「こ……この変態ッ!」  
 
さすがに「大人のおもちゃ」に関してのディープな話が出たのには面食らって、彼女もつい本気で叫んでしまった。  
でも、そんな話が出たことで、ちょっとドキドキして……  
気になって頭から離れなかったので、ネットで調べて……  
そして見つけた一つのサイトが、何か凄いインパクトで、心に焼き付いて、どうしても惹かれてしまって、  
つい……足を運んでしまった。  
……「大人のおみせ」に。  
 
細やかな体毛に包まれた、細長くねじれた桃色のヒモ。  
人間の肉体には本来存在しない器官、「尻尾」をあしらった……尻に挿入するタイプの、性玩具。  
一人で自分を慰める時に、戯れで尻に指を挿れてみたことはあったけれど、  
異物を挿入するなんて初めての経験である。  
だが、ぬるぬるしたローションをたっぷり絡ませた指を、入り口に出し入れされているうちに、  
彼女は段々とむずむずするような欲求が湧き上がってくるのを感じた。  
空腹と似て非なる、「欠けている部分を埋めたい」という感覚。欠損を埋めたい……穴を塞ぎたい……挿れたい……。  
経験が少ないとは言え、指による前戯でそれなりにほぐれたらしい尻穴が、ひくひくと小さく震えるのがわかった。  
 
に゛ゅる゛うぅっ  
 
「んふ……っ」  
「それ」が自分の中に沈められていく。  
わずかな圧迫感こそあれ想像していたほどの抵抗は無く、  
半ばを過ぎると自ら滑り込むかのように奥まで納まってしまった。  
その際の、ぞくりとした感覚に思わず吐息が漏れる。  
その声を聞かれ、  
――いやらしい仔だね。  
という言葉が投げかけられる。  
かあっと赤面する彼女に向かって、問いが重ねられた。  
――今の君は、いったい何かな? 言ってごらん。  
この状況でどんな台詞を求められているのか、彼女が理解するのに時間は要らなかったし、  
多少の恥じらいはあれど、その台詞を言うのにためらいはあまり無かった。  
どうせここはそういう店。あくまでもこれはただのプレイ。  
一時の夢に過ぎないのだから、と……  
 
「……私は、あなたの……御主人様のペットの、雌豚、です……」  
 
び く ん  
「……ん゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ ッ ! ! ?」  
……その言葉を引き金に、作り物であるはずの尻尾がびんと震え、  
全身が電撃のような快楽の渦に落ちていくことなど、一瞬前までの彼女に予想できるはずも無く。  
 
「い、いやっ!そ、そんな、話が違……ぁッ!あ、ら、らめええぇぇ!!」  
それほどの間もなく自分に降りかかった異変に気付いたものの、  
体じゅうに広がる圧倒的な感覚に溺れ、抗うことなどできなかった。  
「んぁあっ……んはぁ……っ」  
肉体を指が這うたびに快感で溜め息が漏れるのを抑えることが出来ない。  
腰を、尻を、振る度にその腰周りや尻が膨張していくのを感じつつも止められない。  
「うぐ……ふぅ、ッ……んブッ」  
寄せては引き、引いては寄せる快楽の波が全身に溢れる。  
体じゅうがこそばゆい。細かな体毛が体表から伸びている。耳が大きく広がりはじめる。  
「ふぅ……ブぅ、んあっ、ブぁっ……」  
鼻が肥大していく、荒い呼吸の音に雑音が混ざり始める。  
「ブぎっ!?」  
その鼻に、突然ぐいっと何かが押し付けられた。ぬぢゅっと濡れた音がする。  
――良い感じに湿っていて、ローション要らずだな。  
ぐりぐりと鼻に擦り付けられるそれの正体が、男根なのだと、視覚より先に嗅覚で気付く。  
そんなものの匂いを嗅いだ事など、生まれてから今までに一度もなかったはずなのに。  
……本能で。  
膨らんだ鼻の穴一杯に広がる匂いがわかる。頭の芯まで痺れさせる匂いを感じる。  
男の匂いを。男の。牡の。雄のおすのオスの……  
 
――欲しいのかい?  
 
気付くと、彼女は秘所から、しとどに股の間を濡らし、湧き水のように愛液を溢れさせていた。  
前方に大きく突き出した鼻の下から、大きく膨れ上がった舌が唾液と共にだらしなく垂れている。  
――欲しかったら、もう一度声に出して言ってごらん。今の君は、いったい何なのか。  
脳はほとんど人間のまま変わっていなかったのかも知れないが、もはや彼女は獣としての本能に屈服していた。  
屈辱の涙を流しつつも、全身の細胞の一つ一つが訴え叫ぶかのような、快楽を求める凄まじい飢餓感に抗えない。  
先程のような形式的な台詞ではなく、心の底からの言葉に乗せて、人間としての尊厳を差し出す。  
 
『私は……ッ! あ、ああっ!あなたの……御主人様のペットのぉ!め、雌豚、……ッ、ですぅッ!!』  
 
……そう言ったつもりの自分の言葉ももはや、普通の人間が聞いたら  
「ブギィイイーーッ!!ブヒ、ブゴ!ンゴ……ッ!ブヒィィイイイイイーーーーッ!!」  
と、さかりのついた雌豚の甲高い鳴き声にしか聴こえない音なのだ、ということさえ、今の彼女にはわからなかった。  
 

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