水晶の女に会うと死ぬ  
 
 このような噂が立ったのはつい最近のことである。  
 まぁその言葉どおり、水晶を持った女にあった奴は個人差はあるものの近いうちに死ぬというものだ。  
 中には死なず、九死に一生を得た人物もいないとか……  
 よくある都市伝説的なものであり、信じる人は信じて心底怖がるし、信じない奴は気にすることなく日常を送っている。  
 そして、この噂を信じない派の男、吉田 賢(よしだ けん)及び、その幼馴染の女の子の神田 美剣(かんだ みつるぎ)は何気ない学生生活を送っていた……  
 
「賢、ネクタイが曲がっているぞ」  
「ん? あぁ、そうだな」  
「そうだなって、直さないか見っともない」  
「別にいいじゃんよ。誰も見てないし」  
「私が見ている。ほら貸せ」  
 朝っぱらから仲睦まじく歩いている賢と美剣。  
 季節はもうすぐ梅雨を向かえ、本日もどす黒い雲により太陽は閉ざされ、二人の手にはそれぞれ黒と紺の傘。  
 今にも雨が降りそうなので、賢は不本意ながらさっさと学校に行きたいのだが、あえなく路上で美剣にネクタイを直されている。  
 彼女自身はだらしない幼馴染を助けてやっているのだが、賢にとっては周りからくる若干のクスクス笑いと殺気に似た視線が痛かった。  
「ほら、出来たぞ」  
「……ふぅ、俺を見るのは勝手だけど、周りも見てな?」  
「賢がだらしないのが悪いんだろう? はじめからちゃんとしていれば、私がやってやることもない」  
「はいはい、そりゃえらいすんませんでしたね。どーせ俺なんてだらしないグータラ野郎ですよ。もうこの先夢も希望もないですよ。いいんだよ、どうせ俺なんて、一生お前に世話されて生きていく紐男だよ」  
「そ、そこまで言うこともないだろう……」  
 賢のいじけっぷりに美剣はたじろぐ。  
 無論、賢は彼女をからかっているだけなのだが、美剣がマジで謝るものだから罪悪感のようなものを感じて謝りなおした。  
 意味不明の謝罪の仕合が行われ、二人は再び歩き出す。  
 そしてしばらく歩いていると、美剣が口を開いた。  
「なぁ、賢?」  
「どした?」  
「知っているか? 例の噂」  
「噂? ………あぁ、占い殺人鬼のことね」  
 話題は例の、水晶の女の噂。ちなみに占い殺人鬼というのは賢が勝手に言っていることだ。  
 基本的に幽霊とか都市伝説とか信じない賢は無論信じないが、美剣はこういったオカルトなことをやたら知りたがる傾向がある。  
 その事は賢も不思議に思っていたが、人それぞれだと結論付け本人に聞くこともなかった。  
「その占い殺人鬼のことなんだが、また犠牲者が出たらしい。今度は交通事故だって」  
「ただの偶然だろ?」  
「しかし、私の友人が、死んでしまった子が怪しい女に話し掛けられているのを見たと言っている。そしてその直後、車にはねられたとか……」  
 真剣な美剣の口調。  
 その時、彼女は何かに気づきポケットから携帯を取り出した。  
 誰かの着信のようで、そのまま立ち止まり賢は数歩先で立ち止まった。  
「……そうか、わかった。賢、悪いが用事が出来た。3時限目には出られると思うから、先生には賢から伝えておいてくれ」  
「ん? あぁ、わーった」  
「それではな。あと、授業は寝る時間じゃないんだぞ、ちゃんと受けろ」  
「へいへい」  
 美剣は賢に指を刺して言い残し、そのまま来た道を走って戻っていった。  
 彼女は偶に何かの用事でいなくなることがあり、教師にはちゃんと許可も出ている。  
 その都度の伝言役は賢であり、これも美剣と幼馴染やっている自分の宿命だと賢は心で諦めていた。  
 そして、彼は一人学校へと向かう。結局今日は、放課後まで美剣は学校に来なかったわけだけど。  
 
 
「ったく、美剣め」  
 夕方の水溜りが多く見られる街を、賢は一人ぶつぶつ言いながら歩いている。  
 時間が経過するとともに、午前中は音を立てて降っていたものの、空一面を覆っていた黒い雨雲は消えてすっかり晴れた。  
 しかし、彼の心の中は怒りの雨が降っている。  
 何故なら、学校で出たプリントや授業内容が書いてあるノートを美剣の家まで届けなければならないから。  
 幼馴染といっても、賢と美剣の家は結構離れているためメンドくさいのだ。  
「ちょっと、そこの学生君?」  
「ん?」  
 鞄と傘を片手に賢が美剣の家に向かっている時だった。  
 不意に背後から、綺麗な声で呼び止められ賢は立ち止まり後ろを振り向くと、そこには丸い透明の水晶を持った女が一人立っていた。  
 黒いフードを頭に被っている為顔はあまり見えないが、赤い口紅とフードから出る紫の長い髪で女と賢は判断した。  
 しかし妙な違和感を感じる。  
 うまく表現は出来ないが、何となくこの女は何かが違うと、賢は思った。  
 そんな思いを知ってか知らずか、女は笑みを浮かべながら賢の目の前まで歩み寄り、そしてある意味衝撃的なことを言った。  
「君、近いうちに死ぬわよ?」  
「は?」  
 最初、この女が何を言っているのか、賢にはわからなかった。  
 だが、朝の登校時の美剣との会話を思い出し、まさかとは思いつつ警戒の視線を女に送りつつ口を開いた。  
「死ぬ? 何で俺が?」  
「さあね。そう見えたから、私はそう言っただけ」  
「見えたって……大体あんた、いったい何……」  
「それじゃあね。気をつけるのよ、学生君?」  
 賢の言葉が終わる前に、女は艶な声で微笑み、そして人ごみの中へ消えていった。  
 いきなり死ぬと言われ、複雑な心境の賢だったが、誰かのいたずらだと思い再び歩き出した。  
 信号が青になるが面倒なので、歩道橋を使用する。  
 そして、賢が歩道橋の階段を下りようとしたとき、足が水溜りで滑ってしまい彼は勢いよく転げ落ちる。  
 鞄と傘は放り投げられ、彼が一気に地面まで落ち止ったときには、頭から血を流し賢は動くことはなかった……  
 
 
 目の前に広がる光景に、賢はどうにかなりそうだった。  
 再び降り出した雨の中、賢は自分を見ているのだ。  
 ただし、頭から血を流し、無数の人に囲まれて倒れ動かない自分だが……  
 大体の予想はついている、自分は死んだ。  
 先ほど水晶の女に言われたとおりだと、賢はどこか納得してしまった。  
「気をつけろって言ったじゃない」  
 その時、彼の耳に再び女の声が聞こえる。  
 賢は知っている、今の自分は誰にも触れられず、誰とも喋られないことを……だって試したし。  
 無論その逆で、周りの人間からは自分は見えていないし触れることも話すことも出来ないことも理解している。  
 しかし、今の声は確かに賢に向けられたものであり、賢は声がした方向、自分の上を向くと少し驚いた。  
「あんたは……」  
「こんばんわ、また会ったわね、学生君」  
 そこには、やはり水晶の女がいた。電柱の上に立ち賢を見下ろしている。  
 ただし、今度はフードを被らず素顔を晒していた。  
 服は全身黒、両手と頭しか見えず、長い紫の髪、赤い口紅に真紅の虹彩が美しくも妖しさを感じる年上の女性。  
 そして賢が注目したのは、彼女が持っている大鎌だった。  
 賢は直感的に、この女はやばいと感じ、そして恐怖に似た感情が芽生えた。  
「どうしたの?」  
 優しげな女の口調も、賢の恐怖心を増すものでしかない。  
 体は震え、逃げようとしても何か見えないものに縛られているように動けない。  
 やがて女はゆっくりと地面に降りる。それも一気にではなく、浮遊しているようにゆっくりと。  
 そして賢の目の前まで立ち、彼の顔を覗き込み微笑んだ。  
「名前、教えてくれない?」  
「……賢……」  
「そう、賢君って言うのね。私は、ルインっていうの。よろしくね?」  
 名前など答えたくはない賢だが、ルインの瞳を見ていると答えてしまうことに困惑した。  
 そんな中、ルインの質問は続く。  
「賢君は、私をどう思う?」  
「さあ……わからない」  
「でしょうね。なら、今の自分の状態は?」  
「……あんたの言ったとおり、俺は死んだんだろ? 今は幽霊ってとこか」  
「正解。意外と冷静ね」  
「予め……あんたに……」  
「あんたじゃなくて、ルインって呼んでくれる?」  
「……ルインに、言われた、から……かもしれ、ない……」  
 賢は自分の体の異変に気づき始めた。  
 思うように声が出ず、答えたくないのにルインの質問に答えてしまう。  
 そしてルインから逃げるように、顔を横に向けるもすぐに彼女によって正面を向かされる。  
 やがて立っていることもままならず、賢はその場に座り込んでしまった。  
「つらい?」  
「なに、した?」  
「何もしてないわよ。あぁ、ちょっとしたかも……でも、殆ど何もしてないわ」  
 ルインは妖艶な微笑のまま賢を抱きかかえ、近くの木に凭れ座らせた。  
 そしてルイン自身も鎌を置き、膝を突いて前かがみになり賢に寄っていく。  
 ルインの顔が徐々に近づくが、逃げることも出来ず賢はそのまま彼女に抱きつかれた。  
「なにを……」  
「これから、お姉さんといい事しましょ?」  
「な、に?」  
「そうそう、言い忘れていたけど……私、死神なの。だからあの世に逝っちゃう前に、気持ちいいことしましょうね?」  
「な……んんッ!」  
 
 しばらくルインに密着され、戸惑う賢の耳元に彼女が囁いた。  
 そして賢を解放したルインが彼の正面を向いた瞬間、二人の唇が重なった。  
 瞳を見開き驚く賢の両頬を押さえつつ、ルインはそのまま彼の口内に舌を入れ絡ませる。  
 賢の唾液を吸い、また自分の唾液を送る。  
 賢の口の端からは唾液が一筋流れ、呼吸もままならず息苦しさを賢が感じ始めたころ口が解放された。  
「はっ……はぁ、はぁ、な、なに、なにすんだよ……?」  
「だから、いい事よ? それともファーストキスを奪われて怒っているのかな?」  
「ちがう……」  
「そう。まぁ、どうでもいいけどね。すぐに気持ちよくなるようにしてあげるから」  
 ルインは賢にそう言うと、彼の制服を脱がし始めた。  
 というより、立ち上がり置いた大鎌で制服を斬っていった。  
 ズボンはそのまま残っているが、上半身の制服は見るも無残な姿となり、賢は体を震わす。  
 そしてルインは再び賢に密着し、そのまま首や胸などを舌で刺激していく。  
 その度に彼の体は震え、やがて下腹部まで体を下げるとズボンのチャックを開けその中から彼の肉棒を出す。  
 すでに賢の肉棒は硬くそそり立ち、ルインは頬を赤くしそれを見つめていた。  
「大きいわ、立派ね賢君? どお? こんな人がいる中でこんな姿を晒している気分は?」  
「それは、お前も、同じだろう……それに、俺たちの姿は、見えない」  
「それもそうね……」  
 彼女は笑う。  
 その妖艶な微笑みと、その直後肉棒を口で咥えられた刺激で賢はゾクッと体を震わせる。  
 ルインはゆっくりと頭を上下に動かし、肉棒を味わうように舌を動かす。  
 亀頭を吸い、竿を舐め上げ、細い指でしごいたり歯を軽く立てたりもした。  
「んんッ……ふふ、きもちい?」  
「ッ……ッ」  
 未経験の賢は、彼女のテクニックの前に声が出ない。  
 その反応に目を細めて笑い、そして急に動きは速くした。  
 まるで早く出してしまえと言わんばかりの動きに、賢は我慢しきれず彼女の口内に精液を注いだ。  
「んんんッ!」  
 ルインも一瞬眉をひそませるが、やがて喉を鳴らし白濁した液を飲んでいく。  
 飲みきれなかった液が口の端から出ており、すべて飲み終えるとそれも指ですくい、ルインは舌で舐める。  
 その淫な姿に賢は本能的に興奮した。  
「あら、出したばかりなのに……さすが若いわねぇ」  
 肉棒はすぐに硬くなる。  
 その姿に、ルインは手で軽くしごきつつ言った……その時だった。  
「見つけたぞ!」  
「ん?」  
 ルインとはまた違う、賢にとっては聞き覚えのある声が彼の耳に入り、その直後何かが賢の目の前に現れた。  
 それにルインは鎌を持って距離をとる。  
 賢は驚いた。  
「お前……み、つるぎ?」  
「……」  
 見覚えのある制服とその後姿。  
 特徴のある後ろ髪を縛っている白い長髪に、男のような口調。  
 そして賢が忘れるはずもない、自分を見ている横顔。  
 そう、彼の目の前に突如として現れたのは、今朝用事があるからと何処かへ行ったっきり学校にも来なかった彼の幼馴染、美剣の姿だった。  
 
「大丈夫か、賢?」  
「なん、で」  
 賢は混乱していた。  
 まず、俗に言う霊体である自分をなぜ美剣が見て、そして話し掛けられるのか。  
 そして、彼女が持っている日本刀。  
 刃はルインの鎌と同じ色で黒く光っており、美剣はどこかルインと同じ気配を賢は感じていた。  
「ようやく見つけることが出来たぞ、ルイン」  
「あら、美剣ちゃんじゃないの。お久しぶりね」  
 しかも二人は知り合いのようで、さらに賢は驚く。  
 ただ、ルインは昔からの友達にあったような口調だが、美剣は何処か怒りがこもった口調だ。  
「また私を追ってきたの? いい加減しつこいわね、嫌いになっちゃうぞ?」  
「黙れ。私たち死神の掟を破り、自らの欲の為に、死ぬ必要のない人間を殺したお前の罪は許されない」  
「おまえも、しにがみ……」  
 刀の刃先をルインに向け、美剣は殺気を帯びた口調で言う。  
 さっきから賢は驚きっぱなしで、美剣がルインと同じ死神と言う事実に一番驚いた。  
 美剣が言うように、ルインは私利私欲の為に死神の力で人間を殺し、そして霊体となった人間を犯していた。  
 犠牲となった人間はどれも若いのはその為であり、死ななかった人間は美剣が助けに来たか、ルインの気まぐれで助かっていたのだ。  
「すまない賢。お前も死なせてしまった」  
「……」  
「でもまだ間に合う。急いで体に戻るんだ。そうすれば生き返ることが出来る……多分」  
 多分という部分が恐ろしく不安だが、賢は彼女の言葉を信じて立ち上がろうとする。  
 幸いにも、まだ体は救急車で運ばれておらず目の前にある。  
 が、賢が何度も起き上がろうとしても動かなかった。  
「無駄よ無駄。私の力で動けなくしてあるもの」  
「ならば、私がっ……ッ!」  
 美剣は後ろを向き賢を抱えようとした。  
 だがその瞬間、彼女はその場に倒れこんでしまう。  
 何故なら、ルインの鎌の刃が美剣の肩に突き刺さったためだ。  
 美剣も霊体なので血は出ないが、痛みは感じるのだ。  
「なッ……」  
「おバカさん。貴女じゃ私には敵わないのよ、わかってるでしょ?」  
「そ、それ、でも……」  
「はいはい、あなたは寝ていなさいね」  
 美剣の言葉は、ルインがさらに一刺しした事で消え、彼女は気絶した。  
 目の目に広がる残酷な光景に、賢はただ体をがくがく震わせて、ルインが死神、というより悪魔に近いと認識させられた。  
 
「さぁ、続きをしましょう?」   
 そして、再び鎌を地面に置き妖艶な微笑で近づくルインに対し、賢は抵抗しない、いやできない。  
 ルインが肉棒をつかみ軽くしごくと、すぐに肉棒は硬くなり亀頭からは透明な液があふれ出た。  
 ルインは服を脱ぎ全裸となった。  
 綺麗な素肌にバランスのよいスタイル、丸見えな彼女の秘所からはすでに愛液が垂れている。  
 死神でなければこれほど美しい女性はそうはいないだろうが、賢にはそんな感情とっくに無く、ただルインにされるまま。  
「私ももうこんなになってしまっているのよ? いつでも出していいからね?」  
 ルインはそう告げると、賢の上に跨ぎ片手で肉棒を握るとゆっくりと腰を下げて秘所にあてがった。  
 そして、亀頭の先が触れて入り始めると、一気に腰を下ろした。  
「うぐっ!」  
「はああぁッ!」  
 挿入を果たし、二人は身を震わせる。  
 一気に入れたことで少し達したのか、ルインは体を震わせたままジッとしていたが、やがて賢の両肩を掴み彼の目をと見つめた。  
「さあ、私を犯しなさい」  
「……あ……う」  
 ルインの囁くような声の後、賢は彼女を押し倒した。  
 賢自身、体が思うように動かない。  
 まるで操り人形のごとく、賢は正常位で腰を動かしルインを突いていた。  
「あぁッ、はあんッ、いい、もっと」  
「……」  
 彼女の言われたとおり、賢の腰の動きが早まる。  
 ルインの口からは唾液が一筋流れ、街中に甘い喘ぎと肉棒が出し入れされる卑猥な音が流れていた。  
「ッ!」  
 そして賢の体が痙攣し、肉棒を深く入れたまま動かない。  
 彼はルインの膣内を精液で汚していた。  
 びゅくびゅくと音が流れ、ルインも精液の感触に笑みを浮かべている。  
 やがて射精が終わると、賢は再び腰を動かし彼女を犯す。  
 誰も助けてはくれない、美剣も倒れ、誰も二人の行為すら気づいてはいない。  
「ひああッ、私、イッちゃッ、イッ……あああああぁッ!」  
 ルインも絶頂を迎えて体を痙攣させ、膣内を締め付ける。  
 その刺激で賢も再び彼女の中に精液を注ぐ。  
 二人はお互いを求め合う。  
 体は死に、霊体すらもルインに支配されてしまい、賢は抵抗するのをやめて快感とともに時が過ぎるのを待った。  
 賢、そして美剣、二人が生き残るか、それともこのままあの世に逝くのかは……淫な死神だけが知っている……  
 

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