……夢を見た…昔の夢だ  
俺は子供の頃、一羽のことりを拾った、丸めで黄色くて、可愛い奴だった  
そいつはすぐに、俺に懐き、一緒にいる時は肩に乗る程だった  
だが、ある日、家に帰ってきたのに、そいつの姿はなく、俺は日が暮れ、親に説得されるまで探した  
次の日もその次の日も探しても、見つからず諦めかけていた時、  
隣のおばさんが、防腐処理までしたことりの亡骸を丁寧に箱に入れて持ってきた  
おばさんの話では飼い猫が襲っているのを見つけたが、既に遅く、息絶えていたらしい  
打ち明ける勇気が出ず、今まで黙っていたらしい  
 
俺はたくさん泣いた後、おばさんや親と一緒にお墓を作って、埋めた  
 
 
「……まぁ…見たのは前半部分、良い思い出だけだったんだが、全部思い出しちまってな…」  
「…あ〜、あたしも思い出したよ、少しだけど、可愛かったよねぇ…あの頃の優は…」  
「ことりじゃなくて、俺を思い出してどうする…後、昔のことは忘れてくれ」  
「あはは、冗談だって…え〜どうして〜」  
と、顔はにやけているのに、つまらなそうにする、こいつは俺の幼なじみで、名前は唯という  
名前だけ聞けば、おとなしそうだが、とんでもない。むしろ反対である  
そして、俺はこんな奴とふたりっきりで喫茶店にいる、と言えば、  
カップルかと思われそうだが、なんてことはない  
ただ、こいつが欠席した講義のノートを見せるついでにいるだけである  
「……あ〜、ごめん。もうすぐバイト行かなきゃ、いけないから借りてもいい」  
だいだい予測できたと言うか、毎回のことである  
「構わないよ…ただ、奢ってもらうぞ」  
毎回のことだ、これくらいは罰はあたらないだろう  
「うわ、せこ〜、昔はこんなのじゃなかったのに」  
「いい加減にしないと、捻るかはたくぞ…」  
 
唯と別れた俺は特にすることもなく、街を適当にぶらぶらしていた  
「雨…降りそうだな…」  
灰色にそまった空を見上げ、呟く  
傘を持ってるわけもなく、すぐに帰る必要があるかもしれない  
「…ん…アレは……」  
見上げていた空を黄色いことりが通りすぎる  
あのことりと同じ種類だろうか  
「やれやれ…こんなに昔のこと思い出すなんて俺死ぬか?」  
苦笑して、空を見上げるのを止め、歩いていくと程なくして、雨粒がぽつりぽつりと振り出す  
「うわっ、ヤバイッ!」  
あわてて駆け出すが、次第に雨が強くなり、体が濡れていく  
その後のビショ濡れになりつつ、家路を急ぎ、最後の横断歩道にさしかかる  
「あぁ…もう……よし!」  
運悪く赤信号で十秒程、待ち、青になったのを確忍し、すぐに飛び出す  
……もし、この時、よく確認したり、もう少し待ったりしたら、俺の運命は変わっていたかもしれない  
「…なっ………」  
ひどい雨のせいで見えなかったのかもしれない  
俺は信号無視した車に跳ねられ、痛みを感じる間もなく、意識を失った  
 
 
 
「……っ…ぅ…ん……ここ‥は…?」  
俺が目を覚ました時、そこはひどく真っ白で無機質な部屋だった  
棚の上に置かれたいくつか花だけが鮮やかで光ってさえ見える  
 
腕やら足を動かすが、まったく痛みは無い  
「…まさか…本当に死ぬとはな…ってここは天国か…」  
自分としてはそこまで善人とは思っていないのだが、部屋の白さがそう思わせる  
「残念、そんなおめでたいところじゃないよ…目が覚めたみたいだね…」  
突然、声がした方にバッとむくと一人の少女が立っていた  
背はおそらく、16、17あたりだが、顔は背のそれより幼く、よくて14であろう  
服装はゲームで僧侶が着そうなローブに近く、ねずみ色と白が大部分をしめ、わずかに金が施されている  
髪は黄色でこの部屋の花のように服との対称でやけに目立つ  
だが、それをかき消して有り余るほどのインパクトが右手にもたれていた  
ソレは少女の背丈以上の棒の先に…そう、三日月を真ん中から真っ二つにした様な刄が付けられ、鋭い光を放っていた  
ぞくに言う、大鎌だ…  
「……死神…ってことは…まだ、俺は死んでないのか、それとも二回殺されるのか?」  
いきなりあらわれた少女に自分でも不思議なくらいに落ち着いて尋ねる  
さすがにないだろうが、あの鎌で真っ二つはごめんだ  
「安心して、もうあなたは死んでるよ、ボクはあなたの次の時期が来るまでの監視、世話役みたいなものさ」  
色々とわからないことがあるが、少なくとも痛い思いをすることは無いらしい  
しばらく、ぼっーと部屋の中を見ていると少女の方から声をかけてきた  
「めずらしい人だね、あなたは…今までの人は暴れたりして大変だったのに、これじゃ、ボクのいる意味がないね」  
「まぁ…確かに自分でも不思議なくらいなんだかな…今更騒いでも仕方ないし…何より…おまえに迷惑がかかるみたいだし」  
「そうか…まぁ、有り難いけどね」  
しばしの沈黙  
「なぁ……お前の名前って何ていうんだ?…いつまでもお前じゃマズいだろ?」これからいくらか世話になるみたいだし、名前を知りたいと思うのは当然の筈だ  
「ボクかい?…ボクは…コトって言うんだ、よろしく、優」  
無表情、無機質あくまで、興味が無さそうに  
「あぁ……ちょっと待て、何で俺の名前を知ってるんだ?」  
よく考えれば、知っててもおかしくないが、そこまで気が回らなかった  
「えっ…それは……世話する相手ぐらい上から聞くなり、事前に把握しておくのが当然だろう」  
一瞬、あわてた様子を見せるが、すぐに無表情を装い言う  
言われてみれば、納得であった  
「あぁ…そういうことか、よろしくな、コト」  
慌てた表情には突っ込まなかったが、おもしろいと感じると共に、感情があることに安心した  
 

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