見惚れてしまう──
「可愛いよ、秋穂」
「あ、ありがと……」
全て取り去るのを待っていられない。
今すぐ秋穂を抱き締めたい──
「おいで」
手を広げて彼女を導く。
「ん……」
床に膝を突いて身体を預けてきた秋穂を、抱き留める。
しっとりとした肌が触れ合い──
当然、彼女の身体には、怒張した俺のそれが突っ掛かるように当たる。
「お、おちんちん……当たってるよぉ?」
「ん、まぁ、くっついてるしな」
官能に昂ぶる気持ちと、日常のゆったりした空気が共存している。
あの頃はもっと感情的で、勢いだけに支配されていたように思う。
「ぬるぬるするぅ」
「秋穂がしてくれたからな」
「す、する前から、出てたもん……」
「そうだっけ?」
すっとぼけてみせると、秋穂はくすっと笑った。
「なんか、やらしいね……」
「そりゃ、やらしい事してるんだしなぁ」
それなのに、どこかのんびりとした二人は、あの頃とは全然違う。
三年という時間が、二人を変えたのだろうか。
少なくとも俺は、自分の気持ちを改めて見つめ直す事ができた。
彼女は、どうなのだろう──彼女も今この時間を、新たなスタートと感じて
いるのだろうか。
抱き合いながら、熱を帯びたお互いの身体を感じ合う。
彼女の身体は、あの頃より多少肉付きが良くなったようにも思うが、全体的な
細さは今もそのままだ。
秋穂の手が腰に巻きついている。胸に顔を押し付けた彼女の髪がくすぐったい。
彼女の背に回った俺の手は、まだ取り払われていない布地をまさぐる。
ブラのホックに指を掛けると、秋穂が身を縮ませた。
「や、やっぱり取るのぉ?」
「当たり前だろ」
「うぅー」
「秋穂の裸、見たいんだよ」
「で、でも……もう見た事あるのに……」
「もう三年も見てないからな。秋穂がどれぐらい成長したか、お兄さんが確かめ
てあげよう」
口にしてから、アホな事を言ってしまったと後悔する。
「むぅ、あたしの方がお姉さんなのにぃ」
馬鹿にされなくてほっとするが、ツッコミどころはそこじゃない。
こんなところも可愛い。愛しい。
頭を撫でると、また子ども扱いするぅ、と俺の肩口に顔を押し付けてきた。
「外すよ」
そのまま、首だけで頷く秋穂。
あの頃はまだ、こういう普通のブラを着けている事は少なかった。小学生が
するような、ハーフトップの時が多かった。
俺の指がぎこちなくホックを外すと、彼女の細い身体がぴくりと震えた。
束縛を解かれたブラが緩み、指先でずらすだけで、肩紐が腕に零れた。
「秋穂、見せて」
「うん……」
彼女の肩を掴み、そっと押すのに合わせて、秋穂が身体を起こした。
白いブラがずり落ち、乳房が露になった。
隠そうとする秋穂を制し、乳房を観察する。
小振りではあるが、ぷくりと膨らんで、なだらかな曲線を描いた秋穂の乳房。
あの頃よりも確かに大きくなっている。華奢な所為だろう、やはりBカップと
いう言葉よりも大きく感じられる。
頂きに乗った淡い鳶色の突起は、きゅっと尖っていて、こちらも中学の頃から
明らかに成長していた。
「そんなに、見ないで……」
「いいじゃん、見たいだんもん」
「うぅ……馬鹿ぁ」
初めて見られるわけでもないのに、こんなにも恥ずかしがる。
そんな初心な反応が欲望を掻き立てる。
「俺、秋穂のおっぱい好きだよ」
「あぅ」
「おっきくなったじゃん。高二なんだし、これからもっと大きくなるかもな」
そう言うと、秋穂は複雑な顔をした。
その顔に、俺は動揺してしまう。
「やっぱり、おっきい方が好き?」
「ばーか。さっきエロ本見て羨ましいって言ってたのは誰だよ?」
内心を悟られぬよう、からかうように言ってやる。
「うぅー」
「俺は今のままでも好きだし、おっきくなっても好きだよ」
その言葉に嘘はない。
「秋穂の胸なら、どんなでも好きだって」
「……うん、ありがと」
秋穂は泣きそうな顔になる。
どうしてそんな顔をするのか──
「秋穂?」
「ケイちゃん……」
秋穂は、泣きそうなまま、破顔する。
彼女のこんな顔は、前にも見た事があった。
中学の時、うまくいかなくて、別れ話になったあの時だ。
いや、もっと前にも──
「秋穂……?」
込み上げるのは、焦燥感──
「痛っ」
「あっ、ごめん!」
無意識に、彼女の肩を強く握ってしまっていた。
「もう……女の子は大切に扱わなくちゃダメなんだからね」
秋穂はブラを肘に引っかけたまま、俺のおでこを指でつんと小突いた。
「あたし……嬉しいんだよ」
満面の笑顔だった。
泣きそうに見えたのは──俺の眼がおかしくなっただけなのだろうか。
「ケイちゃんが、好きって言ってくれるのが嬉しいの」
彼女が手を下ろすと、腕からブラがするりと抜ける。
俺の腿に当たって、床にぽそりと落ちた。
「ね、ケイちゃん……あたしの事、好き?」
そんなの、決まってる──
「好きだよ」
「もう一回」
「好きだよ、秋穂」
「もう一回……」
「何度でも言ってやるよ。秋穂、俺はお前が好きだ」
「うん……あたしも好き。ケイちゃんが好きっ」
言葉には、魔力がある──
秋穂を好きだと言うたびに、秋穂に好きだと言われるたびに、想いが強くなる。
秋穂を抱き締め、肌と肌を密着させる。控えめな膨らみが感じられた。
お互いの温かさを確かめ合い、ベッドに引き倒した。
三日前の日曜に日干ししたばかりの布団は、まだ陽だまりの匂いを湛えていて、
ふかふかとした肌触りが心地好かった。
淡い水色のシーツに仰向けになった秋穂の、白くきめ細かい肌に指を滑らせる。
慎ましやかな乳房は張りがあり、仰向けになってもこんもりと膨らんだまま。
中央にぷくりと浮き出た鳶色の突起が、俺の欲望をそそり立てる。
しかしそこには触れず、彼女の身体の下で、背中から腰へと手を滑らせる。
くすぐったそうに身を捩る秋穂の、大切なところを隠す布切れに指を掛けた。
「あぅ……」
秋穂が身体を強張らせるが、解きほぐすようにキスをする。
横から覆い被さるようにして、ショーツを少しずつずらしてゆく。
秋穂はショーツに手を掛けて抗うが、形ばかりで何の妨げにもなっていない。
それどころか、片手を秋穂の腰の下に入れると、秋穂も身体を浮かせて脱がし
やすくしてくれる。
それでも彼女は、下腹部から手をどけようとはしない。
腿の中ほどまで下ろしてしまっても、秋穂は両手でそこを覆い隠し、両脚も
ぴたりとくっつけ、ショーツを挟んで閉じたままでいる。
「秋穂、ここも見たいよ」
「あぅ……」
俺は片肘をついて上体を起こし、彼女の手に自分の手を重ねる。
「これ、どけてよ」
「うぅ、でも」
そんなに見られたくないのか──
三年前にも、幼い頃にも、何度も見ているところなのに。
「恥ずかしいもん……」
そう言われると、余計に見たくなってしまうのが男というものだ。
秋穂のそこが、今どうなっているのか知りたい。
「見せて欲しいな」
「あ、あっ! そうだ、カフェオレ!」
「はぁ?」
秋穂の台詞に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「カフェオレ、冷めちゃう……」
なんだそりゃ。
「いや、もう冷めてんじゃね?」
「えぇっ? そんなぁ……」
買ってからどれぐらい経っただろう。
まだ冷たくはなっていないだろうが──
「カフェオレの方が大事?」
「あっ! あぅ、そ、そういうわけじゃ……ないけど」
「冷めたっていいじゃん」
「でも、せっかくケイちゃんが買ってくれたのに……」
テーブルに置かれたふたつの缶コーヒーは、きっともうぬるいだろう。
だが、冷めてしまったのなら、また温めればいい。中身が消えてなくなって
しまったわけではない。
俺たち二人の関係のように──
重ねた手で、彼女を促す。
「見せて、秋穂」
「あぅ、うぅ〜……笑わない?」
「なんで?」
「だって……」
「笑うわけないだろ?」
「う、うん……」
彼女がおずおずと手をどける。
手の下に隠されていたのは──予想外の姿だった。
秋穂のそこは、驚いた事に、薄茶色の細い毛が疎らに生えているだけで、あの
頃からほとんど変わっていなかった。
「やだっ、やっぱりおかしいんだっ!」
おかしいだなんて──
「薄いから、恥ずかしいの?」
「うぅぅ〜、馬鹿ぁ……ケイちゃんの馬鹿っ!」
そんな事を言いながらも、彼女はもうそこを隠さない。
けど、今度は両手で顔を覆っていやいやをする。
本当に子供のようだ。俺よりひとつ年上のはずなのに、秋穂の身体も仕草も、
未発達の少女のようで──
「俺、もしかしてロリコンなのかなぁ?」
「えぇっ!?」
「秋穂のここが、昔と変わらなくてほっとしたっていうか……」
「ええぇっ? なにそれぇ……」
顔を覆っている彼女の手を、ゆっくりとどけてやる。
真っ赤になって眼を潤ませた秋穂が、たまらなく愛しい。
「俺、こういうの好きみたいだ」
「あぅ、うぅ」
秋穂は、なんて言っていいのか判らないというような顔で俺を見た。
「もっと、ちゃんと見たいな」
「えっ!?」
「見せてくれる?」
「あうぅ……」
ぴたりと閉ざされた腿と腿の間に、手を差し入れた。
「あっ、ケイちゃん──」
「力抜いて、脚開いて」
「えっ、やだぁっ!」
口では嫌がりながらも、俺が強引に手を押し込むと、脚から力が抜けた。
彼女の股を開かせながら、俺は下の方へと移動する。
「あぅ、ケイちゃんっ、恥ずかしいよぉ」
「秋穂だって、さっき俺の、じっくり見ただろ?」
「そ、そうだけどぉ……」
ショーツに触れた手に、ぬるりとした感触があった。
見れば、彼女のそこに触れていた部分が湿ってぬめりを帯びていた。
「濡れてたんだ?」
「うぅ……」
彼女が俺のモノを銜えながらそこを潤ませていたのだと思うと、愛しいと感じ
もするが、男として、一人の女を手に入れたのだという征服感も覚える。
「エッチだなぁ」
「あぅぅ……」
つい意地悪を言ってしまう。
彼女が恥ずかしそうな声を上げるから、俺は意地悪になってしまうのだ、と、
自己弁護にもならない事を考える。
もっと秋穂の恥ずかしがる姿を見たい──
ショーツをするっと膝まで下ろしてしまい、左の膝の下に手を入れてゆっくり
持ち上げる。
「あっ、やっ」
秋穂の手が制止しようと下りてくるが、構わず膝を折らせる。
俺が彼女の膝を立たせるのに合わせて、右脚に引っかかったままのショーツが
そちらに引っぱられ、黒いソックスに包まれた足首まで落ちてしまう。
左足をさらに浮かせて、ショーツを抜き取る。
「このパンツ、可愛いな」
秋穂はおろおろと、嬉しそうな恥ずかしそうな顔で俺を見る。
「ケイちゃんのエッチぃ……」
「あの時の秋穂ほどじゃないと思うけどなぁ?」
「あっ! あれは、だってぇ……」
三年前の彼女は、必死だったのだろう。
中学生とは思えぬ淫らな行為をした秋穂は、恥ずかしさよりも、俺をその気に
させたいという気持ちが勝ったのだろう。
それに応えてやれなかった自分を嫌悪する。
「あの時は、ほんとにごめんな」
「ケイちゃん……」
でも、今なら大丈夫だ。
俺は最後まで行ける──そう確信していた。
「好きだよ、秋穂」
「うん、あたしも……」
秋穂の透き通るような肌に、右の脛に引っかかったままの白いショーツと、
黒いハイソックスが映えている。
立たせた左の膝を、少しずつ俺の方へと倒してゆく。
「あ、あっ!」
右脚が内を向いて抵抗する。
「見せて、秋穂」
うぅ〜、と唸りながらも、秋穂は頷いて力を抜く。
脚を広げてしまうと、やっとそこが露になった。
さっきとは逆──秋穂の両脚の間に、今度は俺が入り込む。
三年ぶりに見る彼女の秘処──
手前の丘があの頃と変わらない事から想像できたが、そこもまた、ほとんど
変わっていなかった。
周囲はほんのりと赤みを帯び、疎らに茂った恥毛は、幼い少女のように柔毛
ばかりで、ほんの少しだけ薄茶色の細長い芽が伸びている。
うっすらと開いた唇は、彼女の昂ぶりが零れ出ているかのように、透明な露で
満たされている。奥には、鮮やかなピンク色の小さな襞が透けて、艶めかしい
舌のようにも見えた。
その一番手前には、大豆ほどの蕾がちょこんと顔を出していて、大部分は薄い
皮膚に覆われているが、滑らかに潤った可憐な雌蕊が覗いていた。
「うぅ……そんなに見ないでよぉ」
「言われると余計見たくなるんだけど」
「あぅ、じゃあもっと見て……」
「よし、もっと見る」
「えぇっ!? もうっ、ケイちゃんの馬鹿、いじわるっ!」
手足をじたばたさせた秋穂に、子供じゃないんだから、と言ってやる。
「うるさい、ロリコン〜!」
頭をぽかぽか叩かれる。
こいつは本当に年上なのか、と思ったのはこれで今日何度目だろう──
だが、どちらでももいい。年上でも年下でも、俺たちにそんな事は関係ない。
彼女の脚を大きく左右に開いてしまった俺は、彼女の腿を押さえつけるように
して、顔を寄せた。
「やっぱり、恥ずかしいよぉ……」
「何度も見てるだろ?」
「そ、そうだけどぉ……」
見るだけなら幼い頃から何度だって見ていた。一緒に風呂に入った事もあるし、
お互いのものを見せ合った事だってある。
それどころか、触れ合った事だって幾度もあったのだ。
最初にそこを見たのは──あまりにも幼い頃で、記憶が判然としない。
どうしてそんな事をしたのかはよく解からないが、きっと純粋な知的好奇心と
いう奴だったのだろう。
彼女が入院している期間にも、こっそりと病室で見せ合った事があった。幼い
ながらもひどく興奮したのを思い出す。
彼女と俺の親が病室を出て、彼女と二人きりになった時──
言い出したのは、秋穂だった。他愛も無いお喋りの中で、突然そこを見たいと
言ったのだ。
俺はショートパンツをずらし、ドジョウの頭のような未熟な性器を抓み出して
秋穂に見せた。彼女は包帯の巻かれた頭を近づけ、可愛いね、と笑っていた。
子供とはいえそんなところで出しているのは恥ずかしかったが、秋穂が喜んで
くれたのは嬉しかった。
あたしも見せなくちゃね、と言った秋穂は、身体に掛けられたタオルケットの
下で、もぞもぞとパジャマを下ろした。俺がそれを捲ると、パジャマとショーツ
を足首まで下ろしてしまった秋穂のそこが見えた。
俺はどきどきしながら、触っていい? と訊いた。
秋穂はこくりと頷き、俺はぴたりと閉じた小さな筋を、指でなぞった。
そういえば、その時俺は、彼女に求められ、そこをかなり長い間、弄っていた
ようにも思う。秋穂はぴくぴくと身体を震わせていた。
俺はそれがどういう意味なのかは理解できなかったが、もしかしたら彼女はその
頃にはもう、未熟ながらも性的に開花していたのかもしれない。
お互いそういう遊びはイケナイコトだという認識はあった。回数は次第に減り、
小学校の中学年になる頃には、どちらからともなくしなくなっていった。
流石にその頃から比べれば、秋穂のそこはじゅうぶん成長したと言えるのだが、
十八という年齢を考慮すると、やはりちょっと幼すぎないかとも思う。
「へ、変じゃない?」
そんな俺の頭を覗いたように、秋穂が怯えたような声を出す。
「何が?」
「だって、あたし……そこ、まだ、子供っぽいでしょ……?」
か細い声で申し訳無さそうに言う。
またそんな事を──俺は苦笑してしまう。
子供のような秘裂は、よく見ればひくひくと艶めかしく微動していて、小さな
口が官能に喘いでいるようにも思える。
幼い子供のここは、こんなふうにはならないだろう──
「そうだなぁ。あの頃とあんま変わってないもんな」
「あぅ……」
「でもさ、さっきも言ったけど、秋穂がどんなでも、俺は好きだって」
「うぅ……恥ずかしい」
歯の浮くような台詞に、素直に照れる秋穂が可愛い。
俺はおもむろに舌を伸ばし、潤んだ裂け目に触れた。
「あっ! はぁぅ……」
ぴくんと震え、秋穂は吐息を漏らす。
僅かにつんとした匂いが鼻を衝く。立ち昇るほどの女の匂いが溢れてくる。
だが、まるで不快ではなく、むしろ俺の劣情をさらに掻き立てる媚香だった。
「んっ、はぁ……」
舌先を割れ目に添えて、下から上へ、淫靡な露を味わうように滑らせる。
秋穂は震えながら喘ぎ、彼女の両の腿を抑えている俺の手に、しなやかな指を
重ねてくる。
口の中に舌を戻すと、塩気を帯びた蜜の味が口に広がった。
舌を伸ばし、もう一度──今度は舌先を強張らせて、スプーンで掬うように
舐め上げる。
「はぁぅ、んぅっ……」
ぷっくりと膨らんだ秘唇の中には、もうひと揃えの小さな唇が、やわやわと
佇んでいる。
ぴたりと閉ざされたそこは、未だに何者をも受け入れてはいないのだと言って
いるようで、俺はほっとしてしまう。
そして、自嘲する──
この三年間、彼女がどんな男と付き合っていたとしても、俺にそれを責める
権利なんて無い。
彼女は、俺を待っていてくれたのだろう。
今日と同じように、冷たい風の吹く、寒い夜だった。
あれから三年間──
「やぅっ、ケイちゃ……舐めちゃ、やだぁ……」
「なんで?」
俺は舌を止めてそこから離す。
が、秋穂が本気で嫌がっているのではないと解かっている。
「だって、汚いし……」
怯えた子猫のような声が俺の嗜虐心を煽る。
「ふぅん、秋穂のここって、汚いんだ?」
「えぇっ? あぅぅ……」
意地の悪い俺の言葉に、彼女は口篭もる。
「秋穂はちゃんと洗ってないのかなぁ?」
「ち、ちがうもん、洗ってるもんっ」
「なら、綺麗じゃん?」
「う、うぅ──んひゃぅッ!」
秋穂の一番敏感な小粒に、俺は不意の一撃を加えた。
「ひっ、はぁっ、んっ!」
続けざまに舌先でちろちろと転がしてやると、秋穂はびくびくと震えながら、
可愛らしくも艶めかしい喘ぎを漏らす。
「あっ! はぁっ、はぅっ……」
待たせてしまった分を取り返すように──いや、それ以上に俺は彼女を悦ばせ
たくて、彼女のそれに口づけた。
「はっ、はぁっ……あぁっ、あっ」
秋穂の蕾を口に銜えて舌で舐め転がす。
彼女はびくびく震えて俺の愛撫に応えてくれる。
甲高い喘ぎが俺を駆り立てて、もっと気持ちよくしてあげたいと思う。
「ひゃっ、んっ、んっ、あぁっ」
彼女の手が俺の頭を掴んでいる。髪をくしゃくしゃにされてしまうが、それも
心地好く感じられる。
男のペニスのように充血して膨れ上がった粒を、舌で丹念に責め立てた。
「ケイちゃんっ、あっ、ダメっ、ひっ」
身を震わせ、腰を捩り、やわらかい腿に顔を挟まれてしまう。
「なにがダメなの?」
「だって、気持ち、よすぎて……」
唇を離して俺が訊くと、彼女は途切れ途切れに答えた。
「あたし、だけ……先に……いっ……」
語尾が消えてよく聞き取れなかったが、想像はできた。
「秋穂、イきそうだったの?」
「うぅ……うん」
頷いた彼女の指は、俺の髪を弄んでいた。
俺はあの頃、最後まで達した事が無かったが──
俺も、彼女を満足させた事が一度も無かった。
こういう事は何度もしたというのに、彼女をイかせる事ができなかったのだ。
「ケイちゃん……あたし……」
「ん?」
「ケイちゃんと、一緒に……」
身体を起こして覆い被さる。
秋穂が真っ赤な顔で恥ずかしそうに微笑んだ。
「一緒に、イきたいな……」
「秋穂──」
俺は衝動的に口づけた。
舌を絡ませ、唾液を吸い上げる。
身体を密着させると、俺のモノが彼女の腿に押し付けられた。
あの頃とは違う。今なら大丈夫。
だが、ふと現実に立ち戻ってしまう。こういう事をするなんて考えてもいな
かったのだから、当然コンドームなんて持ってない──
「平気だよ、今日は……」
俺の心を見透かしたかのように彼女が言った。
安全日なんて無い──保健の授業で教師が言っていた言葉を思い出す。
性教育の特別講義でも、派遣されてきたらしい講師は同じ事を言っていた。
おかげで、外に出せば良いというものでもない事も理解している。
だが、俺は──
「いいのか?」
「うん……」
俺の躊躇いを吹き飛ばすほどに、秋穂の笑顔は純粋で、扇情的だった。
俺も来年は十八。できちまったらその時だ──
腹を括る。
「ケイちゃん……好き」
「俺もだよ、秋穂」
「して、くれる?」
「当たり前だ。三年分、ぶち込んでやる」
「んふふっ、なにそれ〜」
くすくす笑われる。
秋穂の無邪気な笑みと、股を広げた淫らな姿が対照的で、くらくらする。
「照れ隠しだ、気にするな」
「ケイちゃんも、恥ずかしいんだ?」
「当たり前だろ」
「よかった……あたしだけかと思った」
口元に手を当てて、くすっと笑う。
「ケイちゃん……して」
「ああ」
欲望の塊を、彼女の潤んだ泉に浸す。
ぬるりとした感触が、モトサヤなんて言葉を連想させる。
元の鞘に収まる──彼女の鞘に、俺の太刀は一度も収まっていなかった。これ
から初めて収まるのだ。
物心着く前からの付き合いの俺たちは、三年前に一度はくっついたのに、俺の
不甲斐無さの所為で離れてしまった。
もう離さない。二度と離さない。
「いくよ、秋穂」
秋穂は潤んだ瞳で、こくんと頷いた。
期待と怯えの混じった彼女の眼を見つめながら、俺は腰を押し出す。
「んっ……あっ!」
切っ先は、狙い違わず彼女の中心へ沈んでゆく。
「ケイちゃん……あっ、んんっ!」
だが、すぐに突っ掛かってしまう。
「痛っ! あっ、あぅ……」
さらに奥へと押し込むが、彼女の声に力を抜いた。
「痛いのか?」
「うん、ちょっとだけ……」
申し訳無さそうに俺を見る。
「大丈夫だよ、ケイちゃん……して……ね?」
そんな秋穂が愛しくて──
彼女の腰を掴む。
「秋穂、力抜いて」
「うん」
「俺の手、握って」
「うん……」
彼女が俺の手首を握る。
それで痛みが和らぐのかどうか、俺は知らない。
力を抜いているつもりでも、痛みへの自然な反応だろうから、どうしようも
ないだろうと思う。所詮、気休めなのだろうが──
「もっかい、いくよ?」
「う、うん……」
秋穂が身を強張らせる。
全く力が抜けていない。
苦笑しつつ、俺は押し込んだ。
「ひっ、んっ!」
また止まってしまう。
俺は構わず一息に押し込んだ。
「ひあぁっ! いっ……んぅっ」
彼女の声とともに、ぬるりとした温かい感触に包まれ、強く締め付けられた。
「だいじょぶ、だよ……痛くない」
そんなはずがない。彼女の顔も、声も、手首をぎゅっと掴んだ指も、全てが痛み
を訴えている。
「はぁっ……ケイちゃんの、入ったの?」
「ああ、入ったよ。まだ途中だけどな」
「ん……よかった、よかったぁ……」
「秋穂──」
彼女は泣いていた。
俺も泣きそうだった。
ようやく、ひとつになれた──
三年前、あんなにも情けなかった俺は、ようやく、男として彼女とひとつに
なれたのだ。
「よかったぁ……やっと、ケイちゃんと、エッチできた……」
彼女の喜びが、触れ合った粘膜を通して伝わってくるようだった。
「秋穂と、やっと繋がった」
俺の喜びも、伝わっているだろうか。
「うん、ケイちゃんと、繋がってる……」
かなりの痛みだろうに、彼女はにっこりと笑う。
秋穂の熱い襞に包まれ、俺はえもいわれぬ恍惚を覚える。
彼女の中は、こんなにも気持ちいいものだったのかと、素直に思う。
「んふふっ、ちょっと痛いけど、嬉しいな」
「やっぱ、痛い?」
「ん……ちょっと、ちょっとだけ、ね」
えへへ、と彼女は笑う。
俺はこれほどに快感を覚えているのに、彼女は痛みに耐えているのだ。
それを感じさせまいと、苦痛を隠して笑おうとする。
そんな彼女に、少しでも俺がしてあげられる事は──
「秋穂」
「ケイちゃ……んっ、ふぁ……」
繋がったまま、身体を倒してキスをした。
唇を重ね、舌先を軽く触れ合わせる。
しばらくこうしていれば、彼女の緊張も解せるだろうか。少しは痛みも和らぐ
だろうか。
俺のモノは破裂しそうなぐらいに怒張したまま、どくどくと脈打っている。
とりわけ大きいわけではないと自分でも思うが、彼女の小さな身体には、これ
でも余るほどだろう。
時折、秋穂の身体がぴくんとなって俺を締め付け、柔襞が彼女の痛みを俺に
伝えてくるようだ。
「ケイちゃん、動いて、いいよ?」
「でも──」
「うぅん、あたし、もう平気……」
平気なわけないだろう。今だって痛そうな顔をしてるじゃないか──
それでも、彼女のそんな言葉を聞かされて、留まっていられるほど、俺も淡白
ではなかった。
繋がっているだけで、こんなに気持ちいいのだ。動いたら、きっともっといい
のだろうと思う。
秋穂を貪りたい。秋穂の身体を、奥まで感じたい。
俺は、ゆっくりと腰を動かした。
「ひっ! んんっ……」
唇をかみ締め、眼を閉じ、眉を顰めているのに、秋穂は笑っていた。
秋穂の狭い胎路を、抉じ開けるように進んでゆく。
熱くねっとりと締め付ける彼女の中が、たまらなく気持ちいい。
「んっ、ケイちゃん、ひっ……」
痛みに耐える秋穂がいじらしい。
今すぐにも激しく腰を振りたい衝動に駆られるが、なるべく彼女に負担を掛け
ないように、ゆっくりと押し込む。
先端が、こりこりしたものに触れた。やはり、根元までは入りきらない。
「秋穂、奥まで入ったよ」
「うん……奥まで……」
彼女の指が、俺の手首に食い込んでいる。
「ケイちゃん、動いてね……止めちゃ、やだから、ね?」
「ん、解かったよ、秋穂」
初めて男を受け入れて、激しい痛みに耐えているというのに、そんな扇情的な
言葉を漏らす。
きっとこいつは、天然でやっているのだろう。
いやらしい言葉を口にして、俺をその気にさせようとか、自分ももっと官能に
浸ろうとか、そんな事はまるで考えていない。
思った事を、ただ口にしているだけなのだろう。
まったく──俺はどうしようもない男だ。
こんないい子を、三年間も待たせてしまったのだから。
もしもこの世に神様なんてものがいて、俺に天罰を下すと言うなら、すすんで
受けるしかないだろう──
俺は抽送を繰り返した。
雁と襞が擦れるたびに、今まで味わったどんな刺激よりも突き抜けた快楽が
俺に襲い掛かってくる。
すぐにでも爆発してしまいそうだった。
「秋穂っ、お前の中、気持ちよすぎ……」
「嬉しい、ケイちゃ、んっ、いっぱい、気持ちよく、なってねっ」
はぁはぁと息を荒げて言うと、秋穂も喘ぎながら答える。
このまま快楽に飲み込まれてしまえば、秋穂を痛みから解放してあげられる
だろうか。
そう思うと同時に、一緒に達したいという、青臭い気持ちも湧いてくる。
込み上げる衝動を、頂点の手前でなんとか逸らしながら、俺は腰を振り続けた。
「ケイちゃん、はぁっ、んっ、あたし、気持ちいいっ」
「秋穂、きもち、いいのか?」
「うん、気持ちいいよっ、ケイちゃんの、気持ちいいっ」
痛くないのか? と聞きたかったが、きっと彼女は痛くないと言うだろう。
ならば、俺も耐えよう。
秋穂と一緒に達せられるように、自らの快楽に耐えて見せよう。
彼女に比べたら、笑っちゃうような宣言だろうが──
初めての彼女は、中だけの刺激では、達する事は無理だろう。中は慣れないと
強い刺激は味わえないという話をどこかで聞いた。
俺は身体を起こし、そこに指を伸ばした。
「ひゃぅっ! ケイちゃんっ、ひぁっ!」
二人の結合部のすぐ上で、ちょこんと佇む小さな突起。
抜き差しされているその部分には、わずかに紅い血が滲んでいた。
二人の露が混じり合った愛の証を掬って、蕾を転がす。
「ふぁっ! それ、ひゃっ、はっ、あっ、あっ!」
秋穂の喘ぎが、俺の官能を衝き刺す。
まだダメだ。秋穂はまだ届かない──
気を抜くと暴発してしまいそうな衝動を強引に抑え込む。
躊躇いがちに腰を振り、激しく指を震わせ、内と外から彼女を刺激する。
「ケイちゃんっ、はぁっ、あっ、はっ」
秋穂が俺を呼ぶ。俺も秋穂を呼ぶ。
「秋穂、好きだよ、秋穂!」
「好きっ、ケイちゃん……大好きっ、あっ、ひぁっ」
嬉しくて、気持ちよくて、俺はもうこれ以上耐えられそうに無い。
まだ耐えなければ。彼女と一緒に、三年分の高みに達しなければ。
「ひぁっ、んっ、はぁっ、あっ、あっ」
秋穂の声が震えている。彼女も近いのだろうか。
そう思うと、決壊しそうになってしまう。
「俺、そろそろ……イきそうだよ」
「あっ、あたしも、ケイちゃんっ」
秋穂の身体はびくびくと波打ち、時折大きく弾んでいる。
「ケイちゃんっ、一緒に、あっ、あぁっ!」
「秋穂……でも──」
「ひぁっ、今日、大丈夫っ! だからっ、はぁっ、お願いっ」
中に、出してしまっていいのか──
「欲しい、ケイちゃんっ! 全部、欲しいっ!」
「解かった、秋穂──」
全部、解き放ってしまおう。秋穂の中に、俺の精を注ぎ込んでやろう。
噴き上げるような衝動に全てを任せ、彼女を突き上げる。
「秋穂、イくよっ……出るぞっ!」
「ひぁっ、あぁっ、ああぁっ、イっちゃうっ! ケイちゃんっ──!」
「俺も……んっ、イくっ、出るっ!」
「ひぁっ、ひゃぅ、あぁぁっ──!」
秋穂は腰が浮くほどに背を反らせ、びくんびくんと弾けるように身を震わせた。
俺もそんな秋穂の中で、何度も何度も精を放出した。
三年間の想いを全て吐き出すように、いや、それよりもっと長い時間、彼女と
過ごした全ての時間の分だけの、精を注ぎ込んだような気がした。
視界の隅で、きっともう冷め切ったであろう缶コーヒーがふたつ並んでいて、
秋穂がさっきまで着ていた漆黒のロングコートが、エアコンの風に揺れていた。