†意識侵食 三話†  
 
 
 
「あぁ……あ゛…………あぅ」  
 中位亜族の触手から解放されたスザンナは、裸体を荒れ野でくねらせながら呻いていた。  
 口から涎が流れ出し、瞳からは生命の光が消えかかっている。亜人への変貌の中途なのだろう。  
「スザ……ンナ……」  
 手遅れを察したラケルが、全身鎧の中から重苦しく声を絞り出す。  
 これは自分のミスが招いたことだ。  
 ただの巡回任務だと甘く見て、少人数での行動の許可を下すなど、判断が軽率すぎた……  
「我は亜族三柱がひとり、‘幻影の黒槍士’ガド。聖華女戦士団の長・ラケル、貴殿に決闘を申し入れる」  
 感傷に浸る間もない。  
 ふいに告げられた言葉の内容は単純明快だったが、ラケルはこの声に戦神マルタの啓示のような響きを覚えた。  
 総数四百の精鋭の女戦士を預かる身として、このいざないを安直に受けるわけにはいくまいが。  
 他の選択肢はというと……  
「……よかろう。貴様の申し出、受けてやる」  
 今は、スザンナ達のことを考えるのは止めよう――  
 言下に、ラケルはガシャっと背の得物に右手をかけ、ゆっくりと抜き放った。  
 背丈は自分の三倍以上はあるであろう黒影の巨人・ガドに向けて、光刃がきらめく五つに分かれた穂先が露になる。  
 黄金の槍身を有するその得物は、神槍「ブリューナク」と呼ばれている。  
 柄頭には、純粋な輝きを放つ無色の宝石がはめ込まれていた。  
 「ブリューナク」は、肢体のどの部分であろうと、曝せば効力を失してしまう槍だ。  
 ラケルが、全身をフルプレートで固め、頭部さえも視界の悪いアーメットで覆っているのは、その為である。  
「みなっ、手出しは無用だ!」  
 後方で身構える女戦士達に向かって、戦乙女の如き業声を飛ばす。  
 返答は、ない。  
 だが、主のその一言は、戦士達を退かせるには十分の迫力があった。  
「これは、私が払わねばならない火の粉だ……」  
 決意漲らせる一言を合図に、ラケルはガドに向かって歩み出す。  
 一方、‘幻影の黒槍士’の方も、人族の男の二回り以上太そうな腕を上げ、ラケル達を包囲しようとしていた中位亜族を下がらせた。  
「一度……交えてみたかったのだ」  
 低くて重い、呟くような大きさなのに脳に強く響き渡る声は、震えを帯びているようにも聞こえた。  
「我が邪槍「ロムルス」と神槍「ブリューナク」、一体どちらが覇者を導くに値する槍なのか……」  
 独白に乗せられ発せられたのは、自嘲の笑みか。それとも自信からくる含み笑いか。  
 ほんの微かに、巨影から聞こえ来る笑声には、ラケルはほんの少し眉を動かした程度で、さほど驚きはしない。  
 そして。その一笑と共にガドが――いったいいつから持っていたのか――漆黒の槍の穂先をラケルに突き向けた。  
 
 真っ黒な槍身は、ラケルの持つ金色の神槍「ブリューナク」とは、まさに対照的といえる雰囲気である。  
 風が吹いた。  
 晩景となった荒れ野の中心に木の葉が舞い、対峙する両雄の間を割る。  
「戦神マルタよ!」  
 ヴォオォン!  
 炎が拡散したかの如し小さな爆音が響いたのは、全身鎧を着こなした人族――ラケルの中心からだった。  
 ラケルの身体を覆ったのは、彼女が持つ槍と同様の、金色の光だ。  
 やはり……力が入らないか……  
 眼前の相手と刃を交える前から、ラケルは自分が不利な状況に立たされていることを知っている。  
 その原因は……  
「戦神マルタよ……」  
 ヴォオォン!  
 同じく、ガドも全身を暗黒で覆い始めた。同時に、口を開く。  
「槍を持つ者同士だ。触手は使わないでや――」  
「はぁぁああっ!!!」  
 ガドの台詞を遮るように、ラケルは射程外から‘宝翔技’を放った。  
 右手に持つ神槍を光速回転し、螺旋を描いた光槍を飛び道具としてぶつける技――【旋空光槍】。  
 それを迎え撃つガドも黙ってはいなかった。  
 右腕に持つ、暗黒に覆われた邪槍を、迫り来る【旋空光槍】に突き込んだ。  
 何にも喩えようが無い、光と闇が交錯する混沌とした音が、広大な荒れ野に反響する。  
 だが、それも長くは続かない。  
 【旋空光槍】は徐々に削られていくかのように消失していき、そして……  
「――!!」  
 さしものガドも、眼前の女戦士の行動に驚愕した。  
 何時の間にか至近距離にいたラケルが、【旋空光槍】が完全に消えるか否かというタイミングで、神槍を繰り出してきたのだ。  
 だが――  
「っむぅうん!!」  
 なんと、ガドは【旋空光槍】を完全に消滅させるのと同時に、胴に突き出される神槍の穂先を邪槍で払いのけるという、神業をやってのけた。  
 軌道を強引にずらされたラケルは身体をよろめかせたが――すぐに、静止‘させられた’。  
「…………!!!」  
 やや突っ伏した体勢で、自分の胸部に突き立った邪槍を見つめる。  
 次第に湧き上がる苦痛と快感にも、ラケルは声を上げることはなかった。  
「何故だ……」  
 呟くとともに、人族の女戦士を貫いた邪槍を引き抜く。  
 黒い影の巨人が放った声には、憤怒と落胆がないまぜに含まれていた。  
 フルプレートにはもちろん、ラケルの肢体にも外傷はないが。彼女は鎧を軋ませながら、荒れ野へ伏した。  
「槍士の礼節を欠く行動に加え、腕もその程度とは……お前は本当に、神槍に認められた者なのか……?」  
「…………」  
 神槍を地に置き、跪くラケルに、返答は無かった。  
 何とも、下らない最後だな――ラケルは、心の中で自嘲した。  
 たかが生理ごときに、人生を狂わされるとは……  
「……つまらぬ」  
 今度ガドが独語した声は、落胆に満ちていた。  
 ――サッと手を上げる。  
 控えていた中位亜族の軍勢が、一斉にラケルの後方の女戦士たちに殺到した。  
「みなっ! よく聞け!!」  
 部下が恐慌する前に、ラケルは叫んだ。  
 邪槍で貫かれた苦痛と快感のせいか、声がうわずり、枯れている。  
「後軍二百! セリカを伴って王都へ退け! 前軍は……」  
 言葉に詰まった。  
 いいのか、本当に。これで……  
「……前軍二百! 私と共に残り、亜族どもを迎え撃て! 聖華女戦士団の意地を見せるのだーーっ!!!」  
 おおーっ!  
 一斉に鬨の声が沸き起こった。  
「では…………いくぞっ!!」  
 団長を刺されても尚怯まない部下達の轟きに、一瞬躊躇した自分を叱咤しつつ、迫り来る亜族どもに神槍を振るい始めた――  
 
 しかし。  
 結末は無惨なものであった。  
 前軍は、呆気なく全滅……  
 荒れ野のそこここで響く嬌声。そして仲間が亜人と化してゆく光景に、さしものラケルも臍を噛まざるを得なかった。  
 再度、自身の腹部に突き込まれた邪槍を伏し見ながら、自分の非力さと不運、そして亜族軍の強大さを呪った。  
 だが、彼女にとって一番悔やまれるのは……  
「何か言い遺すことはあるか?」  
 ラケルを遥かに凌駕する巨躯の黒い人影・ガドが、嘲弄を交えながら訊ねてきた。  
「殺せ……」  
 即答だった。  
 このような化け物に遺す言伝など、ない……  
「そうか……」  
 ラケルは、ガドの気落ちした呟きに気付いたが。  
 それに思案するいとまも猶予も与えられない。  
 全身鎧を纏った女戦士の身体に、黒光りする、無数の触手が襲来した。  
「…………アベ……ル」  
 全身鎧を次々に引き剥がされる感触を覚えつつ、眼を瞑しながら恋人の名を綴った……  
 
 前軍が全滅の憂き目に遭う中。  
 後軍もやはり、亜族の追尾を撒けずにいた。  
 二百の軍勢も、残りは十。  
 一方、追っ手の中位亜族の数は、軽く見積もって二十はいるだろう。  
 後退戦は、進攻戦と比較して消耗が激しい。  
 更に、亜族の手にかかった味方は亜人となる。  
 亜人の特徴として、人族の女は無視するというのがあるものの、危害を加えようとすれば当然反撃してくる。  
 うかつに斬ろうものなら中位亜族以上の力でもって抗してくるのだから、たまったものではなかった。  
「セリカ様……お許しを……」  
 セリカ御付きの従戦士・アンナが、少女の小さな身体を抱え、自分達を包囲する中位亜族を見て震えながら赦しを請うた。  
「やめてよアンナ」  
 アンナの、頭の左右に分けて垂らした髪の片方をいじりながら、セリカは言う。  
「まだまけたわけじゃないのに……」  
 事も無げに言葉を綴る少女の顔は無表情だったが。  
 この状況で負けたわけじゃない……?!  
 情勢は決まりきってるのに、何言ってるのよこの子は!!  
「シャアアァッ!」  
 奇声をあげながら飛びかかってくる、人影の身体を有する中位亜族。  
 同時に繰り出されるのは、足・手・口と五箇所から発される触手だ。  
 繰り出す数こそ下位亜族と変わらないが、触手自体が固く、斬りにくい。  
「ひっ、いいいいっ!!!」  
 狂乱じみた悲鳴を上げながら、女戦士達は触手を迎え撃つも。残念なことに、荷が重い相手だった。  
 容易に捕らわれ、剥がされ……  
「あぁあっ! うぁああっ……!!」  
「くっ……ぐう! くはっ、あっ!!」   
「いやっ、イく! ……イくぅっ!!」  
 あまりにも呆気なく。次々と、女戦士たちは墜ちていった。  
 
 絶頂に達した彼女達は亜人となり……残るは、セリカとアンナの二人だけ。  
「ひ……い……あぁ」  
 アンナは、顔中をぐしゃぐしゃにしながら嗚咽を洩らし、しゃがみこんでセリカを抱きかかえていた。  
「どいてアンナ。うごけないよ」  
 なんと。  
 セリカは無情にも、抱きついていたアンナを強引に引き剥がしたではないか。  
「そんな……セリカ様!! セリカさまあぁっっ!!」  
 幼い少女に手を伸ばしながら、懇願するように泣き叫ぶアンナ。  
「シャアアアァー!」  
「ひいっ……あぁ……!!!」  
 恐慌し、言葉を失っているアンナに、無数の触手が覆い被さった――  
 
「つまらぬ……」  
 聖華女戦士団の後軍を追った中位亜族達の方向へ歩みながら、人型の黒い巨影は独りごちた。  
「何故だ…………何故、私はあのような者を追い求めた……?」  
 独白の声には、明瞭たる意気阻喪とした空気が漂っていた。  
 そうだ……私が初めて、間に人を立てずハスター様に申し出たのだ。  
 ホロフェルネス王国に、「鎧金槍士」と呼ばれる神槍使いがいると聞き、いても立ってもいられなくなった。  
 久方ぶりに身体の戦慄(わなな)きを覚えたというに……それが、なんだ!  
 姑息な手は使うわ、腕は及ばないわ……全く腹立たしい!  
「これから先……む?」  
 ふと、‘幻影の黒槍士’ガドは足を止めた。  
 どうやら、未だ聖華女戦士団は全滅していないらしい。  
 遠巻きから窺うに、手練の女戦士一人に苦戦しているようだが……  
「くっ……あぁあ゛っ!!」  
「……っ!!」  
 亜族三柱と呼ばれる彼が一日に二度も驚愕したのは、今日を除いて他にあっただろうか?  
 人族には不可視なガドの双眸に映ったのは、どう繕っても十五には満たない少女が、双剣を振るって中位亜族達に抗している光景だった。  
 装備はぼろぼろ、表情にも余裕は感じられないが……どこか、心の内では、その状況さえも楽しんでいるような雰囲気がある。  
 まだ子供もいいところだろう、成長したら一体どうなるのか……  
 この後のガドの行動の動機を知る者は、ガド自身だけである。  
 ――サッと手を上げる。  
 別に、中位亜族はいつもガドが挙手したのを見ているわけではないが。  
 それが合図となって、手練の少女を攻め立てる触手が止んだ。  
「……!?」  
 突如退き始めた中位亜族達に、訝りと、いかなる訳か怒りの視線を送る少女。  
 隠すべきところだけ隠しているといったその装備を見るに、相当危険な状態だったはずだ。  
 胸の部分だけ残っているレザーベスト。同じく、タイトミニのレザースカートはパンツが見えるほど破けてしまっている。  
 二本に分けて結った、胸元に垂れている金髪はぐしゃぐしゃで、整った顔立ちには物凄い険の深さを滲ませている。  
「ほう。その様な齢でそこまで闘えるとはな」  
 低く重い、天啓の如し声が、双つのレイピアを駆る少女――セリカに叩き込まれた。  
 
 声の主の方に碧眼を動かす。二人を遮断するものはない。  
 ‘それ’は、セリカの感覚で約二十歩ほどの距離にいた。  
 人族の男の三倍以上はあるであろう、黒い人影。  
 ラケルは万一を鑑み、セリカを後軍の、それも最後尾に座させていたため、彼女がガドを目にするのは初めてである。  
「しかし、残念だ……」  
 発言通り、心底未練が残るといった口調でいうガド。  
「せめてもう五年経っていれば、立派な双剣士として我と渡り合えたかもしれ……」  
 言葉を切る。  
 セリカが細剣と脚を駆り、自身に急接近してきたためである。  
「おねえちゃんを……おねえちゃんをかえせっ!!」  
 想像に難くないが、セリカはすでにラケルがどうなったか、何とはなしに分かってしまっていた。  
 十二という齢にして冷徹な彼女も、七年ほど剣の修行を共にしたラケルには、特別な感情を芽生えさせていたのだが……  
「………………残念だ」  
 音も無く。  
 何時から持っていたのかも、また何時繰り出したのかも分からない。  
 漆黒の邪槍「ロムルス」は、疾走していた小さな少女の腹部を、見事に刺し貫いていた。  
「――っあああぁぁぁぁーーっっ!!!」  
 かつて体感したことのない苦痛――と何か別の感覚――に、セリカはあどけないおもてを思い切り歪ませて絶叫した。  
 槍は直ぐに引き抜かれたものの、右手のレイピアを投げ出して外傷の全く無い腹部を押さえながら、地面をのたうち回っていた。  
「ハスター様は、‘人族’を滅せよと仰られた……」  
 激痛と、それに伴う初めて味わう快楽という感覚に、少女はとも嬌声ともつかぬ悲鳴を発していた。  
 そんなセリカを見下ろし、嘲るガドの心中はいかなるものなのか。  
「感謝するんだな。お前は一人目の、‘意識のある’亜人になれるのだからな」  
 言下に、黒き巨影の手・足・口から、太く黒いぬめりのある触手が飛び出し、のたうつセリカに迫った。  
 セリカはふと顔を上げ、歯噛みした口から涎を垂らしながら、襲来する触手をねめつけるが。  
 はげしい痛みと、何かヘンな感覚があまりにも気持ち悪く、残った左手のレイピアすらも繰り出す気力は残っていなかった。  
「うっ……あっ…………あ゛ぅっ!!!」  
 四本の触手に、細く華奢な四肢が拘束され、ぎしぎしと四方に延ばされる。  
 次いで、ガドの口から出でしぬめった触手が、幼い肢体を這い始めた。  
「やっ!! なっ、やめ……あくっ!」  
 一本の触手は耳から首筋を舐めるようにつたい、胸を隠していた僅かな皮の布地を破りさる。  
「…………!!!」  
 ビリィと剥ぎとられる衣服を、紅葉を散らした顔を向けて見つめるセリカ。  
 なんとなく、本当になんとなくだが。  
 セリカはこれから何が起こるのか、察してしまった。  
 十二歳とあって性知識は殆ど無く、また剣に打ち込んできたためか、同年代と比べてもそこらへんは疎いものの……  
 ――と、服をやぶった触手が、膨らみかけた胸の突起をつんつんと突き、そして擦り始めた。  
「くあっ!! や、やめっ……やめろぉっ! ……あぁぁっ!!!」  
 乳首を弄られることにより、本人は意識せずとも幼い声帯が紡ぐのは、‘ヘンな声’だった。  
 初めて味わう快楽は、人によっては恐怖に感じることがある。今のセリカがまさにそれだった。  
 じんじんする股間部にクる‘何か’を、必死に堪える。  
「あぅ……やぁ、やだよ……こんなの、やだあぁ……」  
 彼女の意思に反し、内より湧き上がる快感と、触手の侵攻は歯止めがきかない。  
 ぬるぬるした太い触手は、あどけない胸をひとしきり弄り終えた後。  
 胸元から腰をつたい、下腹部の方へと黒き魔手を迫らせる。  
 
「や……やだ、よ…………もう、こん……な……」  
 いつしか、セリカは泣きじゃくっていた。  
 まるで、先ほど自分にすがってきた従戦士・アンナと同じように、命乞いにも似た懇願の声を発していた。  
「安心しろ……命は取らぬ」  
 嗚咽に浸るセリカを宥めるように、四肢と口から触手を発しているガドは言う。  
 口より伸び、セリカを玩[もてあそ]ぶ触手が、既に破れかけだったタイトミニスカートをビリィと剥ぎ取った。  
「初めて味わう愉楽に恐怖しているのだろうが、力を入れると苦痛を伴う。脱力して我が触手に身を任せるが良い」  
 ふざけるな! できるわけないだろう!!  
 表には出さない(出せない)が、セリカは内心で思い切り罵声を飛ばしていた。  
 だが。文字通り、そんな彼女を嘲笑うかのように。  
 触手は、股下からセリカを攻め立てる。  
「ひうっ!! ……っいぃ……!!! はあぁっっ――……」  
 純白の布地の上からすじをなぞられ、少女は自然なあえぎを発しながら、えもしれぬ感覚に身をよじる。  
 ふつう、初潮を迎えていない少女は快楽に対する抵抗力が低く、こういった行為だけでも意外と容易に達してしまうものだが。  
 それをさせないよう焦らしているのが、ガドだった。  
「あぅ……はっ……あぁぁっ……!!」  
 股間部に奔る気持ち悪いと思っていた感覚は、知らぬうちに気持ち良さに変貌を遂げていた。  
 少女が紡ぐ稚[いとけな]い嬌声が、それを体現しているといえよう。  
 ――と、股間の周辺をまさぐっていた触手の動きが一瞬止まり。  
 しゅるしゅると純白の下着に巻きつき、おもむろに太腿までずりおろした。  
「…………!!」  
 二本に分けて結った金髪を胸元に垂らした少女の表情は、瞳孔こそ大きく見開かれているものの、今までのような恐怖の色は窺えない。  
 寧ろ、淫らに口を半開いたその姿からは、何かを求めているようにすら見える。  
 そんな彼女に応えるように、今度は、触手が直接秘処や尻の穴をなぞり始める。  
「あぁっ! はんっ! んぅ……あぁぁん!!!」  
 粘液をまとった黒い触手がにゅぷにゅぷと微妙な猥音をたて、あくまで挿入はせず股下を弄り回す。  
 たまにクリトリスに触れられ、その度にセリカはびくっと肢体を大きくふるわせる。  
「あんっ! はぁん! んっ、んっ! ふあぁあっ!!」  
 少女の発する声も、悦楽に興じる、艶かしさに満ちたものに様変わりしていた。  
 初の経験である物凄い愉悦に。  
 このまま、ずっときもちよくなっていたい――  
 一瞬ではあるが、セリカの脳内にそんな思いが駆け巡った。  
 プライドが高い彼女のこと、口について出ることはないが……  
「ぅんっ! はあっ……えっ? …………やっ、やぁあああ!!!」  
 セリカの疑念の声は、衝撃と、新たな快楽の波に呑まれる。  
 股を這っていた黒手が、アナルに照準を合わせたと思うと、そのまま挿入へと移行したのだ。  
「いたいっ!! いやぁあっ! いたっ、あっ、んっ! あはっ、あんっ! んぁああ……!!」  
 苦痛も、最初の僅かの間だけだった。  
 ぐちゅぐちゅと水音をたて、繰り返されるピストン運動に、すぐによがり狂うセリカ。  
 十二歳の少女とは思えないほど、艶やかである。  
「……さて、そろそろ別離の時だ」  
 ふと、長い間口を閉ざしていたガドが、快楽にあえぐセリカに喋りかけた。  
 両腕を頭上で組まされ、両足を拡げて秘処にモノを突き込まれている彼女の耳には、恐らく入ってはいないのだろうが……  
「もし次に会う機会が会うならば、互いに更なる精進を重ねた状態であいま見えたいものだ……むろん、‘こっち’もな」  
「! ひっっ!! いやっ! あっ、はっ、ああぁぁっ!!!」  
 何か思わせぶりな事を言うなり、ガドは少女のアナルを攻める触手の動きを速めた。  
 ぐちょぐちょに穢される花弁から無色の液体が大量に迸り、そして……  
「――だめっ!! …………なんか、くるっ!!! きちゃ………………」  
 歯を食い縛ってわななく幼い顔は、強く閉ざした双眸から涙が伝い、小さな口元からは涎を垂らし……絶頂に、達する。  
「――ひゃあぁぁぁんっっ!!!」  
 至高の喘ぎと共に、歯噛みしていた唇が大きく開かれる。  
 瞬間、セリカは、自分の体内に注がれる‘何か’と、自分の体内からクる何かを、同時に感じることとなった―― FIN  
 
 

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