仕事の帰路、こつこつと靴を鳴らし歩いていると、路上に何か赤いものが在る事に気付いた。  
暗いので良く視えはしないが赤いものがあると確信できる。 なんだろうか?  
ここは田舎とも都会ともいえない所である。  
ましてや、自分の住居は離れにある。  
そのまま、赤いものが在る方に歩いて行く。  
少しずつ近づいていく。  
「えっ?」  
近付いて行き、ハッキリと分かる位置になったと思ったら間抜けな声を上げてしまった。  
その赤いものは人だった。  
マントの様な物を羽織っているらしい。  
街灯も無く、顔が良く視えな  
い。  
「……………」  
考える。  
「大丈夫ですか?」  
取り合えず声をかけてみた。  
すぅ、すぅ。  
返事は寝息で返ってきた。  
どうやら生きてはいるらしい。「貴方のお名前は?」  
「……鈴原敏行」  
何故か、動揺せずに名前を言えた。  
 
「すずはらとしゆきさん。ですね?」  
顔は良く見えないが口調からして女性だとようやく気付く。「はい、そうですけどあ─」  
「貴方は誰ですか?とおっしゃろうとしたんですよね?」  
「は、はい…」  
「わたしは死神です」  
自分は書物を読む方なので妖怪や神等が登場するものも読んだ事が有る。 
 
しかし、実際には、いないもの。存在し得ないものだと割り切って読んでいた。  
その、割り切っている筈の、空想である筈の死神は言った。「残念ながら、貴方の余命は明日だそうです」  
「それは、残念です」  
自分はさも当たり前かの様に返した。  
「驚かないんですか?」  
明日死ぬというのに他人事のように言う自分に、奇異の視線を向け死神は言った。  
「ほんと、なんででしょうね」 すると、死神は。  
「早くて助かります。では早速………」  
死神は何処から出てきたのか大きな鎌を出し、大鎌を横に振った。  
「えいっ」  
斬られる痛みこそ無いが体からごっそり力が取られるような感覚の後。  
その感覚もやがて消え掛ける。  
消え逝く意識の中に頭に残るのは。  
あぁ、物語通り神々は適当なんだな………。と。  
 

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