「あの…どちら様でしょうか…?」
「ああ、お構いなく。仕事を済ませたらすぐ帰る」
「いや、あの…不法侵入なんじゃ…」
「気にするな。今から君の命に不法侵入するんだから」
「はぁ。俺の命に…」
「む、案外落ち付いているな…。今から君は死ぬんだぞ?もう少し怖がったりしてくれないと、こちらも張り合いがない」
「ああ、あなた死神なんですか」
「気付いてなかったのか。なんか頭痛くなってきたな…。まあいい。さあ、眼を瞑れ」
「…あ。開けたままでいいですか?」
「…なぜ?」
「死ぬ瞬間くらい、あなたみたいなキレイな人を見ていたい」
「ば…ばか者!そんなことを言っても、私が君を殺すことは変わらないぞ」
「いいですよ、別に。あなたは美しい。それだけで殺される価値はある」
「っ〜〜…もういい!一思いにころ…うわっ!」
「おっと。大丈夫ですか?死神もドジするんですね」
「は、はな…は」
「はな?」
「離さないか、このスケベ!」
「あ…すいません。でもケガは…無いみたいですね」
「ふ、ふんっ…それがどうした」
「よかった…」
「…っ」
「どうしました?」
「…今日は、気勢が削がれた…。もう、殺す気分じゃない…」
「じゃあ、また来てくださいね?今度は紅茶とケーキくらい用意しておきます」
「…チーズケーキ」
「了解です」
「ふんっ。じゃあな」
「…行ったか。よかった、助かった…」