだった。  
 
その部屋に向かう中橡浦は勇気の体を見ていた  
勿論スケベな意味では無く…もっと深刻な意味で……偽りの希望にしがみつこうとして  
 
(オヤジも…お袋も……もう起きない……だったら…だから……俺は…ユキを……)  
勇気の肢体は小学四年生とは思えないほど発育が良く、常日頃から薄着の為  
階段を上る度に胸が揺れ、橡浦に誤った思いを抱かせてしまう。  
 
そう。“家族”を作ると言う間違った思いに橡浦は取りこまれ  
取り返しの利かない過ちと更にそこから真の愛をはぐくむ事となるのだが、それは後日の話である。 劇終  
 

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