少なくとも100年より以前、産業革命が起こった。  
その変革依頼、主な生産手段は機械工業へと移っていき、人々に十分な恵みを齎した。  
衣服、食品、装飾品など、多種多様なものが工場によって大量生産されていった。  
 
それはもう、有り余るほどに。  
 
食べ物、衣服など、ほとんどのものは植物や動物の犠牲により出来ている。  
本来、犠牲になった命のために、きちんと消費するべきなのであろう。  
しかし―――今の時代、有り余った犠牲は無駄に廃棄されてゆく。  
捨てられ、燃やされ、埋められ。  
これは、産業革命によって齎された悲しきことであろう。  
 
ところで君たちは"九十九神"を知っているかね?  
一度製造された"アーティファクト(道具)"が、長い年月を経て古くなり  
空気、または大気中に存在するわずかな魔力、霊力、巫力、邪気などを纏い、  
生命を手に入れ、意思を持ち、精霊、はたまた妖怪、あるいは化物になるという説話だ。  
 
御伽噺だと言って、君たちは笑うだろう。  
 
だが、しかし。  
―――もし、御伽噺でなかったならば。  
九十九神たち……"彼ら"は、いったい何をしているのだろうか?  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
「相原さん、お先、あがらせてもらいます。」  
「あいよ、お疲れさん。」  
この話は、ファミレスのバイトをあがり、夕暮れに帰宅している時のことだ。  
ボクは、自宅であるアパートのゴミ集積所前を通りすがる際。  
燃えるゴミの山の上に投げ出されている一体の人形があった。  
たしか……それは、半年前まで二年続いて終了したアニメの  
主人公である魔法少女の人形だった。確か……名前は、マジカルヒロイン『ミミ』、だったかな?  
 
とにかくだ。普段のボクに限らず、一般なる凡人は、普通その人形を  
ただのゴミとして認識し、全く関せず通り過ぎたであろう。  
しかし、ボクがゴミ置き場の前を通り過ぎる時、ふとその人形を見ると、  
 
  ……キョロ……。  
 
下を向いていたその人形がボクの方を見た気がした。  
いや、やっぱり最初からこっちを向いていたような気もする。あくまで"見た気がした"だけだ。  
どうせ気のせいだろう。  
 
でも、ボクはその人形に何らかの興味を持った。  
深い藍色の瞳が、ボクを魅了するかのように生きて目を輝かせているように見えた。  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
というわけで、ボクは部屋にその人形を持ち帰った。  
どうせゴミ捨て場にあったんだ、勝手に持って行っても構わないだろう。  
人形は生ゴミ臭かった。まあ、ゴミ捨て場に放置されていたのだから、当然だろう。  
バイトで汗だくの上着を洗濯カゴに突っ込み、シャワーを浴びる―――ついでに、  
この人形を洗うことにした。  
 
シャワーを浴びつつ、人形にこびりつくもの色々を石鹸と指で磨き落としていく。  
生ゴミの臭い、黒い汚れなどを丁寧に落としてゆく。  
十分に人形を綺麗にし、僕自身も十分体を洗った所で、風呂場から出た。  
 
テレビの代わりにパソコンを立ち上げ、適当に時事ニュースなどを一目見る。  
別に、興味のあるニュースは無いな。  
別サイトに飛び、ボクが新着メールの有無を確認しようとした時、  
『ピンポーンッ』チャイムが鳴った。ボクは玄関に出る。  
「あら、今日も若々しくてお元気そうねぇ」  
お隣のお婆さんだった。この人は、息子娘はいたが  
両方とも一人暮らしをはじめ、他界したお爺さんの仏壇と共に一人寂しく住んでいる方だ。  
ボクは、お隣さんであるこのお婆さんに、まるで息子であるかのようによくよくして貰っている。  
「今日はねぇ、押入れの奥を掃除していたらこんな服が出てきてねぇ。  
 うちの息子が十年くらい前に数回着けてそれっきりだったんだけどねぇ、  
 あんたなら着けれるんじゃないかって思ってね。どうだい?」  
そう言ってお婆さんが取り出したのは、冬物の黒のジャケットだった。  
デザインはだいぶ古っぽいが、まだまだ十分防寒性はありそうだ。  
「ありがとうございます。ちょうどそのうち冬服を準備しようと思っていたところです。  
 それでは、このジャケットは遠慮なくいだたきますね。」  
 
お婆さんとの簡単な会話を終え、新着メールを確認する―――と。  
(見た覚えがないのに、数件既読になってる……)  
だけど、ボクは別にその事は別に気にならなかった。  
 
「……明日からまた学校か。面倒だな。」  
ボクは一人で誰にも聞こえないような独り言を呟く。  
土日が終われば、月曜日が来る。そして、高校生であるボクが学校に行かなければならないのは当然の義務である。  
「……明日も早いし、寝るかな。」  
ボクは、机の上の人形の横に貰ったジャケットを置き、早めに寝ることにした。  
バイトの疲労が、僕を眠りへと誘う―――――  
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
――この野郎、どう思います、コクセンさん?  
 
――――我々のような邪魔になるような古ぼけた骨董品同然のものを  
       引き取ってくれるんだ、悪い人ではないでしょう。  
 
――いや、でももしかしたらあたしはオカズ用として拾われたのかもしんないしー……。  
 
――――でも、貴方が風呂に入った時、彼は不埒なことをしましたか?  
 
――……別に、何もされてないけどさ〜。  
 
――――なら、彼は貴方をそんな目的に利用することは無いでしょう。  
 
――でも、そんならなんであたしがこんな野郎に拾われたんだろうね。  
 
――――……それは、本人にしか分かりませんね。  
 
――うう……こいつがあたしに変なことしないか怖いよ〜!  
 
――――ならば、この部屋を抜け出しますか?  
 
――それはイヤッ! もう、あんな環境なんかこりごり!  
    お日様に照らされて体表がカサカサするもの。  
 
――――それならば、彼を信じるしかないでしょう。  
 
――わかったよ〜、がまんするよ〜。  
 

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